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14室のシェアオフィスを中心に、ギャラリー・レストラン・ルーフテラスのあるインキュベーション複合施設「FARO(ファロ)」。お客さんがふらっと訪れるレストランの隣で、シェアオフィス会員がアートイベントを催す。そんなふうに、様々な「ヒト」「コト」が混在する場所です。

いろんな人がやってきて、さまざまなイベントも行なわれる。たとえホールスタッフでも、レストランを飛び越えるような臨機応変な対応が求められます。
また、ここで働く人たちは、生活とのバランスを失わずに豊かに働くことを大切にしています。
そんな働き方にも興味のある方は、ぜひ続けて読んでください。
東京メトロ銀座線の外苑前駅から歩いて5分ほど。
スーツ姿の人が多い青山通りから一本横道に入り、ひっそりとした住宅街を進むと、家の間に隠れるようにFAROが見えてきた。

スタジオへ通されると、ハンガリーのアーティストによる作品とシェアオフィスの入居者さんによる植物のインスタレーションが展示されていた。
シンプルだけど、洗練された空間。
FAROは2013年にはじまった。
「立ち上げてから2年。できたと思うこと、まだこれだけしかできていないと思うこと、両方です。出会う人の幅は広がってきましたね」
そう話すのは、スモールトーキョー代表の堀さん。

そんな堀さんは、もともと商社やITベンチャーなどでバリバリ働く環境にいた。
そのとき感じたワークライフバランスの大切さが、FAROをはじめたきっかけになったという。
「サラリーマン時代は働くことに一生懸命で、生活のことまではなかなか気が回らなかったんです。けっこうハードワークだったので、土日も動けなくて。おいしい料理を食べたり、絵を見に行ったりする時間もあまり取れなかった」
「しっかり働いて、おいしい料理を食べて、アートにふれ、イベントにも参加したい。やりたいことを詰め込んだ場所が、ここでできるんじゃないかと」
ほかのシェアオフィスとは大きく異なり、FAROにはレストランやギャラリー、ルーフテラスなどが混在する。
オフィスを利用する入居者さん以外にも、ご近所さんや近くの会社で働く人たちがレストランやイベントへ遊びにやってくる。
「来られた方は、みんなびっくりされていますね。入居者さんも『ここはレストランで、あっちはギャラリーで…』って、来客された方に自慢げに紹介いただいて」

無理にコミュニティをつくろうとするわけではなく、自然と人が集ってくる。そこに、あたらしい動きが生まれる。
花屋を経営する人にFAROで飾る花をいけてもらったり、アートディレクションをする人にギャラリーで個展を開いてもらったり。ある人からは、レストランに使う食材を薦めてもらうことがあったという。
あたらしい動きの一つひとつは、FARO運営事務局が積極的に仕掛けることで生まれたもの。
会員との日々の会話の中で別の会員を紹介したり、イベント企画に誘ったりしているという。
「僕らも『こんな人が会員にいるから、ここでこういうことできるね』ってアイディアが出る感じなんです。こんどアート関係のお仕事をされている入居者さんと本格的なギャラリーを開く大きな企画があって。それは、僕らの力だけではとても考えられない」
ほかにもクラフトビールのライター、同じ外苑前のレストランの経営者、無農薬野菜を生産・販売している会社、世界中のアーティスト・イン・レジデンスをまわって本にしたクリエイターなど。
多様な入居者さんたちと一緒に、今後もこの場所で何かできるかもしれない。

掃除からはじまり、管理・経理・総務といった一通りの業務から、撮影の対応など、すべての業務を担当する。
今回の募集ではとくに、経理や事務をまかせられる縁の下の力持ちのような人と、イベントの企画・運営をサポートしてくれる外部スタッフを探しているそう。
「ルーフテラスでCM撮影するって連絡があったり、スタジオで映画鑑賞することになったり。毎日同じ日がないくらい、いろんなことがあるから大変なんですけど、いい学びもあるんです」
そう話すのは、FARO運営事務局の八木さん。

いままで知らなかったような世界に触れられるFAROの環境を「働きながら、人生が豊かになる」と話していた。
「ひとつのものに向き合っているとやっぱり飽きてくることってある。だけど、ここは飽きないどころか、1つのことにあまり時間を割けないくらいいろんなことが起こる。それをいい刺激と感じて、楽しんでもらえればいいかなって思います」
会員も増え、いろんな人が混ざり合うようになり、最初のころとやることがどんどん変わっているという。
これまでは、屋上で本を読むイベントや、映画の試写会などを開いてきたそう。
近々ライブラリーをつくる予定もあり、今後はより多様な映画・本・食・アートのイベントを企画していこうと考えているという。
今年の秋にはレストランをリニューアルし、レストラン&ギャラリーPORTUSをオープンした。
「毎日一生懸命働いて、まともな食事ができないのって、なんのために働いているのかわからなくなる。1食1食を豊かに感じられるような、日常を贅沢な時間にできるような。そんな、オフィスの“食堂”という位置づけです」

港のように様々な分野のつくり手や文化が集まり、みんなでカタチづくっていくような場所になれば、という想いが込められている。
「生産者の方やアーティスト、それとFAROの会員やここを訪れる方々と一緒につくっていけるような場所。シェフから生産者の方にフィードバックしたり、生産者さんの声をお客さんに届けたりする。ただ応援することは簡単ですけれど、切磋琢磨できるパートナーのようなレストランにできたらなって」
「そう考えていたら、オーストリアワイン大使のソムリエと星付のレストランで働いていたシェフに出会って、一緒にやりたいと言ってくれたんです」
堀さんが紹介してくれたのは、PORTUSを一緒に立ち上げたマネージャー兼ソムリエの岩井さん(写真右)と、シェフの富樫さん。

「レストランにいると限られた狭い世界になりがちですけど、インポーターになるとワインだけじゃなく、いろんな分野の人に会う機会にすごく恵まれたんです。食の世界だけで固まっているのはもったいないなと思ったし、もっといろんなものとつながれるのも食なんじゃないかと思って」
「そんなときに堀さんと会って話をしているうちに、食だけじゃなく、もっと世界が広がる場所をつくれるんじゃないかな、おもしろいなと思ったんです」
富樫さんは19歳からフレンチ一筋。
「ピエール・ガニェール」や「レストラン リューズ」など、星付きの高級レストランで経験を積んだ実力派シェフだ。
「はじめて店内に入ったとき、お店に温かみを感じたんです。ここのオープンキッチンはお客さまとの距離が近いところが魅力的で。堀さんや岩井さんは料理人寄りの考えを持っている方なので、いろんなことに挑戦できると思いました」
富樫さんは、多種多様な人が気軽に訪れるFAROの雰囲気が「とても好き」と話していた。
PORTUSにもレストラン&ギャラリーとして、料理だけでなくアートにも興味のあるお客さんがやってくる。
「料理もお皿というキャンパスに描く絵のようなものですから、料理もアートのように楽しんでいただきたいですね。お客さまがよろこんでいらっしゃる声をダイレクトに聞けるのも、これまでのレストランと違ったよろこびのひとつです」

ただ、あくまでPORTUSは「オフィスの食堂」というスタイル。シェアオフィスの会員やお客さんがカジュアルに楽しめるようにと、びっくりするお値段になっている。
使う食材は、オーガニックを中心とした新鮮で安全なもの。北海道から千葉、さらには五島列島まで、日本各地の生産者から直接仕入れている。

「料理って、生産者さんからシェフを通り、ウェイターを通って、最後に一番おいしい状態になる。これがレストランだと思うんです。そこに必要なのは笑顔。知識や技術は努力次第であとからいくらでもついてきますから、好きで笑顔になれる方が1番ですね」
一般的なレストランの営業業務のほかに、FAROだからできることを考えながら、日々のレストランの運営をしていくのが、PORTUSのマネージャーの役割。
今後、岩井さんは店舗プロデュースの仕事に専念するため、マネージャー兼ソムリエとして活躍してくれる人を探している。
基本は掃除や接客、数字管理やホール業務。ドリンクのリストやメニューの開発、食に関わるイベントなども一緒に考えていく。
また、PORTUS内だけでなく、FAROで起こる様々なことをレストランスタッフがサポートする場面もあるという。
「あたらしい出会いや驚きのある場所にしていきたいですね」と岩井さん。
「サービス業って裏方の仕事も多いですけど、やっぱり楽しんで仕事をして、一緒にこの会社とレストランを大きくしていく気持ちを持っている方だといいですね」

1年後のFAROはどんな形になっているのか、それは代表の堀さんにも分からないのだとか。それだけの可能性を秘めている。
「ひとつ言えるのは、ここで働く自分たちがワクワクして成長できる場所になっていっているかなって」
「まずはオフィスとして働きやすく、より豊かな環境にすることを目指します。そして自分たち自身がおもしろいと思い、やりたいと思うことを丁寧に育てながらやる。小さな組織なので疲弊せず、無理をしないことも大切にしています」
(2015/11/20 森田曜光)