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氷を入れても結露しにくく、熱いお茶が入っていてもすぐに触れることができる。二重構造とは思えない薄さと軽さで、手になじみが良く口当たりなめらか。一瞬、道具というより、まるで体の一部のような気がした。「飲む」という当たり前だった行為が研ぎ澄まされてくる。
今から350年前に新潟の燕市ではじまった金属加工のものづくり。
株式会社セブン・セブンは、その燕の町で、魔法瓶やステンレス製ボトルを一貫してすべてMade in Japanで製造している日本唯一の工場です。
燕の町工場の伝統技術と先端素材の「チタン」が出会ったことから、新たな食器の歴史がはじまりました。
それが真空チタンカップテーブルウエアシリーズ。株式会社セブン・セブンが運営する自社ブランド『SUSgallery』から全国に発信しています。
金属製の食器としては、チタンはあまりなじみのない素材かもしれません。
銅の半分ほどの比重で軽くて丈夫、そして人体にも安全な金属であることから、医療機関でも使われている素材です。
まだまだ食卓では身近なものではないけれど、いずれ日本の食卓の定番になるかもしれません。
寡黙な職人さんたちの高度な技術によって生み出されるこの商品の魅力を「伝える」役割を担っているのは、東京・日本橋にあるSUSgallery唯一の直営店。
今回は、ここで働く人を募集します。
職種としては販売職ですが、「お客さまの声」を会社に伝える役割や、定期的に催し物もあるので、「企画」という要素もあるように感じました。
ミュージアムのキュレーターにも近いものがあるかもしれません。
スタッフの方たちも、「こんなことができるかもね」「いいですね」と横ならびの雰囲気で、楽しそうにアイデアを出し合っているのが印象的でした。
企画が好きというよりも、商品そのものが心底好きで、それをどう伝えるか考えた結果、企画が生まれてしまう感じ。
世の中には、魅力を「つくる」仕事も多いけれど、すでに商品自体に魅力があって、それを「伝える」ためにはどうしたらいいかを考えていく仕事がしたい人に、おすすめです。
お店があるのは、昨年オープンしたばかりのコレド室町3のなか。
白や木目を基調とした柔らかい印象の館内を進むと、とつぜん、目の冴えるような銀色の世界が現れる。
ステンレス箔でおおわれた壁は、かなりインパクトがある。「SUS gallery」という名前のとおり、お店というよりもギャラリーのような雰囲気。
お店のなかには日本人だけでなく外国からのお客さんも多くいて、スタッフの方がそれぞれていねいに商品の説明をしている。
陳列されている商品に触れてみた。一見金属が冷たそうに見えるのだけど、周りの空気と同じくらいの温度で、なめらかな手触りがする。
「試飲いかがですか?」と勧められ、カップに注がれた温かいお茶と冷たいお茶をいただく。
両方、ほんのりと手にやさしい温度に整えられている。
「真空の二重構造により内側の熱を外に伝えないので、冷たくても温かくてもすぐに持つことができます。また、何十年経っても錆びず、無味無臭だから、どんな飲み物とも相性が良い。そして、衝撃にも強く、お手入れもしやすいんです。」
そう話すのは、店長の坂上(さかうえ)さん。棚に並ぶさまざまな色や形のカップを持ってきて見せてくれた。
「見た目にも独特の風合いがあって、角度によって色や表情を変えるんですよ。これは、着色ではなく、表面の酸化被膜の厚さを変化させることで生まれる光の反射による色合いなんです。」
お店を訪ねるまでは、チタンについて全然知らなかったのだけど、聞けば聞くほど、なんだか神秘的で魔法みたい。
「やっぱり、錫や銅などほかの金属に比べて、チタンの知名度はまだまだ低いですね。でも、話してみると、みなさん興味を持ってくれるんです。」
坂上さんも、ここで働くまでは、こんな商品があることを知らなかったそうだ。
「わたし、新潟の出身なんです。燕でこんなものがつくられていたんだ!と知って驚きました。そして、それ以前に、見た目の美しさに心惹かれてしまって。」
その前は、アートコーディネーターとして企画の仕事をしていた。この先も「伝える」ということを仕事にしていきたいと思ったときに、SUS galleryの求人を見つけたそうだ。
働いてみると、思っていたよりも燕のものづくりは有名だった。けれど、チタンという素材を知っている人はまだまだ少ないそうだ。
「わたしたちは、職人さんの代わりにお店に立っていると思うんです。だから、まずは知ってもらいたいんです。伝えようと思うから、どう伝えたら分かりやすいか考える。お客さまに伝えたいと思うから、チタンについて勉強しようと思えるんです。」
接客というと、自分から話しかけなければいけないというイメージがある人もいるかもしれない。
けれど、SUS galleryの接客は、売るというより伝えるための接客。
まずは、こんなものがあるんだ、ということを多くの人に知ってもらいたい。
坂上さんのように、働く人自身が商品に惹かれていれば、伝えられることはたくさんある。
「お客さまに、あなただったらどれを選ぶ?と聞かれることもあります。自分が使っているものをおすすめすると、じゃあそれにしよう、と決めてくださったり。そういうのも嬉しいですね。」
商品は、そんなに気軽に買える値段ではないけれど、4割の方がプレゼントではなく自分用に買っていく。そして、特別なときではなく、普段使いする人が多いそうだ。
これを使ってお風呂でアイスクリームを食べたいんです、と嬉しそうに買って帰ったお客さんもいたそう。
商品の使い方を考えると、暮らしの夢が広がる。自分自身も商品が好きなら、きっとお客さんと一緒に盛り上がってしまうと思う。
「商品を褒められると、嬉しいんですよね。自分が褒められているみたいで。」
そう話すのは、スタッフの山本さん。
山本さんも、坂上さんと同じ時期にSUSgalleryで働きはじめた。
山本さんはほのぼのとした雰囲気だけれど、話を聞いてみると、すこし意外な経歴の持ち主だった。
「全然イメージがわかないと言われるのですが、わたしはもともと、IT企業の営業の仕事をしていました。飛び込み営業とか、やっていたんですよ。」
「そのころは、商品への愛着よりも、利益やお客さまとの関係を築くことを大切にしていました。仕事をするなかで、私自身がいいと思ったものを提供する仕事がしたいと思うようになって。そんなときにSUS galleryのことを知りました。」
働いてみて、どうですか?
「そうですね。前は自分から訪ねていく仕事だったので、あ、お客さま、来てくれるんだ、と思いました(笑)。でも、お客さまに分かりやすく伝えるという意味では、営業も販売も同じだと思います。」
販売の仕事は未経験だったけれど、「伝える」という意味では、思っていた以上に仕事の幅が広かった。
「今年の2月に、お店のディスプレイを初めて自分で企画したんです。大変だったけど、楽しかったです。そういう企画の仕事も、これからもっとやっていきたいと思っています。」
少人数の会社だから、店舗の見せ方を考えるのも店舗スタッフの仕事。
季節のディスプレイのほか、母の日、父の日など、年間を通してさまざまなイベントにあわせた催しやショーウインドウの企画も、自分たちで企画する。
「ただ売るだけだと、つまらないかな。自分自身が発信できるようになったら、もっと楽しいと思います。」
店長の坂上さんが、こんな話をしてくれた。
「自分の意見が通りやすい、というのも、ここで働く魅力のひとつだと思います。ふつう、色々な過程を経ないといけないことも、提案してみると、すぐに会議にかけてくれたり、行動を起こしてくれたりする。現場の声をこんなに大切にしてもらえる会社は、珍しいと思います。」
坂上さんは先日、お客さんからの「こんな商品があったら欲しい」というご要望の声を企画書にまとめて提出したそうだ。
「坂上が作成した企画書を、先日本社に届けてきました。」
話に加わってくれたのは、営業の徳田さん。
「うちは、全員合わせて50人ほどの会社です。工場も町工場ですし、東京には10人ほどしかスタッフがいません。小さい会社なので、コアな部分に関わる人が必要ですね。商品のことをよく知ってもらって、ものごとを深く捉えてくれたら、企画提案もどんどんできる環境だと思います。」
徳田さんは、坂上さんの前に店舗の店長をしていたそう。今年から営業に抜擢された。
販売の仕事を通して、お客さんと直接話すことができる店舗という場の大切さも知っているから、いまは店舗と本社とをつなぐ架け橋のような存在になっている。
社会人になってからずっと接客販売の仕事をしてきたという徳田さん。営業の仕事は初めてだけれど、商品の魅力を店舗とは違う方法で伝えていく仕事にやりがいを感じているそう。
「今は、この直営店が唯一のアンテナのような存在ですが、これから路面店を出すなどの展開もあればいいなと思います。同じ商品でも、関西ではこんなふうに並べても売れない、など地域色があるので面白いです。まずは日本にしっかり広げていけるよう営業したいなと思っています。」
新しく働く人も、日々の仕事に向き合いながら、先のことまで想像できる人だといいかもしれない。
坂上さんが、こんな話をしてくれた。
「現在働いているスタッフは皆、それぞれ様々な職歴や経験を経てきているので、今後、各自の得意分野を活かせる店舗を創っていきたいとおもいます。私も前職のアートコーディネーターの経験を活かして、このお店でも、アーティストや作家さんの作品を展示したり、商品とコラボできたらおもしろそうだな、と思っています。」
企画していいですか?と坂上さん。いいよ、と徳田さん。
そんな様子を見ていて、提案しやすい、という雰囲気が伝ってきました。
企画力が求められているというよりも、商品が好きという気持ちで、みんながそれぞれ動いている職場なのだと思います。
知ったらだれかに伝えたくなってしまう。そんな求心力のある商品だから、まずは実際に触れてみてほしいです。
その上で、なにかできそうだとワクワクしてきたら、ぜひ応募してみてください。
(2015/6/6 笠原名々子)