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『ギャッベ』を知っていますか?ギャッベは、イランの山岳地帯に暮らす遊牧民の女性たちが、一つひとつ織り上げる手織りの絨毯です。
ともに暮らす羊の毛から糸を紡ぎ、草木で染める。
織り手の女性が見る風景が織り込まれたギャッベは、下絵となるデザイン画がなく、一つとして同じものがありません。
BDコーポレーション株式会社は、『造り』『健康』『環境』にこだわった家具やインテリア用品の提案・販売をするショップ運営とアートギャッベの卸しを行っている会社。
アートギャッベとはギャッベの中でも特にアート性に優れ、豊かな技術力で織られたもののことです。
今回は、全国にある提携店で行われるアートギャッベのイベントを、企画から運営・販売までトータルで手がける人を募集します。
ただイベントを成功させるだけでなく、ときにはお店の抱える問題を一緒に解決していく、コンサルタントのような役割も担います。
目指すのは、アートギャッベの魅力を全国に伝えていくこと。そしてイベントを通してお客様も自分たちもより良く変化し、成長していくこと。
経験は問いません。まずは、どんな会社か知ってほしいです。
新潟県新潟市。
鉄道のまち、新津駅から車で5分ほど。BDコーポレーションが運営するインテリアショップ、beau decor(ボー・デコール)新潟店を訪れました。
BDコーポレーションの社員は現在17名。今回募集するイベントスタッフに加えて、店舗で接客販売を行うスタッフも働いています。
迎えてくれたのは代表取締役社長の菅井さん。
BDコーポレーションは、商店街の中にあるまちの家具屋さんとして、菅井さんの祖父が創業。
「そのころは、なんでも置いてあるような店でしたね。鯉のぼりや神棚、乳母車もあったし(笑)」
菅井さんの叔父、従兄弟たちへと会社が受け継がれていくなか、大きな変化があったのは1997年。子どもの学習机を探しているというお母さんが、お店にやってくる。
「お子さんがアトピーで、普通の家具はつかえない。でも他のお子さんと同じように学習机を買ってあげたいと、うちのお店を訪れてくれたそうです」
話を聞いたとき、当時のオーナーにはアトピーと家具の関係がいまひとつ結びつかなかった。
だけど調べていくうちに、家具に使われる塗装剤や接着剤には、健康に害をもたらすホルムアルデヒドなどの物質が含まれているものがあると知る。
話を聞いた翌年から、健康に配慮した机のみを扱うようにすると、安心して使える家具を求めて全国から多くの人が訪れるようになったそうです。
「この出会いをきっかけに、本当にいいと思うものだけを扱う店に変わったんです」
本当にいいものとは、見た目の良さだけでなく環境や健康にも配慮した上質なもののこと。
アートギャッベを扱うようになったのはなぜですか?
「ある日展示会で、隅に数枚だけ置いてあったのを見つけたそうです。担当者にどんな絨毯なのか聞いてみると、織り込まれている模様には一つひとつ意味があり、家族の幸せへの願いが込められている。物語がある絨毯だとわかったんですね」
物語がある絨毯。
「そう。ただ工業的に大量生産されているものとは違って、一枚一枚に込められた想いがある。そんな絨毯ってほとんどないんですよ。さらに羊毛100%で、つくりがいいから長く使ってもらえる。うちのコンセプトにも合うので、扱うことを決めたんです」
菅井さんはどうして入社したのでしょう。
「それまでの私は、インテリアにもあまり興味がなくて。OA機器を扱う会社や保険会社で営業として働いていました。でもこれからアートギャッベをもっと全国に広めていきたい、だから一緒にやろうと従兄弟たちに熱心に誘われまして」
「自分たちが本当にいいと思うものだけを扱うというコンセプトにも共感して、入社を決めました」
菅井さんが、一緒に働く湊元(つもと)さんを紹介してくれた。
社歴は菅井さんよりも長く、今年で10年になる。穏やかで、話していると安心するような方だ。
もともとは、ハウスメーカーで住宅のコーディネーターをしていた。
「住宅のコーディネーターって広く浅く、幅広い知識が求められるんです。でも何か一つ、自信を持って『経験や知識がずば抜けてあります!』って言えるものを持ちたいと思って」
8年間、店頭での接客販売の仕事を経験し、今の部署へ。
日々どんな仕事をしているのでしょうか。
「私たちの考えに共感して、提携している小売店が全国に50店舗ほどあるんです。年に2回、そこで“アートギャッベ展”という販売イベントを行います」
現在同じ部署に所属しているのは、湊元さんを含めて4人。東北や九州、関西など全国を飛び回る日々だという。
イベントの準備は、半年前からはじめる。
たとえば売上の見込みづくりや、店舗スタッフへの商品知識の勉強会。競合店を調査して、対策を考えることも。さまざまな仕掛けやノウハウを提供しながら、9日間のイベントを成功に導いていく。
イベントを運営していく上で、自分の武器はなんだろう?と考えたとき、自分には8年間店舗で販売をしてきた経験や新人スタッフの教育に携わった経験があると気づいたという。
「自分も同じ店舗のスタッフになったような気持ちで、話を聞くことを心がけています。ある店舗では、スタッフの前でどう振る舞えばいいのかわからないと悩んでいるリーダーの方から相談を受けました」
「そのときは、判断は間違っていないと思うから、もっと自信を持って伝えていいと思いますと話したんです」
リーダーの態度が変わっていくと、それに応えるようにお店の雰囲気も良くなっていったという。
経営者からも、イベントをきっかけに社員に変化を生みたいと相談を受けることがある。たとえばスタッフ全員が積極的にイベントに参加するような一体感をつくりたいと頼まれることも。
事前に会社が抱える悩みごとも聞きながら、イベントのプランを考えていく。
アートギャッベを売るだけではなく、それぞれの提携店に寄り添って考えてみることにしたんですね。
「それが結局は、アートギャッベ販売の結果にもつながってくると思うので。イベントを実施することでスタッフさんが成長したり、会社の雰囲気が良い方向に変わったり。売上以外の部分でも、残せるものがあればいいなと思います」
「自分が関わった店舗のスタッフさんが成長したと言われることが、とてもうれしいです」
湊元さんは、本当に人と接することが好きなのだなと感じる。だからこそ信頼関係を築くことができるのだろうし、悩みを話してもらう機会が生まれているのだと思う。
これから働く人も、真摯に人と向き合いながら関係を築いていけるといいのかもしれません。
一方で、まだ提携店がない地域では自分たちでイベントを主催することもあるそうです。
「地域によって市場も違います。自分で試行錯誤しながらイベントをやると、なにが必要なのかが見えてくる。提携店さんに提案しても受け入れられなかったアイディアを試してみることもあります」
提携店にとっては年に2回だけの貴重な機会。最大限力を発揮できるように、経験のないことでも、臆せず挑戦していく姿勢が求められる。
湊元さんは、どんな人と一緒に働きたいですか。
「成長したいという気持ちを持っていて、人が好きな人がいいですね。人と人との関わりが大きい仕事なので」
もう一人、イベントスタッフとして働く前谷さんを紹介します。
入社4年目になる前谷さんは、自動車の板金塗装の仕事を経て、この会社にやってきた。
「前職では、そこまでの熱意を持って仕事をやっていなかったんです。そんな自分を変えたいという想いが強くあって」
もともと興味があった住宅関連の職に就くため専門学校に通い、インテリアコーディネーターの資格を取得した。
その中でも、どうしてこの会社を選んだんですか?
「会社の考え方が自主・自立というか。いずれは独立したり、社内でなにかの事業を立ち上げて責任者をやってもいい。個人の成長の場として会社があるというところが、私の考えに一致しているなと思いまして」
とはいえ、それまでやったことのない仕事。大変なことはなかったのでしょうか。
「実際にお客様にアートギャッベをご紹介してみて、思っていた以上に難しいなと感じました」
ていねいに長い時間をかけて織られるアートギャッベは、ほかの絨毯に比べて高価なもの。前谷さんの話を聞きながら、購入してもらうのは難しいんじゃないかなと想像する。
隣で話を聞いていた菅井さんが話を続ける。
「アートギャッベに憧れを持ってもらうことが大事ですね」
憧れ。
「ついこの前いらっしゃった方は、初めて来店されてから購入まで7年かかりました。自分の家を買うことになって、やっとアートギャッベに見合う空間を用意できたからと」
アートギャッベにまつわる様々なエピソードをお話ししながら、好きだな、ほしいなという気持ちを育てていく。
たとえば、遊牧民やイランの文化のこと。アートギャッベの好きなところを話してもいい。
使い込むほどに、色が深まって表情が豊かになっていくこと。その風合いから、『心が和む、ずっと前から家に置いてあったような気がします』と言ってもらえたことも。
「最終的には、ギャッベの上にお子さんと寝転んでみたり、ご夫婦で話をしながら、運命の1枚に出会う。そして新しい家族を迎え入れるような感じで、みなさん大切に持って帰ってくださるんです」
菅井さんの話を聞いていると、まるで我が子が幸せになれる嫁ぎ先を探しているような、アートギャッベへの愛着を感じる。
アートギャッベについて深く知っていないと、そういう関わり方はできないですよね。
「そうですね。だからある程度経験を積んだらイランへの買い付けにも行ってもらいます。実際に遊牧民の方たちと寝食をともにして、彼女たちが見ている風景を私たちも見せてもらう」
「誰かが選んできたものを紹介するんじゃなく、自分たちが本当にいいと感じるものを販売するから気持ちが入るし、どれも自信を持っておすすめできるんです」
いま、本当に価値あるものはなんだろう。
それは大切に長く使い続けたいと思えるものだと思う。
誰かを想う気持ちが込められたアートギャッベを扱うこの仕事は、自分の考えや感性も豊かに成長させてくれると思います。
興味を持ったら、まずはあなた自身がアートギャッベに出会うところからはじめてください。
(2015/12/18 並木仁美)