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「たぶんね、僕はここじゃないと働けないんですよ。モノを流通させて、経済を回していくことを突き詰めていくと、どうしてもいろんな矛盾が生まれる。どんなに仕事を頑張っても、心の奥底で『違う』と感じている人がいると思う。ここは矛盾が一番少ないと思います」そう話してくれたのは、トータルオーガニックテキスタイルカンパニー「IKEUCHI ORGANIC」の東京オフィスにつとめる阿部さん。

タオルといえば安くて、消耗品のイメージもあるかもしれません。そんな大量生産・大量消費型から離れ、豊かな生活のある社会を目指しているのがIKEUCHI ORGANICです。
地球環境にとっても、生産者にとっても、使う人にとっても、できるだけ安全で負荷がないように。
そんなふうにしてつくられるIKEUCHI ORGANICの商品は、品質がいいという理由のほかにも、共感によって人の手に渡っていく。
ここで働く人たちも、会社のあり方に共感し、納得しながら仕事をしているようです。
東京・表参道にあるIKEUCHI ORGANICの直営販売店を訪ねました。

平日の午前ということもあって、お客さんはちらほら。買いたい商品が決まっていてすぐに買物を済ませる人もいれば、たっぷり時間をかけながら商品を見回っている人もいる。

はじめに話をうかがったのは、IKEUCHI ORGANICの東京ストアで営業責任者を務める阿部さん。
大きさや色違いを含めて400以上もあるという商品をいくつか見せていただくと、商品名には「ORGANIC120」「BAMBOO320」などの品番が書かれている。
聞いてみると、タオル生地には縦糸と横糸の組み合わせ、それと表面のパイルの長さなどの違いがあるそうだ。それらの組み合わせによってつくられるタオルの種類は無限大。
IKEUCHI ORGANICは1953年の創業から培ったノウハウによってタオルを製造。商品名も3桁の品番によって風合いが想像できるようにしているという。
「いろんな用途や好みに対して、“設計”を変えることで対応しているんです。うちによくいらっしゃるマニアの方は番号だけでお話されますよ。ほんと、車みたいに」

モノとしていいのはもちろん、どれもフェアトレードで輸入されたオーガニックコットンを使用しているという。
「我々がオーガニックコットンをはじめたのは1999年からです。ただ、オーガニックなことをやりたくてはじめたわけじゃないんですよ。『最大限の安全と最小限の環境負荷』を掲げて、ものづくりをしています。それを突き詰めていった結果、オーガニックコットンを使うしかないと」
「いまオーガニックという言葉が流行っていますけど、オーガニックだから必ずしも健康だとかおいしいというわけではない。我々つくり手からすると、オーガニックの原料は扱いにくい。お客さまの満足感や機能面だけに特化するのであれば、本当はオーガニックでないほうがいいんですよ」
では、なぜIKEUCHI ORGANICはオーガニックコットンにこだわるのだろう。
そう聞くと、阿部さんは「知ってしまったから、後戻りできないんです」と答えてくれた
ほかの工業製品や原料と同様に、一般的なコットンも途上国などで大量に均一につくられている。機械を入れ、効率化のためにジャマな綿花の葉を枯葉剤で落としているという。
結果、土壌汚染が進み、農家の人や地域に住まう人々にも健康被害が及んでいる。けれどもそういった危険性について教育を受けることはないという。農薬と種がセットで売られ、抜け出せないビジネスにもなってしまっている。
「食べる野菜ではやっていけないことが、全部てんこもりになってやられている。コットンだって、タオルだって元は農作物ですよ。そんなのはサステイナブルではない。誰かの犠牲の上に成り立っているんです」

「経済を回すために架空のお金はどんどん増えていくし、食べものは工業製品のようにつくられる。オーガニックというのは、そういった社会の矛盾をきちんと元に戻すことだと、僕は捉えているんですよ」
IKEUCHI ORGANICの仕入れ先は、インドとタンザニアにいる契約農家。畑や品質だけでなく、生産者の労働環境などの厳しい条件をクリアした生産地だという。
ただ契約農家が決まっているため、つくれる綿花には限りがある。また、オーガニックコットンは均一ではないため、その年によって品質が変わることを販売店からいやがられてしまうそうだ。
そんなマイナス要素を逆手に、IKEUCHI ORGANICは「コットンヌーボー」という商品を製作。工業製品のタオルをワインのように楽しんでもらおうというコンセプトだという。
「これは2015年のタオル、これは今年のタオルって。ワインのように、その年々によって違う風合いを楽しめるんじゃないかと」
「そんな楽しみ方を全面に出しながら、タオルは農産物だよってところを見ていただきたいという思いがあります。売り場に並べる商品を均質にするために現場では何がされているのか、みなさんがちょっとでも知るきっかけになったら」

最大限の安全と最小限の環境負荷で、自分たちが納得のいくものづくりをする会社。タオルを通じて、矛盾のない社会に。
「商品を通じて、我々の考え方をちょっとずつお伝えしていく。一石を投じて共感の波紋が広がっていくような。これからも石を投げ続ける存在でいたいですね」
そんなIKEUCHI ORGANICの姿勢や考え方に共感して買う人も多いという。使ってみると、品質のよさにみんなが驚く。口コミで広まったり、お客さんが知り合いを連れて来てくれるそうだ。
「ストーリーもいいし、使ってみてもいいからと、お客さまからお客さまへつながっていくことが多いです。お客さまは当然いろんな方がいらっしゃいますけど、タオルを通して深い世界を知っていただきたいです」
そう話してくれたのは、東京ストア店長の國行さん。

タオルショップでイベントって面白いですね。
「社長の池内のトークイベントが今はメインなんです。最初はどうやってタオルをつくったのか、どうしていまのようなタオルをつくるようになったのかをお話して。対談イベントにして、ゲストをお呼びすることもあります」
これからはもっと社外のゲストを呼んで、いろんなことができればと考えているそう。異業種だけれども、ビジョンが共感する企業同士でのコラボも企画中だという。
商品以外でも、こうしたイベントを通じて共感してくれる人がいる。こんどはこんなセミナーを一緒にやりましょうと、様々な話が舞い込んでくるという。
すぐに商売につながることではないけれど、心地いい人たちとのつながりがここで生まれている。
「ご参加いただいた方を含めて、もっとファンを増やしていきたいですね。わたしたちの商品は決して派手ではないですし、コアなお客さまに支えられていますので。来てくださった方にまた来店していただいて、ファンになっていただくことが大切だと思っています」

どの人も自信を持って商品や会社について話してくれる。
東京ストアでは、会社のあり方や商品のよさに魅せられて転職した人がほとんどだという。
國行さんは、前職では銀行に勤めていた。
「大きな組織なので、決められた部署で、決められたことをする毎日。金融商品を扱うことに幸せを見出せなくて」
「ここは中小企業だから、いろんなことを任せてもらえる。担当を超えてやることはあるし、仕事量も多かったりするけど、それでも踏ん張って頑張ろうって思えるのは、一緒に働いて心地いいと思える人が多いから。自分が本当におすすめできる商品を扱えるし、まわりのみんなが頑張っているから、自分も頑張ろうと思えるんです」

商品の詳細や会社の取り組みを説明できることが必須のIKEUCHI ORGANICでは、まずは接客からはじまり、イベント運営や出展企画、営業なども担っていくようになる。
「タオルは衰退産業と言われています。けれども我々のビジネスモデルに共感いただいている方に支えられ、国内は東京・京都・福岡の3店舗を出すまでになりました。Webや海外への販売も増えてきて、それなりにやっていける体力はついてきた。これから先のことを考えるとワクワクしますよ」と阿部さん。
どんな人に来てほしいのだろう。続けて阿部さんに聞いてみる。
「接客が基本ですので、笑顔ができる方が大前提です。小さな会社なので幅広い役割が求められますが、自身のキャリアに限定せず、どんな仕事でも前向きに取り組むことができる方がいいですね。そして、我々のチームと一緒にクシャクシャになりながらも、次の未来をつくっていける覚悟があるかどうか」
まるで、ベンチャーのようですね。
「そう、ベンチャーですよ。中小企業ですから、組織面や給与面、福利厚生もまだまだ発展途上です。そういう意味でクシャクシャになりながらも、みんなで次の未来をつくっていきたいです」

老舗ながら、新しい取り組みにチャレンジし続けている。
これから加わる人も、新しいIKEUCHI ORGANICを形づくる重要な一員になると思います。
気になった方はぜひお店を訪ねて、話を聞き、タオルを使ってみてください。共感することからはじまると思います。
(2016/01/09 森田曜光)