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自分が大事にしたい生き方ってなんだろう。子どもと過ごす時間か自分のやりたいことか。その、どちらか、という葛藤を抱える人も多いと思います。
杉並区富士見ヶ丘には、そのどちらも大事にできる生き方を社会に提案するだけではなく、自分たち自身も日々の仕事を通して実践している人たちがいます。
オンラインストアと実店舗、ウェブやワークショップを通じて、ひとりひとりが生きる上での“わたし自身のものさし”を見つける手助けをする「くらすこと」。
今回、ここで企画・広報担当とオンラインストアのスタッフを募集します。
生き方を提供する仕事は、自分の生き方と向き合うことからはじまる。
難しいようでシンプルなこと。大変だけどやりがいのあること。
まずは、読んでみてください。

川のほとりに建つ、古いマンションの一階にあるのがごはんとおやつ、雑貨の店「くらすこと」。
ランチどき、お客さんで賑わう中、迎えてくれたのは、くらすこと主宰の藤田ゆみさん。
去年の春にご家族で福岡県糸島に移住した3児のお母さんです。

「20代の頃は雑誌の編集をやっていましたが、一人目の子どもができて、仕事は辞めざるを得ませんでした。そこから子どもと二人っきりの生活が始まりました。」
準備もなく親になり、子どもを都会で育てていく大変さを強く感じたという藤田さん。
どんな生活だったんですか?
「それまでは、仕事を通して自分のアイデンティティをつくっていて、仕事が自分自身の表現でした。それが、まったく仕事をしなくなって、ただのお母さんになった。わたしとしてどう立っていくのか、子どもにも無理させないで自分自身が子どもと育っていくって何が大事なのか考えるようになりました。」
自分のやりたいことをやるか、子育てのみに専念するか。どちらかを選ばざるをえないような社会の中で、藤田さんはそのどちらでもない生き方を探し始めた。
「くらすこと」の活動をスタートし、最初に試みたのはワークショップ。
お母さんたちで、子どもを育てる上で大変なところや大事だと思うところが共有できる場がつくれたら。そんな想いではじめたんだそう。
「料理家の友だちを招いて、おにぎりのワークショップをしました。心地よさだったり、美味しさとか、気持ちいいというシンプルなよさが伝わって、自分たちが大事にしている空間だったり、こだわりに触れてもらうキッカケをつくっていきました。」

「作家のイイホシユミコさんに、『福祉作業所やバザーでモノを買いたいけど、本当に欲しいと思うものがなかなかない。だから、本当に欲しいと思うものを自分たちでつくっていきたいなと思っている。いろんな技術を持っているところがあるから、そういうところと一緒にできないかな?』ということを話したら、じゃあ、やりましょうという話になった。」
それならと、自分たちが日頃使っていて、いいと思う食べ物や器なども一緒に置いたオンラインストアを始めた。
はじめてみてどうでしたか?
「雑誌に紹介されましたし、賛同して買ってくださる方も多かったです。」
商品をただ売ればいい、のではなく、どんなモノに囲まれて生活していくのか?自分のライフスタイルを考えるキッカケやヒントを提案するという想いがそこにはある。
商品一つひとつに、選んでいる理由が込められている。

「冷えとりの靴下です。昔から販売しているんですけど、この商品、すごい老舗のうさぎの会さんの商品であまり卸しもしていないんです。でも、くらすことがやっていること、売るだけじゃなくて、それによって身体の調子がよくなったり、気持ちよかったりすることを伝えたい、届けたいという想いが伝わって、販売させてもらうようになりました。」
他には、取扱いを断られていたオーガニック化粧品の販売会社のブランドマネージャーさんが妊娠し、仕事との両立の大変さを実感。藤田さんといろいろと話す中で『取り扱いしてください』と言われ、扱うようになったことも。

しかし、最近まで「ブレていた」という藤田さん。何があったんでしょう?
「これまではスタッフとは日々顔をあわせていて、説明なしでも想いが伝わって仕事できていたんです。それが私が福岡に移住してから伝わらなくなってきた。当たり前なんですけど、いままでと同じやり方でやっていたからなんです。そうなると、人もやめていって。」
それでどうしたんですか?
「雑誌や講演とかで外に向かって『こういうことを考えているんですよ、やってるんです』って伝えるのも大事だと思うんですが、まずは中の一緒に働いているスタッフに。福岡でもくらすことの拠点をつくり始めたところですし、実際会えないからこそ、思いを共有し、同じ方向に向かっていけるための、新たな試みもはじめました。このままじゃだめだって、全部仕切り直しています。」
仕切り直す。
「自分の生き方と仕事の仕方、働き方、それぞれに開きがあると嘘になっちゃうんです。」
「自分たち自身がご飯を食べる時間もないとか、みんなで話をする時間もなかったら『なんのためにやってるの?』ってなります。だから、そこを一致させることからはじめています。給食係がお昼ごはんを作り、『一緒にご飯食べる』ことも、そこで大事なことを話し合っていこうっていう試みの一つです。」

次に、店舗マネージャーの東條和子さんにお話を伺った。
新しく入る方は東條さんと一緒に働いていくことになる。

その後、偶然、富士見ヶ丘の近くに引っ越してくるタイミングでくらすことのお店がオープン。オープニングスタッフを探していた藤田さんに声をかけられ、パートとして入った。
実際働いてみてどうでしたか?
「立ち上げの大変さをすごく感じていました。でも『わたしはパートだから』って引いたところにいたんです。だけど、藤田がそばにいない中でやらなきゃいけなかったし、思ったように進まないことも多くて、人が定着しなかった時期もあって、だんだん自分がここにいること自体が辛くなってきました。」
辛くなった。
「そんな中で、わたしの中途半端さがどうにかならないかなって思っていたのもあって、ちょっとずつひとりひとりのスタッフと話すことをはじめていきました。コミュニケーションがもうちょっとうまくとれたらうまくいくんじゃないかと思って。」
その後、藤田さんとスタッフの橋渡し役のように働く中で、ホールスタッフとしての役割ではなく、働くスタッフみんなの話を聞く役割として働いている東條さん。
だんだんと今の役割に収まってきた。

編集企画・広報の方はどんな仕事になりますか?
「仕事は自分たちがやっていることを外に広めることです。TwitterやFacebook、あと、フライヤーとかメルマガ。商品入荷のお知らせをしたり、商品の紹介文を書いたり、イベント企画をしたりと、そんな仕事です。」
どんな方がいいでしょうか?
「ライティングの仕事をある程度してきた人がいいかなぁと。メルマガの最初の挨拶にしても、寒くなってきましたね、とか当たり障りのないことを書くより自分が実際生活していて、こういうことがあったんですよとか、もちろん商品と絡めてもいいんですけど、その人自身の生き方がそのまま出るぐらいがいいです。」
技術的なところでは何かありますか?
「ふんわりしたコラムばかり書ける人が来てもどうしようもないですね。この商品を紹介するにはどうすればいいのかってところを、ある程度プロとしてやってきた人がいい。表現力はありつつ、プラス自分の生き方だと思います。」
オンラインストアはどんな仕事になりますか?
「フルタイムのスタッフは、主に商品の受注発注、在庫管理。忙しいときには梱包も。全体に関わってもらいますが、細かい作業が多いです。」
全部内製化しているんですね。
「はい。一回発送業務を外に頼んでいたことあるんですけど、ほんとに喜んでもらいたいなって思って自分たちで包んだものって、あけたとき全然違うと思うんです。子どもが小さくてあまり外に出られない人にとって気に入ったものが増えるのって小さいことだけど喜びが大きいんです。そういうことを大事にしたいと思うので自分たちでやってるんですよね。とっても大変ですけど。」

まずは、東條さん。
「柔軟性ですね。1つのことだけやっていればいいってことにはならないので。あと、その瞬間の巡り合わせをつかむのがゆみさんの面白いところで、でも、それって動きが大きく出たり、いきなり状況が変わったりします。なので、その都度、その変化を楽しんだり、今度は自分は何しよう?って考えられる人だと向いてる職場だと思います。」
次に、藤田さん。
「やっていることとか大事にしていることが、子どもとの時間も自分の時間も大事にするという感じなので、子どもがいても働けるんですが、その上で、いかに普通の店と同じようにプロとして働けるかどうかが大切です。そのクオリティを保てるからこそ、いろんな人たちが来てくれるっていうのがあるんで、そこは甘えられません。」
「子どものいるスタッフはお迎えに行くまですごい密度なんですよ。それに、子どもの保育を延長して残業し、なんのために働いているの?という状況が続いていると私からすごい怒られます。時間の制限があるからこそ、自分がその中で、いかに100%発揮してできるのかが大切。そんなスタッフを支えてくれるのは、全体の半分を占めるまだ子どものいないスタッフたちですが、ゆくゆくは立場が入れ替わることもある。それはお互い様なんで。」
生き方と働き方の一致を目指すのは、ただ楽しい話ではないのだと思う。
最後に藤田さん。
「なんのためにやっているのか、なんのためにこの場を開いているのかを今一度、つくりなおしている段階です。ご飯を一緒に食べたり、スタッフに向けたメルマガをやり始めようとか、今、変わりどきなんです。」

まずは、富士見ヶ丘のくらすことに足を運んでみてください。
(2014/12/10 中岡晃也)