※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
競馬の世界って、こんなに愛情があるんだ。お話しを聞きながら、そんな発見をしました。

「馬」に関わるというよりは、「馬をとりまくたくさんの人たち」をつなぐようなイメージ。
募集するのは、クラブに所属する馬や、クラブのイベントの情報をウェブサイトで伝える、「ウェブマスター・ウェブディレクター」です。
馬が好きな人はもちろん、人とのコミュニケーションが好きな方にも、ぜひ知ってもらいたい仕事です。
シルク・ホースクラブは、中央競馬で走る競走馬をファンドとして、競走馬の一頭あたりの権利を500口に分けて出資者を募集する「一口馬主」の会社です。
ふつう、馬主は限られた富裕層がなれるもの。でも「一口馬主」なら一頭あたり数万円からの投資でだれでもその馬の出資者になれる。
日本にはいくつかの「一口馬主」のシステムを提供する会社があるけれど、500口という細かな分割は少ない。気軽に始められるため、学生の方や複数頭の馬主になる方もいるそうです。会員数はどんどん伸びていて、現在9,100人ほど。
「競馬というと、ギャンブルを想像するかもしれませんね。もちろん、出資した馬がレースで勝てば分配金は入ります。でも、それとは違う楽しみも広がっているんですよ」
そう話すのは、代表の米本さん。

1年間トレーニングセンターで調教され、2歳になるといよいよ初レース。会員さんは競馬場へ足を運び、期待を込めて応援する。
「はじめは『馬って儲かるの?』と思いながら入会された会員さんでも、馬の成長を見守るうちに、みなさんだんだん投資対象というよりも『我が子』のように想われるようになるんです」
自分が出資し、ずっと成長を見てきた馬が走っている姿をみたら、きっとうれしいだろうな。
そんな気持ちをもった会員さんにとって、「我が子」のことならよく知りたいし、同じ馬に出資する仲間と語らうことも楽しいもの。
シルク・ホースクラブでは、会員さんとコミュニケーションをとり、会員さんの気持ちに寄り添いながら情報やサービスを提供しています。
詳しくお話を伺うために、東京・赤坂にあるシルク・ホースクラブを訪ねました。
オフィスのある通りには飲食店が立ち並び、夜になれば華やかな雰囲気が漂いそう。
ビルの5階、扉をあけて現れたのはラウンジ。

ラウンジの奥の会議室へ移動し、営業担当の望月さんにお話を伺います。
望月さんは、もともとシステムエンジニアをしていた方。小さいころから好きだった馬を忘れられず、この業界へ飛び込んだ。別のクラブで9年以上勤め、3年前にシルク・ホースクラブへ入社しました。なによりも、馬への愛情が感じられる方です。

北海道にある育成牧場、トレーニングセンターの調教師、レースで命をかけて馬に乗る騎手、応援してくれる馬主さん…。
一頭の馬にはさまざまな人が関わっているけれど、それぞれの場所は遠い。なかなか会うことができない会員さんの代わりに直接訪れ、意見を交換し、双方の思いや考えを伝えていく。
たとえば、出資の募集をするとき。
競馬は「血のスポーツ」とも言われ、馬の血統が重要視される。年間60頭ほどいるシルクの募集馬でも、目立った血統をもつ馬はぱっと売れるし、そうでない馬は長く出資を募集することになる。

まずはお客さんがどうして出資しようと思わないのか、というところから聞いていく。
すると、ある馬に対して“体が大きすぎるから、レースで勝てるか不安”という声が聞こえてきた。
「そこを牧場の人たちに正直に話してみるんです。すると、『この馬のお母さんが体の大きな馬でしたから、ある意味生き写しのような馬なんですよ』との答えが返ってきた。そのお母さん馬は、体が大きくてもGⅠレースという最も大きなレースで一等をとっている馬で、募集馬はその最後の子どもでした」

この会報を担当したのが、昨年日本仕事百貨を通して入社した竹内さんです。
「小さいころからテレビで競馬を見ていて、大学では馬術部にいました。以前は大手の食品加工会社に勤めていたのですが、あまり興味もないのにこのまま続けていていいのかなと思うようになって」
「自分がなんのために時間を費やすかと考えたとき、やっぱり好きな馬に携わろうと思い、ここへ応募したんです。今は満足して働けています」

「毎週末にある競馬に合わせて、一週間のサイクルがだいたい決まっています。レースへ向けて水曜日には馬がトレーニングセンターで調教を行うので、うちの馬にどんな変化があったかなどを調教師の方とやりとりし、会員さんへ向けて情報を発信します」
「木曜日にはレースで出走する馬が確定するので公開し、土日は競馬場で調教師さんや騎手さんとお話ししてリアルタイムで情報を出せるようにしています」
情報を発信する以外にも、電話の対応をしたり、イベントの企画や開催をしている。
「入ってみると、外からみているよりも地味なところはあるかもしれませんね。実は入ってすぐのころ、電話の対応に苦労しました」
馬は会員さんにとって我が子のようなもの。馬が負けたりすると、つい熱が入った電話をいただくこともあるそう。
「そんなとき、相手の気持ちを否定しないで、じっくりきくことが大切なんです。『残念でしたけど、また一緒に頑張っていきましょう』というようにお声かけします」

「相手の気持ちを大事にするというところでは、募集馬についてもそうです。よくお電話で『おすすめの馬はいますか』と聞かれるんですが、ぼくたちはオススメはしません。それよりも、どんな馬がいいかを聞いていく。牡がいいですか、牝がいいですか、マッチョがいいですか、それとも細い方がいいですか…」
「みなさん馬を見るポイントを持っていらっしゃいます。それを丁寧に引き出して、最後に背中をポンと押してあげることが大事なんです」
自分の気に入った馬に出資してもらうことで、会員さんも愛着をもって付き合っていける。
「ほんとうに一頭一頭違うんですよね。その良さをもっともっと伝えていきたい。これまでは文字ベースの情報発信でしたが、昨年HPをリニューアルして、写真や動画でも馬の情報やイベントを発信しているところです」

「だんだん情報を発信するようになっていて、次は、お客さん同士がつながって、仲良くなってもらえるようなこともやっていきたいなと考えています」
すると、隣で聞いていた代表の米本さんもお話をしてくれた。
「馬をもつことだけでなく、そこでつながる仲間と楽しむことも提供できたらなと思っているんです」
パーティやイベントを開く際に、会員さんの持っている出資馬が書かれた名札を配ったり、ちょっとしたきっかけをつくると、自然と会員さん同士で会話がはじまる。

「面白いのは、会員さんのもっている馬が勝ったら『おめでとう!』って飲むじゃないですか。でも、ぜんぜん走らなかった、10着みたいな馬でもやっぱりその会員さんにとっては、1晩2晩、へたしたら3日くらいそれでお酒が飲めちゃう。『なんであれ選んだんだろうね』『あのレースのとき、ああやって負けたよね』とか、同じ仲間がいるとずーっと飲めるんですよね(笑)」
馬を中心に和気あいあいとした人の輪が生まれている。むしろ、真ん中にいるのが馬という生き物だからここまで温度をもつのかもしれない。
「会員さんや牧場の方、調教師の方、騎手さんや競馬評論家さん、ほかにも馬を通して関わる人がすごく多いんです。いろんな方ともっとコミュニケーションをとっていきたいし、そういうものを大事にしたい人にきて欲しいですね」
米本さん自身は、以前は不動産の会社で働いていたそう。
「馬の仕事のいいところは、人間の力が及ばないところで結果が決まるぶん、レースに勝ったあの瞬間は本当にみんなで喜べるんです。それが毎週あるというのは、なかなかないなと思いますよ」

「いいな」と思った方はぜひ一度、シルク・ホースクラブのラウンジを訪ねてみてください。競馬場へ行って生の馬をみてみるのも、おすすめですよ。
(1016/1/28 倉島友香)