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インターネット上でいろいろなものを手軽に買うことができる時代。だからこそ、リアルな場所に求められている役割は明確になりました。洋服を売る、ということも同じ。決まりきったルールはありません。
洋服以外にも、本があったり、コーヒーショップがあってもいい。ものを販売するだけでなく、ワークショップやトークショーもあっていい。
それに東京にはいろんな人たちが住んでいます。いろんな価値観があり、その多様性が認められています。
そんな東京のスタイルを提案するお店「STYLE TOKYO friends’home」が、つい先月オープンしました。
今回は、この場所から一緒にスタイルを提案していく人を募集します。
東京・表参道。
地下鉄の駅から地上にでてアップルストアのわきを通り抜ける。裏通りを3分ほど歩くと、大きな三角屋根の建物が見えてくる。
表の大通りはたくさんの人が行き交い、交通量も多くにぎやかなのに対して、ここまで来ると少し静かで落ち着いた雰囲気になる。
こんな場所にあるのが今年の9月12日にオープンした「STYLE TOKYO friends’home」。
東京をはじめ、世界各国のファッションスナップを撮影してきたフォトグラファー、シトウレイさんがディレクションを手がけている。
通りに面した壁面のほとんどがガラスになっているため、全体がショーウインドウのような感じで、とても開放感がある。
なかに入ると、真ん中の通路を隔てて左右に洋服が並び、建物の奥には庭が広がっていてコーヒーショップもある。店内中央に置かれた本棚には「天狼院STYLE」の文字が。
“自分のSTYLEを見つけることができる書店”がコンセプトの天狼院STYLEは、シトウレイさんが天狼院書店店主の三浦崇典さんに出店を打診したことから「STYLE TOKYO」内にオープンした新ブランドだ。
洋服の間には、雑誌や書籍がならべられている。書籍以外にも雑貨が置いてあったり、カジュアルな洋服のとなりに高級なものがあったりする。
だからといってバラバラなわけではなくて、全体としてうまく収まっている。
店内をゆっくり見ていると、このお店で働く宇山さんが声をかけてくれた。奥のイスに座って話をうかがった。
宇山さんは山口県出身。両親ともに公務員という家庭で育ったため、こんなところで働いていることなんて予想もしていなかったという。
もともと自己表現することが好きで、人と同じことをしたくない、目立ちたい、という気持ちから服飾の専門学校へ。
そこからずっとアパレルの仕事を続けてきた。
「古着屋に入って、そこからセレクトショップに入って、ずっと販売をしてきました。よくある販売員さんって売り場で販売するだけだと思うんですけど、もっとその先はないのかなあと考えていたんです」
その先。
「たとえば、蔦屋家電。いろいろなビジネスモデルがあるなかで、本屋さんが家電を販売することだってあるわけです。だからアパレルでもいろんなことができるんじゃないかと思っていました」
「そんなときにこの仕事の話を聞いて、単純に面白いな、って思ったんです」
STYLE TOKYO friends’ homeのウェブサイトには次のように書いてある。
「リアルな今の価値を『衣』『住』『遊』『知』で共有する場所」
「心の温度をあげるモノ・コト 長く生活に寄り添うもの・ことの組み合わせ」
「世界中から『人』『モノ』『光』『香り』『音』の集う心ときめく Friends’ homeへ」
いろいろなモノが売っているだけではなく、さまざまなヒトやコトがあつまってミックスされている場所なんだと思う。
インターネットで手軽に洋服が買えるようになったからこそ、工夫することは必要だし、リアルな場所だからこそできることもある。
「インターネットは便利ですよ。でもお店に足を運んで、買うつもりもなかったのに欲しいものに出会うこともある。そんなときのワクワク感って、インターネットじゃ見つかんないなあ、と思っていて」
「この場所に来たらなにかあるとか、理由がなくてもふらりと訪れてくれるような場所になってほしいです」
そんな場所をつくるために、洋服以外にも本があり、コーヒーショップがあり、イベントやワークショップを開催しようとしている。
でも単にいろいろなものが混在しているだけじゃない。混在しているようで哲学があり、それこそが東京の魅力とも言える。
「日本って洋服に対してルールがないんですよ。ヨーロッパとかアメリカだと、ジャケットはこういうふうに着ましょう、この丈が正解ですっていう前提があるんです」
「戦後の日本には、アメリカの文化が入ってきて、他の国の文化も入ってきて、その時点でミクスチャーになってるんです」
ミクスチャー?
「90年代にBEAMSさんがやったNORTHFACEとか、ああいうアウトドアブランドのパンツをファッションで履いちゃうようなミックス感。『じゃあ今の時代はなんですか?』っていわれたときに、『こう表現しましょうよ。だからぼくらSTYLE TOKYOなんですよ』っていうのをやりたいですね」
ディレクターのシトウレイさんも、東京の特徴として「愛すべきボーダーレスがある街」と言っている。
ファッションに対して偏見がなく、世界中のあらゆるヒト、モノ、コトが凝縮されている。ミクスチャーであり、ジェンダーレスであり、そしてレイヤードが特徴とのこと。
たとえば、100円の雑貨と100万円の時計を、同じ目線でいいと思えるか。エルメスのニットを着て、ボロボロのリーバイスのジーンズを履くとか。
ここはモノを売り買いするお店というよりも、そんなスタイルをひとりひとりが提案していける舞台なんだと思う。
ルールはないし、とても自由な感じが伝わってくる。
それは働く人も同じ。
大阪からやってきて、お店の立ち上げから働いている山根さんにも話を聞きました。
「ぼくは不器用なんですよ。ぼくには洋服しかないんです。特別な趣味もなければ、お休みの日はこうやって過ごしてます、こんなものが好きです、っていう特別なものはほとんどなくて」
高校生のころから洋服と音楽が好きになり、バンド活動と洋服屋でのバイトを両立しながら大学生活を過ごした山根さん。
大学を辞めて音楽の世界を経験したのち、音楽は趣味に、洋服は仕事にしようと決めてこの業界に足を踏み入れた。
そんな山根さんも、宇山さんと同じように、仕事で行き詰まっていることがあった。
「経験を積んで、慣れてくる部分もあるんですよ。ほかのお店が新しいことやるっていっても、『あ、そういうとこ狙ったんですねえ』って。なんとなく読めちゃう」
なんとなく既視感があったんですね。
「そうなんです。最近のライフスタイルっていうような謳い方って、ひとつのビジネスモデルになっていて。価格帯や客層、立地などはいろいろあるんですけど、考え方は同じというか。そういうのが見えてきてしまう部分もあるんです。だけど、この場所の話を聞いたら『実現したら面白いな』って素直に思えた。それで今ここで働いているんだと思います」
「それにここは働く人のバランスが面白かったんですよ。すごく対照的な部分もあるし、全然異なる世界で生きてきたとしても、共有できることもあったり。だからひとつにまとめる必要はないんですよ。それぞれが活きる環境のほうが絶対いいと思います」
とはいえ、すでにコンセプトだって決められている。現場にそこまで裁量はあるのだろうか?
すると、グランドオープン翌日の出来事を、宇山さんが話してくれた。
「レディースのフロアだったんですけど、洋服の並べ方、見せ方の幅がすごくせまかったんです。本社やバイヤーの人たちには、イメージがあるのかもしれないけど、そのままだとぼくらには一通りのお客さんの顔しか思い描けなくて」
「じゃあ一通りの顔しか見えなかったものを、3つに分けましょう。そういうお店づくりをしていれば、3人ぐらい別のタイプの人がきても楽しんでもらえる。そういうことを自分たちで気づいて、もうひとりの女の子のスタッフと3人ですぐやりました。ここはやれる環境ですね」
なにかがおかしい、変えたいと思ったら、自分の頭で考えて行動することができる。もちろん、あとで報告したり共有することも必要だと思うけれども、これだけのスピード感と裁量のある現場はなかなかない。
代表の佐々木さんをはじめ、本社の人との信頼関係があってこそのことだろうけど、度胸や実行力が求められる職場だと思います。
でもこれこそ、はじめに宇山さんがいっていた「販売員のその先」の姿なのかもしれません。
そんな販売員はどんな人がいいんでしょう。最後に二人に聞いてみました。
まず宇山さん。
「ベースはやっぱり洋服が好きで、人が好きで、新しいことにチャレンジするのを自分の価値観と思ってくれる人だったら、どんな方でも。『この会社、実は乗っ取ろうと思います』みたいな人でも(笑)。それぐらい大胆な発想の人のほうがぼくは好きですね」
山根さんは「販売が好きすぎて、いわゆるノルマの壁を壊せる販売員みたいな方でも、ぼくは素敵だと思う」とのこと。
どちらも「販売員って、こういうもの」という枠組みに捕らわれていない人がいいと思う。
お店としては、ようやくスタートラインに立ったばかり。まだいろいろと決まっていないところもあるだろうけれど、それをチャンスと捉えて挑戦していける人なら、きっと面白い働き方ができるはず。
音楽に詳しいならライブのブッキングをしたり、マンガが好きならギャラリーのように展示をしたり。什器を移動して大規模なワークショップを開催することだってできる。
この場所だからできることはたくさんあると思います。いろいろなことをミックスしたほうが面白い場所ですから、まったく異なる業界出身でもいいかもしれません。
ひとつひとつ、一緒に考えながら形にできる環境がここにはあります。
自分のスタイルを活かせそうだと感じた方は、ぜひ応募してみてください。
(2015/10/21 中川晃輔)