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働く人のおよそ3人に2人が勤めている中小企業。国内企業総数の99.7%を占め、日本経済の主役でもある。
2013年10月、そんな中小企業を応援する産業支援拠点、岡崎ビジネスサポートセンター「OKa-Biz」がオープンしました。
今回募集するのは、OKa-Bizで企画広報とバックオフィスを担う企画広報コーディネーターです。
1年半前に設立されたOKa-Bizは、新しい中小企業支援モデルとして全国的に注目されています。
次のステップを考えている人にとっては、最前線で企業経営の経験を積める良いチャンスだと思います。
OKa-Bizのある愛知県岡崎市は、製造業がとても盛んなまち。
豊田の隣ということもあって自動車の下請けメーカーが多く、西三河地域の商業や産業の中心地になっている。
古くは江戸時代に、東海道五十三次で3番目に賑わう宿場町だったとか。繊維業が発達しはじめた頃には、創業した人たちがたくさんいたそう。
名鉄名古屋「東岡崎」駅を降り、すぐ北を流れる乙川を渡った後、川に沿って東海道を西へ進む。
まちを眺めながら歩いてみると、これといって栄えているエリアが見当たらない。
中心市街地はどこだろう。
そんなことを考えていると、岡崎城の大手門の向かい側に近代的な外観の図書館が見えてきた。
エントランスから入ると、すぐ右手にある市民活動総合支援センターの一角にOKa-Bizがあった。
窓口に立つとセンター長の秋元さんが迎えてくれた。
来る途中に見つからなかった、まちの中心地について聞いてみた。
「この図書館の目の前、康生というエリアが元々デパートのある場所でした。個人商店もいくつか残っているけど、今では空き店舗がいっぱいあります。」
休日の買い物はというと、電車で30分の名古屋か郊外のショッピングモールへ行く人が大半だという。
こうして地域の事業者数がだんだんと減っていくなか、2013年に岡崎市が思い切った策として出されたのが、岡崎市と商工会議所が共同で立ち上げた産業支援拠点「OKa-Biz」。
静岡県の富士市産業支援センター「f-Biz」をモデルにしている。
OKa-Bizの運営には、f-Bizセンター長の小出さんの弟子にあたる、秋元さんと髙嶋さんが抜擢された。ふたりともまだ30代半ば。業界的にはかなりの若手だ。
まずOKa-Bizをはじめる前に、岡崎市の中小企業に調査を行なったという。
すると中小企業の内実が浮かび上がってきた。
「経営者に『何が困ってる?』って聞くと、売上をアップしたいと話す方が7割くらいなんですよ。じゃあ誰に相談するかといったら税理士とか自社の経営陣、つまり身内の人です。」
「みんなは売上アップの相談をしたいのに、相談する相手がいなかった。そんななかで売上アップをテーマにやっているのがf-Bizなんですよ。」
OKa-Bizもf-Bizと同じく、売上アップをテーマにはじまった。
当面の目標相談件数は月50件。ところが蓋を開けてみると、目標の2倍以上の成果が出た。これまでの1年間で1404件の相談があったという。
これだけ人気が出るのには理由があるようだ。
「僕たちは決して上から目線のアドバイスなんてしません。1回1時間、一緒に考える姿勢でじっくり話を聞かせてもらう。本人は気づいてないんだけど『それすごく良いじゃないですか!』っていうのを聞きながら見つけていくんです。」
例えば、50年続く米屋の2代目のナガサワさんが相談に来たときのこと。
売り上げが落ち込んで、店をたたむことを考えていたそう。
話を聞いてみると、お米マイスターという資格を持っていること、岡崎の百貨店にお米を卸していることが分かった。目利きやブレンドの力は確かにある。
そこで提案したのが、地元のゆるキャラ「オカザえもん」を使ったギフトパッケージ。
客単価を上げながら新しい顧客層に対して情報発信をすることで、新たな販路をつくっていく。
ナガサワさんは何度も相談に来て、商品パッケージを自作し、ついに商品化させた。
ギフト店や駅中のコンビニなど、これまでになかった新たな販路を開拓することができ、それをきっかけに、ナカザワさんのお店へお米を買いにくる人が増えているという。
「すごく意識しているのは、帰るときは必ず相談者の人のモチベーションが上がっていること。結局やるのは本人ですからね。」
たしかに困っているときにあれこれ指摘されたら、誰でも元気がなくなってしまうもの。
相談者の話を聞き、可能性を引き出し、継続してサポートする。コンサルティングというよりコーチングに近い仕事なのかもしれない。
どんな人が相談に来ますか?
「バラバラで幅広いです。サービスや飲食などBtoCが半分。あとは製造、建設、農業、IT、NPO。すでに様々な業界の方にご利用いただいていますが、もっといろんな人に来てほしいと思っています。それが図書館の中につくっている理由なんです。」
普段は個別相談以外に、事業者向けにゲストを招いてセミナーを開くことも。
ゲストの名前を聞くと豪華な顔ぶれだった。秋元さんのネットワークから探しているそうだ。
企画広報コーディネーターの人は、セミナーの企画運営、広報、そして秋元さんらビジネスコーディネーターのアシスタントをすることになる。
だけど、期待されているのはアシスタントに終始するのではなく、数年後にはビジネスコーディネーターになること。
「アシスタントのつもりで来る方は遠慮します。f-Bizの小出さんや僕のように、ゆくゆくはフロントランナーとして仕切って戦っていく人に来てほしいです。」
どんな人が向いていると思いますか?
「ポイントになるのは、1つ目に引き出しの多さ、つまり好奇心。2つ目はコミュニケーション力、これは説得できることではなく上手く話を聞ける力です。最後に、ビジネスセンスの部分。」
ビジネスセンス、ですか。
「引き出しが多かったら上手くコーディネーションできるかというと、違う。引き出しの中で、これでしょ!って出せるかどうかはビジネスセンスに近いところがあると思います。」
「これって天性のセンスじゃないんですよ。日々仕事をしていく中で、一緒に磨いていけると思います。」
いわゆる大手のコンサル会社とは違って、相手が従業員4人のお米屋さんのような小さな事業会社だったりする。
確立した手法なんてないし、まずはじっくり話を聞いて一緒に考える。柔軟なスタンスが求められていると思う。
「あとは、どれほど情熱を持ってやれるかですね。お金のためっていうよりは志を持ってやれないと。それと、小さい会社に対してリスペクトを持って一緒に考えるっていうスタンスを持てるかどうか。」
注目度も高まり、これからますます日々の業務が忙しくなってくる。
「僕は週2日しかきてないけど、それでも1日4〜5件。年間だと約300~400件、3年やったら1000件を超えるんですよ。さらに来る人の業種業態はバラバラ。」
「それだけの中小企業の経営相談をやっていたら、平たく言えば力がつくと思うんですよね。僕自身、この1年を振り返っても、ビジネスや企画をつくる力はかなりついたと感じます。毎日が1000本ノックです。」
企画広報コーディネーターの堀部さんにも話を聞いてみた。
堀部さんは、もともと大学時代に秋元さんの運営するG-netに参画していた。
新卒で就職したのは人材紹介会社。その後は企業支援に興味があったから、名古屋でインキュベーション施設を扱う会社に転職した。
けれども、やっていくうちに歯がゆさを感じるようになったという。
「起業支援だけど、結局は箱モノを貸しているだけ。ハードではなくソフトでの支援をしていきたいと思うようになりました。」
そろそろ次のステップを考え、以前より面識のあった副センター長の髙嶋さんに相談をしてみた。
そのときOKa-Bizで人を探している話を聞き、スタッフとして加わることになった。
「はじめは誰もイメージがつかめていない状況だったので、具体的にどんな業務が発生するのかも分からない。何も想像できないなかで、走りながら考えていました。」
担当する仕事は多岐にわたり、大変なことも多い。
ひたすら事務作業をすることもあれば、セミナーの準備をしながら追われるように新規相談の予約を取ることもある。
「でも、やってみると面白いですよ。相談に来た人が笑顔で帰っていくのを見ると、自分もすごく元気になれる。」
「たまに相談者が私宛に『お客さんからこんな反応があったよ!』って報告をくれたりするんです。それは喜びの瞬間ですね。」
堀部さんは名古屋から岡崎へ引っ越したそうだ。
「お客さんから『イベントやるからおいでよ』ってお声掛けをしていただいたりするんです。仕事以上にお付き合いできる方たちがいるから、せっかくなら岡崎に住んで根を張ってやろうと思って。」
地域の人たちとそんな関係ができるのも、この仕事の醍醐味かもしれない。
「こんな感じに変わり続ける環境を楽しめる人に来てもらえればと思います。」
最後に、市役所の桑山さん(写真右)と加藤さん(写真左)に話を聞いてみた。
ふたりはOKa-Bizの発案者。
現場の環境を整えるために、裏方として秋元さんたちを支えている。
「秋元さんや髙嶋さんは、地域をなんとかしたいという強い想いを持ってる。一緒にいるだけで、間違いなく気持ちが伝染すると思うし、僕らがまさにそうなんです。」
と、桑山さん。
続けて、加藤さん。
「秋元さんや髙嶋さんたちと仕事ができることは、今後企業で活躍するにしても独立するにしてもチャンスだと思います。自分がフリーでそれなりに経験積んでいたら、やりたいくらいですね。」
2014年6月から、国の中小企業庁が「よろず支援拠点」という事業をはじめた。
これは各都道府県に1つ、f-BizやOKa-Bizをつくろうというもの。ところが、f-BizやOKa-Bizのようになかなか人材が集まっていないようだ。
なぜなら新しい中小企業の支援というものは、潤沢な予算を使うことのできる大企業へのコンサルとも異なるし、税理士や中小企業診断士のように資格があればできるものでもない。
基本的な経営や財務の知識を持ち合せながら、好奇心をもって新しいことを知ることも必要だし、ワークショップのファシリテーターのように言葉を与えるよりも引き出すことが求められている。
あとは、一つひとつの会社にどこまで寄り添えるか。
日本の多くを占めている中小企業を元気にすることは、地域を元気にしていくことでもある。
今まであまりなかった仕事。けれども、これから求められる未来の仕事だと思います。
(2015/3/19 森田曜光)