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しあわせを煮込む

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「おかし屋さんになりたい。」

小さいころのあこがれの仕事の1つ、おかし屋さん。

私の周りにも調理学校を卒業、パティシエになった友達が何人かいる。自分のつくるもので周りの人をしあわせにすることができる、とても素敵な仕事だと思う。

けれど実際は、朝早くから仕込みをして、重たい粉を運んで。クリスマスやバレンタインなど行事のあるときに、おいしいものを届けるために寝る間も惜しんで働くこともある。とても体力のいる仕事だ。

夢をかなえておかし屋さんになったけれど、なかなか続けられずに辞めてしまう人も少なくない。

今回は鎌倉にあるジャム屋さん「Romi-Unie Confiture(ロミ・ユニ コンフィチュール)」で、ジャムをつくる人を募集します。そのほかに販売スタッフも募集中。

おかし屋さんの夢はあきらめてしまったけれど、やっぱり気になっている。そんな人にぜひ読んでほしいです。

鎌倉駅を降りて、観光客でにぎわう小町通りとは反対側の改札を出る。しずかな裏通りを5分ほど歩いていくと、お店が見えてくる。

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店内にきれいに並べられたジャムの種類にびっくりすると同時に、横にあるアトリエからただよう甘いフルーツの香りにつつまれた。

ここをはじめたのは菓子研究家のいがらしろみさん。スタッフにも3人集ってもらってお話を伺うことになった。

全員そろって「緊張しています」と照れ笑い。

まずはろみさんが、柔らかい口調でロミユニをはじめるまでのことを話してくれた。

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「一人っ子で鍵っ子でした。たぶん『帰ってきておいしい料理ができていたらうれしいな』という母のおもわくもあって、料理レシピの本を買ってもらったんです。最後のほうにおかしコーナーがあって。最初につくったのはショートケーキでした。」

がんばってつくったケーキを家族3人でほおばる。誕生日でも、クリスマスでもないのに食べたケーキがとても嬉しくて、おかしづくりに目覚めたそうだ。

友だちを家にまねいて、ホットプレートでわいわいクレープを焼いてたべたり、自分でつくったものを振る舞ったり。

短大生になったとき、ケーキ屋さんでアルバイトをはじめた。なにも知らずに入ったケーキ屋さんは、フランス菓子の一流店。就職するタイミングで相談をして、パティシエとして働くことになった。

「毎日20キロのバターを運んだり、体力のいる仕事でした。けれど一緒に働いている男の人は、すいすいと運んでるのを見て。努力するなら、自分の得意なことに努力をするほうがいいなって思って。」

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おかしをつくっているワクワク感や、みんなで集って食べること。そんなおかしの楽しさを伝える、菓子研究家という肩書きを目指し、1年程パリに留学した。

帰国してからは、フランス料理学校で事務職として仕事をした。仕事が嫌ではなかったけれど、自分でつくっていないことにフラストレーションがあった。

「お休みの日にフードイベントを企画して、いろいろなものをつくって集った人に食べてもらっていたんです。それがたのしくて。イベントがうまくいったり、カフェメニューの開発を手伝ったりと、菓子研究家っぽい仕事が増えてきたので、独立しました。ちょうど30歳のころです。」

最初はユニットを組んでいたが、パートナーが子どもを産むタイミングから1人で活動をはじめた。友人や来てくれるお客さんたちと協力しながら、みんなで1つの空間をつくっていることがたのしかったそうだ。

「1人でイベントを運営しているので、お待たせすることがあって。その間も楽しんでもらおうと思って、テーブルの真ん中にジャムを並べて置きました。そしたら、やり取りをしている間に知らない人同士でも会話がうまれて。」

そんな中、自由が丘の雑貨屋さんで作家として紹介してもらう機会があった。フランス菓子づくりの経験をつめこんだジャムは想像以上に反響がよく、常設販売をしたいという話に広がった。それを機に、はじめは応援してくれる会社の一事業部として、住んでいた鎌倉に店をかまえた。

「オープンの前に、お世話になった方を招いて簡単なパーティーをしました。そのときに嬉しいのと、不安と、両方がこみあげてきて。飽きないか心配でしたけど、もう12年になりましたね。」

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砂糖を使わないとか、野菜でつくるとか、いろいろなジャム屋さんがあるけれど、ろみさんが大切にしてきたのは、実際に食べて本当においしいかどうか。

最初は6人ほどの仲間だったけれど、学芸大学のお店もオープンして、今では35人にもなった。

「仕事はルーティーンのことが多いから、毎日愉快に、というわけにもいきません。けれど、みんなでたのしく働いていきたいと思ってます。」

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企画を担当している東さんにもお話を伺いました。新卒から10年程ここで働いている方。ジャムの製造を行うアトリエやお店での販売を経験して、今ではろみさんの右腕のように働いているけれど、辞めようと思ったこともあるそう。

「販売の仕事をしながら、このままずっとここにいていいのかなって。違う道もあるんじゃないかって思うことはありました。迷った末に、勇気を出して教室アシスタントをやりたいって言ったんです。そしたら、いいよって。」

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「『29の気の迷い』っていう話はみんなによくするんです。30歳になると、自分の人生がどうなるか固まっていくように思うことってありますよね。自分もそうだったし、気持ちはよくわかるから。」

今いるスタッフは全員女性。結婚や出産で生活や拠点がかわる時期を向かえる人も少なくない。やりたいと思ったらなるべく続けられるように、週休2日で残業はなし。

「続けられない仕事なんだって思ったら、がっかりする。そうじゃない環境にしようっていうのは、心に決めています。」

今はアトリエ長としてジャムづくりを担当している信田(のぶた)さんも「29の気の迷い」を経験したそうだ。照れながら、自分の話をしてくれた。

「おかしづくりしか考えたことがなくて、仕事にしたいなって。最初に就職したところはすごく縦社会で、毎日言われたことをやっていました。1日中ずっとバターを溶かしたり。たんたんと仕事をするのは好きだったんです。2年くらいはずっと粉をふるっていたこともありましたね。笑」

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その後アルバイトとして働いたのが、ろみさんがプロデュースをしているカップケーキ屋さんだった。ジャムをつくり続ける仕事が自分にあっているように思い、ロミユニで働くことにした。

「けれど30歳になる前に、ずっと製造の仕事を続けていけるか自信がなくなって。ろみさんに辞めたいって言ったんです。」

そうだったんですね。

「事務の仕事を探したんですけど、やっぱりここでの仕事がたのしくて。辞めるのを辞めました。」

ろみさんと相談して、週3日はアトリエでジャムづくりを、週2日はウェブショップの受付の仕事をすることになった。新しい仕事をする中で不安はなくなっていき、今ではアトリエ長としてジャムづくりに専念している。

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大変なことはありますか。

「仕上げに1つ1つビンを拭いて、中になにか入っていないかチェックします。休憩後にやるのでちょっときついですね。」

1日の仕事の流れについても聞いてみる。

まず朝出勤したら、フルーツを切って下ごしらえをする。煮て、ビンにつめるところで午前中が終わる。午後は次の日の仕込みをしたり、ビンを洗ったり。製品になるジャムのチェックをして1日が終わる。

役割は毎日交代しながらやっているけれど、広くはないアトリエの中で、日々たんたんと続けることが多い。

経験はないけれどおかしづくりが好きだから、と入った人は、その毎日の繰り返しに飽きてしまって、なかなか続かないそうだ。

「煮上がりは感覚やとろみで決めています。できるはずの個数がちゃんとできたときに、よし!って思いますね。今はいろいろな柑橘を煮ているんですけど、皮を煮ているときに、種類によってぜんぜん香りが違うのでおもしろいです。」

最後にもう一人。販売を担当している鎌倉店店長の大草さんにも話を聞きました。

「同じフルーツを使っても、かけあわせる材料でまったく違うものになったりします。春夏秋冬でメニューが変わったり、お料理に使えるものがあったり。きてくださった方の話を聞きながら、一緒に商品を選べるのがたのしいですね。」

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大草さんも、信田さんと同じカップケーキのお店で働いていたそうだ。最初はキッチンチーフとして入ったけれど、店長、複数店舗のマネージャーと、現場から離れてキャリアを積み重ねていた。

「毎日やることに追われて、がむしゃらに働いていて。ちょっと止まってみようかなって思ったんです。そんなときに、私のことをよく知っているろみさんから声をかけてもらって。」

もともとがんばりすぎてしまう性格。前の職場では誰よりも早く出勤して、遅くまで仕事をしていた。ロミユニにきた当初は、時間がくるとさっさと帰っていくスタッフたちに少しビックリしたそうだ。

「自分が仕事のやり方を変えないと、と思って。限られた時間の中で集中して、できることをやるようになりました。鎌倉の土地柄もあるのか、流れる時間はすごく穏やかです。」

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「10年、20年先にここが“ジャムおばさんの店”って呼ばれるようになったらいいかなって。みんなでたんたんと日々の仕事をして、ちゃんと休んで、たのしく働いているおばさんたちの店。」

スタッフ3人に、ろみさんのことを教えてもらう。「えー」と言いながら、嬉しそうに聞いているろみさん。

「いい意味で社長っぽくない方ですね。すごく距離が近いので、いろいろ話せます。それと、たのしみながら常にうごいている人なので、刺激を受けます。」

「1人1人の将来を考えながら、見守ってくれています。物件探しをしてくれることもあるんです。笑」

一緒に話をしていると、本当に仲がいいんだな、というのが伝わってくる。

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お土産にジャムをいくつか買って帰る。明日の朝ご飯がたのしみで、なんだかうれしくなった。

毎日を繰り返しながら、誰かのしあわせな瞬間をつくる仕事です。

まずはお店を訪ねてみてください。スタッフのみんなが、きっと笑顔で迎えてくれると思います。

(2015/4/22 中嶋希実)