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目の利いたバイヤーの要望をくみとり、いいものを探しにアメリカを駆け巡る。古着にひと手間加えることで、服を蘇らせる。
今回紹介するのは服に携わる仕事です。
買い付けた服を自ら販売するバイヤー、取引先と会社をつなぐパイプラインの顧客対応、服を新たに変身させる縫製スタッフを募集します。
同じ業界で働いている人も未経験の人も、ファッションが好きな人にぜひ読んでほしいです。
東京・新木場。
その名の通り、昔から建設資材の貯木場として知られている場所。いまでも材木屋や運送業者がひしめき、たくさんの倉庫が建ち並んでいる。
目立った看板がなく迷っていると、後ろから「こんにちは!」の声が。振り返ると、さきほど道ですれ違った方が。
株式会社Focus Ragの代表、河又さん。
「こっちです」と河又さんが案内してくれたのは、材木屋さんの大きな倉庫。
ここの3階を借りてFocus Ragのショールームを構え、近隣にはアトリエ兼オフィスがあるという。
この日はちょうど荷積みの日。アメリカで仕入れたたくさんの古着が届き、スタッフの方々が整理していた。
Focus Ragは主にアメリカで古着を買い付け、日本全国の古着屋やセレクトショップに卸販売している会社。
同業者は東京では6〜7社ほどと狭く特殊な業界のため、情報が外に出ることがあまりないそうだ。
「なんて説明したらいいかな。古着って一点ものなので、どうしても仕入れ先のルートや顧客情報を開示できないんですね。良くも悪くもオープンにできない、意外と専門性の強い仕事なんです」
河又さんがこの業界に飛び込んだのは、いまから16年前。高校生のころはアメリカのジーンズなどの古着が流行っていた世代だ。
お母さまが英語教師ということもあって、昔から海外に対する憧れが強かったという。高校を出てフリーターをしたあとはオーストラリアへ。その次に料理の世界で生きていこうとスイスへ渡ったけれど、なかなかのめり込めなかったそう。
「でも、日本から唯一持っていったファッション雑誌だけは毎日見ていたんです。帰国してから、レディースの古着を扱う会社でたまたまバイヤーとして雇ってもらえて」
もともとファッションが好きだった河又さん。アメリカを舞台に、自らの感性や発想を頼りに服を買付けるバイヤーの仕事が、とても向いていると感じたそう。
会社に12年ほど務めた後、2011年に独立。Focus Ragを立ち上げた。
「Focus」は「ピントを合わせる」という意味。クライアント1社1社と密に関わることを大切にしようという思いが社名に込められている。
「クライアントとのたわいのない話からすべてメモして、スタッフみんなで共有しています。そうすることで買い付けてきた商品をただ売るんじゃなく、お客さまの要望に合わせてアメリカで買い付けたり、縫製チームによって古着をリメイクしたりして、新しい洋服をこちらから提案できたりする」
「買うところから売るところまで一貫してやって、ファッションを提案できるのがうちの強みですね」
そんなFocus Ragにはこだわりの強いクライアントが多いそう。古着屋を中心に、セレクトショップやデザイナーなど様々な人が新木場の倉庫を訪ねるという。
「クライアントと新しい流行を発見したり、一緒になって盛り上がっていくのが楽しいですね。スタッフとも『あれいいよね』『これいいよ』って言い合ったりして」
「古着というよりも、ファッションをやっている感じですね。ファッションとして古着をやっているのが、うちの会社なんだと」
河又さんたちが古着を仕事にしているのは、そこに自由なファッションの世界があるからだと思う。
服が好きな仲間同士が集まり、新しいファッションを生み出していく。
今後は自分たちの感性を武器に、古着の卸会社という枠を越えて新しいことにチャレンジしていこうと考えているという。
「たとえば卸す以外にも、一般のお客さんにも買ってもらう方法があるんじゃないかなって。縫製スタッフがお直しやリメイクだけじゃなく、自分の作品を打ち出すようにしたり、それがゆくゆくは自社ブランドになったりして」
「いずれは古着の卸を中心にさまざまなことにチャレンジしていきたいと思います。たとえば、海外への卸や出店もやりたいなと」
実際に、逆に日本で仕入れた藍染や刺子などの日本のビンテージをアメリカの大きなフリーマーケットへ売りに行ったりするなど、新たな試みを少しずつはじめている。
「そういうのもアリなのかなって。卸にこだわり過ぎずに、柔らかく考えて、もっといろんなことやって変化していっていいのかなって」
そんな考え方だから、これから加わる人は現況を当たり前のものとして受け入れないで、大小関わらず気づいたことを提案したりしてほしいという。
「やり方はひとつじゃないと思うんですよ。アメリカだけにこだわらずいろいろな場所で仕入れてもいい。はじめてのことでも一緒に勉強していきたいなって思っています」
河又さんは、どんな人に来てもらいたいですか?
「好きということが原動力になる仕事なので、まず服が好きな人。卸という裏方で取引先の要望に応えたり、一緒に結果を出す事を自分の楽しみとして考えられる人。誰かによろこんでもらうのが好きな人ですね』
Focus Ragのみなさんの話も聞きたい。
続けて話をうかがったのは、バイヤー兼顧客対応を担当する藤原さん(写真右)と駒井さん。
3週間アメリカで買い付けをし、帰国後約1ヶ月で仕入れた商品を販売しているそうだ。
自分で仕入れたものを自分で取引先に販売するこの仕事が面白いという。
ふたりとも以前は古着ショップで働いていた。
お店ではなく、卸だからこそ経験できることがあると、藤原さんは話してくれた。
「お店だと、海外へ買い付けに行く機会はオーナーとか専属バイヤーだけに限られたり、入社してすぐには行けなかったりする。ここは早い段階から、買い付けから販売まで一連の流れが学べます」
「それに卸だと、アメカジとかモードとか、いろんなテイストのお店のクライアントがいます。自分の好きなファッションを深めながら、いろんな服や価値観を勉強できるっていうのは、卸のいいところかもしれないですね」
そんな卸の仕事が、駒井さんは合っていたそう。
前職で転職を考えはじめたのは30歳を迎えてから。そもそもアパレルを続けるのか迷うほどだったという。
「前の会社で扱っていたのは20代前半がターゲットのブランドだったので、自分の年齢とどうしても合わなくなってきて。せっかく経験があるのに、結婚を機に辞めてしまう女性の先輩たちもいました。それに、この先ひとつだけのブランドでやっていくことが自分にとっていいのか、分からなくなってしまって」
「けどやっぱり古着が好きで、仕事にしたいという気持ちがあったんですね。いろんなクライアントがいて、いろんな年代の服を買い付けできる卸なら、わたしはやれるんじゃないかって」
実際に働いてみて、どうでした?
「すごく緊張しました。お店と違って、卸はプロのバイヤーさんたちが自分の商品を選んでいくので。自分の選んだものがプロにどう判断されるのか、それは今でも緊張しますね」
「ベテランのバイヤーさんがいいというものが分かってきたり、自分が何気なく選んだ商品をとあるバイヤーさんがすごく褒めてくれたりして。だんだん、自分が『いいな』と思えるものが増えてきました」
そんな駒井さんの話を受けて、「センスは磨かれていくと思いますよ」と藤原さん。
「たとえファッションセンスに自信がない人でも、洋服が好きであれば磨かれていくと思います。好きなことって共感できるから。そういう人たちが集まって、切磋琢磨できる会社だと思います。何かミスしたり、買い付けた商品が売れなくても、変に叱られることはないです。河又は長い目で育てようという人なので」
おふたりはどんな人に来てほしいですか?
「ファッションに熱い気持ちをもった人に来てもらえるといいですね。好きな洋服の仕事をしていきたいと思う人。ファッションはそういう強い気持ちを持った人がつくることもたくさんあるので、その人たちの感覚を大事にしたいですね」と藤原さん。
続けて駒井さん。
「自分で楽しみを見つけられる人がいいです。アメリカへ買い付けにいくと単純作業の繰り返しになりがちなんですけど、普段とは違うルートで行ってみたりとか、おいしいご飯屋さんに寄ってみたりとか。急なクライアントからのアポイントでも、相手のためになるならやろうって思えたりとか」
「そういう人と一緒にわたしも楽しく仕事をしたいです」
取材をして感じたのは、Focus Ragの人たちは丁寧で柔らかい人たちだということ。ファッションがやっぱり好きだし、人も好きな人たちなんだと思う。
同じような人なら、たとえ経験がなくても、うまくとけ込んでやっていけると思います。
どんなクライアントがいて、どんな仕事をしているのか。もっと詳しく知りたいと思った方は、ぜひ河又さんたちに会って話を聞いてみてください。
(2016/1/27 森田曜光)