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よくお店の入口にかかっているテント。今回はあれをつくっている三鷹テントという会社の紹介です。場所は名前のとおり三鷹にある。社員は3名。「地域にある小さなテント屋さん?」
そんなイメージもありますが、そうではないんです。
とにかくテントでお客さんは何を実現したいか、とことん考える。まだお客さんの頭にないイメージまでつくってしまう。ときにはファサードや内装にまで仕事が及ぶことも。

三鷹テントではテントのデザインを中心に働くスタッフを募集しています。
中央線三鷹駅。南側のロータリーに降りると、菊地さんが車で迎えに来てくれた。
「ちょっと遠いので、車のほうがいいんですよ」とのこと。
5分ほど車に乗っていると、住宅街の中にある事務所に到着した。

名取さんは、戦後に住み込みでおじさんのやっているテント屋さんで働いてから独立されたそうだ。
まずは名取さんに当時のお話を聞いてみる。
「どんな商売か全然知らなかったんですよ。でも東京に出たくて。もともとは長野の諏訪の育ち。実家は農家をやっていました。それで16歳のときに上京しました。当時は教えてもらうよりも、見ておぼえろ、ということで。足掛け17年働いたのかな。おじさんに負けないくらいになって独立して、10年目に会社にしました。今期は44期目です。」

さらにタバコ屋さんの仕事を受けるようになり、事業も安定していたそうだ。
ところが、平成12年ころから流れは変わってくる。まとまった仕事は減り、特定の顧客に特化していたので、時代の変化にあまり対応できなかった。
しばらくして菊地さんが入社することになった。
「菊地はわれわれの考え方と違っていて、お客さんが大事、人が大事。はじめはわたしも今までと違うやり方に戸惑い、抵抗しましたが、今はそれをやらなきゃだめだということがわかってきました。たとえば、仕事に行っても、近所に迷惑を絶対にかけない、という信念をもってやっていましたから。」
すると菊地さん。
「テントの仕事は車で行かなきゃいけないから、迷惑になるようだったら駐車場に入れる。ご近所さんが迷惑に思うことは、オーナーさんに迷惑をかけるということですからね。私はそう考えます。」

どんな仕事をしてきたのか聞いてみる。
「大学受験に失敗して、デザイン関係の専門学校に入り、店舗をつくる会社にはいりました。本当はインテリアデザインの会社に内定がでていたんですけど、ぎりぎりになって来期の売上が想定を下回るということで断られた。それで探し回っていたら、荒川区のガード下にある会社でデザイナーを募集していたんですよ。」
入社したのは店舗の内装をつくる会社だった。
とても面白い人が働いていたけれども、今で言えば「ブラック企業」だった。初日から徹夜して、わからないことばかり。とにかく必死で働いた。会社は儲かっていたけれど、負担が大きすぎた。
そんなときに実家から手伝って欲しい、という話があった。
「実家は家具屋だったんですよ。実の父親がやっている会社でして。気持ちが揺らいでいるときだったので、辞める口実になった。」
既製品の家具もつくる会社だったが、担当したのは特注部門。たとえば携帯電話のお店の家具や病室の家具などをつくっていたそうだ。
「そこで15年働いたのですが、いろいろあって。いるのがいやになったんですよ。」
いやになった?
「既製品部門はなかなか利益がでなかったので、特注部門でがんばっていた。それでも利益率も低いし、難しかった。同じ努力をするなら、ちゃんと成果がほしかったんです。それで退職しました。」
ところがリーマンショックがあり、就職できるところはほとんどなかった。家族もいるので、報酬に妥協はできない。
「それで奥さんのお父さんの会社に入ることになった。テントをやりたいとは思っていなかったんですよ。とはいえ、家族を食べさせるためにがけっぷちだった。」

「入社した5年前は、今よりも仕事が少なかったです。現在の20%くらい。だからまずはホームページをつくりました。お金はかけられないから自分でつくって。さらにリスティング広告をだしてみた。当時はそんなことをしている会社は少なかったので、ネットからの問い合わせが増えました。」
前職と違ったことってなんですか?
「もともと家具の特注部門を担当していたので、お客様の要望を形にしていく仕事の流れは変わらないけれども、直接ユーザーさんと会うのが大きな違い。」
建築や店舗内装業者の下請けというよりも、お店から直接依頼をいただくことが多い。
「そうです。そして、他社とくらべた上で、うちを選んでくれる。そんな期待に応えて満足してもらえたら嬉しいですね。」

強み?
「言われたことをそのままやるのではなくて、お客さんの要望にあったものをつくることです。そうして喜んでもらい役に立ちたいんです。」
たとえばペットのトリミングサロンから依頼があった。現状は白いテントだったけれども、大通り沿いにあるのに目立たないことを店主は気にしていたそうだ。

言われたことをそのまま受けるのではなく、面倒だから簡単なテントを提案するわけではなく、相手が本当に求めていることを探っていく。ときには「テント屋」を越えて、内装まで提案することもあるそうだ。
「面倒なことは苦にならないんですよ。今まで大変な思いをしてきたから。せっかく仕事を依頼いただくわけだから、将来もまた張り替えさせていただきたいじゃないですか。自分のためにやっているんですよ。そのためにお客さまのことを考えている。」
「あとは差別化も必要ですね。そのひとつがデザインだと思うんです。その仕事が、次の仕事につながっていくと思っているので。今はホームページを見て『ここならおしゃれなテントの提案してくれるのでは』と思って依頼いただくことが増えています。」

センスがいい人が入ったら、面白そうだ。お客さんの要望をかなえるためなら「テント」という概念を超えてしまっていいと思う。
「やりようによっては面白い仕事がつくれると思いますよ。本当にまだデザインというものが意識されていない業界なので。機能だけのテントの需要は減っていくように感じますが、お店を飾る、家を飾るテントはまだ可能性があると思うんです。」

そして斜陽産業と言われていても、まだまだ新しいことができる。むしろ後継者がいないところが多いので、競合他社は減っていくかもしれない。それに利益率は低くないとのこと。
具体的な仕事内容についても聞いてみる。
「問い合わせがあれば、時間をかけずに対応します。ウェブからの依頼って、早く対応しないと、ほかに流れちゃいますから。それにできる限り、直接伺って話を聞くようにします。」
「依頼があったらイメージをつくります。Photoshopで合成してね。同じ規模の会社で、イメージ画像をつくるところはあまりないですよ。形が決まったフレーム、キャンバスなどの製作図をCADで製作する。ロゴがあれば、お客さんからデータをいただいてバランス良くレイアウトします。ない場合はこちらでデータ製作することも。そして約束の日までに施工をする。最初から最後までの仕事です。」
会社には鎌倉さんという職人さんがいるので、テントの縫製は内製化しているそうだ。ただ、施工するのに人数が必要なときは、現場を手伝うことも。そのときは汚れてしまうこともあるかもしれない。

「そんなことないですよ。積算は簡単です。項目が少ないですから。」
「あとは早朝出勤、定時には終わらないことも多々あります。ただ、効率よくその日の業務をクリア出来れば早く帰っていいとも思っていますよ。」
どういう人がいいですか?
「こうしてあげたほうがいいな、と思うことをしてあげられる人。そういう人がちゃんと仕事をとってきます。あとは失敗を何回もしてきた人がいい。そのほうが絶対に強いですから。」
最後にこれからどうしていきたいのか、菊地さんに聞いてみる。
「店舗や個人邸のデザイン性の高いテントを提案していきたいし、それがうちの方向性かなと思っている。できれば外装もやっていきたい。今は余裕がないから受けられないけど、テント以外の相談も増えている。新しく入ってきた人によって、新しい仕事も生まれるかもしれません。」
「小さな世界ですけど、面白いですよ。いろいろな人と会えますからね。下請けじゃなく、対等に。そして独立をしてもいい。力をつけてもらいたいし、私はそうなるようにしたい。」

とことん、テントをやりたい方。ご連絡お待ちしています。
(2015/1/27 ナカムラケンタ)