求人 NEW

工芸を伝える

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

一枚の皿を裏返すと、印が並んでいる。

左から順に、窯元、デザイナー、東屋、小売のショップ。

1 「東屋をはじめたのが1997年。当時は、窯元の名が出ない工芸品が多かったんです。そのことに強い違和感があって。僕らは黒子として、職人を引き立てる役割だと思っています。」

デザイナーと職人、そしてつかう人。その間を行き来し、工芸の魅力を伝えるのが、株式会社東屋(あづまや)です。

印判という転写技術をもちいた小皿、月に200個しかつくれないジューサー、おひつ、さらには鉄脚と一枚板の机まで。

東屋の名前は知らなくても、商品を見たことのある人は少なくないかもしれません。

2つの職種で働く人を募集します。

自社で開発した商品を卸売り、また小売店から依頼を受け、オリジナルの商品をつくる営業。そして、会社を支える事務の仕事です。

東京・五反田駅と目黒駅の間。

池田山とよばれる閑静な住宅街へ入ります。

しばらく歩くと現れる白塗りの一軒家が、東屋の事務所です。

2 現在は10名ほどが働く東屋。

代表の熊田さんは、アメリカの大学で経営を学んだ後、商社へ。海外で長く過ごす中、日本の魅力に気づくようになったという。

その一つが、工芸。

実用性に重きを置きつつ、美しさも追求した日用品です。

3 いまでこそ工業商品に取って代わられましたが、かつては日本のものづくりの最先端をいく産業でした。

陶磁器のルーツとなる中国や韓国では、すでに担い手がほとんどいないそう。けれど、日本では現役の職人が仕事を続けていました。

当時は、人々の暮らしから忘れ去られつつあった工芸に、もう一度光をあてたい。

そう思い、東屋は現代の暮らしに合う工芸を提案していきました。

商品は、ほとんどがオリジナルです。

熊田さんは高齢化の進みつつある日本全国の職人を訪ね歩き、ものづくりの生態系を立て直すところから取り組んでいきました。

かつては、“産地問屋”と呼ばれる人が商品のコンセプトを練り、職人が手を動かしていく仕組みがあったといいます。

「つくり手が脂汗かいて考えこみ、工夫して、はじめていいものができます。東屋ではあたらしいものを開発するとき、職人にテーマを投げてみるんです。」

いま世の中に足りないものは何か、どんなものがあるとよいか。そうした生活者の目線。一方で、職人が次のステージに行くためには、どんなことが求められるのか。

4 両者の目線が重なったところに、あたらしい工芸が生まれてくるという。

熊田さんは、かつての産地問屋。いまで言うところのディレクターとしての役割を担ってきました。

「職人として日々手を動かしていたら、絶対に踏み入れない領域があるんですよ。けれど自ら汗をかかない僕には、その先に感じられる可能性もあります。そこへ一歩、もう一歩踏み込んでくださいと話していきます。」

東屋がデザインにおいて心がけるのは、「素材と技術に嘘をつかないこと」。

長い年月の裏付けにより、安全性があきらかになった素材をもちいます。

また古物をもとに、ものの文脈を受け継いだデザインを起こしていきます。

一つの商品ができあがるまでには、何年ものやりとりを重ねていくという。

道半ばで、商品化に至らなかったことも珍しくない。

けれど、熊田さんの提案に挑む職人さんもいる。そうした方は、仕事が楽しくなり、売上げも伴うことが多いという。

職人が、表舞台に出る機会も設けてきました。

日本の職人には、高い技術を持ちながらも、自分の仕事に誇りを持ちにくい方が目立つという。

そこには、構造的な課題がありました。

「たとえば器。裏面には、生産を委託したショップの名前は出ても、窯元の印が押されることは少なかったんです。生活者と職人の接点がないんですね。」

東屋の役割は職人を引き立てる黒子。職人の名前を入れるようにしたところ、変化が見られたという。

たとえば、長崎県の波佐見(はさみ)焼。

「『東屋と仕事をはじめて、波佐見が変わった』。そう話してくれる職人さんもいます。窯元、そして産地が表に出るようになったことで、どんどん職人の表情は変わり、よりよいものをつくるようになっています。」

5 工芸への取組みを通して、熊田さんには描いていることがあります。

「前職で度々イタリアを訪れました。収入で見れば僕らよりも少ないんです。けれど自信に満ちて、楽しく生活していたんですね。『俺のまち、かっこいいだろ』『うちの飯うまいだろ』って。自分の“根っこ”の上にあぐらをかいていました。」

「日本もこうなれる、と思ったんですよ。かつてそうだったんですから。つくる人が飯を食えて、つかう人の生活が豊かになる。その構造を育むことで、日本という根っこに自信を取り戻していけたらと思います。安心して、あぐらをかいていいと思うんです。」

続けて、営業の中澤さんに話をうかがいます。

今回入社する人の上司にあたる方です。

6 入社して8年目、前職では時計の小売りをしていました。

「工芸は詳しくなかったんですが、扱っているものに惹かれました。ものの背景を伝えていく営業の姿勢もよいと思いましたね。」

今回入る方も、現時点では工芸に関する知識は、必須ではないという。

むしろ、興味や好きという気持ちこそ大切。どんどん自分を養っていけるようです。

仕事を通して、自分の生活でつかう中で、ものが“見える”ようになるという。

ここで中澤さんは、二枚の皿を差し出してくれました。

7. 「違いがわかりますか?左は水ゴテという型を用いて量産されたもの。右は手挽きのもの。よく見ると、存在感が違うんです。」

目利きですか。

「目が利くのは、才能ではありません。努力で身につくものだと思います。ものに興味を持って、よく見ていると『あれ?』と思うことに出くわす。それを一つひとつ読み解いていく。その繰り返しです。一人前になるまでには、数年かかると思います。でも好きこそ物の上手なれ、でどんどん見えるようになりますよ。」

営業として入社する人は、まずは小売店への卸売りをしながら、仕事を覚えていくことになる。

卸先は、TIME&STYLE、UNITED ARROWS、scope、日本橋木屋、スパイラルマーケットにCLASKA(クラスカ)など。
暮らしに工芸を取り入れるというコンセプトもあり、意外に横文字のショップが目立ちます。

中澤さんは、卸先の客層に合わせた商品提案をしていくという。

「新商品ができると、ご紹介もします。それから、季節に合わせた提案もします。夏は蚊取り線香を置く蚊やり。これからは、土鍋ですね。」

営業において大変なことは、在庫の管理だという。

「手づくりが多く、生産が安定しないんです。すべてのお客さんに行き渡らないこともあります。」

8 「一番時間使うのは、欠品時の対応かもしれません。卸先にお詫びをして、最短の納期を提案して。なかなか大変です。いまは売れ筋の商品の多くが、入荷待ちなんです。」

面白いものをつくる職人ほど、計画的な生産がニガテだそうだ。

木工所でうっかり原木の入荷を忘れてしまうこともある。急いで入荷しても、すぐに加工はできない。半年以上は乾燥させる時間が必要になるという。

また、材料が希少で、そもそも調達ができないこともある。

「裏を返せば、それだけ“つくる”ことにエネルギーを注ぎこんでいるとも、言えます。」

営業にはもう一つ大切な仕事があります。

卸先に合わせて、オリジナル商品をつくるOEMの仕事です。

たとえば、この皿。

9 インテリア家具・雑貨のオンラインショップscope(スコープ)から依頼されたもの。
「絵は、フィンランドのイラストレーターであるクラウス・ハーパニエミによるものです。scopeさんは、彼と5年越しで話を進めてきたそうです。東屋への依頼は『シンプルな銘々皿に、洋の東西を問わず受入れられる柄をつけたい』というものでした。」
月に1,000枚の皿をつくるのは、夫婦で営まれている生地屋さん。

月に一度販売を開始すると、1時間で完売する人気だという。

その他にもUNITED ARROWSから印判の箸置き、日本橋木屋ではおひつなどを受注しています。

OEMの制作は、営業の方が直接職人さんを訪ねて進めることもあります。

中澤さんも常滑、伊賀、水沢、荒川、台東と日本中の産地をまわるという。

これから入社する人も、ゆくゆくは職人さんを訪ね、打ち合わせていくとのこと。

「とはいえ右も左もわからない状態で工房を訪ねても、真剣に仕事をしている職人さんに迷惑をかけてしまいます。まずは目を養うことからはじまります。」

10 営業としては、予算や売上げの管理も欠かすことができません。

「僕らは、工芸を生きた文化として発展させていきたい。そのためには、ものが好きなことに加えて、東屋も職人さんもきちんと稼ぎ、ご飯を食べていく。その意識や覚悟は必要だと思います。」

「仕入れが予定通りにできないときもありますが、在庫や仕入れのスケジュール管理、そして予算を立てて、売上げ実績を把握していくこと。いずれも大事な仕事です。一度は社会に出た方に来てほしいです。」

今回は、東屋の屋台骨を支える事務の方も募集します。

経理・人事・総務・庶務と幅広く手がける、久保田さんにも話をうかがいました。

11 前職は、教育関係での事務職。

「仕事内容は近いです。もともと食器に興味を持っていたこともあり、好きなことをしている会社で働きたいと思いました。」

東屋は売り手である以前に、自らがつかい手でもあります。

「社内でお茶を飲むときに、ティーポットやカップを使ってみるんです。試作品を使い分け、比べることもあります。」

つかう中での気づきを元に、商品のマイナーチェンジを行うこともあります。

12 久保田さんは、仕事の幅を広げつつあるそうです。

現在は東屋のカタログ制作の窓口として、外部のカメラマンやデザイナーとやりとりを進めています。

「仕事を広げることもできれば、働き方の自由度も高いように思います。」

最後に、代表の熊田さんから伝えたいことがあります。

「嘘のない仕事をして、生活していきましょう。」

「丁寧につくられたお椀は祖母から母へ、母から息子へ。何代にもわたり、受け継がれることがあります。そこには一緒に過ごした思い出や時間が宿ります。その時間や経験に見合う工芸を届けるのが、東屋の仕事だと思っています。」

(2014/12/11 大越元)
この企業の再募集通知を受ける