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「薬よりも、ハートが大事なんよね。じっくり話をきいて、その人の琴線に触れるというか。そうして『この人が出してくれる薬であれば治る』という信頼があって、薬にもちゃんと効果があれば1+1は2以上になっていく。だからそういうお店にしようと思ったんです」そう話すのは、ウラタ薬局の代表である浦田賢静さん。
ウラタ薬局は「日本一、笑顔があふれる薬局」をコンプトに、岐阜県関市内を中心に薬局を4店舗展開しています。
私たちがいわゆる“ドラッグストア”をイメージしたときに思いつくような、医薬品や化粧品、日用雑貨の販売はもちろん、処方箋調剤や独自で漢方薬の調合も行っています。
今回はここで一緒に働く仲間を募集します。
薬剤師免許を持つ方にももちろんきてほしいけれど、経験は問いません。
普段イメージしている薬局での仕事とは、きっと違うものになると思います。自分が関わることで誰かを笑顔にしたり、さまざまな分野の勉強をして自分の世界を広げてみたいと思っている人に、ぜひ続きを読んでみてほしいです。
岐阜県・関市。
名古屋から電車を乗り継ぎ、約1時間。学校帰りの学生さんたちと一緒に電車に揺られていると、あっという間に関駅についた。
ウラタ薬局には、本店のほかに西本郷店、仲町店、新町店がある。今回伺った西本郷店は、駅から車で10分ほど。
迎えてくれたのは、代表の浦田賢静さん。
案内されたのは薬局の少し奥まったところにあるスペース。社内の勉強会に使ったり、重い病気を持つお客さまがまわりを気にせず落ち着いて話ができるようにとつくられた場所なのだそう。
ときには、ここで2時間以上お客さまの話をきくこともあるといいます。なんだか私の家のまわりにある薬局とは、人との距離感が違うような気がする。
まずは率直に、なぜ薬局をはじめることになったのか聞いてみた。
「きっかけはね、親父」
お父さまですか。
「そう。戦争中に鉄砲の弾が肺のそばに入っちゃって。野戦病院に連れていかれたんだけど、取りきれずにそのまま体の中に残っちゃったんですよ。私が高校生くらいのときに親父がオートバイで転んで、その弾が動いたらしいの」
「動くと炎症が起きて、夜中にひどい咳が出るようになって。そのときにいったお医者さんが5分診療で薬だけぽんっと出すんじゃなくて、ちゃんと話をきいてくれてね。親父はその先生に惚れ込んで、とにかくその先生のところに行けば楽になるって言って。あぁこういう商売もあるんだ、と思って」
その先生は元軍医で、戦場でたくさんの人を治してきた経験があるから腕がいい。でもそれだけじゃなく目の前の人と向き合って、話をきくことで生まれる信頼感が病状にも大きく影響するということを肌で感じたという。
一方で、今度は賢静さんのおばあさんの神経痛が漢方薬で治るという出来事があった。
「お医者でも治らなかったのにすごいなぁと思って。病院じゃなくてもこういうことができるんだと。じゃあ手先が不器用だから医者にはなれないけど、薬剤師ならできるかなと薬科大学に入ったんです」
大学卒業後は愛知県津島市の薬局に住み込みで働いたり、国立病院の皮膚科で診察の様子をそばで見ながら勉強させてもらったりと経験を重ねて、昭和55年にウラタ薬局を開業した。
お医者さんと違うところは、病気の元でなく目の前にいる人“そのもの”に目を向けること。
たとえば顔色や体質、生活習慣。抱えている悩みごとにもじっくりと耳を傾けて、その人にあったオーダーメイドの漢方薬を調合したり、医薬品をご紹介する。
「八百屋のおばちゃんにも似てるかもしれんね」
八百屋のおばちゃん?
「八百屋にいくと『今日これ入ったで!あんた好きなやつやからとっといた』とか『これはこうやって料理するとおいしいよ』とか教えてくれて。顔なじみになったり、話をして人と人が関わっていく。今そういうお店、減っているでしょう」
ちゃんと“人”がいることを感じられるお店は減っているかもしれませんね。
「でもここではただ薬を売るんじゃなくて、そうやって関わり合うことで役に立ったり喜んでもらえたらと思うんですよ。気軽に相談できる場所であることで、病気になってしまった方もそうでない方も、ご来店される前よりも笑顔になっていただけたら嬉しいです」
賢静さんの話をきいていると、本当に目の前の人に思いを巡らせながら働いているんだなと感じる。そんな思いが伝わるから、「この人になら話したい」と人が集まるのだろうな。
ここで働くってどういう感じなんだろう。
賢静さんと一緒にウラタ薬局を経営している浦田悠宇さんにもお話を伺う。ここで働く人の上司になる方。
「経理以外はなんでもやっていますよ」との言葉通り、お客さまのお話をきいたり、スタッフ向けの勉強会やチラシ作成、調剤業務などやることは多岐にわたる。
やわらかな物腰で、話していると安心するような方です。
もともとは薬局を継ぐ気はなく、自分の行動で誰かの役に立ちたい、人助けをしたいという想いから弁護士になりたかったそう。だけど高校3年生のときに、実家を継ぐことを決意したといいます。
「親には別に継がなくてもいいと言われたんですが、思えば小さいころから友達の家に行ったり、まちを歩いていると『あんたのお父さんにはいつもお世話になっとる』ってよく言われていたんです」
「僕が知らないところで父は人の役に立ってるんだろうなぁと感じて。それなら薬屋でも弁護士でも、根本は人を助けることに変わりはないなと」
文系の勉強ばかりしていたという悠宇さんは、そこから薬学部に入るための勉強をはじめて、大学卒業後にこの世界に飛び込んだ。
薬局という枠にとらわれずに、どんなことでも気軽に相談してもらえる人を目指していたら、自然と美容や運動、ダイエットなどさまざまな分野に取り組むことになったという。
「昨日は太っていることをコンプレックスに感じているっていう女の子が話しにきてくれて。太り過ぎると健康に良くないけど、過剰なダイエットをしようとしていたので必要ないよと話をしました」
「もちろんただ僕が『必要ないよ』と言うだけでは説得力がないし、胡散臭いですよね。だからうちでは身体測定ができる機械や、肌の状態を測定できる機械を導入して根拠をきちんと示せるようにしています」
ここで働いている人たちは、日々どんなふうにお客さまと接しているのでしょう。
「たとえば体調が悪くてお店に来られない方に、配達をするとき。届けに行きがてら『ちゃんとごはん食べれとるんか』とか『外に出とるんか』とか話をしてきます。それは薬剤師でも、そうでないスタッフでも同じですね」
「お客さまとの距離が近いから、『いっぱい収穫したから取りにおいで』ってダンボールいっぱい野菜をもらったりすることもありますよ(笑)」
マニュアルはなく、お客さまとの関わり方は各スタッフに任されている部分が大きい。きっと仕事も指示を受けてやるよりも、自分で「こうしたらいいかな?」と考えて動くことが多いと思う。
それはやりがいも大きいだろうけど、その分不安や悩みも多いんじゃないかなと想像する。
「もちろん最初は、『話を聞く』ということだけでも難しいと思います。だから聞くためのテクニックもちゃんと勉強してもらいますし、慣れるまでは僕か先輩スタッフが近くで見ているようにしています」
「ほかにも薬についての知識をつけるだけでなく、POPのデザインの先生を呼んで書き方を勉強したり、化粧品会社の外部研修に行ってもらうこともあります。勉強の機会はかなり多いと思いますよ」
無理強いはしないけれど、自分で吸収したいと思ったらどんどん世界を広げていける環境だという。
悠宇さんは、どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?
「専門家として正しいことを言ってあげられるように、勉強することはやっぱり大切です。でもそれだけじゃなく、たとえば雨が降っていたら傘をさして、おじいちゃんを送っていってあげたり、いつも来ているお客さまがきていなかったら今日来ていないけどどうしたのかなって心配したり」
「そんなふうに相手の気持ちに立って考えたり、誰かを気にかけるっていうことがうちのスタッフはみんな自然にできるんです。それは薬局に一番必要なことだと思います」
最後に、薬剤師として働く林さんを紹介します。
入社4年目。ご実家も薬局を経営していて、ゆくゆくは林さんがお店を継ぐのだという。今は新町店で働いている。
働いてみてどうですか?
「他の薬局でも働きましたが、そこは病院の隣にあるような調剤薬局だったんです。POPのつくりかたとかお客さまとの接し方とか、そういうことはここにくるまで知りませんでした」
お客さまとの接し方。
「調剤薬局だと、やっぱりお医者さんの処方箋ありきになるので。なにか言われても『お医者さんがそう言っているから』と言うことが多くて。ここだとじっくりと話をきいて、自分がつくった漢方薬でお客さまを元気にできる。そのための勉強ができるのはすごく楽しいです」
ウラタ薬局には林さんのように漢方薬や経営のノウハウを学びたいと、全国から多くの人がやってくるという。
特に印象に残っていることはありますか。
「いつもきてくれるおじいさんがいるんです。最初はお通じがあんまりよくないって言っていて。話をきいていると少し神経質になりすぎている気がしたので、まずは『大丈夫ですよ』と安心させてあげて。食生活を変えてみたらとお話ししたりしました」
その出来事をきっかけに、体の不安やほかの病気について話をするために、薬局にやってくるようになったという。
「最初はね、ただそこにいるスタッフくらいにしかみられていなかったんですよ。でも今はお店に入ってきたときに、お客さまの目線がすでにこっちを向いている。その目線だけでもう嬉しいです」
「『前いなかったね、休みだったの?』とか声をかけてもらうと、あぁちゃんと一人の“人”としてみてもらってるんだなぁって」
薬局という枠にとらわれず、自分にはなにができるのか。そんなふうに考えながら働いているうちに、きっと「あなたがいるからここにきた」と言われるような、なくてはならない存在になってゆくと思います。
自分がやったことが誰かの喜びにつながって、自分の喜びにもなる。そしてもっとやってみようと動き出す。そんな好循環が生まれているように感じました。
ウラタ薬局の考え方に共感するところがあれば、ぜひ応募してみてください。
近くに住んでいる方はお店を訪ねてみてもいいかもしれません。きっと浦田さんたちはこころよく迎えてくれると思いますよ。
(2016/2/3 並木仁美)