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何もない村から

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

沖縄・名護から乗り込んだローカルバス。向かう先は今帰仁村(なきじんそん)。

窓の外に見える海は思ったよりも近くて、このまま泳ぎに行きたい気分に。一番前に座っているおばあさんは、さきほどから運転手さんとの会話で大笑いしていて、なんだか和む。

「『ぬーんねんしが』って言うんです。沖縄の方言で『何もないけど』という意味」

「ここは大型ショッピングセンターも娯楽施設もない。だからこそ豊かな自然が残っているし、人の心はあったかい。何もないけれど、満たされている。いい所なんです」

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流れる時間はゆっくりで、ここで出会う人たちはみんな清々しい笑顔をする。

そんな今帰仁村に住みたいとやってくる人の助力もあって、人口は毎年微増。ただその多くは、定年を迎えセカンドライフを送ろうとしている人たち。少子化が進んでいるという。

村で唯一の高校「県立北山高等学校」は、5年前より統廃合の危機に直面していました。

そのことについて話してくれたのは今帰仁村教育委員会のおふたり。写真左から、教育長の新城さんと学校地域地支援員の渡久山さんです。

ふたりはもともと中学校で先生と教え子だったそう。

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「高校を村全体で支えていこうと。県立の壁を越えて、高校を村全体で支援していくプロジェクトをはじめたんです」

教育体制を強化しようと、4年前からは、5歳から18歳までの幼・小・中・高一貫教育を開始。

昨年は役場の機構改革も行い、幼保連携推進室を設置。今後3~4年間には保育所・幼稚園をつくり替えて認定子ども園を整備し、幼児教育の強化を図るという。

0歳~18歳までの充実した子育て環境の整備を、村一丸となって行っていく。

「村外の高校へ出ていく子どもたちを減らしたいし、また逆に外から『通いたい!』という子が入ってきて切磋琢磨してほしい。ほかにも様々なプロジェクトを行なってきました」

たとえば夏休みの約5日間、中高生が県外の有名企業へ足を運ぶインターンシップ事業。沖縄を出て新しい世界に触れることで、学生の知見が広がることを目指している。

スーパー講師招聘事業では特別講師を招き、「夢の実現」をテーマに小中高校生むけに講演をしてもらっている。これまでのゲストは、CAMUIロケットの植松努さんや助産師の内田美智子さん、上田情報ビジネス専門学校副校長の比田井和孝先生など、魅力的な方々ばかり。

また、海外短期留学の一貫として、北山高校の姉妹校であるジョージア州にあるミルトン高校との相互交流を実施。毎年6~7名の短期留学を村として支援していく。

「沖縄を出て新しい世界に触れることで、子どもたちの知見が広がったり、生きる力がついたり、将来の人材育成に繋がる取り組みをしています」

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こうした村全体の取り組みは、たった数年で結果が出るものではないと思う。

どの取り組みも村にとってはじめてのこと。試行錯誤を繰り返しながら、日々一歩ずつ前進している。

始動4年目となる村営塾では、今年から運営を刷新することになった。

これまでの村営塾は今帰仁村関係の元大学教授や退職教員の方々を先生に招き、主に3年生を対象に教科学習のフォローを行なってきた。ところが受講する生徒数は伸び悩み、1~2年生の支援はあまりできない状況にあった。

「わたしもこの学校に通っていたので分かるんですけど」と、渡久山さん。

「北山高等学校って部活動とか生徒会活動がすごく活発なんです。そのためか、子どもたちは大学受験への取り組みがほかの学校の子とくらべるとのんびりで。一般入試よりも、AO入試や推薦に力を入れている生徒が多い印象ですね」

村営塾に加え、北山高等学校では放課後講座を取り入れ、生徒たちの学力アップを目指している。

ところが生徒の学習レベルの幅が広く、レベルアップも底上げも同時に求められるという難しさがあるそう。

また、部活動に参加する学生が8割を超えるこの学校では、勉強との兼ね合いがなかなか難しいという。進学を目指すため、授業前に早朝の授業を実施しているが、理数科が敬遠される要因になってしまったりしているという。

「村営塾の機能を拡充して、高校をフォローしていただくのはもちろん、受験に必要な学力向上やAO入試や推薦入試の対策も必要不可欠です」

そう話すのは、校長先生の宮里さん。

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村営塾のリニューアルに伴い、新たに村営塾の講師スタッフを募集することになった。

これまで講師を務めていた元教授の方々は退任されるため、新しいメンバーで一から塾を形づくっていくことになる。

生徒に教科学習を指導するほかにも、どのような講座をどの時間に開くか、高校の先生方と連携して指導体制を整えていくことになるという。

「たとえば公営塾を開く時間はあらかじめ設定して、個別指導型にするとか。どういった形がベストか、柔軟に対応できるように取り組んでいきたいですね」

北山高等学校には、村外から通う生徒や部活動に励む生徒が入る定員80名の寮がある。文武両道を目指す学生向けに、たとえば寮内のスペースを利用して21時から1時間の学習時間を設けることもできるそう。

理数科を持つ北山高等学校では、とくに英数理に強い人を求めているという。

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今帰仁村が目指すモデルのひとつに、島根県海士町の「高校魅力化プロジェクト」がある。

高校魅力化プロジェクトは、魅力ある高校づくりによって地域活性化を目指す教育改革プロジェクト。

「その地域でしかできないカリキュラム」「教科学習とキャリア教育を受けられる公営塾」「人との出会いと気づきがある教育寮」の3本柱を軸に、それぞれまったく環境の異なる地域に合わせて、全国各地でローカライズ展開されている。

高校魅力化プロジェクトを全国各地へ広めている株式会社Prima Pinguinoの藤岡さんとともに、今帰仁村でも高校魅力化プロジェクトを昨年から進めていくことになった。

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今後は海士町の公営塾と同じように、今帰仁村の村営塾でも教科学習に加えてキャリア教育を行なっていきたいと考えているという。

どんなキャリア教育を行なうのか。

たとえば、広島県で高校魅力化プロジェクトを進める大崎上島町の公営塾では、高校と連動した「夢☆ラボ」というキャリア教育プログラムを設けている。

マシュマロチャレンジというチームビルディングのゲームをしたり、ある大学の法学部の学生と教授が島に来たときは、島暮らしが楽しくなるような条例を高校生が考えてチームで提案したり。

「夢☆ラボ」を通じて、生徒たちは答えのない世界で自らの答えを紡いでいくことを学び、それが自らの方向性や将来の夢を紡ぐことへとつながっていく。

大崎上島の公営塾では、とくに業界経験もない若いふたりがトライ&エラーを繰り返しながら、手づくりでキャリア教育プログラムを企画している。

「いろんな生き方とか、受験での面接の対応とか、ディスカッションとか、いろんなことを知る機会になれば。様々なコミュニケーションを図りながら、知を高めていく」

「高校の授業以外でも、村営塾でこういったトレーニングをやっていただけたらなと思います」

キャリア教育は長い時間が必要だけれど、学生たちが自分やりたいことを見つけたり、将来の方向性が定まったりしていくことにつながる。

「きっと、目の前の勉強に対してもモチベーションが上がるようになりそうですね」。そう伝えると、宮里校長がこんな話をしてくれた。

「学校の前に『夢咲坂』っていう坂があるんです。そこは生徒達の好きな場所ナンバーワンで、愛着がある場所なんですよ」

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この絵は誰が描いたんですか?

「いまから10年ほど前に、生徒の発案で。こんなペインティングしているのはうちくらいですよ。いまも学生たちがペイントして付け足しているんです」

「あとは『一生懸命がかっこいい』という村のキャッチフレーズも、うちの生徒の言葉ですね」

北山高等学校は部活動以外にも生徒会活動や行事が盛んな高校。自主的に活動する生徒が多いようだ。

「私は昨年赴任して、はじめて体育祭のパネル演技を見たんですよ。あれがまたすごくて。生徒一人ひとりが呼吸を合わせて色のついたボードを掲げて、文字に仕上げる。これも生徒たちが自分たちでやりたいってはじめたそうで」

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気持ちが入れば一生懸命になれる生徒たち。情熱が勉強に注がれるようになれば、きっとうまくいくと思う。

課題はたくさんあるかもしれないけれど、生徒たちは素直でいい子ばかりだそう。

「とにかく素直な生徒たちです。ヤンキーもミニスカートもいない。最近ではめずらしいと思います(笑)」

「鍛えれば、かなり伸びると思う。それを生徒たちにも自覚してもらって、学力を伸ばしてあげる取り組みが必要だと」

今帰仁村は海士町の高校魅力化プロジェクトをモデルにしているとはいえ、実際に行なう取り組みはその地域の環境や状況に合わせる必要がある。

これから何ができるのか、分からないことがほとんどだけれど、とにかく試行錯誤しながら一歩ずつ進めるといい。これまでの取材でうかがった大崎上島や久米島の公営塾で働く人たちは、みんなそういった姿勢だった。

「やってみてから直すところは直していって。やることが先決ですよ」

「何かまずスタートしないとね。私も性格的にはフレキシブルなので、我々高校も柔軟に連携させていただきます」

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村営塾の講師スタッフは、任期が最大3年間の今帰仁村の地域おこし協力隊として雇用されます。

3年間に限らず、協力隊と村の互いの希望によっては継続雇用の道も。もし、ほかの挑戦をしたくなったら、協力隊の経験を活かした転職などのキャリア支援も行うそうです。

今帰仁村は農業が基幹産業。豊かな食材に加えて、気軽に遊びにいける綺麗な砂浜があります。

何もないことはなく、魅力いっぱいの村だと思う。そんな今帰仁村での暮らしを楽しみながら、仕事では生徒と教育に向き合う毎日。

村営塾での活動は高校のみならず、今帰仁村の教育そのものに影響を及ぼしていくことになります。それは責任がある一方で、地域の将来を担うやりがいのある仕事だと思う。

沖縄県今帰仁村に飛び込む方をお待ちしてます。

(2016/1/4 森田曜光)