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「大地震が起きてピンチになったらどうするか。救急車を呼ぼうとか、親戚に連絡して助けてもらおうとか、なんとかなると思うかもしれない。でも実際はインフラが途絶える。建物の下敷きになったら、近所の人に助けてもらうしかないんです。」
そんな話を聞いて、思わずぎょっとしてしまった。
近所の人をあまり知らないし、備えている食料は気休め程度。
防災減災、人々の無縁化、子育て、お年寄りの生きがいの創出と見守り….
HITOTOWAは都市部におけるさまざまな課題の解決に取り組む会社。
CSR・CSVコンサルティングとネイバーフットデザイン、そしてソーシャルフットボール。その3つの事業を軸に展開しています。
今回募集するのは、ネイバーフットデザインを手掛けるプロジェクトマネージャー。
企業や行政と組み、集合住宅を舞台に、近隣住民同士の信頼関係づくりを通じて人と人のつながりをデザインする仕事です。
これからの社会に必要とされる新しいコミュニティのつくり方。
インターンスタッフも募集するので、学生の方でも興味があったらぜひ読んでみてください。
東京・目黒にあるコワーキングスペースHub Tokyo。
多くの起業家が集まるこの場で、HITOTOWAのみなさんも働いています。
扉を開けると、迎えてくれたのはHITOTOWA代表の荒さんと、スタッフの高村さん。
荒さんは一見かっちりしたような雰囲気があるけれど、冗談を交えながら楽しく話してくれるような人。それに合わせて、高村さんは満面の笑みを見せてくれる。
HITOTOWAの正社員メンバーはこのふたりのみ。だけど、多くのフリーランスやほかの会社の人と協力してプロジェクトを進めることが多く、多様な人と一緒に仕事をする機会があるようです。
荒さんたちが手掛けるのは、企業のCSR・CSVコンサルティングやネイバーフットデザイン。
どんなことをする仕事なのだろう。はじめにそう聞いてみると「なかなか分かりづらい事業なんですよね」と荒さん。
会社を立ち上げたのは2010年。荒さんが30歳になったのを機に独立したという。
「はじめは旅館でもやろうかなと。お宿“人と和”とかいい感じじゃないですか(笑)。趣味で日本の田舎を旅していたし、自然との共生と地域再生に興味があって。」
「ゆくゆくは自給自足のエコヴィレッジみたいなのをつくれたらいいなと思っていたんです。でも仕事として考えたときに、自分の強みはそこじゃないなというのと、宿は自分でやるより泊まるほうがいいなと思った(笑)。それでも、いろんな事業計画を立てたけど、やりたいのは人と和のために仕事をすることだなって思って”HITOTOWA”という社名は残しました。」
そんななか東日本大震災が起こる。荒さんが起業してから3ヶ月後のことだった。
「本当にショックだったんですが、震災復興関係で会う人たちの刺激を受けたり、被災した地域で活躍されている人たちの姿を見て、自分の役割は都市部にあるなと思いました。自分には前職でのCSRコンサルのスキルとか、首都圏のネットワークがある。」
はじめはCSRのスキルを活かしながら震災復興のお手伝いをしているうちに、だんだんと住宅会社との仕事が増えていった。
都市部のマンション住民のコミュニティをつくり、次なる災害に備える防災減災や子育て、環境などのさまざまな問題を解決することで、商品価値を高めると同時に住民の満足も高める。
マンションのコミュニティづくりの案件が増えていくなかで、大きな需要を感じたという。
「もともと前職時代にやっていたことではあったんですが、依頼があってさらにやっていくうちに、マンションコミュニティってその建物を軸にすることは大事なんだけど、建物内で完結する必要はまったくないなと思って。たとえば子育ても防災も、マンション内と地域両方の住民に関わること。それを内包するキーワードとして、ネイバーフッドデザイン事業と名付けました。」
ネイバーフッドデザインでは、住宅会社にはコンサルティングを、住民にはイベントまたはワークショップを行なう。
案件の規模は様々で、ワークショップだけを手掛けることもあれば、防災を学べるカルタのようなワークショップツールをつくったり、集合住宅の商品企画から携わることもある。
たとえば西新宿のタワーマンション。大手デベロッパーから依頼を受け、商品企画から携わった大きな案件だ。
荒さんが提案したのは、「西新宿CLASS in the Forest」というエリアコミュニティプログラム。
タワーマンションのなかに地域住民も参加できる学校のような場をつくることで、ライフスタイルを学びながら人々が繋がり、生活の豊かさを共有できるというコンセプトだ。
CLASSには『暮らす』と人が集まって学ぶという『クラス』の2つの意味が込められている。
「木造密集エリアで、震災に備えて建替えようということで住民の方々が20年前から開発を進めてきた地域なんです。もともとの地域のコミュニティを守っていきたいし、新しい人たちが入ってくるなかでより良い21世紀にふさわしいコミュニティのある住まいにしていきたいと、住民の人たちもデベロッパーも考えていました。」
いろんな想いもアイデアもあるけれど、どう形にしていけばいいのか分からない。そこでまとめ役になって提案してほしいとHITOTOWAに依頼があったそうだ。
「いろんなアイデアが拡散していたのを自然・防災・多様性の3つに絞って。でも言葉じゃ分かりにくいので、人と自然とコミュニティに触れ合って支えあって広がっていくという、年輪のように育っていくイメージをつくって。受け身じゃなくてライフスタイルを学びながら、育まれていくようなものをつくりましょうと、仲間とともにご提案しました。」
具体的には、ライフスタイルのナビゲーターとして6人の専門家を呼び、住民たちの活動をサポートする体制をつくった。
今後は住民が主体になって、イベントが企画・開催されることを期待しているという。
ネイバーフットデザインの仕事はクライアントからの要望を聞くのはもちろん、地域住民や住居の購入を検討している人にどんなまちにしていきたいか、聞き出すことからはじまる。
「僕らの感覚でいうと、ハード面ではなくてコミュニティ面のDIYだと思っていて。ただ、僕らの勝手な提案ではなくて、おおまかなライフスタイル像を提案しつつ、どうしていきたいかを住民の方々と一緒に形にしていくプロセスですね。」
きっと住宅業界やコンサルティング業界の経験がある人でも、これまでと違った仕事の仕方が求められると思う。
一人ひとりに寄りつつも、まち全体に向けて提案する。
「まちによっていろんな課題や要望があります。それを僕らが押し付けるんじゃなくて、引き出しながらビジョンをつくっていく。ただどんな意見も詰め込むというわけではなく、大枠はつくったなかで固めていく。なぜなら僕らは、防災、子育て、高齢化、環境など社会課題の解決がいちばん大事だと思っているので。」
「ゴール設定が重要です。何のためにワークショップで集まっているのか。それが僕らとクライアント、そして住民の方々に共通認識があるのとないのとでは、結果が全然違ってくる。それをつくりあげるために、きちんとアンケートを取ったりヒアリングしていくなかで、僕らが考えていることと釣り合わせていく感じですね。」
現在、ネイバーフットデザインをメソッド化していて、さらに広く展開していくという。
だけど、社会環境の問題は地域によってさまざま。メソッドが確立されても、形に当てはめて提案できるような仕事ではない。
「仕事に慣れるのに時間がかかるとは思うけど、メソッドを踏襲しながらであれば、打ち合わせから企画、現場まで一貫してひとりでできるようになるはずです。そのためにも自立した考え方ができる人に来てもらいたいですね。」
「あとは僕らの理念やビジョンに共感してくれて、人と話すのが好きとか。高村は住民のなかに入っていくのが得意なんじゃないかな。彼はぐいぐい入っていくのではなく、いじられキャラとして君臨する絶妙な技を持っていて(笑)」
そう振られて「最近、いじられてなんぼかなと思うようになりました(笑)」と高村さん。
高村さんは荒さんと同じNPOで活動していた経験があり、10年前からの知り合いだったという。
昨年、建設会社からHITOTOWAへ転職した。
NPOで担当していたイベント運営の経験を活かし、はじめはワークショップやイベントなどの現場仕事をしていた。
いまはだんだんと企画の仕事にも携わっているという。
「ワークショップはやること自体が目的じゃなくて、やることによって住民の人が自分たちもこんなことができるとか、次回はこんなふうに改善しようとか、気づいたりモチベーションがあがることが大切です。」
「そんな反応が会話やアンケート結果で出てくると、着火材になれたんじゃないかなってうれしく思います。そこが一番のやりがいなのかな。」
高村さんは前職でも住宅関係の仕事に関わっていた。その経験はいまの仕事でも活きたのだろうか。
「共通言語が分かるという意味では。でもやることはまったくはじめてです。多様な関係者の中心にいる役割なので、主体的じゃないと。たくさんの人たちをフォローしながらも、引っ張っていくというか。」
まとめるというより、引っ張っていく。
「そうですね。モチベートしていくのはすごく重要。防災や人の無縁化の問題って、日常的には考えないこと。それを、大変だから行動しましょうと、動機付けをしなきゃいけなくて。そういう意味では先導していくところはありますね。」
次にフリーランスとしてHITOTOWAと多くの仕事を一緒にしている、吉高さんにも加わって話をしていただきます。
吉高さんはネイバーフットデザインの中で、主に防災・減災についてアプローチする「Community Crossing Japan」というプロジェクトを担当している。
「彼女はプレゼンがすごく上手いんですよ」と荒さん。
実際、終わったあとに拍手したくなるほどのプレゼンを披露してくれた。内容は高層マンションの防災プロジェクトについて。
「こういう提案も、世界初なんじゃないかなって思いながらやるのがすごく楽しいです。高層マンションでこんなことを考えるのは自分がはじめてだって。」
そんなふうに素敵な笑顔で話してくれる吉高さん。でも、新しいがゆえに大変なこともあるという。
「やっぱり新しいことを生み出すとなるとアイデアを求められるんです。誰に聞いても正解がない。自分で勉強しながら、何が正しいか迷ったら、また一からコンセプトに戻って考えなきゃいけない。固定概念を一度取り外して考えることが大切だと思います。」
それを聞いて「確かにすごく勉強は求めるかな」と荒さん。
「僕らの掲げている目標はけっこう高くて。防災、子育て、高齢社会、環境、経済。どんなことも常に勉強です。スキルとしてもコンサルティング、ファシリテーション、ディレクション、マネジメント、広報、企画営業などが必要。」
でも、すべてにおいて100点ではなく、70点くらいでも十分だという。なぜならHITOTOWAはプロデューサー、ディレクター的役割を担って、各分野のプロと一緒に仕事をしていくから。
とはいえプロたちとコミュニケーションするために、共通言語が必要なのだそうだ。
300戸規模のマンションの大型案件をはじめ、ネイバーフットデザイン事業の仕事が増えている。
これからもっと世の中に求められていくと思う。そのなかでHITOTOWAは先駆者として道を切り開いていく。
「子育ても防災も人の無縁化も、東京の人口が減っていく2020年前半くらいまでに成果を出さないと、本当にまずいという危機感があります。でも逆にうまく行けば課題先進国として世界に誇れるまちがつくれると思う。その中心でやっていけるのは大きなチャンスだと思って、HITOTOWAに来てほしいです。」
インターンを考えている人にも本当にいい機会だと思います。
以前参加した学生インターンの提案が通り、実際に進行している「Neighbors Next U26 Project」というプロジェクトがあるそうです。
チャンスだと思った方は、ぜひ応募してください。
(2015/3/23 森田曜光)