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大量生産、大量消費が当たり前な中で、一人ひとりの必要に寄り添って封筒づくりに取り組む会社が東京の早稲田にあります。
「手元に届いて、開くまで、受け取った人にワクワクしてもらいたい。」
そんな想いを持って、60年もの間、依頼主の希望に応えながら封筒をつくりつづけています。
封筒の企画から製造・販売までを行う株式会社 太陽堂封筒。
今回はここで営業を担当する人を募集します。
話を聞いていくと、どうやら「営業」という言葉では言い表せない仕事になりそうです。
クライアントの想いを丁寧に聞いて、まだここにないカタチをつくっていく、そんな仕事に興味のある方はぜひ読んでみてください。

東京メトロ早稲田駅から3分ほど歩いたところにある4階建てのビルが太陽堂封筒本社です。
インターホンを押して中に入り、エレベーターで4階へ。
エレベーターのボタンを見ると、地下1階から2階までの3フロアが「factory」、3階と4階には「office」と書かれている。
工場と事務所が一緒になっているんだ。おもしろい。
エレベーターが4階に到着すると、そこには大きな無垢の机。それを取り囲むように椅子が並んだダイニングとキッチン。打合せをしたり、ランチタイムはみんなでお弁当を食べる場所なんだそうだ。
迎えてくれたのは、太陽堂封筒の代表の吉澤和江さん。

60年前、吉澤さんの父親が神田川沿いに創業。ところが伊勢湾台風で被災してしまった。災害を避けるために、高台にある早稲田の地に移ってきたのだそう。
「継ぐ気なんてまったくなかったんですよ。」
ハツラツとそう言う吉澤さん。継ぐまではどんなお仕事を?
「わたし、飛行機の客室乗務員になりたかったんですよ。内定とったんですけど、結石になっちゃって。それで地上勤務になるよって言われたので辞めたんです。どうしようか考えているときに大学に行ったら、大日本印刷の求人があったんで『あ、これだったら、ウチで封筒やっているし、知っているからいいや』ってすぐに入社したんですよ。」
大日本印刷は太陽堂封筒のクライアントでもあった。家業が封筒屋さんということもあって、自然と封筒部署に配属された。
「働いていると、『これ、太陽堂封筒に行く封筒だな』というようにすぐわかる。そうやって自然と封筒づくりの大きな流れがわかっていったんです。」
流れ。

業界全体を見渡すことで、家業の立ち位置に気づいていった吉澤さん。あらためて、封筒には様々なニーズがあることに気づく。
一人ひとりのクライアントに最適な封筒をご提案する「別注封筒」の価値に気づいたんだそう。
大日本印刷は2年で退職し、結婚、出産を経て、太陽堂封筒に入社した。経営手腕が父親に認められて、13年前に代表に就任した。
あらためて、この会社の魅力について聞いてみる。
「印刷業界に入って、それまで自分の会社をただ『小さい会社』であるとしかみていなかった。価値も感じられなかったんですね。だけど、わたしは今、すごく価値があると思っているんですよ。こんなに工場と営業が隣接しているからこそ、クライアントの細かい要望まで応えることができる。」
「それにウチの会社ってみんなすごく仲いいんですよ」

お互いの顔が見える中での封筒づくり。吉澤さんは「それが、すごく安心する」と言う。
安心。それはモノづくりをする環境においてとても大切なことだと思う。
太陽堂封筒は、直接依頼主の要望を受け、一つ一つ別注で封筒をつくっている。
毎回依頼主に寄り添って、0からつくっていくからこそ、営業の持つ新しい封筒のイメージと、工場で働く人たちが持つできあがりのイメージの違いは業務に大きな影響を与える。
顔の見える環境だと、その違いを少なくできるし、もし違っていても、その場で細やかに確認・修正していける。

次に、営業部部長の池田孝治さんに話を聞く。
池田さんの前職は証券会社。
初めて吉澤さんに会ったとき、バリバリの証券アナリストだった。
「お客さんになってもらって、300万預けてもらったんですよ。それで100万ぐらい儲かったのかな?」

退職後、転職や大学院進学など考えていた。
そんな中、吉澤さんから「ウチに来ちゃいなよ」と誘われた。
「普通に生活していても、封筒がどうやって作られていて、いくらで売られているかなんてわからないじゃないですか。それに、そもそも印刷会社についてなんにも知らなかった。」
それなのに、どうして太陽堂封筒に?
「実は、もともと家業が浅草橋のカバン職人なんです。」
「職人さんって、毎朝出て来て、ものづくりして、一杯吞んで、銭湯入って帰るみたいな生活スタイルを送っている。そんな人間的な部分がある。私は、ものづくりしている人たちが好きだったんですよ。それで、彼らが幸せに会社にきて、良い顔しながら仕事するっていう場を提供したいなって思ったんです。」
なるほど、そうだったんだ。そうして、入社したのが10年前。
池田さんは、今、職人さんの働く場を支えている。

「まず、最初に担当するのが、再販です。わたしたちは消耗品をつくっているので、すでにかたちができていて、無くなったから注文がくるという繰り返しの仕事が6割から7割あるんですよ。あとは、デザインの調整や変更の仕事が2割くらい。残りが新規で2割くらいなのかな。」
再販6割、デザイン変更が2割、新規が2割。
「なので、まずは、再販の仕事をやりながら、1年ぐらいやっていくと、1000点は扱うことになります。1000点ぐらいやるとだいたい覚えるよね。」
1000点、そんなに?それだけやって、何を覚えるんですか?
「1000点やると、どこにリスクが潜んでいるかいろいろとわかってきます。難しい仕様があったり、目を配る必要のある現場だとか、この場合は作業指示書に備考欄で赤マジックをつけるとか、電話一本入れるとか…そういうポイントを押さえないと、お客さんが求めているものと違うものがあがってきた、ということに陥りやすくなる。」
「でも『営業」って本当は提案型なんです。提案をしていきながら、ニーズを汲み取って、仕事取ってくるのが、営業だと思うんです。」
最近は、CI(コーポレート・アイデンティティ)を込めた封筒をつくりたいというように、単に発注されたものを大量につくるのではなくて、依頼主さんと同じ目線になってイメージをかたちにしていく、そんな仕事が増えている。
新しく入る方はどんな方がいいんだろう?
「これから先、5年後、10年後と続いていくのであれば、自分たちで会社をつくっていかないといけない。そして、太陽堂封筒は一緒につくっていける会社だと思いますので、そういった人に入って欲しいです。」
うんうん。職能的にはどうでしょう?
「デザインとかクリエイティブ思考な子とかIT系に強い子とか。自分の強みってなんだ?っていうのをつくっている途中の子でもいいかな。」
これから、太陽堂封筒は、相手のニーズを汲み取って、新しい封筒をデザインする仕事が増えていく。1000点以上の様々な封筒に触れた経験を元に、一つひとつに寄り添ってつくっていくことになると思います。
最後に、4年前に入社した営業部の太田智さんに話を伺った。
早速ですが、どうして太田さんは太陽堂封筒に入ったんですか?

実際、働きはじめてみて、どうですか?
「最初は、仕事がない、と言うか、みなさん忙しくされていて、つきっきりで教えてもらうことがどうしてもできませんでした。なので、自分で何ができるか探しながら、教えてもらったことを確実にやっていきました。」
どんな人がいいでしょうか。
「私もそうだったんですけど、教えてもらう時間がなかったりするので、自分から積極的に動いてくれる人だったらいいかなぁ、と思います。」
最後に池田さんと吉澤さん。
「日本は紙の種類や彩りがたくさんあります。いろんなギミック、フォント、デザインを活かして、いかに相手に伝えるか。そういうことをつくりこめるところがおもしろいと思います。」と池田さん。
「いま、お金だけを考えるんじゃなくて、“モノ”をつくりたいって思っている人がたくさんいると思うんですよ。それにはそういう場がないとできない。そんな一緒にできる場所を提供できたらいいなと思っています。」と吉澤さん。

ビルの外にはあいかわらず水蒸気の出る音と機械音。
一人ひとりに寄り添った封筒を、きっと今もつくりつづけている。
(2014/12/02 中岡晃也)