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なにかを手作りでつくってみようと思ったことはありますか?私はアクセサリーやお菓子をよくつくります。
どうして手作りしたいのかと考えてみると、ただ“モノ”をつくるだけではなく、その“時間”も含めて好きなのだと思います。
イメージがだんだんとかたちになっていく瞬間や、贈る誰かを想像しながらつくる時間。つくっている間には大変なこともあるけれど、かかった時間のぶんだけ愛着も増していく。
貴和製作所は、アクセサリーパーツの専門店としてそんな「つくりたい」という想いに応え続けてきた会社です。

どちらも共通しているのは、ただモノを売るのではなく、一つひとつの商品やお店にやってきてくれるお客さまの想いに目をむけて働いていること。
与えられた仕事をこなすだけでなく、“人”との関わりを大切にしながら働いていきたい人に、おすすめです。
東京・浅草橋。
駅を出ると、通りには人形や文具、パーティ用のドレスなどさまざまな品物を扱う店がずらりと並ぶ。古くから浅草寺への参拝客で賑わった浅草橋は、問屋街として有名な町だそう。
信号を渡り、貴和製作所の浅草橋本店に到着。取材前にお店を見せてもらおうと中に入ると、まずはその品数の多さに圧倒される。

ちゃんと見てくれているんだなと、少しうれしくなりながら5階のオフィスにむかう。

迎えてくれたのは、副社長の関口さん。
前職でシステムエンジニアとして働いたあと、ここ浅草橋本店の店長を経て、今ではウェブサイト運営をメインに担当しながら浅草橋の店舗をサポートしている。
下のフロアでの出来事を話すと、ニコニコしながらこんなことを教えてくれた。
「うちは若い方から年配の方、初心者から習熟した方までさまざまな方がいらっしゃるんです。パーツを探し出せないと、その時点でつくれないと感じてしまう方もいるかもしれない。この業態でやるからには、すぐに聞けるような環境じゃないとお客さまにご不便をかけてしまう」

関口さんのお父さまでもある現在の社長が、オリジナルチェーンの企画・製造・卸しをする会社として貴和製作所を設立したのは、1975年のこと。
貿易会社に勤めていた経験をいかして、自身も営業として飛び回りながら自社でつくった品質の良いチェーンを主にアメリカなどの海外に輸出していたそう。
お客さまからのニーズにあわせて少しずつ扱う品物や仕入れ先を増やしていったといいます。
「ビーズ、金具やチェーンなど扱う品目が増えていくと、お客さまからそれを手軽に試してみたいという要望があったんです。」

だけどこのやり方では、お客さまも買いづらい。小分けにした商品を用意して、もっと気軽に利用してもらえるようにする。そうすれば、商談のチャンスもさらに広がっていくのではないか。
お客さまの声をきっかけに、貴和製作所は問屋でありながらお店を運営するという、今のような販売形態を作り出していく。
「自分たちで直接お客さまに届けていく。そしてお店から得たフィードバックを、新しい商品の開発につなげていく。こういう業態がパーツの世界にはなかったので、当時はすごく評価されました」
今では都内だけでなく関西にも出店し、14店舗を運営するまでに成長した。
パーツは、使ってもらってはじめて良さが光るもの。そのためにはお客さまの想いに添って、できることはなんでもやってみる。
関口さんのお話からはそんな気概を感じるけれど、実際に働いている人たちはどんなふうに感じているのだろう。
ここでの働き方に想いを巡らせていると、関口さんが販売スタッフの加藤さんを紹介してくれました。

「私はアクセサリーづくりが好きで、学生時代から新宿店を利用していました。信頼しているスタッフさんがいて、つくったものを持っていくと褒めてくれたり『次はこれに挑戦してみたら』とアドバイスをもらえるのがすごくうれしかったんです」
前職のお店が閉店したのを機に、以前から印象のよかった貴和製作所に転職を決意したそう。
やわらかな雰囲気の方だけど、ハキハキと質問に答えてくれるのが気持ちいい。
販売スタッフの仕事は、接客はもちろん商品の発注や品出し、売り場のディスプレイなど多岐にわたる。意外と力仕事もあって、体力勝負な一面もあるという。

「覚えることがすごく多くて、そこは苦労しました。特にスワロフスキーはライトローズ、ローズピーチなど似たような色名が多いんです。ほかにも売り場全体を把握していないと、お客さまにご案内できないので」
「でも見取り図を書いたり、お客さまになったつもりで売り場をまわってみたり。そうやって少しずつ、楽しみながら覚えていましたね」
特に印象に残っている出来事を聞くと、社交ダンスの衣装を持って来店されたお客さまの話をしてくれました。
「ご自身でドレスをデコレーションしたいといらっしゃったんですが、『目立ちたいけど全部をキラキラにすると大げさだから』と、バランスをすごく気にされていたんです。石の色や粒の大きさでバランスを調整したらとおすすめしました」
ストーンを貼るのも初めてで、最初は不安がっていたというお客さま。一つひとつ話を聞きながら、接着剤の選び方やお洗濯の仕方などのアフターケアもご紹介すると、安心してとても喜んでくれたそうです。
「後日、ドレス姿の写真を見せにきてくださって。『またあなたにお願いしたいわ』と言っていただけるのは、すごくうれしいですね」
完成型のイメージを一緒に引き出して、かたちにしながら話を聞く姿が目に浮かぶ。一方で、ときにはイメージになかなか近づけないこともあるんじゃないか。
「漠然としたイメージを伝えられても、ぱっと浮かぶように既製品のアクセサリーもチェックしています。この前も『今季のシャネルの、ビッグパールを使ったもの』と言われたときに、こういう感じだなってイメージできたんです」
コンシェルジュのように、お客さま一人ひとりに合わせた対応が求められる販売の仕事。
はじめのうちは、きっと答えられないことも多いでしょう。そんなときは詳しく知っているスタッフと連携しながら、チームで対応していきます。
加藤さんのように広くアンテナを張りながら、なんでも吸収していこうという姿勢でいると楽しく働いていけると思いました。
ウェブ企画職の2人にも、お話しを伺います。

芝さんはもともとイラストを描くのが好きで、前職は広告代理店でデザインを担当していた方。加藤さんと同じように、店舗を訪れたことがあったそう。
「そのあとオンラインショップも利用したんですが、お店で感じたワクワク感をウェブでも感じたいなと思ったんです。たとえば、つくったものをインスタグラムで公開したり、いいね!をもらったりすると楽しいんですよね」
「そういうウェブ上でのコミュニケーションも絡めたら、いろんなことができるんじゃないかなと思って」
入社後は、前職での経験を活かしてオンラインショップの特集ページを担当している。
「開発部署に取材にいってパーツの特徴や、アレンジ方法などをまとめて掲載しています。企画から画像の組み込み、コーディングをしてウェブにアップするまでが一連の流れですね」

隣で聞いていた上妻さんが、話を続ける。
「はじめは、パーツの写真撮影や画像補正からやってもらいます。直接お店で見るのと、パソコンの画面を通して見るのとではパーツの見え方も変わってくる。どうしたらより魅力が伝わるのか、ウェブならではの視点で考えていきます」

開設から12年続けてきたオンラインショップ。パーツの魅力を追求しながら充実したサイトを目指してきた一方で、今後は“モノ” だけでなく“コト”を発信することにも力を入れていきたいという。
「やっぱり今は、ただ商品を売ればいいだけの時代ではなくて」
「たとえばこの商品はどこで作られたのか、デザインした人はどんな人なのか。背景を知って、いいものだと共感してもらうことが必要だと感じています。貴和製作所がどういうところなのかということや、手作りアクセサリーの楽しさもこれからもっと発信していきたいですね」
“コト”を発信していくために、貴和製作所では芝さんのアイデアを元にして、SNSの活用もはじめました。
Facebookとインスタグラムを開設し、インスタグラムでは各店舗のスタッフに自分でつくったアクセサリーを投稿してもらうことにしたそう。

ここで再び芝さん。
「すごくお客さまの声が聞こえるようになってきたんです。インスタグラムをみてつくりたくなったというコメントをもらったり、逆にウェブサイトのここがわかりにくいっていう声も聞こえて」
お客さまとのつながりはもちろん、スタッフ同士でも「他店ではあんなにかわいいものをつくってる!」と互いに良い刺激になっているそう。
今後は、お店とウェブの垣根をこえてさらに新しい取り組みもはじまっていきそうです。

スタッフのみなさんは「こんなことができるかもね」「いいですね」と職種にとらわれず、楽しそうにアイデアを出し合っているのが印象的でした。
お客さまの想いに添いながら、変化を続ける貴和製作所。
気になったら、まずはお店やウェブサイトをのぞいてみてください。「つくりたい」という想いに真摯に向き合うみなさんのこころざしが、きっと感じられると思います。
(2016/2/17 並木仁美)