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地域発のブランドを育てる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

高松港に面した北浜アリー地区。古い倉庫が立ち並ぶエリアに、カフェ「umie」と「デザインラボラトリー蒼」があります。

このスペースを運営するデザイン事務所が、以前にも登場したドリームネットワークアクティビティー(D.N.A)です。今回の募集は事務所スタッフと、新規に外部クリエイターのパートナー。カフェスタッフも同時募集します。

umie 高松という地方都市に根ざしつつも、デザインという仕事を通じて国内や海外に視野を広げる、D.N.A

クライアントになるのは、仕事ぶりを店舗や商品、雑誌やポスター、街角や展示会で見て訪ねてくる人で、県外からもやってくる。くわえて既存の顧客の口コミによる紹介もあり、営業をしないスタイルを過去15年間つらぬいてきた。

きっとデザインフィーも県下では高価かもしれない。

「だけど適正価格だと思うし、満足度の高いデザインとともに、仕事への向き合い方に共感してくださっているはず」とタバコをくゆらせながら語るのは、代表の柳沢高文さん。

「デザインワークだけじゃなくて。コンセプト提案、仕組みづくり、集客やイベント企画を通じて、『強いブランドづくり』を目指しているんです。」

ディレクター兼カフェオーナーの柳沢さんは、普段はシャイでもの静かな人。ときに歯に衣着せぬ発言は、お客さんへの愛情表現だ。

新しいデザインのあり方を自ら模索してきた実体験を、クライアントにもフィードバック。地元B級グルメや甘いものが大好きな一面もある。

オフィスを訪れるとスタッフミーティングが行われていた。

meeting 左から、中村 望さん。佐々木麻美さん。柳沢さん。ディレクターの川井知子さん。庄井亜希子さん。さらに高見真貴子さんを加えて、現在のD.N.Aのメンバーです。

2年前の記事を見て入社したのが佐々木さんだ。前職は文具店の店員。転職した当時、まだ新人の顔だったのを思い出す。

久しぶりに会ったいま、すっかりデザイナーとしての自信に満ちていた。「鍛えられたと思います」と言う彼女は、愛媛出身。いまは近くにお気に入りのワンルームを借りて、自転車で通勤している。

どんなデザインをしていきたいですか?

「たとえば広告の仕事の場合だと、売上に還元されるものをつくりたいと思います。意味をなすデザインというのかな。ここではお客さんとの距離が近いので、仕事の反響がわかりやすいです。」

ほかのふたりにも同じ質問をした。

「長く残るものをつくっていきたい」(庄井さん)、「人とまちを動かすようなデザインをしたい」(中村さん)と即答。自分の仕事について、よく考えている言葉が返ってきた。細かい仕事もあるだろうけれど、やりがいのある仕事も多く任されているのだと思う。

柳沢さんが持つ、確かなデザインへの視線。それがD.N.Aの軸になって、とことんクオリティを追求する企業姿勢になっている。

ミーティング中も、umieのパティシエが新作デザートのチェックを受けに、柳沢さんのもとへやって来た。

ただ、柳沢さんは日本全国を飛び回るため、不在時も多いのがネック。スタッフには、どのように指示しているのだろう。

「自分で考えて、まずつくる。そこからまた考える。スタッフにもその繰り返しを経験してほしいし、失敗を繰り返すことで壁を越えられると思います。」

仕事のフィールドは、高松だけではないんですね?

「高松から、僕らを飛び越して成長するクライアントもたくさん出てきました。彼らと一緒にコトをおこしたり、お互いに商品を売り合ったり、ノウハウを伝授し合ったり、異業種の輪をつくれたらうれしいです。」

外の世界へつながっていくクライアントたち。柳沢さんと一緒に会いに行って、D.N.Aをどう見ているかを聞いてみることにした。

最初に向かったのは、高松市郊外の「ガーデンズ」。

ガーデンデザイナーの宮本里美さんが主宰する、庭づくりのセンスとノウハウを伝えるオフィスとはもう8年の付きあいだ。柳沢さんにとってはクライアントというよりも「同士」のような会社だという。

「いいものをご存知だから、厳しいお客さん。ヘンなものを出したら絶対ダメと言われる。こういう会社へ打ち合わせに来れるような人材がほしいですね。」

gardens 最初の仕事はホームページ制作の依頼だった。それまで何社かに頼んだものの、どうもイメージと違うと宮本さんは感じたそうだ。東京の会社と打ち合わせすることも考えたが、知人の紹介でD.N.Aを知ることになる。

どんなところが良かったのか、宮本さんに聞いてみる。

miyamoto 「でき上がったデザインに情熱がこもっている感じがしました。私も本からインスピレーションを得ることが多いですが、柳沢さんも本オタク。お会いしたら情報交換できるのがうれしいです。」

その後、ガーデンズ10周年を記念した本をD.N.Aと企画して出版。会社案内ではなく、宮本さん自身のことについても描くことにした。彼女が5年間書きためたブログがあったからだ。

「自分の思っていることを表現してもらうだけでなく、それ以上のものを出してくれると感動しますよね。」

book 撮影とアートディレションは柳沢さん、編集とコピーライティングは川井さんが担当。全国規模のガーデンショーで販売したこの本は、初版1,000冊がすぐにはけて、さらに2,000冊を増刷した。

「本の力ってスゴい。普通はその場で会った印象だけで終わるけど、私の頭の中が伝わる。この本を見た方が、高松まで来てくれていますから。」

現在は、高松だけではなく宮崎、静岡、芦屋、横浜で活動。個人の住宅から始まった仕事は、やがて大きな施設につながり、いまでは公的な場でも活動する。洋書からインスピレーションを得て、海外への視察にもすぐ飛ぶことも。

「会社ができて14年目。私たちも変わっていきたい。」

そのためのブランディングを、D.N.Aと取り組みはじめたところだ。

多くのクライアントと長く関わるD.N.Aだが、新しい出会いも生まれている。

愛媛県今治市の工房織座は、100年前の織り機を復元してストールなどの織物を生産するメーカー。武田英里子さんが立ち上げた新しいブランド「kobooriza」をD.N.Aがサポートしている。

kobo きっかけは元タオルメーカーに勤めていた武田さんのお父さんが、ある日、庭に1台の織り機を設置したことだった。

武田さんがD.N.Aに仕事を頼むきっかけは、なんでしたか?

takeda 「私たちのものづくりは身の回りで完結しているので、できればデザインも愛媛、四国の地元でやりたいというのがあったんです。ネットで検索したり、地域デザインの本を見て探しながら、面白そうな会社だと連絡したのが最初ですね。」

もともと北浜アリーには行ったことがあったという。

「カフェもやっていて、商品のデザインもやっている。そういった環境も含めていいなと思いました。隣りの県だから私たちの地元のこともわかっていただけるでしょうし、新しい風を吹かせてくれるのを期待しました。」

2月上旬、東京ギフトショー2015でお披露目されたkobooriza。ブースのデザインを担当したのもD.N.A.だ。柳沢さんと川井さんも現場に立ち会った。

giftshow 「私たちにない感性を提案していていただいているので、これまでとは違った見せかたができると思っています」と武田さん。

最後に会ったのは、鹿庭弘百さん。2010年に代表理事として一般社団法人「街角に音楽を@香川」を立ち上げた。現役のドラム奏者でもある。

kaniwa 鹿庭さんの実家は、高松育ちの柳沢さんが憧れた老舗バッグメーカー。だが、次男の鹿庭さんは兄に家業を継いでもらうつもりで、高校生から上京。東京の大手レコード会社に就職して活躍中に、お兄さんが急逝する。

「僕が40歳のとき、高松に戻りました。友だちも東京にいるし、当時はよく東京の夢を見るくらい、帰りたくてしょうがなかったです。でも、地元で新しいことをはじめると、心が通じる人たちができてくるんですね。」

青い海の風景と音楽が響きあう風景を「MUSIC BLUE」のコンセプトで表現。まちなかで大道芸やライブなどを仕かけてきた。単なるイベントではなく、ひと続きの継続した活動を意識するとき、D.N.Aのデザインが活躍した。

「夜に愛犬の散歩をしがてら、umieでデザインの打ち合わせをします。お願いしたデザインをただ制作してもらうのではなく、気持ちの入ったものをつくっていただけるのがスゴくありがたいです。」

「有機的に人と人が関わって同じ方向へ行くためには、デザインって大きいと思います。よくポスターを見て『センスがいいね』と言われますが、自分たちが伝えたいことをよくわかってくれているデザインだからだと思うんです。こうした仕事は自然と世界へ伝わっていくんですよ。」

poster 「左が、海外から招いているミュージシャン、マリーナショウの公演ポスター。これを彼女たちに見せるのが楽しみです。」

D.N.Aはカフェでライブもたくさんやっていて、メジャーなシーンで活躍するミュージシャンともつながりがある。

求めるデザイナー像も「都会から地方に移住して、外との関係を切って」という人よりは「ここからどんどん外とつながっていけるような人」だ。

5周年を迎える「街角に音楽をフェスティバル」は、5月4日と5日で開催される。制作物もそろそろ佳境に入るころだ。

concert 柳沢さんが取材中に語った希望の人材像で、印象的な言葉があった。

1つは「感覚的に世界を知っている人、たとえ現地に行かなくても感覚がわかる人」。クライアント同様、情報のアンテナはローカルにだけでなく、広く世界に張っておく必要がある職場だ。

もう1つは「仕事に情熱をかけられる人」。これは、ただ時間をかけるという意味ではない。「心をかけないといいデザインは生まれない。」柳沢さんはそう信じている。

こうした言葉に共感して「ここで働いてみたい」「外部のパートナーとして一緒に仕事をしてみたい」という方の応募を待っています。

(2015/3/3 神吉弘邦)