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朝8時。よく晴れた代官山の街を歩き、店につく。窓をあけて風を通すと、すっと目が覚めるように1日がはじまる。最近フットサルを一緒にするようになった常連さんが、今日もコーヒーを買いに立ち寄ってくれた。週末の試合での笑い話をしながら、ランチの準備をする。
子ども連れのお客さんがやってきて、芝生に座りながら一緒に絵本を読んでいる。サンドイッチを注文してくれたタイミングで、ちょうど立ち寄った八百屋さんを紹介して、今日の野菜について話をしてもらう。
代官山「Bird(バード)」で働く人は、こんな1日を過ごすのかもしれません。
今回はここでキッチンスタッフと、マネジメントを担う人を募集します。まだはじまったばかりの場所だから、一緒にここをつくっていけるような人に出会いたいと思っています。
代官山から歩いて8分ほど。路地に入ると、すぐにSodaCCo(ソダッコ)の看板が目に入った。
Birdの入るSodaCCoは、「子どもとクリエイターの『育つ』が出会う、みんなのビル」というコンセプトで今年3月にはじまった施設。クリエイター専用のシェアオフィスco-lab代官山が入っていたり、子ども向けのワークショップが開かれたりしています。階段を上がると、ビルの中なのに緑がしきつめられた空間が広がっていた。用意されている椅子は15席ほどだけれど、人工芝やスツールを使って食事ができるようになっている。
まず話を伺ったのは、ここのオーナーである鈴木さん。スタッフからは「ずっきーさん」と呼ばれている。自分のことを「未熟なんで」と話してくれたけれど、筋が通っていて周りから信頼されているんだろうな、と感じる。
「仕事の基本はインテリアデザインや内装デザイン、それに工事まで一緒にやることです。4年ほど前から世田谷の松陰神社にあるSTUDY(スタディー)というお店をやっています」どうして代官山にお店を出すことになったんだろう。これまでの経緯を聞いてみる。
「内装をつくる会社にいて、建築の基礎を学びました。大きな会社だったから、僕がその仕事をしたいと思っても会社的にできないことがあって。気持ちのいい仕事であればやりたいと思って、独立することにしたんです」
独立したとき「飲食店をやれば絶対成功する」という根拠のない自信があったそう。
「建築はクライアントさんありきで、きまったお金の中で仕事をしていく。飲食店業は日々の積み上げじゃないですか。今までやったことのない仕事だったので、興味があったんです。安易な考えですけど、ローカルで商売していたらいろいろな人と出会えて、建築の仕事につながるんじゃないかなって」
特にゆかりがあったわけではないけれど、街の雰囲気が好きで松陰神社にお店を出した。今でこそすてきなお店が集まっているけれど、当時はまだ「普通の街」だったという。
はじめての飲食店運営ではさまざまなことが起きたけれど、少しずつ街に馴染んでいった。「本屋さんをやりたいとか、ケーキ屋さんをやりたいと相談を受けるようになって。商店街にある物件を紹介して、僕らで内装もやらせてもらいました。そうやって仲間が増えてきて、街のことを話すようになって。SodaCCoのオーナーさんもその仲間の1人だったんです」
最初に話を聞いときには「おもしろいコンセンプトを持ったビルだな」という印象だった。
「何度か聞いているうちにすごく興味がわいて。僕だったらクリエイターにも子どもにもアプローチできる店をやるっていう提案をしたんです」
頼まれてもいないのに、このビルにあるお店はどんなもがいいのかを考えた。思い浮かんだのは「サンドイッチ屋さん」だった。
「サンドイッチって、料理の名前だけど、料理の名前じゃないと思うんですよ。挟む行為の名前。挟むものはなんでもいいんです。どんなものを挟んだら、どんな味になるのかイメージしながらつくるのは、超クリエイティブだと思って」
もう1つの要素として提案したのは、子どもが食に関心を持てるようになること。24時間365日ほしい食材が手に入る今、食べ物の本当においしい時期、旬をちゃんと感じられるような場所にしたいと考えた。季節にあわせて使う食材を変えていくことで、メニューも変わっていくお店。
提案した内容が採用され、あっという間に新しいお店を出すことが決まった。
「自分の周りにおきた波には乗っかっていくタイプです。時間はなかったけれど、ぼくの周りにいる人たちと一緒にやればできるイメージが湧きました」
松陰神社で一緒に街のことを話している「nostos books」、自然栽培の野菜を中心に取り扱う「青果ミコト屋」、自家製天然酵母をつかったパンづくりをしている鎌倉の「パラダイス・アレイ」、奥沢で自家焙煎にこだわってコーヒーを提供している「オニバス・コーヒー」など、普段から親しくしている仲間の顔が浮かんだ。
みんないい仕事をしていることを知っているから、協力すればいい場所がつくれる予感がした。
「月に2、3回会うんじゃないかな。お互いの近況報告やおもしろい人を紹介したり、フットサルをしたり。少しずつ気持ちのいい仲間が増えています。そんな仲間たちを代官山で紹介できる場所にしたい。飲食店だけど、飲食店じゃないというか」
飲食店じゃない?
「提供しているものはサンドイッチやドリンクです。けれど、どんな人がどんなことを考えてつくったものかを知っているから、ちゃんと伝えることができる」
「情報をオープンにしておけば、さらに縁が広がって、おもしろいことが起こる。すぐには難しいかもしれないけれど、じっくりと。長期的に考えています」
使っている食材は、誰から仕入れたものなのかカウンターの横にある大きな看板に書かれている。スタッフが紹介したり、仲間が出した書籍も並べてあるから、関心を持った人はより詳しく知ることができる仕組みになっていている。
たとえば食べたサンドイッチがおいしくて、スタッフに話を聞いてみる。自然栽培のことを知って、ミコト屋から野菜を買いたいと思うかもしれないし、日々の生活の中で食べるものを意識するようになるかもしれない。小さな変化かもしれないけれど、積み重ねることで可能性は広がっていく。「ちゃんと伝えられる素材を使いたいと思っています。どういう考えでものを売っている人かを知っていて、その人が好きだから買う。そのほうが自然だし、たのしいですよね」
Birdは3月にプレオープンを迎えたけれど、まだまだスタートラインにたったところ。
「ぼくたちはサンドイッチを通してコミュニケーションをしています。もちろん料理ができる人がくるにこしたことはないけれど、それは経験していけばいいことかもしれない。それよりも、自分がいいと思う人のことを思わず人に紹介してしまうような。好奇心旺盛な、キャラの濃いやつがいいですね」
今、Birdのメニューを主に考えているのはSTUDYのスタッフでもある保東(ホトウ)さん。週に1度は代官山にきて、お店のことを一緒に考えている。
照れていたけれど、お店について話をするときの言葉はとても力強い。
「もともと絵を描くのが好きで、デザインの専門学校に行っていました。卒業制作でチョコレート屋さんのウインドディスプレイを企画したことがあって、そのとき『食っておもしろいな』と思って。つくったものに対して、誰かが喜んでくれるのは、すごいことだと思ったんです」3年間ディスプレイの仕事をした後、カフェやパン屋など、食に関わる仕事を経験した。馴染みのある松陰神社でやっていたSTUDYに入ってから、4年ほどが経った。キッチンは経験がなかったけれど、これからも飲食でやっていこうと思い少しずつ学んできた。
「なるべく手作りで、おいしいものをつくっています。それを大々的にうたうんじゃなくて、自然とみんながそうする。一緒に働きたいと思える人が集まってるんですよね」
Birdのメニューを任されることになり、徹夜しながら試作をつくった日もあったそうだ。人気のフルーツサンドはこの日もすでに売り切れていたけれど、ほかにもオススメしたいものが沢山ある。季節に合わせて、入ってくる食材に合わせてメニューをつくっていくから、これからもよりおいしいものを考えていきたい。
「塩加減だったり、切り方一つで食感も変われば見た目も違います。手を抜いちゃいけないところは抜かない。そこは自分にも、周りにも厳しくしているつもりです」
今、一番手間のかかる仕事はジャムづくりだそう。どこかで買ってきたものを使うのではなくて、皮をむいて千切りにして。大切に育てられた素材が、ここでも大切に、手間をかけて、体をつくるものになっていくことがわかる。
立ち上げの仲間に加わらないかと保東さんが声をかけたのが、となりで話を聞いていた山﨑さん。もともとケーキ屋さんなどで働いていたけれど、声をかけられたときには「食」から少し離れて仕事をしていたそうだ。
「もともと環境に関心があって。自分ができることを調べていくうちに、食べることや暮らすこと、全部がつながっているものだとわかって。体をつくるのは食べるものだから、どんなつくりかたをしているか気になるようになりました」話を聞いてとても興味がわいた。最初は休みの日に関わる程度だったけれど、今では前の仕事を辞めてここで働くことになった。
「自分がそうだったように、ここでなにかを考えるきっかけができたらいいと思っています」
「朝がほんとうに気持ちのいい場所なんです。1日という意味でも、なにかに気がつくという意味でも。はじまりにはいい場所かなって」「まだまだ周りの人に知ってもらえてないので、いろいろなことを試していかないと。ただキッチンとしてつくるだけじゃなくて、これから先のことを一緒に話していきたいですね」
話を聞いたあと、オススメの「お肉のサンドイッチ」とレモネードをいただくことにした。注文してからつくる温かいサンドイッチは、ちゃんと1つ1つ、素材の存在感がある。ハーブの香りが広がるサンドイッチを頬張っていると、横で遊んでいた小さな子どもが、不思議そうにこちらを見ていた。はずかしくなって照れ笑いすると、にこっと笑顔を返してくれた。
ここで、いろいろな人がつながって、大きな輪が広がっていきます。仲間の一員になることが気になったら、まずはBirdを訪ねてみてください。晴れた日のテラス席がおすすめですよ。
(2015/6/24 中嶋希実)