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一人ひとりに生い立ちや性格があるように、一つひとつのモノにも個性があるもの。女性誌、通信販売のカタログ、CM、TVドラマ、企業のWEBページ…
さまざまな舞台を演出する道具。
東京・参宮橋にあるのは、スタイリストの方が必要とする撮影小物をレンタルするショップ「barbie」(バルビー)。
舞台裏のプロとなる人を募集します。
新宿から小田急線に乗って3分。
参宮橋の駅前にbarbieはあります。
明治神宮への参拝路に面しており、隣はポニーと触れ合える東京乗馬倶楽部。緑の豊かなところです。
3階建てのビルには撮影用スタジオ“barbie bleau”が併設されているため、セットで利用するお客さんも多いそう。
スタジオに入ると、外観とは雰囲気ががらっと変わります。
話をうかがったのは、フリーのスタイリストでもある代表の岡本さん。
女性誌を中心に活躍されている方だ。
岡本さんがbarbieをはじめたのは、2001年のこと。
立上げの経緯をうかがう。
「スタイリストは、自分のコーディネートを実現しようと色んなお店を巡り、モノを集めていきます。撮影用の小道具がどんどん増えていくんですよ。」
満足のいくスタイリングはできても道具代がかさみ、私物も増える一方。
「当時は、ハイクラスな広告向けのレンタルショップはあっても、雑誌に掲載するような小道具のレンタルショップは珍しかったんです。それでビルの一室からbarbieをはじめました。」
岡本さんと同じ悩みを抱えるスタイリストは少なくなかった。
お客さんは次第に増え、部屋数も倉庫や事務所含め6部屋にまで増えていく。
それも手狭になってきた2010年、現在の場所へと移転した。
barbieという名前は、フランスの小さな村バルビゾンに由来する。フランスは、商品の仕入れなどで訪れることがあるという。
そんなbarbieは会員制のショップ。
訪れるのはインテリアやファッション、フードなどの第一線で活躍するスタイリストの方たち。
「限られた時間のなかで、スタイリングを実現していきます。『まずは吉祥寺に行って、次に自由が丘を見て… 』と雑貨店やアンティークショップを探し歩く余裕がありません。barbieは『ここに行けば一通りのものが揃えられる』という場所を目指しています。」
ここで店内をのぞいてみる。
撮影現場を舞台とすれば、barbieは小道具を揃える舞台裏。
日焼けを防ぐため、照明を抑えた店内には、ところ狭しとモノが並べられている。
フラワーベース、オブジェ、フォトフレーム、洋書、ステーショナリーといった小物から、布や家具まで。棚はジャンルごとに分類されている。
店内のレイアウトは、お客さんに向けたプレゼンテーションでもある。季節やトレンドに合わせて変えていくそうだ。
たとえば、来春にくすみのある色が流行りそうであれば、それに合う道具を想像して並べていく。
「ほしいものを聞かれる前に揃えておく。些細な気づかいですが、お客さんにも伝わります。せっかくbarbieを頼りにしてくれています。限られた来店時間のなかで、できるだけ多くイメージの重なる道具を見てほしい。スタイリストのかゆいところに手が届く存在でありたいんです。」
白を基調とした静かな道具が多いのは、どうしてでしょうか。
「barbieにあるモノは、主役となる商品の引き立て役です。主張しすぎてはいけませんが、一方で主役の横に立てる存在感も求められるんです。」
「ガラスと一口にいっても、クリスタルからソーダガラス、アンティークガラス… 色々なものがあります。一枚の絵にしたときに、全体の調和が大切になります。撮影する状況や主役の商品に合わせて、こちらから道具を提案していくことも大切です。」
ここからは、マネージャーである神田さんに話をうかがいます。
お客さんとはどんなやりとりがあるのでしょう。
「ラフを頭に描きつつ、わたしたちと話してスタイリングを固めていく方が多いですね。『こんなミラーはない?』『冬のセットに合うラグは?』最初はなかなかこたえられないかもしれません。経験を重ねるなかで、信頼を得て顔も覚えてもらう。そうして相談を受ける幅も広がると思います。」
頼られることは、期待の裏返しでもある。
ファッション専門のスタイリストから、「はじめてフードに挑戦するのだけれど、どう進めたらよいかな?」と相談を受けたこともある。
「そんなときはコンシェルジュのように、仕事の内容をうかがい提案をしていきます。」
そう話す神田さん、前職では国際協力関連のマネジメント業に携わっていたという。
会社を退職後、好きだったインテリアやコーディネートに携わる学校でスタイリングや写真を学んだのちに、barbieで働きはじめた。
もともとモノが好きだったけれど、仕事にすることで姿勢が変わったそうだ。
「自分の好みの道具だけを取り扱うわけではありません。自分の好みは持ちつつも、モダンやカントリーに和風。幅広いテイストがあることを理解して、知っていくことが大切になります。」
神田さんは、いまの仕事に就いて、ほんとうの意味でモノが好きになったと話す。
「barbieで扱うのは、北欧の作家さんによる一点もののクラフトもあれば、偶然にリサイクルショップで見つけたモノもあります。その一つひとつに、歴史や表情があります。そうしたことに思いを馳せてみてほしい。きっとモノとの接し方が変わってくると思います。」
barbieの店内には、厳選されたお洒落な雑貨ばかりが並ぶわけではない。
たとえばテレビドラマの撮影で「14歳の散らかった部屋」「高層マンションの一室」「団地の六畳一間暮らし」といったニーズに応えることもあるからだ。
そんなbarbieはいま、会社としての変わり目を迎えているという。
今後は海外からの買付けに力を入れることで、よりお客さんに応えていきたい。
また、地方への展開も検討している。
撮影小物のレンタルショップは東京に集中しているが、大阪や福岡といった都市部でもニーズがあるという。
将来も見据えつつ、まずは参宮橋のショップをしっかり固めていきたい。
そうしたなかでの求人となる。
これから働く方には、ゆくゆくは店長目指してほしいと考えている。
どんな人がよいだろう。
「店長を目指す方なので、インテリア・雑貨関連の仕事の経験があり、マネージメントにも携わった方が望ましいです。ただ、一番大切にしたいのは、ほんとうにモノが好きなこと。経験は浅くても、ほんとうにやりたいと思う人に飛び込んでほしいです。」
日々の生活において、ついついモノが気になる。そんな人がよいそうだ。
カタログを読んで、スタイリングを考える。ランチを食べながら、食器が気になる。ショップのレイアウトを見て「私ならこうするかな」。海外のまちを歩いて「このくすんだ色味が魅力なんだな」。
「百聞は一見にしかずと言いますよね。自分で足を運んで、たくさんのモノを見てほしいです。」
日ごろから色々なモノに触れたり、想像をすることで、お客さんへの提案の幅は広がっていく。
「カーテンを探しているお客さんが見えたんです。そこで、撮影のシチュエーションやアングルをうかがっていくと、寄りのアングルでカーテンの一部しか映り込まないことがわかりました。それならばカーテンにこだわる必要はありません。より色味の適したクロスを提案したんです。」
barbieには、接客と同じくらいに大切な仕事があります。
それは、返却された道具の管理。
入社して2年目の中村さんに話をうかがいます。
大学では家具づくりを専攻。
一度は求人関係の会社で営業を勤めたのち、インテリアに関わりたいと思い、barbieへやってきた。
「返却された道具は、一点一点状態確認を行っていきます。もし汚れがついていたり部品の一部が欠けたままでは、次のスタイリストさんに迷惑がかかってしまいます。一見地味なようで、大切な仕事なんです。」
フォトスタンドのガラスを磨く。ラグが汚れていれば染み抜きをする。家具の塗装を塗り直すことも。メンテナンスまで手がけていく。
barbieで扱う道具のなかには、一点ものも少なくない。
「スタイリストの方たちは一人ひとり、定番で借りていく道具があります。使い回しが利いて、その人のスタイリングの要となるんです。barbieのモノであると同時に、お客さんにとっても大切な道具です。もし壊れてしまうと、替えがききません。丁寧に扱うように心がけています。」
道具を梱包して、搬出する仕事は体力も使うという。
商品数が多いからこそ、管理も大変だ。
「どこの棚に何があるか。配置を覚えるのはなかなか大変なことです。たとえば一口にバス用品類といってもソープ、バスジェル、リネンウォーター、バスオイル… 種類は幅広いんです。」
そこで現在は管理方法を見直し、WEBのリニューアルも進めているという。
「品名に“レッド”と“赤”、あるいは“枠”と“フレーム”がごっちゃになっていたり。過去には、うまく分類しきれていないものもあります。」
「ジャンルごとに、no.1から番号を振っていけば楽です。ただ、お客さんの使い勝手を想像すると、もっとよい方法が考えられるはずです。」
中村さんは、これから一緒に働く人とも協力して、お客さんの使い勝手と管理のしやすさを両立していきたいと話す。
取材を終えると、店内をきびきびと動き回る中村さん。
「お客さんがどっと見えて、接客に追われるときもあります。一方で、道具の梱包や出荷作業は体力を使います。その合間に在庫管理のリニューアルもしていく。臨機応変に動いていきます。」
学生時代に5年間販売の仕事をした経験。学校で培ったWEB・デザインの力。そして前職で身につけたスケジュール管理。
中村さんは、頼まれた仕事だけではなく、自分が役に立てることに取り組んでいく。
自分の経験をフルに活かして働く姿が印象的でした。
barbieは、インテリア・ファッション・フードの各分野のクリエイションを支える舞台裏です。
モノを管理すること、相談に応えていくこと。お客さんに一つひとつ向き合うことが、舞台裏のプロへの道につながるようです。
(2015/4/23 大越元)