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何気なく使っている物。何気なく出会う出来事。その全てにつくり手のメッセージがあり、「温度」がある。
でも、「温度」がそのまま受け手に伝わるとは限らない。まずは「温度」を知ることから、同じ「温度」になることから。
目黒区青葉台にある、プランニングデザインオフィス、サーモメーター株式会社。
ここには、企画・制作、ブランディングからイベント企画、書籍まで様々な仕事をする人たちがいます。
共通するのは、クライアントの持つ「モノ」と「コト」の『温度』を丁寧に受け手に、響かせ、伝えようという想い。
今回は、同じ想いを持って働いてくれる人を探しています。
まずは、サーモメーターの「温度」を知って欲しいと思います。
中目黒駅から歩いて7分。
桜並木の目黒川から一本入ると、器を販売している路面店。オフィス併設したこの場所もサーモメーターの事業の一つです。

暖かみを感じる木の机に案内されると、目の前にお茶菓子が置かれる。長方形の木の器に揃えられた茶菓子、おしぼり、お茶。
なんだか、ホッと落ち着く。

そう言って、迎えてくれたのはサーモメーター代表取締役の山本加容(やまもと かよ)さん。笑顔の可愛らしい、柔らかい物腰の方です。

「もともと起業するような性格の人間でもないですし、結構、流れに身を任せてきた結果が、今です。」と山本さん。
この会社を立ち上げるまでの経緯を伺う。
大学は家庭科。食品学、服飾学、住居学、児童学など幅広く学んで卒業。インテリアスタイリストの岩立通子さんに憧れて、会員制のアパートを管理する不動産会社に就職した。
「最初の会社では、手書きのポスターをつくったり、予算をもらってイベントの企画・運営もやったり。ただ、インテリアに関わる仕事は会員向けのお部屋のコーディネートなんですけど、ご紹介できるカーテンや家具の種類がすごく少なくて、インテリア雑貨の会社に転職しました。その後は転々と。」
転職先は小さな会社。企画はもちろん、店舗スタッフや裏方など様々な業務を経験したそう。
その後、VMD(ヴィジュアルマーチャンダイジング)に関心を持ち始め、夜は専門学校に通って、本格的な勉強を始め、VMDプランとスタイリングの会社を経て、独立。アートディレクターを目指した。
そんな中、現在一緒にやっている取締役の方と意気投合し、サーモメーターを立ち上げたそう。
話を聞いていると、山本さんは転々と様々な仕事を経験しながら、自分のこだわりを生かせる仕事を探しているように思える。サーモメーターでの仕事はどういう感じなのだろう?
「直でクライアントと繋がれない仕事は一旦全てお断りしました。あとは、友だちの仕事に応えたり。気づいたら徹夜ばかりなのに、今月3万円の請求書しか出せない、ということも(笑)。そうしていく中で、タダはヤメよう!とか、何回か仕事を整理しながらやってきました。」
いろいろ苦労もあったようだけれど、友だちとの仕事も含めて、クライアントの顔の見える働き方を一貫して大切にされているように思う。

一緒に。
「はい、一緒に悩んで。こっちから提案したり、相手から引き出したりもするので、時間はすごいかかるんですけどね。」
象徴的な仕事として、メリヤス草履のMËRIというブランディングの仕事について教えてもらった。
元々はトレーナーや靴下などのリブを作っている繊維会社が、業績不振を打破したいということで、余った端切れ布でオリジナルのプロダクトを作った。
それが青森の職人さんの協力を得た草履型のルームシューズ。
相談の段階では、具体的なところはなく、ただ、この商品をどうやって売っていけば良いか悩んでいるとのこと。
まずは話を聞くことから。
「布草履は『和』の印象だね。どうしようか。」
「ちょっと垢抜けないね。」
「作りは丁寧なんだけどなぁ。」
他愛のない会話のキャッチボールからはじまった。そして、誰かが突然「東北と北欧に共通点がある」と口にしたとき、みんなで「これだ!」となったそうだ。

どんなときも、まずは、話を聞くところから。
「メールやお電話で『とりあえずお見積もりだけ』と相談を受けても、会ってお話を聞くところを必ず設けます」と山本さん。
話を聞く中で、相談とは違う提案を出すこともあるそう。お見積もりまでは何度でも無料だそうだ。
でも、そんなふうに相談乗っていたら、人がたくさん来ちゃうんじゃないですか?
「はい。なので、こんな人紹介してよー、みたいな人もいっぱいいますし、全然うちの仕事じゃなく。じゃあ、こんな人いるよー、みたいなこともありますよ。」と笑って話す山本さん。

目の前の人の最適が見つかるように柔軟な姿勢で関わっていく。
このあり方は、サーモメーターに感じる柔らかで魅力的なデザインワークの源泉なのかもしれない。
次に、デザイン会社、広告制作を経て、7年前に入社したディレクターの山城由(やましろ ゆい)さんにもお話を伺う。
山城さんはどういった経緯で、サーモメーターに?

直接クライアントとやりとりする会社は他にもあると思いますけど、どうしてサーモメーターに?
「一つ目は、規模が小さいところです。自分の声も通って、一緒につくりあげていけるような規模かなぁ、と。あと、女性社長っていうのはちょっと惹かれた部分かもしれないですね。柔らかい発想があるんじゃないか、と。」
募集する職種の一つはディレクター職。新しく入る方は山城さんと同じポジションになる。
この仕事のやりがいってどんなところでしょうか?
「うちは、中小企業や個人のお客さまが多いです。なので、代理店とかに比べると単価が少し低めで、その分、たくさんの仕事が同時進行しているのが大変という面があります。だけど、やる気がある人はどんどん仕事がもらえるし、自分で提案もできます。なので、自分次第、というところがやりがいかもしれないです。」
成果物のクオリティは基本的に代表の山本さんがチェックすることはない。
スケジュールの交渉権も含めて、ディレクター一人ひとりに任せられている。
来た仕事も必ず受けなければいけないわけではない。場合によってはこちらから代案を出すこともできる。
数は多いが、ひとつひとつの仕事を、やるやらない、こうならやる、というところからちゃんと任せてもらえる。
最後にグラフィックデザイナーとして働く小寺練(こでら れん)さんに話も伺う。

1年ほど勉強したのち、地元のデザイン事務所を転々としていたが、東京に比べクリエイティブの仕事が少ないこともあって、4年前に上京を決意。
少人数でつくっていけて、一人ひとりがタダの駒じゃなく、主になって、作品づくりに関われるデザイン会社を探して、サーモメーターにたどりついた。
実際入ってみてどうでした?
「結構自分次第だな、と。僕、東京出て来たとき、手取り足取り教えてもらえるかなぁ、って甘ちゃんの考えでいたんですよね。『小寺くん、ここはこういう感じでいったほうがいいよ』みたいな(笑)。まぁ、そういう感じではないです。一緒につくっていくって感じではありますけど。」
一緒に。
「はい。突き詰める感じで。」
突き詰める。
デザインなので言葉で表現するのは難しいと思いますが、どんな感じなんでしょう?
「デザインって正解がないと思っていて、だから、見た人がいいんじゃないって言えばオッケーだと思うんですけど、自分たちの中でもっとこうした方が、さらによくなるんじゃないか、とか。どんどん近づけていく感じで『突き詰める』。」
今回はディレクターと並行して、デザイナーも募集している。
自分次第。ただ、それは一人でやるということではない。自分の仕事に責任を持ちながら、仲間と一緒に「突き詰める」のがサーモメーターのデザイン。

新しく入る方は、どんな方がいいんだろう?
あらためて、山本さんに伺っていく。
「色んなことをやっているので、『デザイン』という言葉を狭く捉えずに色んな意味で一緒に考えてくれるような人がいいなぁ。」
「あと、今、『温度が伝わる食卓』っていうのをテーマに会社として色々動いているので、食の分野に興味があって、美味しいものを食べることが好きな人だったらいいなぁって感じです。」

「広告で賞を取りたいって方は合わないかもしれません。お客さまがかっこいいものより和むものを望んでいる場合もありますし、凝った新しい技術よりも、削ぎ落としたシンプルさを求めるお客様も非常に多いです。」
「クライアントのビジネスの悩みや問題をデザインの力で解決していくことが大事なので、書体とか、デザインの表象の部分だけで、こだわりたい、極めたいという方だったり、仕事で自分の作品をつくろうとするような方だと、多分、いきなり山城さんに鼻をへし折られると思います。(笑)」
ディレクターの方は今、デザイナーの方でもいいそう。
「まずは働きながら、サーモメーターのやり方を見てもらうところからはじめてもいい。ディレクタープレ、みたいなカタチで入ってくる人でも。」
最後に山城さんと小寺さん。
「自分でどんどん吸収して勉強して、チャンスをもぎ取ってやっていく人が向いているような気がします。仕事はいっぱいありますよ。それに幅も広いです。」
「特にブランドづくりは楽しいです。ネーミングからロゴから、全て一からつくる。それも、自分の意見を言ったりして、いろいろコミュニケーションしながらです。カタチになったものを見たときはやりがいを感じます。」
まずは、サーモメーターの「温度」を感じてみるところから。
ホッとするお茶菓子が待っています。
(2014/12/12 中岡晃也)