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「着物って、美術品じゃなくて着るものだと思っています。なので、実際に着て楽しんでもらえる、そんなお手伝いがしたくて。そういう場所になるように日々店づくりに励んでいます。」普段着として、着物をきる機会は少なくなっている。
けれど、年末年始や成人式、卒業式に結婚式、人生の大きな節目や大切にしたい時間とともに、着物はそっと息づいてきたように感じます。

そんな気持ちがある人に、この仕事を知ってほしいです。
今回募集するのは、人の大切な時間を彩ってきた呉服店、有限会社みさ和から生まれたブランド『WAKON』で働く販売スタッフ。
格式や、ものとしての価値にとらわれず、ファッション感覚からも楽しめる着物を提案している。
着物の『枠』にとらわれすぎないことを大切にしているからこそ、未経験の方や、まだ知識がないかたにチャレンジしてほしいとのこと。
WAKONは以前募集した『大塚呉服店』の前身になったブランドで、着物をきてみたいと思う人が洋服感覚で選ぶことのできる着物から、着物を着慣れている人まで対応できる商品などを取り扱っている。お店は太子店と姫路店の2店舗。
この日は、姫路店を訪ねました。
姫路駅から歩いて7分ほど。大きな商店街を少し入った路面に位置している。

“着物”というと少し硬いイメージがあったけれど、店内は手ぬぐいなどの雑貨や小物から、カラフルな色のもの、刺繍が美しい振り袖などさまざまな商品が並んでいる。
一つひとつをみると、シンプルなものもあるけれど、“どこか個性的”というのがこのお店の印象。

けれど、ここを訪れるみなさんに共通していることは、なんでもいいのではなくて、自分なりのこだわりがあったり、お洒落が好きな人が多いとのこと。
近年、若い人にむけた着物店は少しずつ増えてきているように思う。その中でも、WAKONは、14年前からはじまったブランド。当時はこういったお店もまだ少なかったころ。
どういうきっかけでWAKONというブランドははじまったのでしょうか。
代表の大塚さんにうかがいます。
「きっかけは、着物店ではできないようなことをやってみたいという思いからでした。着物好きのお客さまがどんどん減っているのを感じて、新しいファンをつくるにはどうしたらいいのかを考えていました。」
そんなときに、姫路の駅ビル内で催事をやらないか?と声をかけられたそう。
「それまでは高級呉服の販売が中心だったのですが、その催事のときには一般のお客さまにも手が出しやすいように、リサイクルの着物や、値段を押さえたものをもっていきました。そうしたら、着物に興味のない人や学生さんもお店に入ってこられて。もしかしたら、これは面白いことになるんないかっていう予感がしたんです。」
その催事が好評だったため、つぎに店舗をもつことになった。
「やってみようと。それまではみわ和としてお店をだしていたのですが、どうせなら、屋号も全部新しくしてはじめよう。それで、“WAKON”とつけたんです。ローマ字表記ですけど、漢字表記にすると“和の魂”という意味を込めて。」

いまはどういうお店ですか?
「基本的には初心者のかたから、いわゆる熟練のかたまで対応できる商品を並べています。呉服屋って入りにくいですよね。なので、極力入りやすいお店を目指しています。商品などのセレクトに関しては、それぞれの店舗の店長に任せています。」
店長に任せる。それは、どうしてなのでしょうか?
「着物というものを着たり、一番体験しているのは、彼女たちですからね。そこに僕が、商品はこれで、このやり方で売ってっていうのはおかしいじゃないですか。」
スタッフたちが、一番着物にふれ、楽しんでいる存在でもある。
だからこそ、着物が好きという気持ちがあって、楽しめる人がいい。
そんなふうにお店を任されているのが店長の村上さん。お店づくりのことを伺います。
お店づくりで大切にしていることはありますか?
「初心者さんから少しステップアップするところまでの商品を中心に揃えて、ファッション感覚で着物を選んでもらうお店にしたいと強く思っていまして。どこの産地の着物、という商品価値をアピールするというより、こんな着物きてみたい!と思っていただけるように。そういうお手伝いを出来るお店にしたいなと思って店づくりに励んでいます。」

こういうコーディネートやレイアウトは皆さんで考えるのですか?
「基本的にはスタッフ一人ひとりに任せています。最終的なチェックはわたしがしています。棚なども、自分たちで動かしますし、たまにある大工仕事なんかも基本自分たちでやります。着物で脚立に乗る、なんてこともあるんですよ(笑)。」

店内を見回して、印象に残ったのがこのPOP。さまざまな商品が置いてあるけれど、POPが統一されているから商品がみやすかった。
「うちは初心者商品の幅が本当に広いんです。どうみせたら一番伝わりやすく統一感があるか。小さなことですが、こういうことも自分たちで変えていきます。」

「着物を身近に感じていただけるようなお手伝いをしたいと思っているので、なるべく着物をきてきます。けれど、毎日着るのも大変なときがあるので、洋服を着てくることもありますね。いずれにしても自分のコーディネートでお店に立つ、ということをとても大切にしています。」
「コーディネートをみて、すごく素敵やからわたしもこうなりたいとか、いつかは着てみたいっていっていただけるので。着物でも、洋服でも、服の組み合わせってその人の個性がでると思うんです。なので、この人に見立ててもらったらどんな風になるのかなって想像してもらえるようにしています。」

「やっぱり自分を頼ってお店に来てくださるお客様が増えることは仕事をしていて一番やりがいを感じます。コーディネートをして、それを着て楽しい思い出ができましたとか、着物をきることが楽しかったっていってもらえることが本当に嬉しいですね。」
もう一人、紹介したいのが、川端さん。WAKONで働いて、8年目になる。
川端さんは、どうしてここで働きだしたのでしょうか。
「もともと着物好なのですが、その中でもWAKONがすごく好きで、よく買い物に来ていました。そしたら友人に、『そんなに好きなら働いてみたらいいんじゃない?』って言われて。そんなこと考えたこともなかったんですが、ちょうど仕事を探していたので、面接を受けにきました。」

「姫路店にはレンタルがあるのですが、私はレンタルに思い出があって。姉妹全員がうちで成人式の着物を選んでくださったり、お友達を何人もご紹介してくださったりとか。一時は来るかた来るかた、同じ学校の学生さんだったこともありました。教えてあげようって思ってもらえるお店であることが嬉しいですね。」
大変だったことはなにかありましたか。
「わたしたちの売っているものって決して安いものではありませんし、信用してもらえないと、お客さまも安心して着物を買えないと思うんです。なので、お客さまの心を読んだり、きちっと聞くっていうこと。それは日々研究と訓練だと思いますね。それと、姫路店は、販売だけではなく、レンタルもあるので、ほかの店舗より覚えることがたくさんあります。はじめはちょっと大変かなと思います。」
「あとは年末年始や、成人式などの準備があるので、12月は忙しいですね。そのあとは卒業式の3月。この時期もレンタルや着物の発送準備などで慌ただしくなります。」
これからどんなことをしていきたいですか?
「ほかのお店で成人式の着物を決めてしまったかたが、たまたまうちに来られたときに『ここだったらよかった』っていってくださる方が結構いらっしゃって。まだお店を知らない方がいっぱいいらっしゃるので、まず知っていただきたい。広める取り組みもしていきたいですね。」

まずは店長の村上さん。
「とにかく素直であれば、あと根性のあるかたですね。」
根性ですか。
「扱ってるものが安いものではないので、言葉遣いや、礼儀作法もそうですし、接客の指導ではかなり厳しいことをいいます。お客さまにいわれる前にそこはしっかり指導します。なので、へこたれない人ですね。」
川端さんはどうですか?
「素直に接客が上手くなりたいとか、教えられたことを吸収したいって思っている人は、成長もするし、どんどん楽しくなると思います。明るく元気な人だったらいいですね。」
着物のレンタルに関しては、いまは広告もほとんど出していないそう。
これからはコーディネートをつくって告知をしたり、新たな取り組みもはじまる予定。接客や販売のみならず、そういったプロジェクトを一緒に考え、積極的に参加してくれる人にもぜひ来てほしいとのこと。

自分自身で着物を楽しむことが、日常で着る着物文化をつくっていく。
まだ着物の楽しさを知らない人に楽しさを届け、着物を好きな人を支えるために、ここで着物を楽しみながら一緒に働いてみませんか?
(2014/10/01 吉尾萌実)