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京からかみに魅せられて

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「それを見た瞬間『すごいな!』って。いろんな柄を張り合わせたちぎり絵のようで。じいちゃんがつくったとは思えないくらい古くささはなくて、現代の空間にも溶け込むようなものなんです。それが、からかみに取りつかれた瞬間でしたね」

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古くは細工紙として中国から伝わり、平安時代から襖に貼る紙として使われた「からかみ(唐紙)」。

伝統的な技法によって刷られるからかみの風合いは、素材の組み合わせによって千差万別です。彫刻した版木の柄と顔料の色、そして摺る紙質によって、茶室はもちろん子ども部屋にも合うからかみをつくることができます。

からかみは江戸時代に一般庶民の住宅にも普及し、京都と東京でそれぞれの文化と融合した唐紙、京からかみと江戸からかみが生まれました。

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京からかみをつくる数少ない会社のひとつに株式会社丸二があります。

もともとは明治時代に表具師として創業。その後、襖をはじめとした内装材の材料の卸業をはじめました。

印刷技術の発展とともに京からかみは衰退。からかみ屋の顔とも言える版木を各社から譲り受け、自身もメーカーの機能を持ちながら京からかみを伝承してきました。

いま新たな局面から、丸二はこれまで以上に京からかみを打ち出していこうとしています。

そこで今回は、京からかみの魅力を伝える人を募集します。

京からかみの営業を中心に、寺社仏閣の内装工事の営業、そして京からかみや寺社仏閣の施工管理を行ないます。

現場は住宅から文化財の寺社仏閣までさまざま。京からかみの素材や柄の種類だけでなく歴史背景など、覚えることはとても多いですが、好きならのめり込むように覚えていけると思います。

京都市にある「からかみギャラリー」で、代表の西村さんに話をうかがいました。

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西村さんは4代目として、7年前にこの会社を引き継いだ。

もともとは「からかみの“か”の字も興味がなかった」という西村さん。大学で建築を学び、卒業後はINAXに就職した。

「やっぱり若いときは親父に反感を持っていてね。商売するのにそんな頭ばかり下げてと思っていたし。自分はもっと違うことを見つけてやろうと思って、生活の中になくてはならないものをつくっているメーカーに入ったんです」

「だけど、じいちゃんが亡くなったときに、やっぱり帰ってこなければならない運命なんだって痛感して。入社してしばらくしたとき、倉庫を整理していたら、この額を発見したんですよね」

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それは西村さんのお祖父さまがつくった、京からかみを張り合わせたちぎり絵のような作品。

これまで古くさいと感じていた京からかみに、現代でも十分に通用する可能性を感じたという。

「京からかみは、もともと多くの種類の紋様がありますけど、版木からつくって紋様をデザインすることができます。色もカラーチャートを指定してくれたらその色でできる。紙もいろんなものが選べます。伝統といっても、自分の思い通りのものがつくれるんです」

「それと、絵の具のムラが摺ったときによって変わる。風合いが一枚一枚違うんですね。それは印刷では絶対に表すことができない特徴です」

ギャラリーに展示されている京からかみのひとつに、「東大寺型」という紋様が摺られたものがある。

ここに描かれているのは、奈良の鹿や空想上の生き物たち。可愛らしいその紋様に、はじめて見たときは家族向けにデザインしたものなのかなと思ったけれど、ずっと昔からある紋様なんだとか。

たとえばこれの紙を白色に、紋様を赤色にしてポップな感じに仕上げられるのも、京からかみの面白さだと思う。

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こうした京からかみに再び注力しはじめたのは、西村さんが社長に就任してから。それまでは本業の内装材料卸業で手一杯な状況だったという。

「まえから社長になるタイミングでからかみにテコ入れをしていきたいなと思っていました。需要が大きく減っていくなか生き残るには、伝統という枠に縛られずに、いままで使われてなかった空間とか現代のライフスタイルに合うように、からかみを提案していかないと」

もともと自由度のある素材。広く一般消費者からもオーダーメイドの注文をとって住宅の壁紙に使えるようにしたり、レストランにアートパネルとして施工したり。

京からかみの認知度を上げるため、版木を模したギフト商品も開発した。

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さらに西村さんは、次世代の京からかみの開発に取り組んでいる。

すでに一部販売をはじめているという「漆からかみ」。

「いまのからかみにできることはまだあるのだろうけど、限界があると思うんですよ。なぜかといえば、作業の都合上からかみは一色でしか表せないんです。だから、たとえば洋室にからかみを入れると、そこは一つひとつのものが強調し合っている世界なので、やっぱり限界がある」

「新しい世界に行くと限界を感じる。じゃあ、どうアレンジしたらいいのか。いろいろ考えると、京都でつくられている漆がいいと。なかなか負けない存在感があると思うんですよね」

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2020年には東京オリンピックが開催される。需要が増えるホテル・商業施設などへのからかみの採用のために、これからは設計事務所やオーナーへの営業活動に注力していくという。

それを弾みに、こんどは海外を視野に入れた展開を行い、京からかみの需要拡大を目指していく。拡大する需要を見越して、新たにからかみ職人の育成もはじめているという。

核となる事業がからかみに移り行くなか、新たに加わる人の役割は大きい。

「知識がなくても好きならどんどん覚えていけます。まず、そこかな。好きなことを伝えると、聞く人も感じ取ってくれますからね」

 

たしかに、好きでやっている人の話を聞くのは楽しいし、いつの間にか自分も興味を持ちはじめていたりする。

ここで働くスタッフふたりの話を聞いても、そんなことを思った。

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写真左から、石田さんと高畠さんです。

石田さんは、西村さんが学生だったころから丸二に勤めている大ベテラン。主に寺社仏閣の案件を担当し、全国各地で京からかみをはじめとしたさまざまな内装の施工管理を行なっている。

「そこの、からかみを貼っている壁を触ってみてください。ポコポコしていると思います。その下に和紙が7枚くらい貼ってあるんですよ。予算を見て、下にどれだけ和紙を使うか計算して、職人を決める。予算を十分にもらえると100年もたせます」

紙で100年も。すごい。

「そのくらいもたせないと困る場所があるんですね。ほかにも壁に金を貼るんだったら金箔を貼る職人さんを、漆を塗るんだったら漆塗り職人さんを連れて行ったりして。昔に比べて、だんだんと文化財の仕事をいただけるようになりました」

「現場が一緒になる人には国宝をされる施工店さんがいたりしますから、日本のトップ技術を教えてもらって帰ってくるわけですよ。誇りに思える仕事がたくさんありますね」

今回募集する人は、内装材料や空間についての知識を学ぶために、石田さんのように寺社仏閣の仕事も一部担当することになる。

間違えが許されないなかプレッシャーは大きいけれど、歴史的な建造物に携われるのはこの仕事の醍醐味でもある。

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高畠さんは3年前に入社し、主に京からかみの営業や施工管理、ギャラリー運営を担当。百貨店でのイベント販売なども企画している。事情により、今年で退職される予定だ。

「もともとからかみが好きで、大学でも卒業論文をからかみについて書いていたので、丸二のことを知っていたんです。転職するときに、からかみに携われたらなって思って、ここに来ました」

そんな高畠さんが好きな紋様は「光悦桐」。江戸時代のデザイナーがつくったものには、桐の模様が多いのだという。

「波につぼつぼ」という不思議な名前のものもある。

「それはお茶柄の定番です。お茶をされるとき『どこのひと?』って聞かれると思うんですけど、表千家とか裏千家とか、いろいろと分かれていて。それによって襖の紋様も変わるので、気をつけなくちゃいけないんですよ」

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ほかの紋様も眺めていると、「これも好きだなあ」という高畠さんの言葉に「いや、ないない」と石田さん。

ふたりとも何だか楽しそう。

「紋様を話すと、とまらないですね。ずっと喋れるなあ」

次々と出てくる話に「これは?これは?」とついつい聞いてしまう。やっぱり好きでやっている人の話は楽しい。

高畠さんは、どこに営業する際も基本的なスタンスは変わらないと話していた。からかみの専門家として、対等な関係で話し合う。魅力を伝えるのには、好きであることが一番だという。

「お客さまと一緒に夢を見るように、どんな色の紋様にするかご提案して。『これどうかな?』って聞かれたら『その組み合わせはきれいやと思います』って、わーっと盛り上がって」

「わざわざ施工後の写真を送ってきてくださったり、お菓子を送ってくれはったりとかして。大事やと思えるお客さんに出会えて、その人がよろんでくれはることが一番うれしいですね」

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新しく加わる人は、どんな人がいいのだろう。

「自由にやってもらえたらいいなと思います。お客さんのため、それだけを考えて動ける仕事なので、誠実な人やったらいいな。とくに京都の人は鋭いので、嘘つくとバレますから(笑)」

それと営業は全国に渡るから、体力がある人のほうがいいそう。

また社員は10名ほど。人数の多くない会社だから、営業職とはいえいろんな仕事が舞い込むことを知っておいてほしいとのこと。

「からかみを見たことがなければ、まず見てもらいたい。飽きない魅力があって、本当に素晴らしいものなので。見て好きやと思ったら、ずっと続けられると思います。いつ見たってきれいですから」

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写真だと紋様が写りにくいので、うまく伝えられないのが悔しいところ。ぜひその目で確かめにいってほしいです。

きっと全く知らなかった人でも、何か感じることがあるはず。そう思わせてくれるくらい、京からかみは素敵でした。

まずは好きになるところからはじめてみてください。

(2015/7/16 森田曜光)