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“包む”を提案する

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

四角い布で”包む”という文化は、奈良時代の聖武天皇の時代からあったそうだ。

“包む”のまわりには、さまざまな意味がある。”贈る”、”届ける”、”仕舞う”。もしかしたら”隠す”もあるかもしれない。

「ふろしき」は、包むもののかたちや大きさによってさまざまなかたちに変化しながら、人々の生活の物語を支えてきた。

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車や郵便パックなど物を運ぶインフラが発展し、一度は日本の人々の生活のなかから消えかけたものかもしれない。

でも、それがまた、現代の暮らしのなかに、新しいかたちで蘇りはじめている。

そんなこれからのふろしきの可能性を提案しているのが、京都にあるふろしき専業メーカー、山田繊維

ふろしきのみを扱うメーカーは、日本に数社しかないそうだ。

ここから、ふろしきの提案を通して、日本にふろしきの文化を継承していく営業スタッフを募集します。


京都駅を降り、地下鉄で烏丸御池駅へ。

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閑静なオフィス街のなかに小さな飲食店をときどき見つけながら歩いていくと、「山田繊維株式会社」と書かれたビルにたどり着いた。

旅館のように靴を脱いで上がり、応接室で社長の山田さんにお会いする。

「このあたりは昔、住居と仕事を備えた町家が連なる商家町だったんですよ。この場所も、ビルに建て替える前は町家だったんです。僕も、両親が仕事の間にご近所の家に預けられたりしていたそうで、このあたりの人はみんな顔なじみです」

そう聞くと、ここにたどり着くまでに見てきた景色に、よりあたたかみが増す。

昭和12年に山田さんのおじいさんが創業したこの会社は、80年という時間をかけて育まれてきた。

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「祖父は岐阜の農家の次男坊で、今でいう中学生くらいの年齢で京都の綿反を扱う問屋に丁稚に出て、商売を教えてもらったそうです。30の働き盛りのときに、お世話になっていた問屋さんが商売をやめるということで、そのあとを継ぐかたちで創業しました」

山田さんは、そんなふろしき屋さんに生まれ、大手アパレルメーカーに5年勤めたあと、家業を継いだそうだ。

「僕が会社に入った20年前は、ふろしきを買える場所はデパートの呉服売り場だけでした。いまの30〜40代の方は、子どものころ、ふろしきなんてほとんど使っていなかったと思いますよ。そういう意味では、ふろしきの文化って、一度途切れてしまったんじゃないかと、僕は思うんです」

「でも今は、時代の流れが変わってきたと思うんですよ。グローバル化してきたからこそ、自分たちの歴史を振り返ったり、足元を見るようになったのかな。なくなりつつあった昔のものが、新しい生活の存在価値として蘇りはじめている。ふろしきも、そのひとつだと思います」

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ふろしきのことをもっと多くの人に知ってもらいたい、という気持ちから東京・原宿にオープンした直営店「むす美」も、今年で10年目を迎えた。

ここには、子どもからお年寄りまで、幅広いお客さんがやってくるそうだ。

「『妖怪ウォッチに出てくるふろしきください』って、小学生の男の子がお母さんと一緒に来るんですよ。今はアニメの影響で、若い子も海外の人も、ふろしきのことを知っているんですね」

「でも、ふろしきというと、『あぁ、泥棒が持っているやつね』と、やっぱりオーソドックスなイメージが強いみたいで。今のふろしき、僕らのふろしきをもっと知ってもらいたいなと思うんですよね」

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デザイナーと加工先の工場と一緒につくる山田繊維のふろしきは、ベーシックな和柄から、これがふろしき?と思うようなポップな柄まで、本当にさまざま。

伝統を伝えるためには、古いものを守るだけではなくて、時代に合わせて変化していくことも大切なのだろうな。

今の人々の生活シーンに、どんなふろしきを提案することができるか。どんな商品やサービスとコラボレーションできるか。

そんなことを常に考え、行動に移していくのが、山田繊維の大きな役目なのだと思う。

「『ふろしき屋なんですけど』って商談に入っていくと、珍しいからなのか、『どんなものつくってるの?』って興味を持ってもらえるんです。海外の有名ブランドや大きな広告代理店、ファッッション業界の方、それから、京都で何百年という歴史を持つ老舗まで」

「ふろしきというものに対しての、接する人の広さ。一枚の四角い布だけど、これで包めるものであれば、どこでも繋がっていく可能性があるんです」

その可能性を「提案」していくのが、営業部のスタッフたち。

実際にどんな仕事なのか、働いている方たちに話を聞いてみた。


最初に話を聞いたのは、営業部のリーダー山口さん。大阪出身で、勤めて7年目になる。

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「ずっと海外の文化に憧れていて、中学生のときから英語ばかり勉強していました。外語大学に入り、海外旅行でいざヨーロッパの歴史的な建造物を目の前にしたときに、頭に描いた京都のお寺のほうが、わたしにとっては魅力的だったんです。あぁ、日本に帰りたいな、と思ってしまったというか」

と、ていねいに自分の言葉で、日本の文化に興味を持った理由を話してくれた。

この仕事は、ぐうぜん転職サイトで見つけたそうだ。

「あっ、って思ったんです。『父と暮らせば』という映画に、宮沢りえがふろしきを包む美しい所作がたくさんでてくるんですね。ちょうどその映画を観て、ふろしきって面白そうだな、と思っていたところだったので」

実際に働いてみて、どうでしたか?

「思っていたよりも、お客さんが幅広いな、と思いました。商品のデザインがカジュアルなので、お客さんもそんな感じなのかなと想像していたら、呉服問屋さんや法衣屋さんまで、本当に多様なんです」

京都の室町通り界隈を進んだ先には、昔なじみのお客さんである呉服問屋さんが並んでいる。

着物を購入した方に差し上げる粗品に喜ばれるようなふろしきを、一緒に企画したりする。

かと思えば、生活雑貨の小売店に商品を卸すこともある。その小売店も、観光地のお土産屋さんから、デパートに入る和雑貨のセレクトショップまでさまざま。

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ファッションブランド「minä perhonen」とコラボレーションしはじめてからは、取引先が洋風なインテリア雑貨のお店にまで広がった。

そのほかにも、飲料メーカーや車のブランドにノベルティなどセールスプロモーションを提案したり、お菓子やおせちなど、ギフトの包装資材としてふろしきを提案することもある。

たしかに、こうして具体的に聞いてみると、かなりお客さんの幅が広い。ふろしきというひとつのアイテムで、こんなに広がるものなのか。

最近では、HPやカタログ、テレビの取材を通して連絡をもらうことも増えて、そうした問い合わせに対応したり、新規開拓をすることも、営業の仕事。けれど、基本は既存のお客さんに提案をすることが多いそうだ。


「提案」というけれど、どんな提案をしているのだろう。

「月ごとに、このマーケットに向けてどんなものを提案するか、という『商談テーマ』を決めて、それをもとにお客さんに提案に行きます」

商談テーマ。

「たとえば、今月だったら、ふろしきをお中元のラッピングに使いませんか?とか、夏祭りの催事を控える小売店さんに、夏にぴったりのふろしきを提案しよう、とか」

商品そのものを売るというよりも、商品を使った企画を提案する、というスタイル。「営業職」だけれど、「企画提案職」でもあるような感じなのかな。

「そうですね。自分の仕事は『提案』することだ、という気持ちで動いています。問い合わせに対応するだけでは、なかなか売り上げは上がらない。プラスをつくっていくためには、商品や、展開の仕方、使い方を、お客さんに合わせて真剣に提案していくことが大事だと思います」

新卒でこの会社に勤めて5年目の余力(よりき)さんは、そう話してくれた。

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もともと古いものが好きで、京都の大学で民俗学を学んだ余力(よりき)さん。

「ここが決まらなかったら藍染職人になろうと思っていたので、ここで働けることになってよかったです(笑)」

と言っていたけれど、職人になることと同じように、きっとこの仕事にも、伝統文化をつなげるという使命があると思う。

だからこそ、受身ではなく、自分たちであらゆるアプローチを考えていきたい。

山口さんと余力さんに、仕事のやりがいを聞いてみた。

「お客さんと自分のキャッチボールがうまくいっているとき。必要とされて、それに応えられていると感じるときは、すごく楽しいですね」

「以前、和雑貨の小売店の仕入れ担当の方に、御社の売れ筋の商品をふろしきでラッピングして、ホワイトデーの企画としてセットアップで販売しませんか?という提案をしたんです。一緒にやりとりしながら企画を進めて、結果ちゃんとその商品がお客さんの手に届いたというのが、とても面白かったし嬉しかったです。そんなこと、あまりないんですけどね」

「こっちの提案力をきっちり高めていったら、信頼してもらえて、そういう企画がもっとできるようになるかもしれません」

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きっちり商品を卸すことを求められることもあれば、相談に乗ってください、というところから、一緒に企画をつくるような仕事もある。

お客さんひとりひとり、求めていることは違うので、イレギュラーな対応にも柔軟性をもって対応できる人がいいかもしれない。

自分で考えて動くことに、喜びを感じられるような人。

「情熱や体力も必要だけど、かと思えば、包んでお客さんに提案、という繊細な部分も要る。そんなバランスが必要かもしれないですね」

「まさにこんな人!」と紹介してもらったのが、生産管理部の松本さん。

最後に、松本さんにも話を聞いてみた。

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お会いしてみると、女性の多い職場で溶け込んでいる、と聞いていたとおり、雰囲気がとても柔らかい。

それを伝えると、「たしかに、ごりごりより、ちょっと中性的なほうがいいのかもしれませんね」と自分で言ってしまう松本さん。

ここで働きはじめてから今年で8年目。奈良出身で、奈良から会社に通っているそうだ。

まったりしているけれど、仕事はきっちり責任を持ってこなす。加工先の工場と会社を調整する窓口として、みんなに信頼されている様子が伝わってきた。

松本さんに、どんな人と一緒に働きたいか聞いてみた。

「色々な人が関わって仕事をしているので、みんなで仕事をするのが苦にならない人がいいんじゃないですか?それから、ここは京都の会社なので、イベントごとが色々あるんです。年に1度の家族会とか。そういう企画なども楽しめる人、大歓迎です」

続けて、こんな話をしてくれた。

「今、仕事のやり方が、がらっと変わる時期なんですよ。会社の歴史は長いけれど、新しいメンバーも多いし、今からつくっていこうって雰囲気があるんです。だから、一緒にいい会社をつくっていきましょ、って言いたいですね」

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きっと変わることを恐れない社風だからこそ、ここまでお客さんが広がってきたのだと思います。

大きくいえば、ふろしきの文化を次の世代につなげていく活動。そこまでイメージできる人だと、さらに仕事が面白くなるかもしれない。

四角い布一枚に込められた可能性。きっとそこから、コラボレーションは無限に広がります。

(2015/6/15 笠原名々子)