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日本仕事百貨で記事を書きはじめて、そろそろ3年になる。この求人サイトで扱う会社は少人数の会社が多いため、経営者の方に直接話を聞く機会が多い。
経営者の方に話を聞くと、仕事が人生と完全に重なっているというか、仕事の話を聞いていても、まるで人生そのもののように感じることがある。
そして、そんな仕事や生き方に共感してくれる人がきてくれるといいな、と、まるでその人にぴったりの恋人を探す仲人さんのような気持ちで記事を書いている。
と、個人的な話からはじまってしまったのですが、今回は、社員がたったひとりの会社のエンジニアを募集します。
まったくの未経験からITの世界に入った筒井さんが経営している小さな会社です。ここで一緒に働く人を求めています。

ITの世界でバリバリやってきた人よりも、ITだけに縛られていない人にきてほしい、とのこと。筒井さん自身がそうだから、同じような感覚の人がいいということなのだと思う。
一緒に働くことになる人は、筒井さんと近い距離で仕事をすることになると思うので、まずは、筒井さんという人のことを知ってみてほしいと思います。
訪ねたのは、埼玉の朝霞市。池袋から電車で20分弱の都心に近い郊外で、空が広く、家族の生活があるまちという感じの和やかな空気が流れている。
駅からほど近いマンションの一室に、クレアのオフィスがある。訪ねると、筒井さんが迎えてくれた。
家にお邪魔するような感覚で中に上がると、陽の当たる部屋に机が置かれ、本棚にはたくさんの専門書が並んでいる。
今は筒井さんひとりだけど、4、5人働けるほどの広いスペースがある。朝霞を選んだのは生まれ育った地元だったからという理由で、これから移転する可能性もあるそうだ。
どうぞ、と勧められ、椅子に腰掛ける。

シリコンバレーで働いていたことも、勤めていた会社が潰れてしまったことも、まるで今朝食べた朝食の話をするように、ごく自然にさらっと話す。
人は、話し方に人柄が現れるものだと思うけれど、不思議な人だと感じた。
そんな筒井さんがこの会社を立ち上げたのは、いまから5年前のこと。
主に企業相手に、マイクロソフト社の「SQL Server」のチューニング、サーバーの構築・保守、サーバー監視などをサービスとして提供している。
「昼間はお客さんの会社に行っていることが多いです。そこでチームをつくって一緒に仕事をする感じです。現場によって求められることが違うので、そこでどれだけ自分の色が出せるか、ですね」
とはいえ、この業態は今だけの限定的なもので、今後、1年以内に変えていきたいと思っているそうだ。
「いままでは、いただいた仕事をしっかりやろう、という感じでやってきたので、今後のことは、これから考えていきたいと思っています」
創業当初は、こうしていきたい、というビジネスモデルがあったけれど、世の中の流れやお客さんのニーズに合わせて、だんだん風向きが変わってきた。

筒井さんは、社名を変えてもいいというくらいの気持ちで、会社を一新したいと思っている。そこに一緒に加わってくれる人がきてくれたらうれしい。
だからこの募集は、組織に転職することと、会社を自分で立ち上げることの、中間のようなものかもしれない。
「ひとりでやりたいと思う人は、ひとりでやったほうがいいと思います。むしろ、ひとりでやってみて限界があると感じた人のほうが、一緒にできるかもしれない。実は、僕もそうなんです。ひとりでやることに限界を感じて、それを超えるためには仲間が必要だな、と感じました」
「あとは、こういうことをやりたい!という野心を持っている人がいいと思います。いままで組織に属して働いていたけれど、そこから出て、なにか目的をもって夢に向かって生きたいという人。同じことをやっていても、夢を持っていれば、何倍も充実した時間が過ごせるはずだと思うから」
何かに向かって一生懸命生きている人が好き、という筒井さん。筒井さん自身、いつでも何かしら目標があって、それが無いと生きていけないそうだ。
「僕はもともと、あまりIT、ITしてはいないんですね。ITは、仕事としてやっている。でも、だからといって適当ではなく、プロとしてプライドを持って、本気でやっているんです。技術では、負ける気がしません。だからやっていけているんです」
「目標がない人もいると思うんです。今の仕事が忙しくて、目の前の仕事をこなすだけで精一杯。それはもったいないと思うんです。会社が、自分の夢を叶えるためのステップになればいいですよね。実は、僕にも夢があって、この会社は、その通過点なんですよ」
筒井さんの夢ってなんだろう。
「僕、昔から、映画が大好きだったんです」
映画ですか。
「そう。映画に携わりたいなと、ずっと思っているんです。将来、映画の仕事をはじめたいと思っています」
それは、どんなふうにはじめることになるのかは、まだわからない。けれど、やりたいことを仕事に近づけていくことは、絶対にできると思っている。
仕事と自分の夢を両立させるのって難しい。けれど筒井さんは、それをいかにして両立させるか、というところを徹底して考えてきたそうだ。

「帰国して、映画に携わりたいという気持ちは消えないけれど、就職をしようと思ったんです。どんな仕事をしようか?と考えたとき、IT系の仕事に興味を持ちました。もともと数学が得意だったし、向いているのではないかという予感もあって」
求人を見ても、だいたい求められているのは経験者のみ。そんななか、たまたま未経験の筒井さんを雇ってくれる会社があった。
「僕はキーボードも触ったことがなかったほどだったのですが、その会社は、小さいからこそ、ひとりひとりがなんでもやらないといけない環境でした。思った以上に難しかったです。でも、楽しくできたんです」
会社に置いてある本はすべて読んだ。わからない単語をひとつずつ知りながら勉強した。
「そうして頑張っていたら、どうすればわかるようになるか、がわかるようになったんです」
プログラミングもいっぱい言語がある。すべてをマスターしようとするのではなく、ひとつの言語を100%知っていると、他の言語にも応用できる。そんな自分なりの法則を見つけた。

「シリコンバレーって知っていますか?サンフランシスコのちょっと下のあたりに、IT企業の集まる場所があるんです。山手線の中ほどの広さだから、車で行き来するような場所なのですが。そこで仕事をすることになりました」
アメリカと日本。時差も文化の差などを調整して「橋渡し」する人が必要だということで、筒井さんが抜擢されたそうだ。
そうして訪れたシリコンバレーで、筒井さんは強い刺激を受けた。
「みんな、夕方6時になると家に帰るんですね。残業をしないのが、仕事ができる人の条件なんです。日本のように、会社人間になるような人はいなかった。みんなうまく時間をつくっていて、仕事の後はすべて自分の時間にしてしまう。たとえば、家に帰って家族と過ごしたり、仕事が終わってから大学で勉強したり。そのかわり、結果が出ないとすぐに切られてしまうシビアな世界なのですが」
そんなシリコンバレーの働き方に影響を受け、帰国した。
その後、残念ながら会社は倒産してしまったのだけれど、べつのIT会社へ転職して、働きながら大学で映画の勉強をはじめたそうだ。
夕方5時半まで仕事をして6時から授業という日々だけど、とても楽しく充実していた。
「仕事ができているのは、最低限のことだと思うです。それができていたら、やりたいことも実現できると思うんですよね」
筒井さんの、自慢話に聞こえない、あっさりとした話し方の謎が解けた気がした。
筒井さんは、努力することを、すごいことではなくて、当たり前だと思っているのだと思う。
前職の会社も、当時の筒井さんの仕事を評価していて、独立も応援してくれたし、いまでも仕事の依頼をくれているそうだ。
「それでも、独立して最初のころは、仕事がなかったんですよ。僕は技術一筋でやってきたから、営業の経験もなかったし。だから、いろいろな活動に顔を出したりして、少しずつ広げてきたんです」
「会社を立ち上げてからの5年間は、それまでのサラリーマン生活とは180度違います。10倍楽しくて、10倍辛い。でも、生きている実感がするんです。一緒に働く人も、そういうのを一緒に喜べる人がいいかな」

「一緒に会社をつくってほしいので、会社経営に興味がある人がいいかな」
「あとは、マルチな人がいい。この言語だけ、ではなく、やわらかい頭で、いろいろなことにやってみたい!って思える人。気持ちがあれば、できると思います。あとは、明るくて、人と話せる人。人に興味がある人がいいですね」
筒井さん自身、人に興味がある人だと感じました。
「そうですね。自分で話すのは苦手ですが、人に話を聞くのは好きです」
まだ、ここで働きたい!という確信がもてない人も、まずは、筒井さんと話してみてほしいです。
スキルや仕事内容の条件よりも、共感できるか。やっぱりいちばんは、相性だと思います。
(2015/10/7 笠原名々子)