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自然体に還ろう

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いまはもう広く浸透した「ワークライフバランス」という言葉。

いつから“仕事”と“生活”は切り離されて考えられるようになったのだろう。

自分が自分でありながら働くということ。当然に思えることが、当たり前でなかったりする。

さまざまな違和感を諦めずに抱えている方に、ぜひ読んでいただきたいです。

IL PAZZINI01 京都・福知山にあるイタリアンバール「IL PAZZINI(イル・パッチーニ)」

何よりも経営目標の達成を優先していた過去を省みて、人が中心のお店づくりをしています。

お店へやって来る人たちが笑顔になってくれるように、スタッフ一人ひとりが自分にできることを考え、形にとらわれず自由に個性を発揮する。

ここで働く人自身も笑顔になれるように、楽しい働き方・生き方をこれから加わる人と一緒に築き上げていきたいと思っています。

経験は問いません。

IL PAZZINIに共感してくれる人を一番に求めています。

 
京都駅から特急電車に乗り換えて約1時間20分。

福知山駅に到着すると、IL PAZZINIオーナーの吉岡さんが車で迎えにきてくれていた。

お店は、駅から5分ほど車を走らせた場所にある。

IL PAZZINI02 駅前の店や、道すがら眺めていたほかの店とは別格な雰囲気のお店。

白の壁に黒の鉄構が基調の店内は、アメリカ西海岸テイストがコンセプト。

IL PAZZINIがオープンしたのは昨年の7月。吉岡さんにとって3店舗目となるお店だ。

IL PAZZINI03 「僕は開業してから今年で9年目になるんですよ。最初は地元の京丹後のほうでイタリアンのお店をはじめて」

「5年以内には2店舗目を出したかったし、イタリアンでもっと本格的なデザートを出せるようにと、3年前にケーキ屋さんを隣接してオープンさせたんです」

吉岡さんがこの業界に飛び込んだのは23歳のとき。

飲食を選んだ理由は、高校生のときにアルバイトしていたバーで、さまざまな価値観の人と出会えて楽しかったから。

それと、昔からやっていた趣味のサーフィンを続けたかったし、お金儲けして、おしゃれな生活を送りたかったからだとか。

「大半は不純な動機でしたけどね」と笑いながらも、自分の料理を食べた人がよろこんでくれたり、人と話しながら信頼関係を築いていける飲食の仕事に、だんだんとのめり込んでいったという。

「でも、自分が料理で食べていけるようになりたいっていうよりも、ビジネスがしたいっていう想いが先にあったんですよね」

「独立して、料理人の子たちを雇うようになってからも、この子らは僕よりずっと料理好きなんやなって気づいて。それやったら、この子たちの夢を叶えられるお店にしていこうと」

IL PAZZINI04 料理人のスタッフたちがそれぞれの夢に向かっていけるように、環境の整ったお店づくりを進めていった。

「料理が好きで頑張っても、50歳とかで身体を壊したら辞めるしかなくて。けっきょく料理人の終着点って潰しがきかないんですよ。でも、僕はそれってどうなのかなって」

「だから、身体を壊したとしても、たとえば事務仕事を覚えてバックオフィスに回ってもらうとか、若い人と互いにフォローし合うようにするとか。そういう仕組みをつくるためにも、ひたすらやっていったんです」

開業から5年以内には2店舗目を、8年以内には3店舗目を開店することを強く目標に掲げた。

お店のために、吉岡さんは大好きなサーフィンをやめて、家族との時間も減らして仕事に費やしてきたという。

ところが、途中からスタッフとの歯車が合なくなってしまった。多くのスタッフが辞め、1・2店舗目を閉店することになったという。

「何がだめだったかって、店舗展開の期日を決めて、それを目標に『やるからには、やるんだ!』って勢いで経営していたことなんですよね」

「自分が一生懸命頑張っていればスタッフはよろこぶだろうし、売上を上げるのが経営者として成功なんだって、僕も勝手な思い込みをしていて。スタッフのためやと思っていたけど、結局スタッフのためになってなかった」

これからは、人を無理に合わせるのではなく、共感してくれる人が集まったときにお店を出していこう。吉岡さんは、そう考えた。

「時間ありきで経営していたものを、人ありきで経営していこうと変えたんです。そして、私生活も趣味も大事にできるような、ナチュラルな働き方にしていこうと」

IL PAZZINI05 3店舗目となるIL PAZZINIは新しい経営方針を組んでいる。

サービスひとつにしても、以前のお店とはやり方をまったく変えたという。

「まえの店では、たとえばコーヒーを出すのに『この角度で、ここに置いて』って、1から100まで教えていました。そうすると、スタッフがひとつの動作を間違えただけで『しまった!』って顔をしちゃうんです。お客さんは変わらず笑顔なのに」

「言われたことを正しくやることが、仕事の目的に変わっちゃったんですよね。僕らの本当の使命は、お客さんを楽しませること。『この店いいわ、また来るね』と言ってもらうことなんです」

縛りだらけのマニュアルは一切やめて、スタッフ教育も最低限のものに。ただ、分かりやすいルールを1つだけ設けた。

それは、お客さんを笑顔にすること。

「そのために自分が自然にできることを、それぞれが考えてねって。あとは何をしてもいい。自由ですから、もういろいろやっていますよ。お客さんの隣に座って話し出す子もいて、ちょっとヒヤヒヤするくらい(笑)」

IL PAZZINI06 もっとお店をよくしていこうと、スタッフから自発的にアイディアが出るようになったという。

このお店では、提案した本人が実行するのがルール。絵を書くのが得意な人がメニュー看板をつくったり、未経験でも優しい人柄がチームをうまくまとめたり、スタッフ一人ひとりの個性が活かされている。

「きっと仕事に自信が持てるんじゃないかな。とにかくスタッフが笑顔ですね。そうやって自分たちも楽しめたり、やりがいを持って仕事ができれば、自然とお客さんを笑顔にできるんですよね」

「こういう子たちが増えて、もっとお客さんとスタッフが楽しめる仕組みができれば、本当のいいお店になっていけると思うんです」

 
IL PAZZINIで働く人たちとの会話には心地よさがある。みんな柔らかくて明るいし、何よりも“店員さん”ではなく“本人”と向き合って話せるのがうれしい。

続けて話をうかがったのは、写真左から店長の野木さんとホールスタッフの村上さん。

IL PAZZINI07 IL PAZZINIで働く前、野木さんは運送会社でドライバーを、村上さんは美容室でヘッドスパ担当を務めていたそう。

ふたりとも過去に飲食店で働いたことがあるけれど、ここでの働き方は新鮮に感じたという。

野木さんはこう話す。

「これまでいたところって、お客さんによろこんでもらうなんて考えてなかったんですよ。食べたいから来るんやろって。でも、ここは料理屋さんじゃないような感覚で働いていて。とにかくお客さんによろこんでもらうことをする」

たとえば、団体のお客さんが送別会に予約してくれたときのこと。サプライズに渡すメッセージの書き方に悩んでいたので、一生懸命に相談に乗った。当日、そのスタッフへのお礼にと、お客さんが花を渡してくれたという。

ほかにも村上さんは、お客さんからワインボトルを一本プレゼントされたことがあったとか。

「普通だったらなかなかないですよね。何ができるか、すごく頭を使う仕事です」

「結果はどうであれ、やることに意味があるという考えのお店なので、いろんなことをさせてもらえますよ。それは1日2時間のアルバイトの主婦の方だろうが、店長の僕だろうが関係なく『ええんちゃう』ってオーナーは言ってくれますね」

IL PAZZINI08 村上さんはお店の雰囲気について、こう話してくれた。

「みんな個性的で、めっちゃ面白いんです。遊びがあって、でも仕事はきっちりやっていて。みんなといるのが楽しいんですね。ここにいることがイヤだと思ったことは一度もなくて。だから、もっといい店にしていきたいなって」

お客さんの笑顔のために、できることなら何をやってもいいけれど、やるからには本物を追求していくスタンスだという。

ピザはナポリ窯で焼き上げ、ワインは世界各国のおいしいと評判のものや話題になっているものを仕入れている。

また、料理に使う食材は、基本的にフレッシュなもの。レトルトや冷凍物はなるべく使用せずに、できるかぎり福知山や京丹後でとれる野菜や魚介を仕入れている。

「料理がめっちゃおいしいんですよ。ちゃんとおいしいと思えるものを出せるお店で働けるのって、幸せやなって思うんです。ここは食材1つにしてもこだわっているから、自信を持って友だちに紹介できるんです」

IL PAZZINI09 今回の募集で、どんな人に来てほしいのだろう。

ふたたびオーナーの吉岡さんにうかがう。

「キッチンでもホールでも、オリジナリティを持って『こんなことやりましょう!』と言ってくれる人。それと、何かを実現させたいと思っている人ですね。僕は飲食店にこだわってないので、実現させたいってことは何でもいいんです」

近いうちにIL PAZZINIの2階の一部にサーフィングッズを並べて販売する予定。グッズ販売だけでなく、カルチャー自体を売っていこうと、サーフィンのスクールなどもはじめるつもりだという。

ほかにも宿泊施設を運営したり、船に乗って魚釣りへ行ったり、やりたいことはたくさん。地域には耕作放棄地が多いから、自分たちで野菜を育てることもあり得るかもしれない。

「いまこの店で起こっていることは、僕らが仕組んだサービスの結果なので、想定内でしかなくて。自分やお客さんさえも知らない、もっと楽しい何かがあるだろうなって思うんです。もっといろんなサービスやビジネスで、お客さんをよろこばせていきたいです」

「それで、人生を楽しみたい。安全なものを食べて、身体を動かして、もっとナチュラルに生きられたらなと思っています」

IL PAZZINI10 最後に、店長の野木さんはこう話していた。

「オーナーが面白いのは、飲食店だけをずっとやっていくという考えじゃないところなんですよね。自分たちが楽しくて、お客さまがよろこんでくれる仕事なら、なんでもいい。だから夢があるなと思って、僕は一緒に働きたいと思ったんです」

仕事も生活も両立したい人にとっては、とてもいい職場だと思います。

たとえ飲食業がはじめての人でも、今までの経験がIL PAZZINIの新しい展開に役立つかもしれない。

気になった方は、一度お店へ遊びに行ってみてください。ここで働く人たちの心地いい自然な雰囲気が感じられると思います。

(2015/10/23 森田曜光)