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「新しいファッションブランドを立ち上げる仕事の募集をしたいんです」最初にそう聞いたときは、圧倒的なデザイン力が求められると思っていた。
けど、それ以上に必要なのは、着る人が喜んだり楽しんだりする姿を想像して、その人たちに合う服を考えるということ。
カッコイイやカワイイだけに終わらない、着ることのうれしさや楽しみ方を届ける仕事です。
ECサイト「cawaii」を運営する株式会社ワンピースが、ブランドディレクター職候補を募集します。
まずは研修からはじまり、1年をかけて新しいブランドを立ち上げることになります。
どんな仕事なのか、兵庫・加古川にあるワンピースのオフィスで話をうかがいました。
山陽電車・別府駅を下車。
近くに保育園があるのだろうか。子どもたちの遊び声が聞こえるのどかな住宅街に、ワンピースのオフィスはある。
建物を撮影していると、道の向こうから専務の八百さんが声をかけてくれた。取材のためにコーヒーを買いにいってくれていたようだ。
「どうぞ、中へ入ってください」
案内された部屋の棚には、生地のサンプルがずらりと並べられている。ここで新しい商品のデザインを考えているそう。
「2階はクリエイティブチームがいます。そこではブランドディレクターがリーダーとなって、それぞれのブランドにおいてどのようにお客さまに商品を提案しようか、みんなで試行錯誤しながらつくっています」
ワンピースが運営するECサイト「cawaii」で販売するのは、女性向けの洋服や鞄、アクセサリーなど。
企画したオリジナル商品やセレクトした商品をwebサイト上にラインナップし、入荷から出荷まで自社で一貫して行なっている。
スタッフは総勢45名ほど。それぞれブランドチーム、検品チーム、出荷チーム、顧客対応チームなどに分かれて、同じ施設内で仕事をしている。
ワンピースが創業したのは2009年。社長の久本さんは現在31歳と若い方だ。
会社をはじめた経緯を聞くと「ロマンチックな話があればいいんですけどね(笑)」と久本さん。
会社を経営していたお父さまの影響で、高校生のころから会社経営について興味があったそう。松下幸之助や本田宗一郎、スティーブ・ジョブズといった経営者の本を、授業そっちのけで読んでいたという。
大学やベンチャー企業でのインターンシップで経営を学び、21歳で独立。
ちょうどインターネットが広く浸透していった時代。広告代理店などのネットサービスをやってみたけれど、なかなか上手くいかなかったという。
「それで新たにインターネットオークションの販売代理をはじめて、ある程度は稼げるようになったんです。でも、自分はもともと何をやりたかったのだろうと改めて考えて。社会に貢献できて、自分たちにしかできない価値をつくりだすことってできないかなと」
ただ何をはじめるにも、まずはお金を稼ぐことができなければ続けられない。目を付けたのは、ネットオークションでよく売れていた洋服のワンピースだった。
そこでワンピースを専門に扱う会社として、株式会社ワンピースを立ち上げた。
「会社をはじめてから、売上に悩んだ時期があって。いっぱい悩んで、いろんな本を読んで。そのとき出会った本にこう書かれていたんです。物が売れるというのは結果論であって、その手前には喜んだり楽しんだり、そういう、人の心の動きがある。買うという行為は、結果として表れる現象なんだと」
「じゃあいまやっている仕事はどうだろうと、また考えて。服を着るというのはみんながすることだし、それを楽しめたら毎日が幸せになるんじゃないかなって。その楽しみ方が提案できたり、『楽しい!』という共感をつくり出す人がもっと増えたら、もっともっと世の中が面白くなるんじゃないかなって思いはじめたんです」
久本さんをはじめ、ワンピースのディレクターたちが一番に関心を持っているのは、どんなものをつくるかではなく、その先にいる人たちがどんなことを感じてくれるか。
自分たちが提案する服を通じて、着る人が喜びを感じたり、その人自身のなかに変化が生まれたり。それによって「人生って面白い」ということを提案していきたいと、久本さんは話す。
だから、ワンピースが打ち出している5つのブランドはデザインで分類されているのではなく、その服をどんな人に届けたいかで分かれている。
たとえば、ブランドのひとつ「mori」はこんな人に向けられているという。
「量販店に行って、心に刺さるものがないと感じている人って世の中にいっぱいいると思う。そんな人がうちのサイトに来てもらったときに、『ほかにはないカワイイものがたくさんある!!』っていう驚きや感動の瞬間を届けようよ!それがmoriのイメージしているテーマです」
「私は個性的なものが好きなんです。5年前に個性的な森ガールが流行りだして。おしゃれで個性的な服を着て、もっと挑戦的になることがあってもいいじゃないかと。それをナチュナルな服が好きそうな人たちに訴求していこうと思ったんですね」
ほかにも、いまリニューアル中の「french」は、こんなテーマに変わる予定だ。
「結婚して子どもが生まれて、家にいることが多いママさん。量販店の服を着て、眼鏡かけて、髪の毛はちょっとぼさぼさになっている。でも、昔はオシャレを頑張っていた。現状をよくないと感じながらも、まだ踏み出せてない。そういう人たちに向けて提案したいなと」
「おそらくそんなママさんも、久しい人たちと会う瞬間は“ママ”じゃなくなっていると思うんです。『えっ、子どもいるの?全然変わんないね』って。そんなふうに言われたときは、めちゃくちゃテンションが上がると思う。そんな『ママじゃなくなる瞬間や体験」をもっと増やしてあげたい。そのために必要な服を提案してあげたいんですね」
この人にこんな体験を届けたい。そんな思いをもとにブランドをつくる仕事。
同じファッション業界でも、自分のデザイン性を発信するブランドとはそもそも根幹が違うように感じる。
だから、着る人が喜ぶ姿をしっかり描けるかどうかが、ここでは一番に求められることなんだと思う。
実際に新しいブランドを立ち上げた方にも話をうかがう。「otona」のブランドディレクターの大西さん。
これまで数々のブランドを立ち上げたベテランかというと、そうではなく、前職では百貨店で婦人服の販売をしていたそう。
4年前にワンピースに入社し、はじめは検品やアイロンなどの品質管理業務を担当していた。
モデルを撮影する際のコーディネートを担当したり、だんだんと仕事の幅を広げていったという。
「久本さんが買付した服のなかには、既存のブランドにはおさまりきらないものがあったので、それを別のブランドで売りたいと私が言ったんです。それがotonaのきっかけで。moriやfrenchの商品はかわいいけど、自分くらいの年齢に合ったものに触りたかったんです」
otonaのテーマは、主婦になって体型が気になる人でも、楽しんで着ることができる服。40代以上の女性がターゲットだ。
大西さんはブランドディレクターとして買付からオリジナル商品の企画、スタイリング、撮影、商品ページの作成まで、4人の専属チームと一緒に行なっている。
商品を買付するときはどんな判断基準なのだろう。
「まずはパっと見て、自分が欲しいと思う感覚が一番です。それで実際に自分やスタッフが着てみたり。わたしは50代で、チームメンバーも40代。自分たちが欲しいと思うもの、かつひねりがあるデザインの服を見つけています」
ただ、どんなに自分たちがいいと思った服でも、なかにはあまり売れなかったものもあるという。
そんなときはお客さまの反応を分析して、次の策を練る。たとえば、サイトの画像がお客さまに伝わっているかどうか確認して、別の画像に替えてみたり。もう一度コーディネートし直して再撮影してみたり。
それでもだめなら値段が問題なのか、そもそも商品がニーズに合ってなかったのか、と考える。
専務の八百さんは、こう話す。
「自分が欲しいという感覚を持ちながら、一番の答えであるお客さまの反応を確かめて、次の仕入れに活かす。そして、またお客さまの反応を確かめてっていう、その繰り返しのプロセスを常に、そしてすごいスピードで回すことが求められています。実際にブランドディレクターたちは、その感覚を日々磨き合っています」
「インターネットなのでスピードはとても早い。物事をポジティブに面白がれて、どんどんやってみましょうっていうマインドを持っているといいですね」
実店舗を持つ一般的なアパレル企業は、インフラの関係から月に40種類ほどの新作を発表するのが一般的だという。
ワンピースはECサイトのみで販売を行なっているため、よりスピーディに展開することができる。毎日4〜5種類の新作をそれぞれのブランドが発表しているそうだ。
大西さんは買付した商品以外にも、すでに20以上ものオリジナル商品を企画し、お客さまに提案してきた。
なかでも反響がよかった商品を紹介してもらった。
「サルエルパンツって好きな人は好きなんですけど、人によっては他の服とどう組み合わせればいいか扱いづらいデザインなんですね。そこで、見た目がスカートを履いているように見えたらどうかなって思ったのがきっかけで。社内の人に聞いて回って、大まかなデザインができたら、メーカーさんと協力してカタチにしました」
「想像していた以上に多くの方に共感いただけて、すごくうれしかったですね」
いままで服をデザインしたことのなかった大西さんがこうしてヒットする商品が生み出せたのも、一つひとつの失敗を乗り越えてきたから。
ここに至るまで大変なことがたくさんあったそう。それでも大西さんがめげずに続けてこれたのは「やっぱり服が好きだから」だという。
「ファッション関係に携わっていたい。自分もまだまだだって思いながらやっていける会社なんですね。のびのびと仕事をさせてもらえるので感謝してます」
今回加わる人も、服が好きな人がいいのだと思う。
久本さんは、ファッション業界での経験があったり、そうでなくてもファッションがすごく好きな人ならやっていけると話していた。
パソコン操作の技術やECに関する知識は、あとから覚えられるという。また、デザインやパターンなどの服飾知識が必ずしも必要というわけでもない。実際、ブランドディレクター全員が服のデザインについて専門的に学んだ経験があるわけではないそうだ。
社内の元デザイナーや元パタンナー、社外のメーカーの方々などの協力を得ながら、一つひとつ商品をカタチにしていく。
ワンピースは、いい意味で一般的なアパレル業界の常識が通用しない会社。たとえ業界1年目でも自分でブランドを立ち上げることができる。
ただ軸となるのは、着る人が喜んだり楽しめる服を提供すること。そこに共感できて、服やファッションが大好きな人なら、1年を経て新しいブランドを立ち上げることができると思う。
最後に、久本さんから一言。
「本当にエンターテイメントなビジネスだと思うんです。どれだけ人々に喜びや楽しさを提供できるか。服があってのブランドというより、そういう価値観あってのブランド。そんなブランドが集まったcawaiiをつくりたいと思っています。そのために、何よりも仲間が必要。私たちの価値感に強く共鳴してれる人たちに集まってもらいたいですね」
自分も、ほかにはないカワイイ商品で、こんな人たちにこんな体験を届けたい。そして人々の毎日を、驚きと感動と幸せの溢れたものにしたい。
そんなふうに思った方は、ぜひ応募してみてください。
(2015/7/11 森田曜光)