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どうなる?林業

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

日本の木材に触れる機会は増えつつある。

2014年には、林業研修に参加する若者を主人公にした映画「WOOD JOB」が上映。

木材自給率を現在の28%から50%に引き上げようとする政府。個人の住まいにおいても、床に木を張るようなリノベーションも増えてきた。また、耐火性のある木材が開発されたことで、木造のビルや商業施設も増えている。

林業も盛り上がりつつある。

たとえば全国に広まりつつある林業女子会。

新規就業者は、年間3,400人。10年前の1.7倍に増えた。その中心は30代だという。

とはいえ、まだまだ林業は遠い存在に感じる方も多いのでは。

実際のところ、林業ってどうなんだろう?

就職先を探している人から、次は現地を訪れたいと思っている人まで。

幅広く林業との出会いを生み出す人たちを徳島県に訪ねました。

その名前も「山武者」。

 
人口約9,000人の暮らす那賀町(なかちょう)。古くから林業のまちとして栄えてきました。町内6社の林業関連会社と森林組合から、20代30代の若手31人が集い、2012年に山武者ははじまりました。林業の担い手確保育成から、木の大切さを伝える講演、地域のイベント出展等様々な活動をしています。

今回は普通の求人ではありません。9月に行われるツアー「9月19日~21日に行われるリアル林業体感3DAYS」の参加者を募集します。

現時点で就職を考える方には、就職相談も受け付けます。

 
みなさんより一足先に、現地を訪ねてきました。

林業に生まれつつあるイノベーションの波。そして同世代の人たちがいきいきと働く姿。

まずは読んでみてください。

 
この日は、東京から徳島へ。

飛行機に乗り、50分ほどで海に囲まれた四国大陸が見えてきた。

image003 徳島空港から那賀町までは約60キロ。吉野川の支流にあたる那賀川を車で上流へと進んでいきます。一般道を進むこと2時間弱で那賀町へ。

2005年に3町2村が合併して誕生した那賀町。古くから林業で栄えてきました。なかでも那賀川の源流に位置する木頭村は、「木頭すぎ」というブランドも。

早速、山を見せてもらうことに。

案内をしてくれたのが、山武者中心メンバーの一人である髙木さん。徳島県鳴門市の出身。

image005 「山に入っていきましょう」

長靴に履き替えヘルメットをかぶり、山の斜面を上っていく。

傾斜がきつくなると、髙木さんがほどよい木の枝から杖をつくり、手渡してくれた。

あっという間に体が温まり、額に汗がにじんでくる。

「50、60代のベテランたちは、道路を歩くようにすいすい上るんです。ぼくがはじめて仕事で山に入ったのは、1年半前です。山を歩けるようになったときはうれしかったですね。毎日少しずつできることが増えていくんです」

20分ほど上ると、樫谷林業さんが木の搬出作業を行っているところ。

image007 ベテランの井村さんが伐木(ばつぼく=木を切ること)を行い、無線で連絡を取りながら、将志さんがクレーンで搬出していく。

ここで「ちょっと手伝ってきますね」と髙木さん。重機に乗りこんだ。

休憩時間に話をうかがった。

「人手が足りないときは、組織を越えて助け合うこともあります。みんなで那賀町の林業をつくっている感じです」

途中でこんな場面があった。髙木さんが、なかなかうまく搬出できないでいると、ヘルプに入った樫谷さんは一発で搬出させた。

「教わること、色々あるんです。自分の仕事の幅も広がりますよね」

はじめに入るとき、大変なことはありませんでしたか?

「移住者か地元か、というのはあまりないと思うんです。色々な人を受入れてくれる雰囲気があると思う。そらケンカもするかもしれませんけど。相手が自然じゃないですか。ちょうどいい妥協も生まれる気がします」

仕事というよりは、部活のよう。声を掛け合いつつ、楽しそうに仕事をしている。上下関係が厳しいイメージがあったのだけれど、フラットな雰囲気。

image009 樫谷林業の跡継ぎである将志さんは、山武者の会長も務めています。21歳で山に入り、今年で15年目を迎える人。大きな体でよく笑う姿が印象的。

「うちは、ずっと4人でやってきた。髙木くんが手伝いに入って、変わったよね。楽しくなった。面倒くさいこともあるけどね。いままでは“あ・うん”でやれたことを、いちいち言葉で伝えないといけない。でも、楽しさもある。人が入ると、変わるよね」

林業には、体力的に大変なイメージもあります。

「大変だよ(笑)。機械を使えばやかましいし。冬は雪の中で仕事をする日もあるし、夏は暑くて虫だっている。でも、日々自然は変わっていくから、あきなくて」

今回のツアー募集に人が集まるのか、不安もあるそう。

「もし自分が東京に生まれ育っていたらね、山で仕事したいと思うのかな?なかなかイメージできないと思う。まして徳島のいなかで生活が成り立つかわからんもの。お互い、未知の世界だよね」

「だから林業体験ツアーをやってみたくて。まぁ、そんなに構えんでもいいし、ちょっと『遊び来てみぃ』ぐらいですけどね。山に入り、仕事を見てもらって」

実は、林業にも色々な仕事があります。

春から夏にかけては保育と呼び、苗木の植え付けから雑木を手入れする下刈りを行う。出荷がはじまるのは、土用の丑の日のころ。

「山に入るだけが仕事じゃないんです。森林組合の事務職も、木材市場も、加工業者もいます。お互いサポートしての林業です。どういう仕事が合っているか探すこともできるでしょう」

仕事は17時で終了。みなさんトントントン、という間に山を下っていく。

image011 ところで、どうして髙木さんは林業へ?

下りながら話をうかがう。

「僕はもともと海の育ちです。ビーチコーミングで漂着物の出どころを調べてたら、山から来たゴミも少なからずあることを知りました。山で仕事をすれば、山も海も空も。すべてをよくすることができると思ったんです」

実際に働きはじめてどうでしょうか。

「たやすい仕事ではないんですよね。普段の生活含め町とは全然違う。でもお金を払ってもできない刺激があるんですね。仕事場は山の中です。自分よりも年上の木を切り出していきます。はじめて木を切ったとき『生きものなんだな』と腑に落ちるところがあって。理屈では伝わらないかな… 自分でやってみたら感じると思いますよ。いまも山に入る度に木の匂いを感じますしね」

「自然と遊びたい人には、色々な体験ができますよ。ハチミツも採れるし、ジビエの罠漁もできる。興味の幅は広がっていくと思います」

髙木さんは、毎日が楽しくて仕方ないという感じ。

2泊3日の林業体験では、どんなふうに過ごすのですか?

「大阪から無料バスも出して徳島駅を中継して那賀町集合。まずは安全講義。現場で重機にも乗れます。伐倒。林業の仕事を知ってもらえたら。この日程に限らず、随時興味のある人がいたら対応させてもらいます」

「いま時点で、あれもこれも用意が整っているわけではありません。でも、逆に言えばかたちが決まっていない分、目の前の人に全力で応えていきたいと思っています。そうやって一緒につくっていけるとよいですね」

男女を問わず来てほしいし、ご夫婦での参加も考えられるとのこと。

「自分の考え方次第です。事務職につき、安定的に生活していくのも一つ。また現場職につけば、自分の働いた分だけ売上げにつながりやすい」

ここで今日は終了。




翌日は、別の現場も見せていただく。

移動の車中からは、那賀川沿いの段々畑に柚子が見える。

「昔から木頭柚子のブランドで有名で、一大産地なんです」

訪ねたのは、八田さん。

image013 那賀町に生まれ、大学で大阪に進学。その後Uターンして山へと入りました。働きはじめて8年目。森林組合を経て、現在の仕事へ転職。

きのう話をうかがった樫谷さんとは打って変わって、ひょろっとした人。

チェーンソーをつかい、木を切り倒していく八田さんを撮影していると、「やってみますか?」と声をかけてもらう。

image015 ポケットからチョークを取り出すと木に印をつけて、言葉でも説明をしてくれる。

はじめての経験だけれど、とてもわかりやすい。

八田さんは、いま考えていることを話してくれた。

「これからの林業にはさまざまな選択もあると思います。いまある会社の中で頑張るのも一つ。林業に未来を感じる仲間で集まり、新たに立ち上げるのも一つだと思います。保育、搬出はもちろんのこと、事務の人。広報を担っていく人も必要かもしれません」

ここで髙木さん。

「那賀町の林業組織は、大きく変わりつつあると思います。今後独立する人も増えるのでは。大切なのは、誇りを持って働けること。独立する姿を見て、老舗会社で、若手のやる気が増すかもしれない。これからの林業を築いていきたいんです」

「自然相手の仕事で、いままでなかったものをつくりたい。山武者は、そこに楽しく向かっていきたいんです」

image017 ところで、林業って食べていけるんですか?

「輸入材に押されて、切り出しても売れない時代がありました。そんな頃には、林業従事者も集まりませんよね。40、50代の中堅層がいないんですよ。でもいまは切り出せば売れる時期です。山には50年前、100年前に植えられた木が出荷を待っています。中国の需要増に押されて、外国材の輸入も難しくなりつつありますし、実は国産材のほうが安かったりもします」

「そうした中で、働きかたも変わり目に差しかかっています。将来の林業経営者を育てる時期にきています。移住者が山を保有して、切り出しまでを行う“自伐(じばつ)型”の林業もできると思います」

たとえば育ちの良い50年生の杉1本の価格は,1.5万円程度。山を所有する自伐型林業の場合、一日に10本を切り出せば月間で400万円程度の売上げになるという。

「将来は、僕も山を持ちたいんです。住宅材として杉・ヒノキを育てつつ、果樹もやりたいんです。たとえば家具に好まれるウォールナット(くるみ)は、国産材がほとんど手に入らないけれど、需要はあります。ニーズを聞いて、つくることも考えられます」

なんというか、未来がある仕事かなと思いました。

「未来を感じたら、来てほしいんです。やるべきことも、やりたいことも、やれることも。色々あります。山武者は、体育祭とか文化祭みたいに、ワーワーやってますから(笑)」

image019 山武者では、イベントへの出展を通したPR活動。さらには、那賀町の木材を活用した木工製品の製作まで取り組んでいる。

「いま、後押しされている感じが伝わってくるんですよ。那賀町はもちろん、徳島県からも。もっと言えば、日本の林業が動きつつあります。『林業、変われ』って言われていると思うんです」

 
(2015/7/31 大越元)