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建築家、工務店、ハウスメーカー。家を建てようと思ったとき、誰に頼めばよいのだろう。
そう思った人に建築家や工務店を紹介する、マッチングコーディネータという仕事があります。

つくり手と施主の出会いを生み、その後の関係を見守っていく。“仲人”という言葉が合う仕事です。
ぜひ読んでみてください。
東京・広尾駅から歩くこと5分。
商店街を抜けて明治通りを渡った先に、株式会社ザ・ハウスのオフィスがある。

マッチングサービスのほかにも、住宅関連本の出版や工務店向けの業務支援ソフトの販売など、10人にも満たないスタッフ数で多様な事業を展開している。
この会社を2000年に立ち上げたのが、代表の関さん。
それまでは建築業界に関わりはなく、大手コンサルティング会社に勤めたり、飲食業を起業したりしていた。

当時は欠陥住宅や手抜き工事が社会問題になっていた時代。家を建てたいと思った人が誰に注文住宅を依頼すればいいのか、判断できないような状況だった。
「私自身、自宅の雨漏りにとても悩まされまして。それをきっかけに、施主が安心して家づくりできる環境をつくれないか、と考えたんです。」
着目したのは、家づくりにおける第3者の存在。
工務店やハウスメーカーに注文住宅を依頼すると、その会社が設計から施工までを一括して請負う。一方で建築家に依頼する場合は、建築家が設計と監理を行い、工務店が施工を請負う。
「建築家との家づくりでは、設計監理を行う建築家が第3者として家づくりを見張ってくれることになる。そこに一筋の光明を感じました。」
「だけど、どこへ行けば建築家と知り合えるのか、なんて分からない。建築家にもいろんな人がいるので、一概に信用できるわけでもない。」
そこで、自分たちで設けた判断基準を満たす建築家を集め、施主に紹介するサービスをはじめた。さらに、施工業者も紹介してほしいという声が挙がり、厳選した工務店の紹介サービスもはじめた。

「かなり高いハードルを設けて、建築家や工務店の登録に手間をかけています。本当にご紹介に値する方々だけを集めたというのが、うちの特徴とも言えます。」
いまではザ・ハウスが開催する「若手建築家オーディション」に多数の応募が寄せられ、そのなかから登録建築家を選定している。このイベントは「有名建築家への登竜門になっている」とのこと。
多くの人たちに支持されている理由は、建築家や工務店と施主を結ぶマッチングの質の高さにある。
「僕らの仕事は紹介サービスですけど、気持ちとしてはお客さまがこれから建てる家で生活する様子をイメージしています。紹介するだけの仕事だと思ったら、うまくいかないんですよ。お客さまが住んでからの満足を考えないと。」
そう話すのは、常務の矢野さん。関さんと一緒に会社を立ち上げた方だ。

「建築家ご紹介サービスでは、まずはお客さまに店舗へお越しいただく。お客さまのご計画内容をお聞きして、アドバイス含めて条件整備をして。そのあと、お客さまの望んでいるご計画内容に即した建築家をご提案します。」
ほとんどの人が、建物のビジュアルだけで建築家を判断しているそうだ。
でも、建物の根底には「こういうものをつくりたい」という建築家の考えがある。ビジュアルは好みに合ったかもしれないけど、その建築家のコンセプト自体はその人の要望とは異なることだってある。
また、施主とのコミュニケーションの取り方も、建築家によってさまざまだ。
「建築家の家づくりだけでなく、その人自身についても理解して、お客さまの求めていることに合う建築家を選ぶ。表面的なところではなくて、もう少し深いところがポイントだと思うんです。」
提案した建築家のなかから、さらに絞り込み、話を聞いてみたいと思えた建築家と後日面談を行う。
建築家にはお客さまの考え方や、最適なアプローチの仕方を事前に伝えて、地ならしをした上で面談日を迎える。そこではマッチングコーディネータが立ち会い、両者をフォローする。
契約になると、マッチングコーディネータがその後の打ち合わせに参加することはない。基本的にはお客さまと建築家が一緒に家づくりを進めていく。
「僕らがいるときは補助輪がついているような状態です。補助輪がなくても自走していただけるような状態を、マッチングが終わるまでにつくる。」
「お客さまが、ザ・ハウスに来たことを忘れるくらいが理想なんですよ。その先で相談したいことがあったとしても、建築家に遠慮なく聞いてもらえるような。そんなふうに建築家とお客さまがよい関係を築いていけば、僕らの存在は自然と薄まっていく。」

「入ったばかりは短い時間のなかでまとめることに戸惑うかも。だけど、あまり時間をかけるわけにはいかないんです。」
「うちは建築家からフィーをいただいて、お客さまからはいただいていませんが、僕らが時間=コストをかければかけるほどその負担が増えていく。お客さまに対する思いを持ってマッチングをしながらも、一方で経済的な合理性というものを考えないと。」
なかなか難しいと思うのだけれど、接客のやり方や話の進め方など、仕事の流れをまとめた資料があるから、基本的にはそれに沿って仕事ができる。
ただ、お客さまが満足して建築家を選べるかどうかは、マッチングコーディネータ次第だ。
「お客さまは、多額をかけて家づくりに取り組んでいます。企業で大きなお金を動かしている人であっても、自分の数千万だとまったく感覚が違うじゃないですか。その真剣度合いに責任を感じて向き合えるか。黒子に徹して、その後連絡がなくても、家づくりがうまくいけば『よっしゃあ!』と思えるんです。」
そう話すのは、入社12年目になる次長の八谷(やたがい)さん。

ここからは、3人の女性マッチングコーディネータに話を伺う。
「人と向き合うことはすごくエネルギーがいることです。竹崎は1日4組、朝から晩までのときもあるので。バックオフィスに戻るとメールも打てないくらいですよ。」
竹崎さんは入社8年目。以前は不動産関連の会社で働いていた。
いまはマッチングコーディネータとして、建築家紹介サービスを担当している。
印象に残っているという案件の話をしてもらった。
お客さまは、住宅を扱う会社を経営している社長さん。当然建築に関する知識があり、希望の建築家を具体的に決めていた。
「その建築家はかっこいい家をつくるんですけど、若くて冒険したいという考えを持っている人なんです。家づくりは長い付き合いですから、建築家の人柄は作風よりも重要だとお話をして、別の建築家をご紹介して。」
竹崎さんが紹介したのは、お客さまの好みに合いつつも、実績が豊富で、熟練度の高い建築家。よい方向に持っていくために施主を乗せることもできるし、いさめることもできるような建築家だ。
「建築の好みや要望だけじゃなくて、どういう人と付き合っていきたいと思っているか、とか、どんなお考えで仕事をしてらっしゃるのか、なども聞きます。持ち物やお洋服、全体を見てお客さまを知ろうとする努力もしています。」

そして、条件の組み合わせ以上に、人と人の相性で建築家を判断する。それが合わずに家づくりが進むと、結果よい家ができないそうだ。
一方通行ではなく、互いを知って、信頼し合うような関係を築いていけるように、両者の出会いをコーディネートする。まるでお見合いの仲人のような役割だと思う。
そんな役割だからこそ、竣工後にお客さまから家に呼ばれることも多々あるそうだ。
「さっき話したお客さまは、本当に1部屋ずつ案内してくださって。『竹崎さんが言ってくれたから、確かにそうだと思って、この建築家を選んで。それで、これだけの家を建てることができました。』ってお話しいただいて。この仕事をやっていて、本当によかったなって思いました。」

担当の川村さんに話を聞いてみた。
「基本は建築家の場合と一緒ですが、こちらはお客さまとのお顔合わせがないので、電話とメールでのお話しになります。30分の電話を数回に分けて、こちらも合計2時間以内で工務店の絞り込みをしていきます。」
「それと、お客さまの求めているものが、建築家ご紹介サービスとはちょっと違うんですよ。住宅のスペックに寄っていて、断熱性能はこれが欲しいとか、そんなお客さまが多い気がします。ご紹介した後は、一歩下がって静観させていただく。何かあったらいつもで仰ってくださいという感じですね。」

「自分の未来をたくさん描けて、受身ではなく自分の足で進んでいくことができる人がいいですね。」
みなさん一様に「成長する意欲があって、理想に向かって取り組むことができる人と働きたい」と話していた。
ザ・ハウスでは、スタッフの提案やチャレンジが、たとえ社外への展開であっても受け入れられる環境がある。
実際に、紹介の仕事だけに留まらず、本の出版や業務支援ソフトの開発など、マッチングコーディネータの人たちはさまざまな仕事にも手を広げている。
矢野さんはこう話す。
「コーディネータっていう肩書きに留まらないキャリアになると思います。社長の考えは、どこへ行っても通用するビジネスマンを育てる、ということ。決して僕らが完成されているなんて思っていないので、苦楽を共にできる人がいてくれたらいいなと思います。日々改善ですよ。」

経歴や年齢よりも、どのように取り組み、どう経験を積んできたのかを見られる会社だと思います。
家づくりのマッチングに興味が沸いたら、ぜひ応募してみてください。実際に仕事をすると、仲人という言葉がよりしっくり来ると思います。
最後に、関さんから一言。
「自分の実力をフルに発揮してほしいです。うちの会社は道場的なところがありまして、みんなが寄って集って育ててくれる会社です。ザ・ハウスの経験が新たに加わる方の人生の役にたって、会社もその方のパワーを貰えればと思っています。本当にご縁ですから、楽しく向上心を持って発展させていきましょう。」
(2014/11/1 森田曜光)