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価値観を横断する

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清掃業と聞いて、どんなことを想像するだろう。

汚れているところに手を入れたり、通行人のじゃまにならないように隅で作業したり。

そんな清掃の仕事を、真島ビルサービスの眞島宏和さんは「ファッションや芸術と似ている」と話してくれた。

汚れる仕事というより、きれいな空間を生み出すクリエィティブな仕事。高い感性と思いやりを持って臨む人たちの姿がありました。

majimabs01 東京・文京区にある真島ビルサービス。東京都心エリアを中心にビルの清掃業を行なっています。

今回は、この会社で働く清掃スタッフを募集します。

清掃業は世の中を支える、なくてはならない仕事。ここで働く人たちは単なる作業員ではなく、社会に対して広い視野を持ちながら、職人のように細部にこだわった仕事をしています。

新しい働き方のひとつとして、ぜひ読んでみてください。きっとこれまで抱いていた清掃業のイメージとは違った世界が、見えてくると思います。

 
 
東京メトロ有楽町線の江戸川橋駅から歩いて5分ほど。

首都高速道路の喧騒から離れたところに、赤茶色をした真島ビルサービスのオフィスがあります。

majimabs02 1階の扉を開けると、業務部長の眞島宏和さんと女性スタッフの藏さんが迎えてくれた。

宏和さんは「うーん・・・」と言いながら、ひとつのことを丁寧に伝えようとしてくれる方。そんな宏和さんの言葉をゆっくり待ちながら、藏さんは笑顔でフォローしてくれる。

majimabs03 宏和さんは3代目にあたり、まもなくこの会社を引き継ぐことになる。以前はアシスタントデザイナーやパタンナーとして働いていたという。

「何でファッションに興味があるのか、すこし変わった見方かもしれません。たとえば渋谷という街は、そこにある建築物や行き交う人々の服装があって、渋谷の空間が形成されています。もし、そこにいる人々の服装にすこしでも心の豊かさに通じる変化が起こせたら、もっと社会がよくなるんじゃないかと思うんです。」

「だけど洋服は未だに輸入文化で、西洋がいいと言ったものに自分の拙い個性を乗せて着ている。そうじゃなくて、そもそも日本人に合った体型や日本の文化についてちゃんと考えられた服があると、自ずと個性も出て、心がもっと豊かになると思うんです。僕はその土台として、服をちゃんとつくりたいと思ったんですね。」

まえの職場を辞めるときに、ちょうど真島ビルサービスが人手不足になっているという話を聞いて、家業に戻ってきた。

ファッションから清掃へ。一見、別世界のように思うけど、「清掃にはファッションと似ているところがたくさんあるんです。」と宏和さん

「清掃は美的価値観が働く行為です。一つひとつの行動が美的価値観の表現行為だと捉えると、すべてがつながる。僕の考え方からすると、清掃もファッションもまったく同じなんです。」

majimabs04 そんな考え方から、最初に清掃スタッフの制服を見直した。よくある緑のパステルカラーではなく、ビジネススタイルとしても通用するような服装だ。

「清掃をお願いされている自分たちが、汚い格好と道具で清掃しても、信用なんか勝ち得るわけがない。そういう基本的なところからまず大事にしようと。」

大切なのは見られ方だけでなく、見るほうも。宏和さんは清掃業を「眼の仕事」だという。

「たとえば階段の掃除だと、普通は階段の床を掃除します。でも階段の壁がすごく汚れていたら、床を掃除するより壁を掃除したほうがきれい。そのきれいだと感じる美的価値観もお客さまによってさまざまです。」

「どんな雰囲気で、どんな振る舞いなのか。眼で見て、お客さまの価値観を瞬時に判断する能力が求められる。そこがすごく面白いんです。見て察するだけじゃなく、テナントさんのいる中で清掃しなきゃいけないときはコミュニケーションをとって反応を確かめる。優しく接してくれる人もいれば、自分の仕事をじゃましないでほしいという人もいます。」

先の先まで考えて、お客さまの反応を見ながら、一つひとつ判断する。

それはファッションだけでなく、音楽でも芸術でも同じことだという。

majimabs05 「掃除ってやりはじめるとキリないじゃないですか。それはプロでも同じです。きれいにするより、汚いと思わせないことが大事。でもその美的価値観は個人によって違う。正解のない仕事なんですね。」

「だからこれが正しいっていうことは絶対言えない。僕はあんまり上からものを言うことが好きじゃないので、スタッフにうるさく言わないようにしているけど、でもやっぱり気づきの眼が大事です。」

気づきの眼はスタッフ同士とのチームプレーでも活きてくるという。

基本的にひとつの案件につき2〜3人のスタッフが、それぞれ役割分担をしながら連動して動く。時間が限られているため、仲間の動きを見ながらバランスを取る必要がある。

「常にみんなが全体を見れるようにしておかないと成立しないですね。フォローしてくれてありがとうじゃなくて、こういう動きをしてくれたなら私もこういう動きをしなきゃっていう感じ。話さなくてもお互いにコミュニケーションとれるような、言葉のない世界なんです。」

なんだか職人のような仕事でもあると思う。実際に技術面でも、ひとつの汚れをどのように落とすか、ぱっと見分けられるようになるまでは経験が必要だという。

majimabs06 ひたすら作業を繰り返し、汚れたところをたんたんと綺麗にする。清掃業と聞いたときはそんな仕事をイメージしていたけれど、眞島さんたちがやっていることの基本は、ほかのクリエイティブな仕事とまったく変わらないのかもしれない。

「でも清掃員って、存在すら感じられていないもんですよ。」と宏和さん。

「だから、社会的地位の向上についても考えています。制服や振る舞いを変えて、とにかく表現だからかっこいい仕事にしたいと思ってやってきましたけど、やっぱりまだまだ時間がかかる。仲間ももっと必要だと感じています。」

 
 
藏さんは、そんな宏和さんの考えに共感してくれている、貴重なスタッフ。

いくつかの清掃会社を経て、1年半前に真島ビルサービスに入社した。

「清掃の仕事って、負け組とか残りものじゃなくて、あえて選ぶのに十分価値のある仕事なんじゃないかなって思うんですね。眞島さんは業界に対して悲観的に考えるところがあるんですけど、わたしは希望を持っていて。」

majimabs07 清掃業の仕事に就く前は、事務職やカーテンの販売員として働いていたという。

どうしてこの業界に入ったんですか?

「それまでの仕事に、自分は社会貢献できているのか、すごく疑問があって。価値観を一新しようと思っていたときに、たまたま清掃の会社を目にしたんです。そこではじめた掃除の仕事が、私の中でものすごくカチッとはまっちゃって。そのポイントはいろいろあるんです。」

「たとえば掃除が街の治安を維持しているという『割れ窓理論』があるんですけど。わたしたちが現場に入ってきれいにすることで、そこにいる人たちの気分に与える影響は大きいと思うんです。人から『ありがとう』と言われなくても、誰かがやらなきゃいけないことを自分がやってやったぞって、こっそり社会に貢献するうれしさがあるんです。」

majimabs08 藏さんが真島ビルサービスに転職したのは、広い視点や人とのコミュニケーションのあり方に共感したから。言葉は違くても、清掃について藏さんと宏和さんが話す内容はとても共通していた。

「眞島さんは、ちょっと口下手というか(笑)。考えていることがすごく面白い人なので、話を聞くと私の中で考えるきっかけになったりするんです。だから、働き方で悩んでいる人とか、何か行き詰まっている人がいたら、ぜひこっちに来てほしいっていう気持ちもあります。」

清掃がファッションと共通していたり、社会貢献につながっていたり。藏さんや宏和さんのように、いろんなことを横断する広い視点を持っている人が合っているのだと思う。

「意識が多方面に行っている人がいいですね。」と宏和さん。

「今の社会に対して何か違うなと思っている人は、絶対にうちに合っていると思うんです。だけど、そういう人たちのすべてをフォローするほどの余裕がないから、今回はまず主体性のある人に来てもらって。体制を整えた上で、オープンにしていこうと考えています。」

majimabs09 社会に対する疑問。そこに視点がある人たちが集まると、清掃業を超えて何か新しいことが生まれるかもしれない。

「いろんなことが考えられるかなって。僕の代になったら、僕が個人的にやっている服飾とつなげることもありだと思っています。それとゆくゆくは『こんな場にしたい』という考えがあるんですよ。」

どんな場ですか?

「なんか、単に仕事をするだけじゃなくて。働き方や生き方、いろんなことについて考えられるような場になればいいなと思うんです。」

「たとえば話し合うなら・・・」と、宏和さんが清掃の仕事で一番のやりがいに感じているということについて話してくれた。

「現代人の弱さっていうんですかね。弱い部分が表に出やすくなっていて、それが色々な問題に結びついているように思います。でも、70歳位以上の清掃員のおばちゃんたちと日々触れ合っていると、彼女らに人間の根源的な強さを感じることができるんです。現代人が忘れてしまったものが、きっとそこにあると思っていて。」

「その強さを現代人に蘇らせるために服飾のことを考えていたけど、清掃の仕事をはじめてから、その強い生命力により密接にリンクすることができた。こういったことも含めて、社会的なことを論じ合う場をつくれたらなって。」

majimabs10 清掃という仕事のあり方や、そもそもの働き方や生き方について。既存の考えにとらわれず、常に疑問を持ちながらも、絶対の答えで決めつけることはしない。

そんなスタンスだから、多様な考えを尊重してくれる職場だと、藏さんは話していた。藏さんはここの仕事以外にも、子ども向け美術教室の先生も務めている。

「志を持って何かをやっている人が好きですね。そういう人と出会いたいし、一緒に話したら面白いだろうし、応援したい。単純に楽しく仕事したいっていう、ただそれだけなんです。」

majimabs11 取材の終わりに「同じような考えを持った同業者さんはいるんですか?」と聞いてみると、「いやぁ、いないと思いますよ。変わっていますからね(笑)」と宏和さん。

毎日の清掃の仕事をきっちり行ないながら、固定概念に捉われない「もっとみんなが幸せになること」を考え、かたちにしていく。

清掃業という枠組みに収まらず、真島ビルサービスにしかない仕事になっていくのだと思います。

(2015/5/13 森田曜光)