※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
今回は普通の求人とは違います。新しく日本仕事百貨がはじめる「しごとゼミ」の受講者の募集です。しごとゼミはいろいろな分野のプロフェッショナルとともに、既存プロジェクトの実績を惜しげもなくケーススタディしながら、受講生が新規プロジェクトの企画提案をする少数によるゼミナール形式の実践型スクールです。
ゼミ主宰者は新しい企画のアイデアを一緒につくることを目的にしながら、一緒に働ける人との出会いも期待しています。受講者は生きた知識を得るとともに、いい会社なら働く機会も得られるかもしれません。働かない人であっても、もちろん講師は本気で教えます。
これから新規事業ゼミやPRゼミなどが立ち上がる予定ですが、今回は先行スタートする「不動産経営ゼミ」の募集です。
もし「場づくりに興味があるけれども、どこからはじめたらいいかわからない」という方だったらぜひ読んでください。
たとえば、自分の場所づくりをしたいとか、家業の大家や不動産を継ぎたいとか、将来独立したいとか。
バリューレイズの石田さんが、知識や経験を共有するとともに、具体的な物件を通して、場所のシナリオづくりについて教えてくれます。
ちょっとでも興味があればぜひ読んでみてください。

中に入ると、窓の外を眺めることができる机の並び。シンプルな空間で居心地がいい。
主な仕事としては、いろいろな物件の運営をしながら、オーナーさんの様々な相談に乗るようなもの。とくに石田さんが強いのは「困った物件」だ。
まずは石田さんに、なぜこの会社をはじめることになったのか人生を振り返ってもらった。実はぼくのサラリーマン時代の大先輩。現在も公私ともどもお世話になっている方だ。
あらためて話を聞いてみると、バブル崩壊から現在に至る、日本の現代史の真っ只中を駆け巡ってきた人なんだな、と思った。
まずは大学生のときの就職活動までさかのぼる。まだバブルが崩壊する前のこと。
「もともと大学卒業するときから、社会人になったらできるだけ早く独立しちゃおうって思ってたんです。建築学科卒業だったので、できればそれが多少生かせる業種だったらいいなとは思ってた。それで不動産の会社に入った。でも不動産じゃなくても全然よかった。どっちかっていうと、商売している実感があるとか、商売の仕組みが分かる、そういうところに入りたいと思って。」

会社の大変動にも巻き込まれて、出向先に転籍となる。不動産を整理して売却していく「処理部隊」に入って、あらゆることを担当することになった。
それが落ち着いたときに時間もできたので、新しいことをはじめることになった。
「そのときに、自分の中でエポックメイキングな案件に出会った。先代の社長が石炭屋さんだった方なんだけれど、はじめはある土地をどうにかしたい、っていう相談だった。最初はその物件だけシミュレーションしてたんだけど、そのときはまだ小僧だよ。4、5年生。ろくに話もきいてくれなかった。」
それでも一緒に相撲を見ながらお茶を飲んだりしていると、だんだん心をひらいてくれた。それで所有している不動産を見てみると、どれも借金だらけだった。
「あるとき『銀行がお金を返せって言ってきて、ひどいよね』って話になって。永遠に利息だけ支払うことを考えていたから返せないって。それでよく調べてみたら、約定どおりに返済すると3年以内に会社がつぶれてしまうことがわかった。それからめちゃくちゃ焦るようになった。」
もう貸しはがしがはじまっていたのですか?
「まだそれは本格化してない。97年がひとつの転機だったけれども、94、5年はすこしずつ融資を引き上げる傾向だった。それであるとき散歩がてらに、隅田川沿いにある駐車場も所有していることを教えてくれた。そしたらそこの眺めがすばらしくて。」
「でも細長い土地だから、普通に考えたらすべての部屋が川に面することができない。それじゃ意味がないからって、自分で設計してメゾネットがあるような物件を描いて設計事務所に送ったの。そしたら向こうも本気になって徹夜で考えてくれて。結局そのプラン通りの建物が今、建っている。」

そのあとも、時代の流れとともに様々なプロジェクトを担当した。「信託化」とか「ノンリコースローン」など、今では当たり前になった言葉にも出会った。まだほとんど誰も知らないような時代だった。
さらに当時の竹中平蔵大臣の金融再生プログラムがはじまり、金融機関の不良債権を半分にしなくてはならなくなった。そして、「不良債権処理の特命部隊」に入ることになる。さらに外資系証券会社とともにアセットマネジメントを担当するようになった。
「すべて契約書とか英語だった。なんとなくファンドのことが分かったような気になっていたけれど、考えている深度が全然違うことに気づいた。」
その後、会社を辞めて独立することになる。
今は主に中小ビルオーナーを相手にする仕事をしている。はじめからそういうような仕事のイメージはあったのか聞いてみると「ない」との答え。
「辞めることを先に決めた。なんとかなると思っていたから。ただ、全くノープランだった訳じゃないよ。丁寧にコンサルティングしていけば、それは意味のあることだし、商売になるだろうと。でもコンサルって、資産を有効活用して売るとかしないとお金にならないし、そこを狙っている人っていっぱいいるんだよね。」
大きな会社から、アドバイザーにならないか、という打診もあった。
「でも、それって歯がゆい。」
歯がゆい?
「自分で案件コントロールできないもん。つまり、ある程度『シナリオ』は決まっている。サラリーマン時代より窮屈なんだよね。『なんのために辞めたんだろ』みたいな。ようは自分の体を切り売りしてくれってことだから。しかも保証もないし。」

でもそういうときって、何かを呼び寄せる。2件立て続けにビルの運営の依頼がやってきた。
「大きくて300坪くらいのビル。はじめは物件見て、どん引きするわけですよ。でもね、そのときに声かけられた物件って、今仕事している物件の中だったら、一番ピカピカだね。今だったら楽勝すぎて二つ返事で受けている。」
あまり大きくないビルでは、まだまだ旧来のビジネススタイルで、真面目にやっている人たちがいないことに気がついた。そういう物件のオーナーには、ほかにも同じような物件を持っている人がいる。きっかけがあれば、いろいろなチャンスにつながることが分かった。

まさに隅田川の物件のときのような感じですね。
「そう。ここに勝機があることがわかったから、もっとやってみようと考えたの。それでオーナーがどんなことを必要としているのか確認してみたら、何よりも求められているのが『空室対策』だった。」
それは理屈ではわかるのですけど、どうやったら入居者を増やすことができるんですか。簡単なことではないですよね。
「いい質問だね。これは俺の持論なんだけど、打点を取るには打席数×打率だと思っている。打率はもちろん高い方がいい。なんだけど、打率って急にはあがらない。ただ、打席数を増やすことはできる。」
「とくに大切なことは、適切な賃料を考えること。今ネットで物件を探す人が増えているんだ。それなのに、そもそも高めに賃料を出しておいて、交渉されたら下げればいいやっていう大家さんが多いんだよね。でもそれって、ネットで値段の絞り込み検索とかされて、1円でも高かったら表示されない。存在しないのと同じになってしまう。」

ほかにも実にユニークな方法がある。たとえば、借り手が見つからないビルで、内装をきれいにする前に、アーティストの作品発表の場にすることも。
直接、入居者が見つかることにつながるかは分からないけれど、普通に内覧会をするより物件をおぼえてくれたりするそうだ。
石田さんが面白いのは、固いところから柔らかいところまで、いろんなことができるということ。

ずっと大企業に勤めて何かのプロフェッショナルになっても、街にあるような不動産屋さんで働いていても、こういうふうにあらゆる領域を横断して仕事をすることは難しいかもしれない。ちょうどいい、面白い働き方なんです。
こんなことを勉強する機会です。少人数で勉強しながら、具体的な物件をもとに最適なシナリオづくりをしていきます。
ちゃんと事業として継続するものを組み立てながら、実際にどんなシナリオにするかは自由。
石田さんはシナリオの引き出しもたくさんあるから、とりあえずシェアオフィスとかドミトリーなどにするような、最近のよくあるパターンに落ち着くわけでもない。もちろん、最終的に固い提案になることもあるだろうけど、そういったこともできると強いと思う。

焼き畑的なものですからね。
「こういう言葉がいいかわからないけど、金にこだわってくれっていうよりは、どれくらいのことを成したかって話だから。」
働くように学ぶ、いい機会になると思います。日本仕事百貨のナカムラケンタもゼミに参加しますよ。
(2015/1/16 ナカムラケンタ)