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「はじめに想いがあっても、売れなかったら違う意見が入ってきたり、方針を変える。そういうことは往々にしてありますよね。世の中で流行っているものに合わせて、つくって売る。そうせずにここまでやってこれたのが、今の評価に繋がっていると感じています」株式会社アルファはAbHerï(アベリ)というジュエリーブランドを運営している会社です。
ものづくりから販売までを、一貫して手がけています。扱うジュエリーはデザイナー兼職人たちが、一つひとつ手仕事で丁寧につくりあげたもの。

今回は、グラフィックと販売スタッフの立場から、ジュエリーを届ける人を募集します。
馬喰町駅を降りる。もともと問屋街だったこともあって、古い建物や倉庫が立ち並ぶ。その合間にギャラリーやカフェが違和感なく馴染んでいるから、歩いているとなんだかおもしろい。
大通りから一本入ったところに、店舗とアトリエを備えたAbHerï work×shop(アベリ ワークショップ)があります。

店舗の奥の、大きなテーブルのあるスペースに案内される。すぐ隣には、デザイナー兼職人さんたちがジュエリーをつくっている姿が間近に見える。
ここでまずは、代表の黒瀬さんにお話を伺う。
大学時代は新聞社で野球のスコアをつけるアルバイトをしていた。一緒に働いていた記者の方からのご縁で、宝石の卸しをする会社で働くことになったといいます。
「もともと宝石に興味があったわけではないんだけど、ご縁があって」と少し取材に緊張した様子で教えてくれる。

「運転手とか、昔でいう商家への奉公のようなことかな。御徒町は卸しの街なんですけど、そこから文京区にある社長お宅まで毎日お送りする。そんなことを何年もやっていました。正直、ちゃんとした仕事なんてできていなかった」
「だから私は、自分でなにかをしたいという気持ちが強かったんです。扱うものは、ジュエリーでもなんでも、自分が惚れ込んだものならよかった。自分がどんな立場で仕事をできるのかということのほうが、関心が大きかったですね」
誰でもできるようなことではなく、自分にしかできない仕事をすること。
そんな想いと、メーカーと販売者が直接売り買いをするようになったら、卸業者は必要なくなってしまうのではないかという不安から、自身もメーカーになりたいと考えていたそう。
「そんなときにたまたま、既存の貴金属業界にはないような新鮮なものをつくるデザイナーに出会ったんです。じゃあ卸しもやりながら、オリジナルの商品をつくってみようかと。そしたら反応がよくて、ブランドを立ち上げるところまでいったんです」
新鮮なものとはどういうものだろう?
教えてくれたのは、チーフデザイナーの宮澤さん。ブランドのデザインが入社のきっかけだったそう。
「当時の宝飾は大きな石が中央にあって、周りを小さな石で囲ってあるような決まり切ったデザインが多かったんです。素材も、みんなが知っているような石。たとえばルビーなどをつかったもの」

ブランド立ち上げから15年。その間に、チーフデザイナーの交代やブランド名の変更という大きな変化があったけれど、ブランド立ち上げ当初からの想いや精神は、引き継がれてきたといいます。
「代表は『ものづくりは聖域』とおっしゃるんですけど。利益をあげるために安いものや品質の悪いものを仕入れることはせずに、一番いいものを使おうという姿勢でいてくださるんです」
たとえば、ジュエリーに使われている地金はオリジナルのレシピで金属を配合したもの。ゴールドはイエローやシャンパンなど4色を、肌に馴染み宝石の魅力を引き立てるよう使い分けている。
ほかにも、鏨(タガネ)という工具を使って点を連続して打ち、線のように見せる装飾方法がAbHerïのジュエリーには施されている。

「デザイナーが原型をつくるというのもこの業界ではあまりないですね。頭の中で描いたものを、紙の上だけでなく自分の手でかたちにしたほうが、よりイメージしたものに近づけるという考えなんです」

実際に働いている人たちにも話を聞いてみます。
販売スタッフで、入社3年目の齊藤さん。友人の紹介で、六本木ヒルズにあった店舗を訪れたことがきっかけだったといいます。

もともとはあまりジュエリーに興味がなかったそうだけど、世界が180度変わったのだと少し興奮気味に話してくれる。
「私のように、ジュエリーに興味がなかった人にも、こんなときめきを味わわせてくれるのがすごいなって。このものづくりを、日本はもちろん世界中の人たちに発信していきたいなと思ったんです」
販売職の経験はあったそう。でも宝飾業界は未経験で、年齢的にも不安が大きかったという。
「30歳を迎えて、新しい世界に飛び込むことへの不安もありました。個人のノルマが厳しいのかなというイメージもあったんです」
「実際に入ってみると、売上目標だけにこだわるのではなく、お客さまと密な関係性を築いていくようなスタイルなんです。そのためにはどうしていくのがいいのか、部署の垣根も越えて話し合えるような感じでした。すごくアットホームなんですよね」
取材に伺った日は販売スタッフ、営業、デザイナーとさまざまな役割の人が集まっていた。
デザイナーの宮澤さんから「齊藤さんは商品コンセプトをいつも熟読してくれるんですよ」と紹介があったり、営業の方とも楽しそうに話していたり。和やかな空気を感じました。
具体的に、日々どんなふうにお客さまと接しているのでしょうか。
「work×shopにはギャラリーだと思ってふらりと立ち寄られる方から、ブライダルリングを選びにきてくださる方まで、さまざまな方がいらっしゃいます。ゆったりと見ていただきたいので、緊張をほぐしながら。『いらっしゃいませ』ではなく『こんにちは』と声をかけます」

じっくりと話すことでどんな人なのかを知り、ジュエリーをご提案する。正解はなく、目の前の相手から少しでも何かを感じとろうとする力が必要になるかもしれません。
気をつけていることはありますか。
「石のカットの名前など、ジュエリーの基本的な知識は勉強しましたね。珍しいカットでも、それってこういうカットですよねって話がふくらむと信頼していただけるので。一瞬止まってしまったり、悩んでしまうと不安になる方もいます」
販売スタッフはブランドの印象を担っている部分が大きい。やりがいはありつつも、責任のある仕事なのだと改めて思いました。
一方で、グラフィックやWEBの観点からブランドや商品の魅力を伝えているのが久住さんです。

久住さんの仕事は、商品の撮影やDMの作成。ほかにもホームページのバナーをつくったりと幅広い。
「前職を辞めてから、1年くらい職業訓練で基本的な知識を身につけたんです。でも写真の撮り方や、外注しているウェブ制作会社さんとのやりとりとか、入ってから勉強することが多かったですね」
これから入ってくる人には、主にウェブの分野を担当してほしいとのこと。ホームページをつくるような専門知識よりも、社内で出た要望をビジュアル的にかたちにできるような、デザイン力が求められます。
仕事は2人で柔軟に分担していくことになるので、「これだけをやっていればいい」という枠はないそう。久住さんも、やったことのないことにも積極的に挑戦して、できることの幅を広げてきた。
「ブライダルカタログの改定に携わったんです。ジュエリーのここの部分を、もう少し明るくできませんか、という色校正など、社外の人にもきちんとニュアンスを伝えて調整をしながらかたちにしないといけない」

デザイナーにすぐに相談できる環境も、すごくプラスになっていると久住さん。
「本当に、振り向いたらすぐのところで作業をしているので。話をしたことで、じゃあこの背景にあわせて撮るのがいいかなと思いつくこともあります」
どういう意図でつくったのか、どこが特に見せたいポイントなのか。作り手の想いも汲み取りながら、一緒により良く伝わる方法を考えていく。
今ではカタログの撮影も、一人で一冊分をすべて撮影できるようになったという。
「きれいに撮れてると言ってもらえることが増えたんですよ」と笑う姿から、一つひとつ丁寧に、楽しみながら働いていると感じました。
最後に、黒瀬さんからメッセージを。
「新しい人が入ることで、これまで守ってきたものづくりへのこだわりは大切にしながらも、今まで気がつかなかった新鮮な意見に出会いたいと思っています。僕の下でただ言われた通りに働くのではなく、各々が自分で考えて試行錯誤しながらAbHerïにとってかけがえのない人になってほしいです」

長い時間をかけて愛用される、職人の手仕事やさまざまな想いをつなぐものづくり。それはゆるがない芯を持ちながらも、革新を恐れず進んできたみなさんだからこそ実現できたことなのかもしれません。
まずはお店を訪れて、そんなものづくりの結晶であるAbHerïのジュエリーに触れてみてください。
(2016/3/22 並木仁美)