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ときめきを紐とく

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「どんなモノにも必ず表面があります。そこがうつくしかったり、魅力的だったりしたら、ときめきませんか?そのときめきをみんなに感じてほしいし、あらゆるモノがときめくものになってほしい」

CMFという言葉を聞いたことがありますか?

Color(色)、Material(素材)、Finish(光沢・マットなどの表面加工)の頭文字からなる言葉で、色や素材をそのものからつくり、いままでになかった質感や世界観を生み出します。
FEEL GOOD CREATION - 1 (16) たとえば、スマートフォン。

どんどんシンプルな形のデザインになるにつれて、表面の色や素材のデザインが重要になっています。見た目や触り心地の良い、今までにないモノの表面=サーフェイスをどう実現していくか。

そういったCMFを専門としているのがFEEL GOOD CREATIONです。

FEEL GOOD CREATIONでは、家電や車のメーカーさんと一緒にCMFをつくるクライアント業務と、自社で行っているCMF DESIGN LINKという活動の2軸をもっています。CMF DESIGN LINKとは、ものづくりメーカーさんの技術を紹介し、活用範囲を広げるというもの。

今回は、CMFデザイナーとなる人を募集します。プロダクト製品など、リアルなモノに関わってきたデザイナーであればよいそうです。

感性と論理的思考のバランスが求められる、分野を超えたあたらしいデザインの世界がありました。


東京・南青山。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 明治神宮外苑からつづく銀杏並木道の向かいにFEEL GOOD CREATIONのオフィスはあります。

欧州では、フォルム(形状)と並んでサーフェイス(表面)も専門性の高いデザインとして確立されているそう。

日本でもすこしずつ注目されているそうだけれど、どうしてCMFをやろうと思ったのだろう?

代表の玉井さんにお伺いしました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「わたし、子どものころから色が好きだったんです。きれいな色を見ると、無条件に楽しくなってわくわくする。逆に、きれいじゃないとすごく気分がわるくなる(笑)何色が好き、というより、色合わせが好きでしたね」

美術大学でテキスタイルを学び、卒業後は本田の4輪デザインセンターで内外装のカラーデザインを13年担当。

「車のデザインをやる中で、色だけでなく素材に触れるようになり気づいたことがありました。モノって、色はもちろん、質感が加わるとより豊かな表情を見せ、魅力が増すんです」

CMFの重要性に気づき、2007年に日本で唯一のCMF専門会社としてFEEL GOOD CREATIONを立ち上げます。

「サーフェイスはただの加飾、と思われがちなんですけど、そのただの加飾がもたらす心理的な影響はすごく大きいと思うんです。そういうと、『うつ病の方が元気になる色は何色か、結果を数値で表せ』みたいな医療的なところに持って行かれがちだけど、そうではなくて、ほんとうにささいな日常の幸せになったらいいと思っていて」

ささいな日常の幸せ?

「自分が持っているモノのサーフェイスがとても魅力的だったら、見るたびに幸せな気持ちになりませんか?豊かなものに囲まれている、と感じられるようなモノをつくっていきたいです」

FEEL GOOD CREATION - 1 (9) 具体的にどんな仕事をしているのだろう。

まず紹介するのがクライアント業務です。さまざまな製品のCMFを家電や車のメーカーさんと一緒につくっていくもので、FEEL GOOD CREATIONの主な業務になります。

インターンを経て入社したという坂本さんに詳しく話をお聞きします。

坂本さんはもともと、インテリアデザイナーをしていた方。

「デザイナーと言われる職業なんですけど、カタログにあるものを選ぶことが多くて。『これってデザインをやっているのかな?』と思うようになったんです」

FEEL GOOD CREATION - 1 (6) そんなとき、学生のころにやった店舗設計の課題で、素材によって空間の雰囲気が変わったことがとても印象的だったことを思い出す。

素材に特化した仕事を探すうち、辿りついたのがFEEL GOOD CREATIONでした。

インテリアデザイナーだった坂本さんにとって、これまでと違うデザインの世界。

ここでのクライアント業務はどんなふうに進めるのですか。

「説明するのが難しいな…」と言いつつ、ある事例を紹介してくれた。

「これはうちでCMFデザインやディレクションに関わらせていただいた車です。どんな人へ向けて、どんな世界観をつくるか。まずはユーザーや価値観を徹底的にリサーチし、分析します」

FEEL GOOD CREATION - 1 (15) CMFデザインでは、「いままでになかったモノ・世界観」を表現する。

顕在化していない「いままでにないもの」は、ユーザーも気づいていないような潜在的なニーズから生まれるもの。まずは徹底的な調査をし、丁寧な分析や観察をもって潜在的なニーズを見つけていく。

それらを基にコンセプト案をつくると、次はどう世界観を表現していくかを考える。

「世界観というのは、車に入ったときの雰囲気みたいなもの。それをどう表現するかというとき、技術ではなく、考え方を転用するんです」

考え方を転用する?

「たとえば、ナチュラル系のカフェのような雰囲気を車に落とし込みたいとします。そのとき、そのカフェで実際に使われている壁や床、椅子などの素材をそのまま車に入れても同じ雰囲気にはならないですよね。まず、車は乗り物ですから、カフェという広い空間で感じるインテリアへの感覚とは違います」

たしかに、アンティークのソファにナチュラルな感じがあっても、車内にぽつんと置かれただけではカフェのような雰囲気は出ない。

「『何がどこにどう使われているから、カフェのような感じがする』というように、そう感じる要素を見つけます。ベースに表現したい雰囲気があって、そのためにはどんなCMFデザインの手法をとるべきか考える」

FEEL GOOD CREATION - 1 (14) 「考え方を転用するときは、形が変わるときです。ここで言えば、カフェの空間から車内ですね。規格が変われば、まったく同じ技術が使えるとは限りません。そのため、その商品にふさわしい技術の応用なども考えながら、できるだけイメージに近い世界観を表現していきます」

「感覚的なものから徐々に技術的なところに落とし込んでいくので、大変なところですね」

すると、代表の玉井さん。

「CMFデザイナーには、そういった感性も必要です。けれど、今回はロジカルな考え方が得意な人にも来て欲しいなと思っていて」

どうしてでしょう。

「クライアント業務もCMF DESIGN LINKも、外部の方と一緒につくっていきます。そのとき、ロジカルな部分がないと人に伝えられないんですよね。CMFの価値は、感覚的に『いい』と思う、とても感性的なものです。その感性的価値を人に伝えることがすごく難しい」

感性はそれぞれ違うから、きっとたいへんでしょうね。

「そうなんです。ロジカルに伝えられたとしても、感性が大きく違えば『いい』と思うモノも違う。そんなとき相手がわからなくても、私たちは『いいモノ』をきちんと判断できなきゃいけない」

「それは、たくさんいいモノをみることでわかるようになります。そうした経験値をもとにベストなものを提案し、相手に理解、または共感していただく。そこが一番難しいところですね」

クライアントさんや、技術メーカーさんたち。ひとつのものを一緒につくりあげるよろこびがある一方で、感性をわかりやすく伝える論理的な思考と、確かな審美眼が求められる。

「CMFは開拓中の業界です。これからつくっていけることは楽しみでもあり、草をかき分けて進んでいくような大変さもあると思います」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「そういう意味では、CMFを一緒に考え、意見を交わせるような人に来て欲しい。小さな組織なので、プライベートでも飲みにいったり遊べたりするような人と働けたらうれしいですね


もうひとつ、玉井さんたちは、CMFデザインをする上で大切にしていることがあります。

「私たちは色・素材・加工でどう表現するかを考えるのですが、実際につくるときはものづくりメーカーさんの技術が必要です」

技術があってこそのCMF。けれど今、日本のものづくりの市場自体が小さくなっているそうです。

これがもうひとつの仕事であるCMF DESIGN LINKにつながっていく。

CMF DESIGN LINKとは、ものづくりメーカーさんの技術を紹介する活動です。

どんなに素晴らしい技術でも、それだけだとどう活かしたらいいかイメージするのが難しいこともある。そこにCMFデザインを加えることで、技術がより活きる機会をつくろうとしている。

FEEL GOOD CREATION - 1 (10) 「いろんな方に技術を知ってもらうことで、『自分たちの仕事は必要とされているから頑張ろう』と思ってもらいたいんです」

そんなものづくりの技術を紹介しているのが、CMFの展示会である「青フェス」。FEEL GOOD CREATIONが主催し、企画から運営まで手がけています。

具体的にどう紹介するのだろう。

お話を伺ったのは、入社して半年になる鈴木さんです。

美大を卒業後、フリーランスで空間づくりやグラフィックなど幅広くデザインを手がけてきました。たまたまHPを見てCMFの考え方を知り、「やりたかったことはこれだ!」と思い入社したそう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「こないだ担当させてもらったのは、『蒸着』という印刷技術をもったメーカーさん。これまではパチンコ台にその技術を使ってきたけれど、幅を出したいと考えていらっしゃいました」

「蒸着」とは、金属や酸化物を蒸発させ、素材の表面に付着させる印刷の技術。

FEEL GOOD CREATION - 1 (11) 「こんなことができるよ、という“技術”を伝えたい。例えば、この蒸着技術は透明度を変えることができるんですよ。そういう技術の特性みたいなものを見つけ、説明がなくてもわかるようにどう見せるかを考えます」

どんな透明度が出るか、どのくらい細い線まで描けるか。何度も工場の方とやりとりを重ね実験してもらった。

そうしてできたのは、姿見のようなサンプル。

FEEL GOOD CREATION - 1 (12) 上から下へ透明度がグラデーション状になっていて、この印刷技術で透明度が変えられることが一目でわかる。

「展示会の当日、来てくれるデザイナーの方々が『なんだろう』と集まっている姿は、良かったですね。当日人がいなかったらどうしようと思っていたので(笑)」

青フェスではデザイナーの方がお客さんとして訪れるため、できあがるモノにはかなり高いクオリティが求められる。

この展示会を通してデザイナーさんが「すごい」と感動したり、メーカーさん同士で「こんなことができそうだね」と盛り上がることも。

FEEL GOOD CREATION - 1 (13) じつはこの青フェス、手間と時間をかけるわりに、あまり収益にはつながらないそう。

それでも「技術を魅せることで、日本のものづくりが元気になったら」と玉井さんたちは考えています。

CMFデザインも技術あってこそ。

この2つがよりよくなっていけば、今までにないときめきを生み出すことができると思います。

どこかでピンとくるものがあれば、ぜひ玉井さんたちに会ってみてほしいです。

(2015/2/2 倉島友香)