求人 NEW

暮らしにねざしたツーリズム

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

岐阜・郡上八幡から約1時間ほど車を走らせる。峠を越えると見えてくるのは、まるで日本昔話に出てきそうな雪の山里。

それが、人口250人の集落である石徹白(いとしろ)です。

1

「限りある資源を使って、自分の生活をつくっていくのが大事になっていくんじゃないかな。日本人がもともと持ってる力や生きる知恵が、石徹白にはあるんです。」

そんな言葉どおり、昔ながらのくらしを大事にしている石徹白。集落には食堂やスーパーはなく、長い冬を過ごすための知恵として、それぞれのおうちでは保存食を作っています。

今回募集するのは、石徹白地域づくり協議会で地域おこし支援隊として、アウトドア型・体験型ツーリズムを推進していく人。気になった方はぜひ読んでみてください。

2

取材に訪れたのは2月中旬。最初にお邪魔したのは、石徹白土建。

この会社を営んでいるのが、地域のアニキ分だという石徹白秀也(いとしろひでなり)さんだ。地域おこし協力隊のメンバーは、ここのオフィスに机を借りていて、何か困りごとが起きたら相談もしている。

「この会社を創業したのは、僕のおじいさんです。昭和26年からはじめて、自分が3代目。僕は次男坊なんで跡取りでもないし、戻って来る必要のない人間だったもんでね。うちの父親母親も、戻って来いなんて一言も言ってない。ここに僕の人生を切り開いていくという感覚で、自分で勝手に戻ってきた。」

3

秀也さんは石徹白生まれ。名古屋の大学に行ったものの、卒業後は石徹白に戻って働きはじめた。

「名古屋とか東京とか、都会で充実した人生を歩もうと思ったら、大変な努力と才能がいると思うし、すごい人数の中で競争に勝っていかなあかん。でもね、石徹白という小さな地域に一人の若者が戻ってくることは、それだけで目立つし、地域の人はインパクトを感じるんですよ。そのほうが、すごい面白い人生が歩めるんじゃないかと思ったんだよね。」

それは秀也さんだけでなく、Iターンにも通ずる話かもしれない。

「自らがやることによって、その地域の一翼を担うような人生を歩みたいんですよ。だから、役割を担えるところは断らず全部やりましょう、という感覚なんです。」

秀也さんは、石徹白のどんな所を魅力に感じて、戻ってきたんだろう。

「住んでいる人の心かな。こういう山深いところに何百年、何千年と人が住み続けたという歴史が、住んでる人の心をつくっている。昔からね、山には神様がいて、信仰の対象だった。雪も深くてきびしい土地だけれど、白山信仰というものに裏打ちされて、ずっとここを守ってきたんだよね。」

4

石徹白が、こんな地域になっていったらいいな。そんな想いを語ってくれた。

「現状くらいの人口がずっと持続していって、若いもんがここに根付いて、子どもを産んで育てていける地域。それまでつなげてきた伝統的な文化が、次世代へとつながっていける地域。簡単な話のようで、ここが一番難しいんだけどね。」

今、石徹白の人口は250人。少しずつ減っているそうだ。

「ここに住みたいという地域になるには、何かをしていかなければならないし、何を残していかなければいけないのか、考えてやっていく必要がある。」

「新たなものも当然考え出していかないとならないし、伝統的なものは残していかないといけない。今までつないできたものだから。そういうことを一緒にやってくれる、地域おこし支援隊の人が来てくれるといいね。」

具体的にどういうことをやっていきたいのか、石徹白地域づくり協議会の事務局である平野(ひらの)さんにたずねてみた。

「今、石徹白には、ここで何か新しいことをしようという人たちが結構入ってきているんです。250人の集落のうちIターン者が22人いて、農業や自然エネルギー活用、洋品店などを始めている。」

5

「特にここ2、3年は、キャンプ場やツリートップアドベンチャーなど、体験型のツーリズムを始めようとしている人たちが多くて、地域全体としてもそれを促進していけたらと思っています。」

さっき秀也さんは、石徹白の魅力は人と語っていたけれど、自然も石徹白の魅力の1つ。今回は雪景色だったけど、夏の石徹白はこんな風景が広がっているそうだ。

6

「石徹白でツーリズムをやってる団体の情報をとりまとめて、外の人たちに向けて情報発信をしていくというのが大まかな役割です。」

「地域としてある程度ブランドを統一してwebやパンフレットをつくったり、お客さんの窓口になるなど、いろんなPR活動をやってもらえたらと思っています。それぞれの団体が連携できる部分もあると思うので、それらをつないだプログラムを考えていくことも必要です。」

石徹白の中の事業者さんたちをつないだり、外の人たちと石徹白をつないでいく。コーディネーターのような役割が求められるのだろうか。

「コーディネーターが基本ですが、地元の人たちと一緒に何か新しいプログラムを開発することも、あっていいと思うんです。村でふつうに暮らしている人たちと一緒に、あんまり肩肘はっていない、ここに根ざした価値観をうまくつないでいくようなツーリズムのあり方みたいなのがあるといいなあと。」

「できあがった組織の中で言われたことをやるんじゃなくて、自分でつくっていく部分が大きいですね。どこまで想像力をもって広げられるのかが、大事かもしれません。」

7

実は、平野さんも石徹白にやってきたIターン者のひとりだ。

「いま、石徹白に住みはじめて3年半ですね。もともと岐阜市出身ですが、大学から東京に出たんです。14年間、東京ではたらいていました。大学のときもまちづくりを専攻していたし、東京ではたらきながらも、岐阜のNPOやまちづくりの団体には関わっていました。」

「風の人・土の人とよく言いますけど、専門家としていろんな地域を転々としながらアドバイスするやり方よりも、どっかの地域に根ざしてやりたくて、ここに来ました。」

8

協力隊で入った人は、平野さんのもとではたらくことになる。これまで3人の地域おこし協力隊を受け入れていて、今回は4人目の募集になるそうだ。

「協力隊の任期は3年だけれど、任期が終わったあとも、石徹白に根付いてくれると嬉しいな」と、平野さんは話していた。

そして、現在協力隊として活動している加藤(かとう)さん。

彼女は、去年の仕事百貨の記事を見て、石徹白に来たそうだ。今どんな仕事をしているかを尋ねたら、トウモロコシを使った特産品を見せてくれた。

9

「石徹白では、地元の方たちが夏にあまいスイートコーンをつくるんです。その中で、虫に食われて欠けちゃったりしたコーンを買い取って、乾燥トウモロコシをつくっています。加工所で加工作業に入りながら、営業や経理もやっていますね。加工所をやっている方たちと一緒に、ゆくゆくは石徹白の他の産物も使って商品開発をしていきたいなと思っています」

そんな加藤さんは、石徹白に来る前は、エシカルジュエリーを扱うブランドで働いていたそう。

どうして、石徹白に来たんだろう。

「大学時代から国際協力にすごい興味があって、発展途上国などにも行っていて。卒業後は、名古屋で輸入雑貨を扱う会社で働きながら、フェアトレードの推進活動に関わっていました。」

「その後、会社をやめて、アフリカでエイズ孤児の支援などにも携わっています。水道も電気も通ってないところで、牛と鶏とひとつ屋根の下で暮らすような感じでしたね」

そうやって海外に関わる中で、「日本人として、違うやり方でやれることがあるかもしれない」と考え始めたそうだ。

また、消費活動が多い都会での暮らしに違和感を感じ始め、地域に入ってみたいと感じ始めたのもそのころだった。

「イギリスではじまったトランジションタウン運動も、日本の江戸時代の循環文化を参考にしているって、現地の人が話していたんです。昔の暮らし方や、日本のルーツを探っていったら、理想としている生活のあり方があるんじゃないかと思って。」

「そんなことを考えているときに、日本仕事百貨で募集を見て。地域で目指しているあり方に共感できて、ここに来たのが去年の6月です。」

10

厳しいこともあるし、ギャップもあったけれど、この8ヶ月間で石徹白が本当に好きになったと、加藤さんは笑って話してくれた。

「地域を立て直すとか再生するって生半可なことじゃないし、外から来た人がすぐ何かをできるってわけではなくて。地元の人と関係を築きながら、信頼を得ていかないとやりたいこともできないし、一足飛びにはいかないって実感しました。」

「たくさん助けて頂いたり、暖かく見守ってもらいながら、やることは自分でつくっていくという感じ。知れば知るほど、この地域は奥が深いです。いることに意味があるのかなって思い始めてますね」

いることに意味がある。

「途上国支援でよく言われることですけど、外から入った人たちが仕組みをつくって、現地の人たちが回せるようにしていかないと、結局元に戻ってしまう。ここでも、私がいなくてもできる仕組みをつくるのは、ミッションのひとつです。」

「けど、つくったら『はい、終わり』じゃないんです。関係を築きながら一緒に取り組んでいくというか、ここに暮らしてなにかやっていくのが、ここの人も望んでることだと思うし、地域にも必要なことなのかなって。」

加藤さんの関わり方は、支援ではないんだろうな。地域に根ざした暮らしの中で、自分でやることをつくって自立していく。その動きが地域の自立にもつながっていく。そんなイメージかもしれない。

11

決して便利な場所ではないけれど、だからこそ、ここにしかないものがあるのかなと思う。

地域の人たちが大切にしていることに寄り添いながら、ここにある暮らしや自然に、光をあてなおせる人におすすめです。

(2015/3/4 田村真菜)