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会社の変化を『自分ごと』のように捉え、新しい息吹を吹き込むことで、歴史や伝統を継いできたブランドの空気を染める。同時に仕事と暮らしの境目を溶け合わせることで、自分も空気に染まる。
そんな環境に飛びこめる機会がここにはあるような気がします。
島根の石見銀山のふもとに「石見銀山生活文化研究所」という、自分たちの「暮らし」をデザインして発信し続ける会社があります。
今回はそこから生まれた「群言堂」という服や雑貨を扱うブランドの販売促進・広報スタッフを募集します。
「群言堂」は今から25年前、石見銀山に住まう松場大吉さんと松場登美さんご夫婦が、自分たちが心地よく過ごすためにはどんな服を纏いたいかという考えからはじまった、服や生活のあり方を追究しているブランドです。
生きるなかでふたりが見つけたテーマは「復古創新」というもの。
復古創新には、先人の生きてきた過去から本質を理解し、未来からの視点で創造する、という意味があります。
失われかけている手仕事の良さや生活の知恵を見つめ直すことから、ブランドは広がってきました。
会社が大きくなるなかで、ふたりの考えを受け継ぎながら群言堂のあり方を考えていく人が、いま求められています。
羽田空港から飛行機で約1時間。そこから車で1時間半かけて、2007年に世界遺産になった日本最大の銀山、石見銀山へ向かう。
石見銀山へ到着すると、ただよう空気が音として聞こえてくるような、とても静かな町でした。
赤瓦の渋い町並みのなかに、「群言堂」の本社と本店がある。
ここで扱っているのは生活に溶け込む服や雑貨。
他にも「他郷阿部家」という暮らしをテーマにした宿も営んでいる。
そんな「石見銀山生活文化研究所」で働く、3人のスタッフに話を伺いました。
まずは、「群言堂」という場所が生まれた経緯を聞いてみると、松場忠(まつばただし)さんが一冊の本を見せてくれた。
忠さんは、組織づくりを考える横断的な立場でありつつも、群言堂のなかに実験的な新ブランドを立ち上げたりしている。
「創業者である松場大吉の語りおろしの読み物と、大田市出身で写真家の藤井保さんによる写真で、このまちの風景と物語を伝えている本です。ここに会社の歴史がつまっています」
「この本は、会社のバトンをデザインする目的でつくりました」
会社のバトン?
「これまでの会社の経緯を整理して、今後どうしていくか。ここから見える風景の価値は何なのか。それを探って、これからの人たちに継いでいくために書籍を出版しました」
群言堂には、「たくさんのひとが集まって発言して、そのなかでひとつのいい流れが生まれる場」という意味があるそうだ。
「ぼくは、この会社がより群言堂に染まればいいと思っています。この場がずっと残るように、会社のしくみをこれからつくっていくのが、自分の仕事かなと」
「松場大吉さんと登美さんというこれまでここを引っ張ってきた二人の存在があるんですけど、スタッフ一人一人にもエッジがあってほしいし、自立していてほしいんです。そういった個々の活動から、各部門ごと自立していくと思います」
これまでは古くから一緒に活動してきた仲間と築きあげてきた。しかし、そういった組織の体制を永遠に続けるわけにはいかない。
「登美さんと大吉さんのふたりが想像していないくらいに、今の会社のメンバーがルーツを大切にしながらも、よりクリエイティブにやっていく、かつ経済的に成り立っていく流れをつくってほしいんだろうなと思います」
ふたりのブランドから、みんなのブランドへ。
それが、松場さんのいう「より群言堂になる」ということなのかもしれない。
会社としても個人としても変化を生み出せるように、あたらしい流れをつくっていくタイミングなのだ。
「今までは百貨店の集客力に依存していた部分もあったのですが、どうしたらお客さんが喜んだり、納得してもらえたりするのかを考えないといけないと思って」
「うちの洋服は値段も高いんですが、より買いやすくするためにウェブの体制やお客さんも納得して買えるページづくりをしていきたいなと」
素材や製法にこだわっているからこそ、お客さんに伝えたいことがある。その声を、本店のあるこの場所から届けていくのは大事なことだと、松場さんは考えている。
「こういう場所にあるからこそインターネットの在り方を考えられるんじゃないかな。販促や広報の在り方などはしっかり考えていきたいですね」
実際に、販促と広報の仕事をしている三浦さんを紹介してもらった。
「学生時代に松場大吉さんの講演を聞いたことがきっかけで一ヶ月会社の寮に住み、インターンさせてもらいました。仕事も充実していたんですが、なによりも町内の人との関わりがとても新鮮な気持ちにさせてくれました」
「ただフラっとやってきた青年を気にかけてくれたことが自分にとって衝撃だったんです。東京に住んでいたころは、隣の人も全く知らないなかで暮らしていることが当たり前だったので、ここでの経験がとても新鮮でした」
こういう環境で働ければ幸せだと思った三浦さんは、その想いを手紙に書き、採用してもらえることに。
もともと新聞社志望で、文章をかくことが得意だった三浦さんは、独特の視点も持っていた。
だんだんその力が認められ、広報の仕事を担っていく。
「会社にいらしたお客様に会社施設をご案内することもあれば、建物の説明などいろいろやっています。その中でも『三浦編集長』という自分の視点でこの場の面白さを伝える新聞制作をしています。ぼくの場合は商品というよりも、日常をそのまま発信することが多いですね」
日常におこっていることを発信する。
「こういった活動は学生時代に大吉さんの話から感じたことに近いのかもしれません。会社のことを中心に語るのではなく、まわりの環境を語る。それを発信する仕事をしていることに気づきました」
役割から人を探すのではなく、人から役割を生み出す。暮らしと仕事がとけあっているような状態だったと話します。
「仕事の勤務時間に田植えをしたこともありました。仕事だけでなく、暮らしということにものすごく力を入れているというか、暮らしを大事にしている会社だなと思いました」
三浦さんの話を聞いていた渡部さんもお話ししてくれました。
「この間、昼休みにたけのこ掘りに行ったんです。そんなこと都会ではまず経験できなくて。働いている人みんながこの土地を楽しんでるという印象をもちました」
渡部さんは今年の一月に日本仕事百貨を通して入社し販促を担当しているスタッフです。
主にインターネットのオンラインサイトで、どのように自分たちのアイテムを売り出していくか、という部分を考える役割をしている。
島根出身で、いまは移住してオフィスの近くに住んでいるそうだ。
実際暮らしてみてどうですか?
「今古民家に住んでいるんです。古民家って冬の床がすごく冷たくて。スリッパないとしもやけになってしまうんですけど、そういった当たり前の日常に季節を感じます。」
「どこもかしこもあったかくて、その季節によって環境が整うのではなくて。ちょっと手間がかかったり、寒かったり、暑かったり。そういった暮らしの中で、些細な感覚を感じながら暮らしている感じはあります」
仕事ではどういった内容をしているんですか。
「今は服の特集を組んだり、企画の方と話して、どういった商品をどう売っていくのか打ち合わせしたり。ほかにも商品の撮影や展示会などを主な仕事として取り組んでいます」
さまざまなブランドを展開していく中で、これから力を入れようとしているのが「根々」というブランド。
根々は30~40代の世代を中心とした、暮らしを楽しむということがテーマのブランド。
根々ではどんなことをされているんですか。
「たとえば、先日母の日特集をしたんですが、それにあたって何をつくるかを考えたりしました。どういう構成にするのか、素材の良さをどう写真で伝えるかなど試行錯誤をおこなっていますね」
洋服を売るだけではなく、在り方を提案していく会社だということもあり、暮らしを楽しんでいるスタッフも多い。
「一緒に暮らしを楽しんでくれるからこそ、仕事も楽しめると思います」と渡部さん。
けれども、ここでの暮らしは憧れだけでは成り立たないと松場さんは語る。
「Iターンで来てくれる若い方たちは、田舎をエンターテイメントだと思っていることがあるんです。現実は、それだけではいけない部分も当然あります」
少数体制での環境では求められることもたくさんある。しかし、同時に受け入れ体制もあるそうだ。
「よく地方などに住むと住民との関係性が難しいという話も聞きます。この町の人は人口400人ほどですが、比較的受け入れる懐の深さがあるんです。地域ならではの団結力がありつつ、ほどよい距離感もあるかなと思っています」
「与えられた仕事を自分ごと化できる人が、来てくれるといいですね。ここでの仕事内容は自分で考えて行動することが多いので。このブランドをどうしていくか、一緒に議論していけるような人がいいと思います」
まずは自分たちの暮らしをつくっていけばいいと思います。
その一環として、仕事もある。そう考えれば、仕事もより自分のことのように考えることができるかもしれない。
あこがれだけではなく、そこに自分の仕事と暮らしをつくる。
そうすることで、会社の変化のタイミングを『自分ごと』のように面白いと思えるのかもしれない。
この取材中、石見銀山の他郷阿部家へ宿泊して街の空気や人にふれてみた。
子供たちの挨拶や、地元の野菜でもてなされる。そんな空気でこの街は染まっていた。
根っこにある価値観や街の空気に染まりながらも、自分の技術や経験でまちの空気を循環させる。そんな空気を染めることができる力が求められている。
気になった方は、ぜひ石見銀山へ訪れてみてください。
(2015/6/30 浦川彰太)