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新しい仕事って、どういうところから生まれるのだろう?今は需要がないけれども信じるものを辛抱強く世に投げかけ続けるか。もしくは何かを求められたときに、求められている以上のものを提案すると、新しい仕事につながると個人的には思っています。

沖縄で10年前に創業し、主に人材サービス事業をはじめてから、今ではあらゆる相談を受けている会社です。それは相手に寄り添って必要なものを形にしてきたからだと思います。
デザイナーを募集します。
東京から飛行機にのって3時間弱。空港から出ると、すぐに南国に降り立った実感がある。待ち合わせ場所に行くと、車でルーツのスタッフが迎えに来てくれた。
車に乗り込むと、冷たいさんぴん茶が用意されていた。ところが、のどが渇いたところだったので、ちょうど自販機で飲み物を買ったところだった。
事務所があるのは那覇市のおとなりである浦添市。那覇から車ですぐのところ。
オフィスの中は木をたくさん使ったデザインで居心地がいい。

いい意味で、おせっかいな会社なのかもしれない。
まずお話を聞いたのは、デザイナーの横川さん。
彼女はもともと東京でグラフィックデザインの仕事をされていた方だ。
「東京で勤めていた会社は、なんでもやるような会社だったんです。グラフィックデザインもするし、内装も什器も臨機応変につくる。私はそこでグラフィックを担当していたんです。10年経ったときに『この先、どうしよう』って思って。」

「社会人向けのインターンシップがあったので、それに参加しようと思いました。いろいろな受け入れ先があったんですけど、母が奄美大島のとなりにある喜界島の出身だったんです。島は自分のアイデンティティのように感じたんです。」
そうして訪れたのが、沖縄の伊是名島だった。
「すごい小さな島だな、という印象がありました。喜界島はそれでも8,000人はいる島だったので。」
島ではどう過ごされたのですか?
「草刈りとか掃除とか。あとは島の食材を使った6次産業的なものを、商品開発されてるところがあったんで、それのパッケージデザインとか。ポスターのデザインのお仕事もしていました。」
横川さんを伊是名島に送ったのがルーツだった。あるときルーツの代表の今津さんは「最近どうしているのかな」と思って、横川さんに近況を電話で聞いてみた。
「今津さんから『元気?』って連絡があって、それがきっかけとなってルーツで働くことになったんです。働きはじめたのが2013年の1月。」
沖縄に来て、やっぱりデザインの仕事が好きだと思ったんですか?
「そうですね。自分はデザインをやってきて、デザインで何か社会に還元できないかなあ、って思っていたんです。ただ東京にいるだけだと、見えないものもあるんじゃないかなあ。そう思って。ちょうどそのときは行き場もなかったし、帰るのも悔しかったんです。」
実際に働きはじめてどうでしたか?
「ギャップとかはなかったんですけど、めまぐるしかったですね。次から次へと会社にいろんな人がやってくる。そしていろんな相談をいただく。でもチームでそういう相談に対処できるのはすごく楽しくて。それに尽きる感じですね。」

でも相談に乗っていると、人をつなげるだけでは解決しない課題も見えてくる。
たとえば横川さんは、グラフィックデザインもするけれども、Webデザインも、プロダクトデザインも担当している。
それは自分の職能によって、仕事の限界を決めているわけではなく、とことんクライアントに寄り添って、本当に必要なものを提示しているから。
「いろんな会社と、いろんな人たちとチームを組んで、本当に必要なことを形にしていくのは楽しいですよ。」
でもデザインって、多くの仕事は具体的な要望があって、それを形にしていく仕事のような気がする。どうやって、そういう働き方に広がっていったのだろう。
「ワークステーション夢工房のカツコさんという方がいるんです。みんなが大好きな方なんですけど、何回も通っているうちに本当に必要なものが形になっていくんです。」

「カツコさんが『あ、これこれ!どうして私の気持ちをわかってくれるの?』って言ってくださって。それはすごいうれしかったんです。」
「足しげく通っているからこそ、わたしだけじゃなく、チームの気持ちがひとつになっていく。そうやって生まれたデザインなんです。」
仕事の領域がとても広いですね。
「そうですね。デザインだけじゃなくて、どうやってそれを商品として販売していくのか。そういったことも考えるんです。普通だったら、パッケージのデザインをするだけかもしれない。でもそういったことを飛び越えて、カツコさんのために親身になる。どうにかしたいなあ、って思うんです。そういったことが、この会社に感銘を受けたことでした。」
横川さんのいるクリエイティブチームを率いているのが松島さん。
もともと雑誌の編集者で、今はあらゆるプロデュース業務を担っている。
「私はもともと編集者だったので、プロデュースがどんなものかまだ分からない部分もあるんですが、やっていることは『編集』だと思うんです。ただ、それが制作物をつくることに限らず、様々なプロジェクトになっているんです。」

「本当にいろいろな相談をいただくんです。その最たるものがCIとか。あとはグラフィックデザインや編集、マーケティング、それにコンサルティング。想定していなかった案件が、いろいろなきっかけからやってくるんです。」
「たとえば横川のデザインを見て『お願いしたい』とおっしゃっていただくこともある。だいたい、うちに相談いただくのは『こういうふうにしたい』というように明確なものじゃなくて、漠然としたものなんです。『なんとなくこうしたい』というものなので、まずは整理するところからはじめます。」
もともとそういう姿勢の会社だったのだと思う。会社をはじめたばかりのときは、人材に関する相談がやってきていた。でも単に採用のお手伝いをするのではなく、本当に必要なことは何か考える。

それがまったくやったことのないことだとしても「こういうことですよね?」と応えていくと、また「こんなことできる?」と相談がやってきて、仕事の幅が広がっていく。
ただ、それってやったこともないことに毎回挑戦することだから、大変な仕事になると思う。
「やったことないことばかりですよ。入ってからはずっとそんな感じ。はじめはどんなプロジェクトも途方に暮れるんです。でもやってみる。つらくはないんです。」
裏を返せば、言われたことをそのままやるだけでは味わえない楽しさがあるのかもしれない。
そんな話をしていると、代表の今津さんはこんな話をしてくれた。
「最初は『チラシをつくってほしい』という依頼があるわけです。それはわかりました、と思いつつも、相手が何を想っているのかさぐっていく。うちの社名じゃないですけど、ルーツを探っていくんです。『そもそもなんでこれがやりたかったんでしたっけ?』と掘り下げていくと『結局チラシじゃないよね』というところに行き着く。」

今回はデザイナーの募集をするけれども、ルーツの仕事は人によって広がっていくのだろうな。
だから横川さんはグラフィックデザインが得意だけれども、また違った得意分野がある人でもいいかもしれない。たとえばWebだったり、映像をやっていたとか。広義のデザインを、得意分野の技術をもとに解決していく仕事になると思う。
どんな人がいいのだろう。
横川さんは次のように話してくれた。
「柔軟でいて、地域にずかずか入らない人。謙虚な姿勢も必要なんです。東京でやるようにいかないときもあります。」

その夜は沖縄の夜を満喫することになった。連れていっていただいたお店は、数品のメニューしかない焼き鳥屋さん。路地にイスがならんでいる、とってもおいしい餃子を食べさせてくれるお店。そして、自分で焼きたいものを選んで焼いてもらうお店などなど。

贈り物をするように働いていて、相手の思いを形にしていくほど、必要とされる仕事はないなあ、と思う夜でした。
(2014/12/22 ナカムラケンタ)