求人 NEW

家主になる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

※たくさんのご応募をいただいたため、募集を終了いたしました。ありがとうございました。

「僕たちは家をたくさんたくさん見てきました。そういう僕たちだからできる宿泊施設とかホテルってあるんじゃないかなって思えてきて。僕たちじゃないと、できない何かがそこにはあるだろうなと思ったんですよね」

生活の大切なものを追求していったとき、どんどん「人」に寄っていったといいます。

不動産賃貸の仲介をしているR-STORE。いま新しい宿泊施設をはじめようとしています。

r21 それは働くことになる人がつくる「家」のような宿。友だちを家に呼んだり、自分の好きなものをすすめてみたり。人と空間や時間を共有することが好きな人におすすめしたい仕事です。


目黒川の川沿いにある築50年以上たつマンションの一角に、アールストアのオフィスがあります。長いこと時間の積み重なった庭には、緑が枝を伸ばしていました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA アールストアで扱っている賃貸物件は、デザイナーズマンションや建築家の建物だけではない。建物のなかに、気持ちを豊かにしてくれたり、思わず顔がほころんでしまうものがある。そういった「なにかいいと感じるもの」を拾い上げて物件を紹介をしている。

どんなところからその感性は生まれたのだろう。


迎えてくれたのは、代表取締役の浅井さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 通された部屋には絵が飾られていて、テーブルにはエアプランツが置かれていた。なんとなくほっとして、座ってお話をきく。

「僕は大学で、建築設計の勉強をしていたんです。けれど、建物は十分にあるのにつくる意味があるのかって疑問をもち始めて」

「でも、それでもいいデザインをする人はいるんです。そう考えたら、満ち足りた世の中で創作意欲を持てない俺より、やっぱり持てる人がやるべきだろうって。俺、設計向いてないなって思ったんですよね(笑)」

けれども建築が好きなことは変わらなかったといいます。友達のつくるいい建築を紹介して、ユーザーとつなげたらいいなと考えていたそうです。

大学院を卒業後は、インテリア会社に入社し、店舗内装の仕事などに関わった。請負をするうちに、不動産に興味が出てくるようになったそうです。

「やっぱり事業主のほうがコントローラブルだなと知ったんです。ディベロッパーとしてお金を出す側の方が、よりまちづくりとかお店づくりにコミットできるんじゃないかと思ったのがきっかけですね」

「たとえば目黒川沿いで川にむかって玄関のある家があるんです。これって南側に窓をつけたいからなんですけど、せっかく川があるのにもったいないじゃないですか。建物って、30年40年とそこの場所を占有するわけですから。そういうことに意識的になれる人がちゃんとディベロッパーだったり不動産プロジェクトに投資する投資家側にいないともったいないと思ったんです」

はじめは建物自体のもつ影響力を意識していた浅井さん。

そんなとき、不動産ディベロッパーの会社から声がかかり、転職したそうだ。しかしリーマンショックが起こり、会社が倒産してしまう。その会社が持っていたサイトをゆずり受けてつくったのがR-STOREだった。

r15 じっさいに不動産の仕事をしてみると、あらためてインテリア会社時代にみてきた建物の内側を見るようになった。

「僕ははじめ、建築家が建てた住宅が素晴らしい生活を送れる器だから、もっとみんなに紹介したいなっておもっていたんです。けれど内側を充実させていくことでも豊かな暮らしができるんだと思うようになりました。生活というものがつくられるために建築があるし、主体はやっぱり人間だと思うので」

建物自体にあった興味は、インテリアや絵やグリーンなどの建物の内側へ、そして料理をすることや寝るといった行為など人の気持ちのほうにも広がっていったそう。

r16 「人が気持ちいいとか楽しいとか幸せだっていう、割とシンプルな感情を実現するためにいろんなことをしているんです」

建物を中心にその外側と内側をみてきた浅井さん。いろんな角度から生活をみることで、生活にとってたいせつなものを発見してきたのかもしれません。

これからはじまる宿泊施設は、働くことになるスタッフの「家」にしてほしいと言います。

「ずっと『家』を見て生活を探求してきたからこそできることがあると思うんです」

できること?

「家と宿の境界ってすごく曖昧だと思うんです。ホテルは短期滞在する家とも言えるし、賃貸アパートは長期滞在するホテルだとも言える。そう考えると家も宿も変わらないんじゃないかと思って」

「だから、ただ僕たちが好きな家をつくろうかなと思ってるんです」

r20 コンセプトは「泊まれる本屋」。9月にオープンの予定で、画像はそのイメージ。たくさんの本に囲まれた空間があって、その奥に埋め込まれるようにドミトリーのベットがある。本を読んでいたら、いつのまにか眠ってしまいそう。

「好きなものに囲まれた家になるのかな。そういう意味では『R-STOREくんち』みたいな感じなんですよね。僕らが好きな場所をつくって、そこに泊まりにおいでよ、みたいな。だからオペレーションとかおそらく相当不完全なんですけど。でもそこには僕たちの趣味とかすきな本とかがいっぱいあって、そこでその本読みながら寝ちゃって、朝おきたら、じゃ、また来るねみたいな(笑)リラックスした空間になるといいなと思ってるんです」

浅井さん自身、友だちや後輩を家に呼ぶのが好きなのだそうだ。

「友だちとおしゃべりをしながら寝ちゃった、とか本を読みながら、とか。なにかしながら寝ちゃったっていうのが、僕すごく幸せなんです」

おなじ空間でそれぞれが好きな事をしている。そんなリラックスした空気を共有することに幸せを感じているのかもしれない。

どんな人にこの家をつくっていってほしいですか?

「自分のキャラクターがある人がいいですね。なんでもやってあげますよっていうホスピタリティじゃなくて『これ俺んちなんだけど、すっげえいいだろ?』っていうような、スタイルを通じて空間とか時間を楽しんでほしいって感じなんです。だからもし鈴木くんって人がくれば、『鈴木くんち』にしてほしいですね」

DJが自分のレパートリーの中から回して、ゲストはその世界観を楽しむ。そんなものに近いのかな、と浅井さん。

「だからイメージとしてはお客さんというよりは、僕んちにきた友人みたいなスタンスで接してくれたら。もちろん、最低限のことはやりますけど」

24時間の営業のため、夜は仮眠しながらの交代制のシフトになるそうだ。チェックインチェックアウトなどの基本的な宿の業務もある。

「あとはお母さんとか、おじいちゃんみたいな人がいてもいいと思うんですよね。部屋を掃除してたり、植物に水をあげてたりして。『また散らかして』って言いながら掃除をしてるような(笑)」

いろんな人がいて家になる。年齢はいくつでもいいのだそうだ。来る人にとっても、お母さんやおじいちゃん世代の人がいるとくつろぎやすいかもしれない。

「外国の人が読める本も少し揃えようとおもってるんです」

池袋という場所柄、外国のお客さんも多くなってくる。英語ができるとベターだそう。

ふとお店のロゴを見ると、飾らないけれどもいい書体だった。

r19 「あんまりスノッブな感じにはならないです。僕んちなので(笑)」

友だちを迎えるように、自然体で居られる人だといいのかな。

すると浅井さんは、これからこの家をつくっていく岸田さんを紹介してくれました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 岸田さんは入社して10ヶ月になる。

これまでいろんな職種を経験して、最近までは不動産業界にいたといいます。いい家がたくさんある。けれど、いい家を紹介しきれないことにもどかしさを感じていたそうです。

「R-STOREでは『ここに住んだら幸せだろうな』っていう物件を思う存分紹介することができました。そしてそこに反応してくれたお客さんを案内する、その業務がすごく好きです」

r18 けれど岸田さんにはずっとやってみたいことがあったと言います。

「僕、大学時代にカフェに行くのがすごく好きだったんです。カフェにはいろんな人がいて、その人たちからいろんな話を聞くことができるんですよ」

一度はカフェを自分で開こうと、6つもの飲食店を掛け持ちしてバイトをしていたこともあるのだとか。

「人って、自分で行動を起こさなければ似たような人で固まってしまうと思うんです。幼稚園や小学校だったら、近くの同じような生活をしている人だったり、高校や大学だと興味や学力によって分かれていたり。もちろん、共感はしやすいんですけれど。でも、カフェって様々な人が集まるので。いままで自分が常識だと思ってたことがまったく違うと気づくことがあるんです」

ある日、高卒で起業した人に出会ったそうです。その人は岸田さんの想像も及ばないような考え抜かれたサービスを展開していました。大学を出なければ就職できないと思っていた岸田さんは、自分がなにか狭い箱の中で判断してきたように感じたといいます。

「世の中のルール以外にもすごくたくさんのことがあって、そういうことを知るともっといろんな楽しみ方や生き方ができるんじゃないかと思ったんです。それを自分だけじゃなくて、いろんな人が感じられる場所ができたらいいなって」

そんな思いから、今回のプロジェクトに参加することに決めたそうです。

やっと実現する場所だけれど「岸田さんち」はどんな家になるのだろう。

「その場で知ったこととか、僕が今まで人生の中で知った『これ良くない?』っていうことを伝える。相手にも『これいいよ』ってことを教えてもらう。そんなふうに積み重ねていくと、その場所が魅力的になっていくと思うんです」

どんな人に来てほしいですか?

「特徴がある人がいいですね。とにかく明るいとか、すごく内向的な感じだけれども、話出すとマニアックな知識がポンポン飛び出してくるとか。あだ名をつけやすい人がいいですね」

どんどん自分の世界観をだしていける場所になりそう。

「自分の家に友だちを呼ぶような感覚なんで、リラックスしてほしいし、あんまり『お客さん』すぎる接客はしないと思います。ただ、友だちの家に行ったら自分の服をぬぎっぱなしにすることはないじゃないですか。だから店舗側ですべて準備したものではなく、お客さんにも手伝ってもらって完成するような雰囲気はつくっていこうと思っていますね」

カフェのように何度でも足を運んでしまうような場所になるのかもしれない。

自分の世界観やスタイルを通じて空間や時間を提供する。

そんなふうにR-STOREで「自分ち」をつくってみたい方はぜひ、応募をしてみてください。

(2015/08/06 倉島友香)