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「ここではたらいていると、ひとつの国のように感じるんです。日本も他の国も混ざっているような」人と出会い、話をして、相手の気持ちを想像する。
そうしていくと、国や考え方はちがっても、とても身近に感じられるようになるそうです。
世界各国から旅人がくるホステルが、東京の箱崎にあります。

今回はオークホステルキャビンというホステルで、ゲストを迎える人の募集です。
東京メトロ茅場町駅を降りて、日本橋川に沿って歩く。
東京湾の海水が流れこんでいるのか、風が吹くと潮の香りがした。
川べりのコンクリートの建物。階段を上ると、入り口の扉が開いていた。
「こんにちは!」
にこっと笑顔で迎えてくれたのは、ホテル事業部責任者の石井さん。

和モダンをコンセプトにつくられた共有スペースにある掘りごたつに座る。
まずは石井さんにお話を伺った。
もともと大学時代、ゲストハウスに泊まりながら旅をしているうちに、日本でも同じようなことをやりたいと思うようになったそうだ。
卒業して働いている間も、よく友だちのシェアハウスに出入りしていた。ごちゃごちゃした空間のなかで、英語が飛び交い、まるで外国にいるような独特の雰囲気に惹かれたそうだ。オークハウスのこともその頃に知って、働くことになったのだとか。
「旅行をしている人ってハッピーな人が多いじゃないですか。話していたらこっちもハッピーになれるのがいいですよね」

昨年5月にオープンした1号店のオークホステル禅の反響はどうですか?
「おかげさまでいろんな予約サイトでいい評判をいただいています。お客さんがお客さんを呼んできてくれているように思いますね」
トリップアドバイザーでは都内でいちばんになったこともあるのだそうだ。
「いちばん大事にしてるのはスタッフの対応。コミュニケーションですね」

違うところ。
「普通のビジネスホテルだと、フロントの人と接するのって最小限じゃないですか。チェックインのときに鍵の受け渡しをするくらい。それよりも『どこいくの?』とか『どこ回ってきたの?』とか話してみると、ちょっと親近感がもてたり、自然と笑顔が生まれるように思います」
たしかに、旅先で親しみをもって迎えられたら、ほっとしてしまう。そんなところが魅力になっているのかもしれない。
「でも、まだ足りないなって思っているのが、お客さん同士をむすびつけること。一人でいらっしゃった方のなかには、話したくてもうまく話せないひともいると思うんです」
部屋がきれいとか、そういうところはあたりまえ。さらに求められているのがコミュニケーションなのだという。

いま、オークハウスでは池袋に3つめのホステルの計画が進行中。
外国人観光客が増えているなかで、宿泊施設の需要もどんどん増えていくと予想されているそうだ。
ここで働いている三富(みとみ)さんにもお話をきいてみた。
三富さんは、今年の3月のオープンに合わせて入った方。どうしてホステルで働こうと思ったのですか?
「人と話すのがすごく好きで。普段の生活でも、道を聞かれたら話しすぎてしまって、ついついひきとめちゃうんです」

海外留学していたこともあり、英語にも抵抗がないそうだ。
「日本に興味をもって来てくれる外国の方がいると、助けてあげたいなって思うんです。英語を使うのも好きですし。日本のことも好きなので『このあたりに来たら、ここに行ってください』とか『あそこがおすすめですよ』とかアドバイスしたい。おせっかいですね」
ノープランで来ているお客さんにとって、そのおせっかいはとても感謝されると思う。
相手の話を聞いて、いろんな提案ができる人が向いているかもしれない。
それでもときどき、知らないことを聞かれて困ることもあるそうだ。盆栽町やロボットレストラン、築地の競りなど。日本人でも知らないようなディープなところを目当てに訪れるお客さんも少なくないのだとか。
「あと、掃除はたいへんです」
オークハウスキャビンはカプセルホテルになっている。掃除のときには登ったり降りたりして、狭いカプセルの中をチェックインの時間までにきれいにしなければならない。肉体労働もある。

個人的な話?
「たとえば、自分が訪れたことのある国なら『わたしも行ったことある!』となるし、そこから『何をやっていたの?』と質問することもあります。仕事の内容とか、苦労したこととか、いろんな話に広がったりして」
「こういうことはお客さんが落ち着いたときに話しかけてみるんですけど、わたしも楽しいし、お客さんが笑ってくれたらきっと楽しんでもらえているんだろうなって。WIN—WINじゃないですけど、私も楽しい、相手も楽しい、それがいちばんだと思っていて」
こんなふうに旅先で笑って話ができたら、いい思い出になると思う。
石井さん曰く、「三富さんはお笑い担当」とのこと。
まさに「お客さまを結びつける」役割なんだと思う。2週間に1度開かれるパーティーでは、三富さんが自然と盛り上げ役になっていることもあるのだとか。
「ついやっちゃうんでしょうね。笑ってくれたらいい。楽しんでもらえたらいい。」

三富さんは、どんなことを意識して接していますか?
「なるべく話しかけやすい空気を出すようにしています。ありきたりですけど、笑顔でいるとかですね。わたしもいっぱいいっぱいになっちゃうと顔に出ちゃうので」
「あとはお客さんに聞かれたときに、どう説明したら伝わるかは気をつけています。たとえば都営とメトロ。同じ地下鉄だけれど、日本人だったら違いがきっとわかる。でも外国のお客さんだと分からないかもしれないから、ちゃんと説明したほうがいいなとか。もし自分が外国人だったらって考えて、視点をちょっと切り変えて説明するようにしていますね」
相手がどんなバックグラウンドをもっているか分からない。自分たちが知らない習慣や考え方に驚くこともあったそうだ。
相手のことを想像する。そうすることで「お客さんからたくさんのことを教わっている感じがする」と三富さんは話してくれた。
「私たち日本のことしか知らない。でもほかの場所で生きてきたら、その人の見えることはかわってくると思うんです。だから、自分の視点だけでぜんぶ物事をイエスかノーで決めちゃうのはちょっともったいない気がします。相手の立場から考えてみる。そうすると、わたしの考え方もどんどん変わっていきますね」
この場所にいながら、世界を旅するように、いろんな人の立場を想像する。それはきっと、いい経験になると思う。

「同じような気持ちを持った人がいいですね。お客さんに喜んでもらいたい、楽しんでもらいたいって気持ちがある人。おもてなしのやり方は人によって違うとおもうんですけど、最終的な目標が同じならいいなって」
「たとえば、お客さんにどのように過ごしてもらえれば喜んでもらえるか考えるんです。やり方はさまざまだと思いますが、それぞれが考えることで、このホステル全体もよくなっていけばいいなと思います」
マニュアルはないんですか。
「マニュアルはないです。その人なりのおもてなしがあって、お客さんが喜んでくれれば。正解はないとおもいます」
石井さんもうなずきながら話してくれた。
「うん。そういうマニュアル、決まりっていうのはない。つくりたくもない。最低限のものはあるけど、接客などのサービスを画一化しようっていうのはまったく考えてないです」
マニュアル通りではなく、それぞれが考えてやってみる。たいへんそうだけれど、いろんな背景を持った人に向き合える環境がある。
英語力のハードルが高そうに感じるけれど、どうなのでしょう。
「今働いている人たちは海外経験があったり、英語で話すことが苦手じゃなかったり、英語を学びたいっていう気持ちのある人が多いですね。話そうっていう気があれば、最初は多少下手でもなんとかなってきます」

英語もそうだけれど、いろんな言葉や価値観をもった人が集まる場所だから、おおらかに違いを受け入れられる人だといいかもしれない。
最後にふたりがこんな話をしてくれました。
「最初にもったビジョンをずっともっていてほしいな。小さくても大きくても夢をもっていてほしいです」
と、三富さん。
そして石井さん。
「うん。じぶんがやりたいと思ったことは、やってほしいです」

ここでは働く人も訪れる人もお互いの文化を尊重しあうようなフラットさがあるのかなと思いました。
旅人に寄り添うことで、世界中の人が喜んでくれる。それはきっと楽しいことだと思います。
(2015/6/23 倉島友香)