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おいしい発酵

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“塩辛”と聞いてどんなイメージがあるでしょう。

日ごろから食べ親しんでいる人もいれば、「塩辛い」「なまぐさい」「お父さんの食べもの」。そう思った人も少なくないかもしれません。

あたらしい塩辛の魅力を伝えたい。

image001 そんな思いから昨年、秋葉原に販売店、神田に飲食店を立ち上げたブランドがあります。

静岡県の「駿河屋賀兵衛(するがやかへい)」。

実は、創業して15年とあたらしい会社。だからこそ、自由な発想で展開を試みています。

今回は、神田の飲食店“SURUGAYA KAHEI”でアルバイトやパートとして週2日から働きたい方を募集します。

塩辛や日本酒のソムリエも目指せるそうです。

たとえば塩辛を好きな主婦の方、なんとなく発酵が気になっていた学生の方、ダブルワークを考えていた方も、まずは読んでみてください。

まずは会社のことを知ってほしい。そう思い、はじめに秋葉原駅の高架下にある販売店“塩辛屋賀兵衛”を訪ねました。

ここにはかつて神田青果市場があったそう。日本全国の“おいしい”を集めて昨年9月にオープンした商業施設が「CHABARA(ちゃばら)」。

CHABARA内の「日本百貨店しょくひんかん」の一角に、塩辛屋賀兵衛はあります。

迎えてくれたのは、代表の渡邊悠さん。

image003 店内の冷蔵庫には、ところ狭しと塩辛が並ぶ。

その数62種類。なかでも一番人気は、定番のいかの塩辛。

「下処理の段階で天日干しをするので、ワタの濃厚さは引き出しつつ、苦味や生臭さがないんですよ。酒の肴はもちろん、ご飯に合わせる方もいます。」

いかの塩辛だけでも20種類近くあるんです、と渡邊さん。

一番人気の塩辛とは対照的なのが、賀兵衛虎白(こはく)。

するめいかの柔らかい胴肉のみを原料にしている。塩分3%以下で仕上げた、甘みのあるまろやかな味。

「塩辛は通常塩分が10%以上、なかには30%というものもあります。駿河屋は、大体3〜5%、低いものでは2%です。おいしくて体にも優しいものを届けていきたいんです。」

渡邊さんがイメージするのは、3世代にわたり食卓を囲んだときに、健康を気にするおじいちゃんも子どもも、みんなが楽しめる食材。

塩辛の裾野を広げるのが、全62種類というラインナップ。

静岡県が生産量第一位という鱒から採れるのは、ますいくらの醤油漬け。

ずわいがにの塩辛や真鯛の酒盗といったものもある。

塩辛は、魚の内蔵を塩で漬け込んだものというイメージがあったけれど。

「ルーツは、塩で漬けた保存食です。食材を麹と塩で発酵させたものを醤(ひしお)と呼んでいました。肉ならば肉醤、魚ならば魚醤。味噌も、大豆を原料にした穀醤です。塩辛も、醤の一つに含まれます。」

自由な発想の塩辛を可能としたのは、冷蔵・保存技術の発達がある。

image005 実は、いまだからこそ考えられる塩辛があるのかもしれない。

その製造方法も試行錯誤のくり返しだという。

たとえば、日本で唯一駿河湾で水揚げされる“桜えび”の塩辛。

「体長の3倍のヒゲが口の中に刺さるので、一匹ずつ取り除いていきます。漬け込みも、機械では身がバラバラになってしまうので、手で行っています。」

また、日本一の水揚げ量を誇る“しらす”も塩辛に。

とても繊細な魚なので塩加減が難しく、身が溶けてしまうこともあるという。

「塩辛の面白いところは、元の食材よりもおいしくなる点です。熟成して発酵させることで、素材の旨味を引き出せるんです。」

そう話す渡邊さんも、家業である駿河屋賀兵衛を継ぐつもりはなかったそうだ。

海外留学を経て、世界を飛び回る仕事に就きたいと思う。前職は食品輸入の仕事だった。

「駿河屋は休日に手伝いをしていたんです。それがいつの間にか働いていた(笑)。いまはない価値観を届ける仕事に面白さを感じるようになったんです。」

地場の静岡県では、サービスエリアや伊勢丹に出店を行ってきた。

そしておととし。

CHABARA内に出店を進めていた日本百貨店の代表鈴木さんから、オファーをいただいた。

東京への展開に際して、リブランディングを行ったそうだ。

image007 一人暮らしでも買えるよう、また色々な味が楽しめるように、従来のハーフサイズをつくった。

また、パッケージデザインも一新。

「いままで塩辛を食べなかった人にも『なんだろう?』と手にとりたくなるデザインにしたかったんです。」

そんな駿河屋賀兵衛を象徴するのが“賀”の字をモチーフとしたロゴ。

「紐解いていくと、力は手を。口は器を。そして貝は食べるものを表します。食を楽しむという意味合いになっています。」

車輪を入れたのは、いままでにない食の喜びを届けたいという思いから。

不安も抱える中でのオープン。さまざまな人が訪れてくれるように。

お客さんとのやりとりを、スタッフの方にうかがってみる。

オープニングから働いているのは、男性の小姓堂(こしょうどう)さん。

image009 「若い女性が見えるんですよ。日本酒を好む方が増える中で、興味は持ってくださいますね。たとえばいかの塩辛でも熟成期間を短く、柚子で風味づけしたものを試食すると『塩辛ってこんなおいしかったんだ』。価値観が変わるのは、うれしいですね。」

また土地柄もあり、外国の方も足を踏み入れるという。

そこで大切になるのは伝え方だという。

「“発酵”という説明をすると、シブい顔をされます。腐って生臭そうと思われるようです。おまけに、イカやたこはdevilfishというぐらいです。そこで、ferment(発酵)ではなくaging(熟成)という言葉を使ってみたり。日本古来の製法で漬け込んだものと説明すると、食べていただけますね。」

image011 口に入れてみると、反応はよいそうだ。

「『味わったことがないおいしさだ』と言ってくれる方も少なくありません。世界一チーズを食べるフランスや、シュールストレミングという発酵食のあるスウェーデンなどは相性がよいのかもしれません。」

新しい客層を開拓しつつ、古くから塩辛を好んできたファンもいる。

ナマコの腸を塩辛にした“このわた”という珍味。

100gで3,000円という高級品を、毎週水曜日に買いにくるお客さんがいるそうだ。

「その方は長年購入していたお店から、うちに替えてくださったんです。通の方に評価してもらえたのは、嬉しかったですね。」

ここで小姓堂さんが働きはじめたきっかけを聞いてみる。

「接客の仕事が好きだったんですよ。学生時代に、オープニングスタッフの求人を探して駿河屋賀兵衛と出会いました。」

アルバイトから、そのまま就職をしたという。

「小さい店だからこそ、お客さんとの会話やコミュニケーションがより密で、楽しいと思ったんです。」

接客において、どんなことを心掛けているのだろう。

「興味を持ってくれる方は多いので、積極的に声をかけて試食をすすめるように心がけています。あとは、お客さんの好みを尊重することです。62種類の中から、その方に合うものを一緒に選んでいく仕事だと思います。」

もう一つ、紹介したい店があります。

塩辛のレシピや日本酒との組み合わせを伝えていく飲食店が“SURUGAYA KAHEI”。

image013 CHABARAからは歩いて5分ほど。

かつての中央線・万世橋駅の高架下をリノベーションした「マーチエキュート万世橋」に位置する。

「コンセプトは『静岡と塩辛と日本酒』です。30種類の塩辛と静岡で採れた海の幸を、相性のよい日本全国の日本酒で楽しんでいただくお店です。」

営業は11時から。

image015 オープンして一年が経ち、いまではエキュートの中でも一番の人気店だという。

「お店に勢いが出てきたと思います。お客さんがついてくれたんですね。最近では、予約をいただけないとお断りさせていただくことも増えてきました。」

客層も幅広いという。

「週に2日『今日はどんなお酒があるの?』と見える方もいらっしゃいます。通の方の期待に応えていくのは、なかなかプレッシャーもありますね(笑)。一方で、日本酒と塩辛の組み合わせを楽しみたいという女性の方、多いんですよ。」

エキュートの雰囲気もあるのだと思う。女性で満席になる日も珍しくないそうだ。

「甘口辛口といった味の特徴はもちろんのこと、蔵のストーリーや料理との相性もあわせて紹介していきます。」

塩辛にはどんな食べ方があるのだろう。

「塩辛納豆、ムール貝の塩辛ガーリックソテー、塩辛バゲットに塩辛ポテト。パスタに絡めたり。シンプルな調理でコクが出ます。それから、隠し味に使うことで、旨味にもなるんですね。」

image017 オープン当初はシンプルな料理を提供してきた。舌のこえたファンが増える中で、最近はひと手間加えたメニューも登場しつつある。

築地から仕入れる魚を刺身や握りで出すことも。そして酒盗焼き。

最近では、日本酒も料理も“お任せ”のお客さんも増えてきた。

メニューにないものを、その日の即興で提供するという。

日本酒についても、通常メニューは30種類。また、酒屋さんと直接顔を合わせて関係を築くことで希少酒も扱うようになった。

料理と日本酒の組み合わせはプレッシャーを感じつつ、楽しみでもあるという。

image019 今回は、こちらの店舗を中心に働く方を募集したい。

店内は、13席とコンパクト。キッチンとホールを行き来することになる。

料理の仕事の経験は問わないので、食べることが好きな人に来てほしい。

料理の食材としてはまだまだ可能性が広がる塩辛。自由な発想で、あたらしいメニューも見つけてほしいそうだ。

小さな店内だからこそ、「盛りつけがきれい」「塩辛っておいしいんだ!」。

カウンター越しお客さんの反応もダイレクトに伝われば、気軽に話をすることもあるという。

「料理も接客も試行錯誤をくり返して、売上も少しずつ伴ってきました。協力しながら、働いてほしいです。」

image021 最後に渡邊さんから、伝えたいことがあります。

ディスプレイやお酒のセレクト、そしてあたらしい塩辛の開発まで。仕事を少しずつ若いスタッフに譲りはじめている。

「塩辛や日本酒が好き。顔の見える接客がしたい。新しい価値観をつくりたい。働くきっかけは人それぞれでいいと思います。スタッフには自分の舟を自分で漕ぐ。そんな気持ちを持っていてほしいんです。」

いずれは物販と飲食が一つの場で楽しめる店をはじめたいという。海外にも展開したい。

希望があれば、ゆくゆくは店を任せていきたいという。

働き方も多様です。発酵に興味があれば、まずは訪ねてみてほしいです。自分自身が発酵の楽しさに出会うことからはじまると思います。
(2015/5/3 大越元)