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新しいお土産のかたち

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「SFT(スーベニア・フロム・トーキョー)というお店はここにしかなく、美術館と一緒に日々成長しているんです。コンセプトストアと呼んでいる理由もオリジナルの商品ばかり並べるのではなく、商品のコンセプトやあり方を理解して、商品もSFTも育ててほしいと思っているからです」

「ある程度かたちになったお店でも、安定してうまくいく保証はありません。街も店も呼吸し、絶えず動いています。歩くスピードでもいいから、常に前に進むことがなによりも大事かもしれません」

sft01 SFTだからこそ実現できるミュージアムショップの在り方。

あらゆる人々の生活に、アートを提案する東京のお土産店。それがSFTなのかもしれません。

今回募集するのは、SFTのアルバイトスタッフ。

ミュージアムショップでの接客や販売、またショップ内にあるギャラリー展示の運営まで、仕事内容は幅広い。

しかし、既存のかたちがない場所だからこそ、新しい価値観の提案ができると思いました。

sft02 「George’s」をはじめ、「CIBONE」や「TODAY’S SPECIAL」などを運営する株式会社ウェルカムは、食や雑貨などを通してライフスタイルを提案する会社です。

そんなウェルカムが2007年に国立新美術館内にオープンしたのがSFT。

独自の編集視点で新しいミュージアムショップを提案するSFTは、アートやデザインの知識よりも、作家の想いを伝えることに楽しさを見出せる人が向いているかもしれません。

 
今回は外苑前にある本社と国立新美術館内で話を伺いました。

最初に話を聞いたのは株式会社ウェルカムの代表を務める横川正紀さん。

sft03 学生のころは建築学科で勉強されていたのですが、ある体験を通して空間の捉え方が変わったそうです。

「大学へ進学する際にひとり暮らしをする部屋を探していたんです。しかし、部屋の間取りや方角といった条件は全く決め手にならなくて」

「実際に10件ほど内覧したんですが、一番の決め手はそこまでの道のりにあったセンスのいいお店だったんです」

花屋や喫茶店、セレクトが良い本屋。部屋のスペックで選ぶのではなく、その街のつくりで決断した。

「建築の話はたくさん聞けたのですが、それよりもそこで暮らす人や出来事を聞きたかったんです。それから、街にどんな暮らしを求めている人がいるのかを考え始めて。建築だけを勉強することに違和感を覚えましたね」

「それからは街に住む人を中心に空間をつくっていくべきだと思ったんです。それに気づいてからは、外形をつくれる人と手を組んで、自分は中身をつくる仕事をしていこうと思いはじめました」

間取りや金額よりも、街にどんな空気が流れ、素直に好きと思える心地よさが何よりも大事にしていることに気づく。

そんな想いから大学を卒業後は建築の道に進まずに、空間のリアリティを感じられる家具屋に入社する。

そこで、大きな分かれ目が訪れる。

「入社3年目くらいで、会社を閉じなきゃいけない状況になったんです。そこで閉じるくらいなら私に譲ってくれませんかと相談し、会社と社員を一年間だけ譲っていただけるチャンスをいただけて」

「結果的に会社はうまく軌道にのり、その翌年に会社を継ぎました」

 
そのお店こそ、現在も運営している『George’s』でした。

sft04 「物を売るということより、『コト』を売るということを心がけました。感覚的に暮らしやまちつくりをお店というフィルターを通して提供することによって、隣にお店をだしたいという仲間が徐々に増えていったんです」

「そうするとそこに住みたいという人も増えて、街の空気が変わっていく。そういう場所を全国につくっていければ、お店のもつ価値はより深みを増すと実感しました」

お店を増やし、街と向かい合っていくなかで、その街ごとの空気があることに気がつく。

同じスタイルで編集するのではなく、街の空気に合わせる。

それを形にしたのが「CIBONE」でした。

編集軸はデザインやものづくり、ミュージアムのような要素をもったお店。実際に店舗内にはCIBONEギャラリーも併設しました。

そのコンセプトが「SFT」へと発展していく。

「国立新美術館ができるときに声がかかったんです。ぼくらのお店はライフスタイルを提案することが中心でしたが、僕らなりのミュージアムショップのコンセプトを模索し、編集した場をつくろうと考えました」

そこで注目したのが、収蔵品を持たない唯一の国立美術館というコンセプトでした。

多彩な価値観に触れる機会を提案するといったコンセプトから、六本木や東京、日本という「街」のカラーを取り入れることに。

sft05 「街にピントを合わせることで、そこに住む日本の若手の作品に触れられる、21世紀型の東京のお土産店を提案しました。それ以来、コンセプトを変えずに今日まで続けてきています」

クリエイターにとっては発信の場であり、来場する人たちにとっては自分のフィルターでアートを手にすることができるといった新しいお店が生まれた。

単にものを売るのではなく、作家さんの想いや普段買うことのできない価値観を提供する。ここもまた「もの」だけでなく「こと」も提供している場所だと感じました。

「だからこそ、SFTのメンバーは商品の企画や接客で当たり前のことがないんです。そこにオリジナリティのある編集を常に求めています」

オリジナリティのある編集。

そして、SFTはチャレンジしたお店だと話します。

「たとえば器の作家さんを展示するときに、それはアートなのかという話が出たんです。しかし、それを生活に取り組んだときに起きる感覚、『なくても生活できるのに、作品があることによって人の心を豊かにするなにか』が備わっているならば、その作品を提案する特別な価値があると思っています」

入口にあるギャラリーの企画でも、単なる商売の関係で終わるのではなく、作家との付き合いを重ねていくことで展示をつくっていくとのこと。

sft06 「そういった意味ではうまく流れをつくれる人が向いているのかなと思いますね。ゴールがあれば言われなくても自由に力を発揮できる人でしたら、是非お会いしたいと思っています」

 
実際にSFTで働いている方にも話を伺います。オープンからスタッフとして働いている臼井さんです。

sft07 絵に関わるものだけを売るという仕事のやり方に違和感を覚えていた臼井さん。そんななか、この場所に出会う。

「ミュージアムショップっていうと、美術品を中心に扱うイメージがあったんですが、ここではおもちゃなども取り扱っていて。価格帯もお客さんも幅広く、いろんな方に来ていただきたいという願いがあるので、仕入れる商品に関しては決まりがないというのが魅力でした」

売ることだけを考えるのではなく、もっと長い目でいろんな「コト」を提案するお店。

商品を通して、さまざまなものをつなげている。

1日の仕事内容はどういった流れですか。

「主に店頭に立ち接客をしています。シフト制なので、朝9時に来る人もいれば11時に来る方もいます。はじめは10時のオープンに向けて準備をします。終わる時間は館内と同じ18時です。そのあとは品出し作業や検品、展示中の作家さんのやりとりなどをおこないます」

そこではどういったやりとりがあるんですか。

「今回の器の展示でしたら、どういったお客様がお選びになったとか、お店の動向などをご報告します。また、お客様の動向を見て商品が取りづらかったり見にくかったりというときは、展示構成を相談することもあります」

sft08 お店の雰囲気を見てみると、ただ接客をしているだけではないみたい。

今回の募集で、必要なスキルというのはどういった点でしょうか。

「お客様とスタッフの距離が近いんです。なので、コミュニケーションが好きな方だといいですね。作家さんの想いを伝えたいという気持ちが強い人のほうが楽しいと思います」

伝えたい気持ち。そういったことも話すのですか?

「作家さんの想いがこもった商品を私たちは紹介しているので、作家さんの代わりに私たちが言葉で伝えるんです。その想いは丁寧に伝えたいですし、商品と出会う場所でもあるので、少しでもお客様の記憶に残したいと思っています」

「お客様の立場になって考えるというのが第一条件だと思います。臨機応変に動くことが多い現場なので、少しでも気持ち良く過ごせる接客や、自分だったらなにをしてもらったら嬉しいかを考えられる人であれば問題ないと思います」

お客様や作家さんの立場になって、気持ちを伝えられるかどうか。話すのが下手でも伝えたいという気持ちを持てる人なら特別な知識は必要ない。

sft09 「SFTにはマニュアルがないので、相手に対して一番理想的な対応を自分たちで考えるんです。作家さんの想いを読み取り、もうひとつ先の想いを伝えることで、その商品を見たときの出来事を思い出せるんです」

「そういった思い出が少しでも長くプラスの方向に残ってくれれば、その商品を提供する意味が生まれると思うんです」

ただマニュアル通りに提供するのではなく、自分の中でコンセプトをちゃんと理解する。

そして、商品に出会ったときの思い出をお土産として贈る。そこではじめて「コト」を提供できるのかもしれない。

sft10 「以前、ここが始まりの場所と話してくれた作家さんがいらっしゃって。そういう原点となる場所に成長していければいいなと思います」

「はじめは大変なこともあると思いますが、せっかくこの場所で働くならいろんなことに挑戦して欲しいですね。受け取るばかりではなく、自分からも発信していきたいとか、周りをまきこんで進みたいっていう気持ちがあるほうがお店もどんどん成長すると思うので」

前例がないお店だからこそ、独自の働き方を求められると思うんですが、やっぱり何かしらの経験があったほうがいいんでしょうか。

「私は大学を卒業してからすぐに入ったので、右も左もわからない状態でした。でも、経験したものを次はこう活かそうって考えられる人であれば経験がなくても前に進めると思います」

「やっぱりここにしかないオリジナルなものってなかなかないと思うんです。なので、どこで惹きつけられるかと思ったときに、最後は人や熱量で選ぶ部分も大きいような気がします。ここに来て話すのが楽しみになるお客様が増えたり、わたしたちに会いに来てくれたりするようなお店になれればいいなと思っています」

sft11 作家の想いを読み取り、商品と一緒にその想いを贈る。

SFTだからこそ実現できる新しいミュージアムショップのかたちは、これから広がっていくと思いました。

気になった方は、ぜひ国立新美術館のミュージアムショップへ遊びにいってみてください。

(2015/8/21 浦川彰太)