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岐阜県・白川村。険しい山々に囲まれたこの村で、世界遺産に登録された合掌造り集落を一目見ようと、毎年150万人もの観光客が訪れます。

そこで白川村は、今年はじめから地域おこし協力隊を3名募集しました。
今回は新たに4名の協力隊を加え、活動をさらに加速させていきます。
白川村がどんな状況にあり、協力隊と一緒にどこへ向かおうとしているのか。
まずは読んでみてください。
東京から新幹線に乗り、名古屋駅に到着。そこから高速バスに乗り換え、白川村へと続く道を2時間半かけて進む。
しばらく山道が続くと、一面の青空を映した御母衣湖(みぼろこ)が見えてきた。

あとで聞いたのだけれど、この日の前日は初雪が降ったらしい。遠くに見える高い山は雪を被り、近くの山にはまだ紅葉が残っている。
はじめて訪れた白川村。合掌造りのイメージしかなかったけれど、ほんとうに自然豊かな地域だと思った。気づけば、窓の外をずっと眺めている。
そうしているうちに、合掌造り集落のある白川郷駅に到着。待ち合わせまで時間があったので、集落を散策してみる。
平日にも関わらず大勢の人。台湾や中国など、海外からやってきた人も多い。
しばらくすると、白川村役場の髙島さんが近くまで迎えに来てくれた。
そこから車で移動し、役場で話をうかがいます。

そう聞いてみると、「よく言われるんですけどね」と髙島さん。
「たしかに、1995年に世界遺産に登録されて、そこから右肩上がりに入り込み客数が増えました。だけど、村の人たちが幸せを感じてずっとここで暮らしたいと思っているかというと、そうじゃない。1998年に2,000人を超えていた人口が、いまは1,700人。16年で15%も減っているんです。」
逆に客入り数が目隠しとなって、危機感を持つ村民は少ないという。
「人口が減ったって、お客さんが来るから大丈夫、何もしなくていいと。Uターンするのも、長男だからと義務で帰郷するような人ばかり。そうじゃなくて、村に帰ってこんなことしたいとか、そのために勉強して帰ってくるんだとか。そんなふうに、生き生きした村にしたいと。」
一方で、世間では田舎暮らしのニーズが高まる。それに応えられる豊かな自然環境が白川にはあるし、観光地としての集客力もある。強みは十分にあった。
まずは村に住む人を増やすために、移住対策や空き家利用など、さまざまな施策を打った。
「でも上手くいかないんですよね。役場の人だけではノウハウがなく、視点が凝り固まっている。そんなとき、長野にある協力隊が活発な地域の方から『協力隊を入れるといいよ』と聞いて。」
募集をかけ、集まったのは3名。写真左から柴原さん、大倉さん、高橋さんです。

ひとつは、南部地域の活性化と村内の空き家対策。もうひとつは、その取り組みや未開発な村のよさを外へ発信すること。
「でも彼らがやってくれたのは、それだけじゃなかったんです。」
交流と課題抽出のための“村民カフェ”。空き家と求人の情報を一元管理・リスト化した“空き家バンク×仕事バンク”。古旅館をリノベしてオーナーを村民に置いた“ゲストハウスたろえも”。白川の子どもたちに故郷の未来を考えてもらう“白川村子ども未来会議”。自然資産を生かしたアクティビティのロングコース“白山白川郷ロングトレイル”などなど。
まだ1年も経たないのに、ここでは紹介しきれない数のプロジェクトを企画・進行している。

自分たちにもやれるんだ、やってもいいんだ。そんな認識が村の中で徐々に広まっているという。

協力隊の3名に聞くと、髙島さんは3人のよき理解者であり、パートナーであることが見えてきた。
「僕の役割は、彼らの相談に乗りながら行政や村と調整をしたり、彼らがスムーズにいろんなことができるように予算をとってきたりすること。お金の心配をあまりさせたくないという気持ちがあって。」
また村長や副村長も、はじめは協力隊に懐疑的だったらしいけど、いまは信頼してくれている。
実は、今回の募集は協力隊が村長に提案したもの。ぜひやってくれと、募集方法から一任してくれたらしい。
「彼らは人生をかけてここにやって来てくれている。受け入れ側も中途半端なことができないですよ。もちろん本気で村を変えていこうとしているけど、彼らの本気度が半端ないんですよね。それにみんなが突き動かされている。一番影響を受けているうちのひとりですよ、僕も。」
役場を後にし、再び合掌造りのある集落へ。
案内をしてくれたのは、今年4月から着任した大倉さん。

大倉さんがこれから移り住んで活用するという、合掌造り家屋を見せてもらった。
合掌造り家屋への移住や活用は、景観を保存するために制定された3原則「売らない・貸さない・壊さない」を乗り越えた動きとして、村内で静かに注目されている。
「合掌造りに関することは規制が厳しいですけど、それ以外で僕らが新たにはじめることを、村の人は割と受け入れてくれます。」
「ただ、全員がそうかというと、違う。きっといろんなことを言われているだろうし、思われているはず。でも、それを気にして動けないんじゃ、村民と同じなんですよ。気にしないことです。」
もちろん、利己的に物事を進めていくわけではなく、一番は地域やそこに住む人たちのため、そして自分たちも楽しめるようなことを企画していく。
だから応援してくれる人がいる。
「地域のため、村民のため、生活のため。サラリーマン時代に比べてプロジェクトのゴールがすごくポジティブなんですよね。ワクワクする未来を常に考えながら、面白い課題解決とアクションに浸かり続けたい。自分たちでいろいろつくりあげられるところにすごく魅力があります。」

「いろんなプロジェクトが動いているけど、うまくいかないこともいっぱいあって。だから打ち込むサイクルは早いです。立ち止まらず、やり続けないと。」
そんな話を聞いていると、大倉さんたちは協力隊というより、ここで事業を起こすベンチャー企業のように見えてくる。
そう伝えると、協力隊のイメージ像を変えたいと、大倉さんは強く話してくれた。
「都会で夢破れて地域に来るとか、歯を食いしばって涙を流しながら『地域をおこします!』とか。続かないし、それを見た人が自分もやりたいと思うだろうか。」
「そうじゃなくて、キャリアアップとしての協力隊。ここでの出来事は、困難なスタートアップに近い仕事なので、スキルを磨けて経験も蓄積される。自分の働き方・生き方をレベルアップするための選択肢にできないかなと考えています。」
最後に話をうかがったのは、柴原さん。
“移住コンシェルジュ”として、空き家対策と村の南部地区の活性化を担当している。
自身も空き家を買い取り、改修をしている。移り住んだ家族と一緒に、そこに住みながらコミュニティカフェを運営する予定だという。

地域へ飛び込むことを決意し、退職。そのとき、たまたまgreenz.jpで白川村の協力隊募集の文字を目にする。
「有名だから『いいじゃん!』っていうノリもあって。確信に変わったのは、ここに来て髙島さんに案内してもらったとき。眠っている資源が、宝の山に見えたんですね。」

「合掌造りがない南部地域にはスキー場、キャンプ場、掛け流しの温泉がある。村には本州で一番綺麗といわれた庄川が流れている。日本三名山“白山”の登山道もあるし、その麓には白水湖という、ものすごい絶景のポイントがある。」
「ただ発信の仕方、売り出し方が上手くないだけであって、持っているものはすごいんです。」

着任後、3人はさまざまなプロジェクトを立ち上げてきた。
ここで気になったのは、大倉さんは前職のスキルをそのまま生かして活動しているけれど、柴原さんは前職とつながりのない仕事を担っているということ。
大変なことはなかったのだろうか。
「仕事の仕方かなと思います。結果を出すためのプロセスというものが分かっている。ただそこに知識がないだけ。自分で調べたり、体験して学べば身に付いていきます。そういう意味だと、前の仕事と働き方が変わるわけじゃない。」
「経験がなくてもやればなんとかなるっていうのは、ここに来て分かったこと。なんでもやれるし、どこでも生きていけるなって自信がつきました。」

だんだんと村の様子や意識に変化が生まれてきた。それをより大きくしていくために、今回新たに隊員を募集したい。
「まだ手つかずのアイディアがたくさんあります。たとえば、農家さんと一緒に農業を盛り上げて、既存の施設を農家レストランにアップデートするとか。自然ガイドで旅行業をやるとか。まだまだ空き家はあるので、ゲストハウス事業をやってもいい。つまり道を切り開く準備ができた。」
よい素材がありつつも、それを使う術は何もないところからつくり上げていく。それを難しいと思うか、ワクワクしながら裁量広くやっていけると思えるかだと思う。
「日々状況は変わっていくなかで、いろいろ課題が見つかるし、解決法を考えたくなる。これからもっとスピード感をあげていこうとしています。」
そのために、協力隊が軸となった新しい組織を役場内に立ち上げる構想が進んでいる。
こうした協力隊主導の地方行政の構造改革は、ほかの地域でも聞いたことがない。
どんな人に来てもらいたいですか?
「田舎でスローライフを送ろうと思っている人は違うかな。苦しい過程も前向きに楽しめる仲間がいるといいですね。先に移り住んだ人間として僕らがフォローするので、ゼロスタートから汗を流すことをいとわないような人なら、技能・経験問わず歓迎します。」

白川村をもっと知りたい。協力隊になりたい。そんなふうに興味を持ってくれた方。
協力隊の3人と役場の髙島さん、そして白川村の美味しい食材を使った料理と一緒にお待ちしています。
(2014/12/4 森田曜光)