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ノベルティを知っていますか?身近なところでいうと、駅前で配っているポケットティッシュもノベルティのひとつ。
企業が自社や商品の宣伝として、ロゴマークなどを入れて無料配布する記念品のことです。

そして、そんなノベルティをつくっているのがフロンティアジャパンという会社だと思う。
ノベルティでもらえるものといったらプラスチック製品が多いイメージがあるけれど、この会社がつくっているのは、森林を間引くときにできる「間伐材」を使った木製品。
レーザー加工機で形を切り出したキーホルダーや、携帯スタンドなどの構造物。それから、木の繊維を織り込んだ布製品まで。木目や香り、風合いなど、素材の良さがそのまま楽しめるような商品たち。
ノベルティグッズをつくる会社は沢山あるけれど、国産の間伐材にこだわってつくっているところは珍しい。

Illustrator、Photoshopなどソフトの基本的な操作ができる人であれば、木製品のデザイン経験がなくても、先輩デザイナーや工場の人たちが木の特性を一から教えてくれるそうだから、大丈夫。
むしろ、平面のイラストやデザインなどもできる人だと嬉しい。企業のキャラクターのアレンジやオリジナルのイラストを頼まれることもあれば、商品に同封する台紙や説明書のグラフィックを手がけることもある。
商品はパッケージから説明書の文章まで全て社内で手がけているそうだ。

フロンティアジャパンのオフィスは、清澄白河駅から歩いて10分ほど。すぐ目の前に隅田川が流れる丸八倉庫の一角にある。
会社の入口が分からずにしばらく迷ってしまったけれど、作業着姿の男性に尋ねたらすぐに分かった。
階段を上がりオフィスへ伺うと、ふだん打ち合わせや会議などに使っているという部屋に案内された。

壁に沿ってフロンティアジャパンのこれまで手がけてきた商品たちが並んでいる。真ん中の机や椅子も木の素材でできている。それから、出されたお茶のコースターまで木製だった。
木の香りに包まれながらしばらく待っていると、この会社を立ち上げた代表の額賀(ぬかが)さんが現れた。
「木のぬくもりがいいね、落ち着くねって、お客さんに言ってもらえるんです。木の温度って、人の手の温かさと同じなんですよ。人と人が握手していると安心するように、触れていると安心する。それに木材って天然素材なので、燃やしても害はないし環境にもいいんです。」
そうした木そのものの魅力にデザインがともなって人の手に渡ることで、企業のCSRや宣伝効果にも繋がる。
そんな間伐材を使ったノベルティづくりは、どんなきっかけではじまったのだろう。

もともとノベルティと物流に関わる仕事をしてきた額賀さん。自身もサーフィンやスノーボードなどアウトドアのスポーツが好きだったことから、自然に関心があった。
調べていくうちに、間伐材のことを知る。
「間伐材って、あまり聞き慣れない言葉ですよね。植林した木を間引くことを間伐といいます。間引くことによって光が地表にふりそそいで元気な森をつくることができる。そして、そのときに伐採した木のことを間伐材といいます。」
問題は、間伐して森を手入れできる人が減っているということ。
海外から輸入される安価な外来材の流通によって、日本の林業は衰退しつつある。もし、間伐材を有効に利用する方法があれば、林業に携わる方たちも収益を得ることができる。それによって、日本の森が守られる。

ひとつひとつの商品には、日本の森を守ろうというメッセージが込められている。
そんな商品をつくっていくデザイナーとしてどんな人に来てほしいか、額賀さんに聞いてみた。
「アイデアマンですかね。この世代の人だったらこういうもの欲しがるだろうなとか、自分では買わないけどこれ貰ったら嬉しいだろうなとか、考えられる人。そして、それを図面に起こしてどんどん形にしていける人。」

雑貨屋を巡るのが好きなら、それもきっと仕事に生かせる。
「こういうことしたいって言われて、それがいいと思ったら、やってみればって。自分でいうのもなんですけど、けっこう自由で居心地のいい社風だと思います。」
そんな環境で働くデザイナーのおふたりにも話を聞いてみた。野口さんと井上さん。
野口さんは、もともと木の素材に興味があり、大学は木工専攻のある美術大学を選んだ。卒業後は、携帯電話の周辺機器やプロジェクターなどを作る工業製品のデザインをしていたそうだ。

働いてみてどうでしたか?
「有機物が相手だから面白いですよね。木目の方向とか、ヤニが出てしまうとか、木の特性があるから。心入れがあるというか、メカチックなものをつくるよりも面白いです。」
たとえば動物の形をつくるとき、細い足の部分の木目が横目だと折れやすくなってしまう。デザインを考える上で、そこまで想像しないといけない。

職人さんは、気難しいというより気さくでフレンドリーな方が多い。実際に手を動かしている立場から、色々アドバイスをくれる頼もしい存在。電話や直接工場に足を運びながらやりとりしている。
そのほか、自分で発泡スチロールで模型をつくったり、レーザー加工機を使って試作することもある。

そんなふうに、木のものづくりをしている野口さんに対して、井上さんは、主にグッズに同封する台紙やカレンダーなどのグラフィックデザインを担当している。

よくみると、間伐材を使ったものづくりをしていると書いてあった。
「学生時代に課外授業で、実際に自分たちで間伐をして間伐材を使って子供の遊具をつくるという授業に参加したことがあったんです。あ、間伐したことあるなって。やってきたことが生きるかもしれないと思って応募しました。」
ウェブ担当として入ったけれど、グラフィックデザインや商品づくりも手伝うようになった。

それから、井上さんがこんな話をしてくれた。
「デザインの仕事って、つくればつくるほどゴミを生み出してしまうというところで苦しくなってしまう人もいると思うんです。でも、ここでつくっているものは、つくればつくるほど森を豊かにするので。そう思うと、つくっていても苦しくないんです。楽しいです。」

「製造過程で出た端材は、江東区の銭湯に無償で提供しています。お風呂屋さんの燃料になるんですよ。」
こうして話を聞いていると、ここならではのデザインの魅力が沢山あるように思う。
「話したらいっぱいでてくるね。会社がひのきの香りなのも、毎日のことだと当たり前になっちゃうけど。」
ふたりにも聞いてみた。ここで働く人として、どんな人に来てほしいですか?
「今はかわいらしいデザインが多いので、もっとわたしたちに無い視点を持った方がいたらバランスがいいのかな。」と野口さん。
「アウトドアが好きな人。木に関わる仕事だし、森や自然が好きな人がいいです。」と井上さん。
おふたりと話していると、なんだか心地よいゆったり感がある。
それは、のんびりした会社という意味とはちょっと違う。実際には、常に10個以上の案件を抱えているそうだ。
でも、そんななかでも自分に納得いくやり方を見つける時間、これでいいのかなと思ったときに立ち止まれる時間を、ちゃんと持っているように感じた。
きっと人との関係や仕事を通して矛盾が少ない職場なのだろうな。

「ありがたいことに、売り上げが年々上昇しています。ぼくらはボランティア団体ではなく会社なので、社会貢献というだけではなくちゃんと収益につながることを考えていきたいと思っています。その結果として社会に役立つのが理想。それを一緒にやっていきたいという人にきてほしいです。」
ここでしかできないことが沢山あると思う。ぜひ、仲間に加わってください。
(2015/01/22 笠原ナナコ)