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庭のある生活ってどんなものだろう。春になって瑞々しい若葉をみつけて季節を感じたり、咲いている花をみながら自然と会話が生まれたり。
庭には、人が集まる時間を増やしたり、そこで過ごす人たちの時間を豊かにする役目があるように感じます。
庭づくりを通して、人々が気持ちよく過ごせる空間や時間をつくっていく。それがC.プランツの仕事。
今回はお客さまと対話をしながら庭づくりをしていくガーデンデザイナーを募集します。
自然や、ものづくりが好きな人は、ぜひ読んでみてください。
愛媛・松山空港から特急電車で1時間30分。水の都と呼ばれ、四国最高峰の石鎚山を望む愛媛県・西条市。
ここにC.プランツのギャラリーや事務所があります。
さまざまや木々や花に囲まれた庭のあるギャラリー。会社というより、友人の家におじゃましたような暖かみのある空間。
C.プランツの手掛ける仕事は、西条市と今治市周辺が中心。庭づくりのみならず、カーポートや、テラス、庭のリフォームなど、建物の外の空間にかかわる仕事をしています。
ひとことに『庭』といっても、どういった庭をつくっているのだろう。
代表の森さんに、お話を伺います。
「わたしたちは、日本の在来種で、消毒などされない自然の山の中で育った木をつかって庭を造っています。」
消毒などされず、自然の中で育った木のことを“山採りの木”というそう。
まちの街路樹でみる木とは雰囲気が明らかに違い、幹も細身で、背が高い。
そして日本の在来種にこだわった庭づくりをしています。カブトムシなどが集まるクヌギの木や、どんぐりが実るコナラの木など。たくさんの在来種の木があるそうだ。
「在来種を植えると虫が600種類くらいくるんです。けれど、外来種を植えると20、30種類の虫しか来ません。」
それだけ聞くと外来種の方がいいように思えてしまう。虫がたくさんくると葉っぱを食べられたり、枯れてしまう印象があるから。在来種での庭づくりをしているのはなぜなのでしょうか。
「虫がいると、それを食べるために鳥が来ますよね。鳥は1日400匹の虫を食べると言われています。虫がいて、鳥がそれを食べて糞を落としていく。そうすることで庭が循環して、豊かな環境ができます。消毒してしまうと、虫もこなければ、鳥もこない。」
「そうなってくると、定期的に消毒をしたり、わざわざ栄養剤をまかないといけなくなります。食ったり食われたりの関係があるからこそ、薬をつかわなくていい。わたしたちは、循環型の庭をつくりたいんです。」
「こういう自然は子どもにとってはたくさんの学びの場にもなりますし、お年寄りには、日々の楽しみになると思っています。」
C.プランツで扱っている山採りの木は、主に九州地方から運ばれている。それも、庭をつくるためにわざわざ伐採するのではなくて、間伐のタイミングで間引かれた木を仕入れている。
山の環境を壊さないようにしながらの庭づくり。
山の中で育った木は、まわりの木々に負けないように太陽を求めて、背が高く伸びるそう。その木を庭の中にもってくると、人の視界に枝が入ることもなく、空間を大きく感じさせる効果があります。
こういった自然の木々をつかった庭づくりをしている会社は、四国の中でも珍しい。
「すべての庭でできるわけではないですが、里山のような庭をつくっていこうと思っています。庭において、どこか一つが主役になるのではなくて、全体でひとつというような。」
森さんは、どういうきっかけでこの会社をはじめたのですか。
「以前つとめていた会社の中で、庭の事業をはじめたんです。単純にカタログから選んで、ものを右から左へ販売するということだけだと、思うような仕事ができませんでした。達成感も薄く、もちろん利益にも結び着きませんでした。そこで、カタログの中から選んで配置する、という物販中心のところから、考えて提案するという、ものづくりの視点をいれた庭づくりをはじめさせてもらったんです。」
その事業を6年ほど続け、自分で会社をつくってやってみようという思い独立をします。そして会社は18年目。
ガーデンデザイナーが森さんを含め4名、実際手を動かして庭をつくる職人さんが5名。
スタッフも長く働いている方が多く、10年以上ここで働いている人も多くいます。
独立した当初は住宅メーカーの注文を受ける仕事も多かったそうだけれど、現在はお客さまから問い合わせを受けて、直接話をしながらの庭づくりが中心。
「巨大な資本のメーカーだと、どうしても決まった形からしか庭づくりができなくなってしまうところがあります。たとえば、この土地の形だと、ここはカーポートですよ、洗濯物を干すところですよ、というように。そしてそれに沿ってカタログから選んでいく。」
「そういうことではなくて、どう風を吹かすかや、どう気持ちよくそこに居られるようにするか考えるところから庭や空間をつくりたいんですね。」
それを実現するために、素材だけでなく、その場所にしかない自然の力も取り入れた庭づくりをしています。
「たとえば、ここには多孔質の溶岩石をおいています。」
溶岩石とは、表面に無数の穴があいているのため、他の石よりも水を多く吸うことができる石。
「そして、奥の木の塀は、他の住宅を隠しているように見えますが、全部覆い隠さず足下はあけています。あの塀があることで、風が地面に向かって吹くようになるんです。この流れをつくると、溶岩石に含まれて冷やされた水が風とともに家の中へ入ってきて部屋の温度を下げることができるんです。夏場は気持ちがいいですよ。」
これからの季節は、外で食事をしたら気持ち良さそうだし、季節の変化を身近に感じられると、家で過ごす時間がより好きになる。パッケージやプランから入らないからこそ実現できる空間なのだと思う。
まずは、自分たちがどういう暮らしがしたいのか話をするところから。そして、できるだけ自然のものをつかい、そこにある土地の力をうまく活かして庭をつくる。それがC.プランツの庭づくり。
それを実現するために分業ではなく、担当者が打ち合わせから、デザイン、資材の発注、現場の立ち会いなど、一貫しておこなっています。
ガーデンデザイナーとして働いている高橋さんにも話をうかがいます。最初は無口な方なのかと思ったけど、伝えたい言葉をひとつひとつ選びながら話しをしてくれる姿が印象的な方。
高橋さんは愛媛出身。東京の美術大学を卒業後、C.プランツに入社した。
どうしてこの会社で働こうと思ったのでしょうか。
「もともと緑が好きだったので興味をもちました。見学に来たとき、庭にたくさん緑があったのをみて、何も知らない分野だけれど、これから勉強できるんだな、という気持ちになりました。それまでは、絵をずっと描いてきていたので、全く新しい世界に来たという感じでした。」
ガーデンデザイナーはどういう仕事をしているのですか。
「まず、お客さまに簡単なアンケートを書いていただいて、それからどんなお庭を希望されているのかお聞きしていきます。そして、一度お家におじゃまして、図面があれば、それをもとにプランをつくっていきます。」
プランづくりの方法は、入ってから教えてもらうことができます。
「打ち合わせを重ねてデザインを固めていったり、予算内に納まるか計算をしたり。それから、実際につくっていく現場がはじまります。職人さんに図面を渡して説明して、イメージの違いがある場合もあるので、自分も現場に立ち会って、細かい微調整をしていきます。」
図面と実際の出来上がりをすり合わせるために、『ここはもう少し高く』など、現場で確認しながら伝えていく。その職人さんもC.プランツの庭づくりをずっと支えてきてくれた職人さんばかりだそう。
そういった数ヶ月かけてお庭をつくる仕事から、ちょっとしたデッキの修理など小さな仕事も含め、いくつかの仕事を平行して進めていくことになります。
打ち合わせをするところから、庭のデザインを考え、完成を見届けるまで。プランニングするだけでなく、やることはたくさんあると思います。この仕事をはじめてなにか苦労したことはありましたか?
「入社したては、プランづくりにとても時間がかかりました。それと、お客さまにどういう風に伝えたら、自分の提案したいことがうまく伝わるのかや、お客さまとの距離の取り方がわかりませんでした。けれど、たくさんの方とお話しすることで、すこしずつ慣れていきました。」
お庭のプランニングはそれぞれのガーデンデザイナーにまかせられる。高橋さんはどんなことを大切に庭づくりをしているのですか。
「ご家族、一人ひとりの立場で考えることが多いですね。庭づくりには、デザインと機能があると思います。たとえばお庭に一番接することの多いお母さんがつかいやすいかなとか、数年後におじいちゃんが車いすになったとしても、スロープを設置できるスペースを確保できるかなど。その人たちの生活を長い目線で考えたプランを心がけています。」
趣味や、家族のライフスタイルを引き出しながら、日々の生活にうるおいを与える庭づくりをしていく。
どういう人が向いていると思いますか?
「大切なお客さまのお庭を預かることになります。人柄が一番大事だと思います。あとは自然や、植物が好きだったり、ものづくりが好きだったり、そういう人がいいですね。」
代表の森さんは、こう答えてくれました。
「仕事とはよく生きることへの手段だと考えています。仕事があるから成長していこう、できないことを越えてこうと思える。お客さまも大切なお金を払って、我々に庭をたくしてくれます。それにしっかり誠意をもって応えていける人。」
「この仕事にとって最も大切なのは、キャリアではなく、お客さま目線に立ってどれだけ考えられるかどうかだと思います。」
庭づくりを通して、自然が循環できる環境をつくっていく。そして、そこに住む人たちの時間や、ときには記憶を豊かにしていく。それがC.プランツにおける庭づくりの姿勢なのだと感じました。
(2015/03/30 吉尾萌実)