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その土地の魅力を形づくるものって、いったいなんでしょうか。豊かな自然環境、歴史を積み重ねた建築物や伝統文化、温かい人々のつながり。
どれも大切です。
今回は、そのなかでも「食」を中心に据えて、様々な方法で発信していく仕事を紹介します。

ここで接客や予約対応などサービス全般を担うサービススタッフと、食材探しから調理まで行う調理スタッフを募集します。飲食業の経験は問いません。
食材の宝庫であり、生産者との距離も近い。なにより、経験豊富で気さくなシェフが丁寧に教えてくれます。
働きながら学びたいという方には、まさにぴったりの仕事だと思います。
羽田空港からのと里山空港までは、飛行機でちょうど1時間。そこから各地へは乗り合いの「ふるさとタクシー」が出ていて、30分ほどで輪島市に到着します。
東京から約1時間半。宿とセットのパック料金なら、費用もそこまで高くありません。
雪に包まれた静かなまちを5分ほど歩くと、民家の並びにラトリエ・ドゥ・ノトの看板が見えてきました。

今から2年ほど前にこの建物を借り受け、2014年9月に新しくレストランをオープンさせたのが、輪島市出身のシェフである池端さんです。

一度地元に帰って経営の勉強をしつつ、ケータリングの仕事をしていたという。
「人の家にお邪魔して、料理をつくるわけです。すると、『輪島でお店やったらいいじゃない!』と声をかけられるようになりました。農家さんや漁師さんからも、『外に売りたい』という声が聞こえてきて」
大阪で自分の店を開くつもりだったものの、次第に「輪島でできないか?」と考えるようになっていった。
「食材もばっちりあるし、工芸品もあるし、いい自然もある。これらをうまく利用すれば、地方でもきっとお客さんを呼べると思ったんですね」

「フランスに『ラムロワーズ』という三ツ星レストランがあります。人口5800人ほどのシャニーというまちで、ほとんどがぶどう畑に覆われているなか、世界中のお客さんがその店に集まるんです」
「そこでできるのなら、輪島でもできるんじゃないかなと思いました」
洗練された豪華なレストランではなく、田舎らしい、温かみのあるレストランを目指しているという。
とはいえ、扱うものに妥協はない。
食材はもちろんのこと、器やナイフまで。能登で生み出された宝物を、丁寧に届けている。
「これらの器は、輪島塗の蔦屋漆器店さんからお借りして使っているものです。ここで使わせていただくことで、宣伝にもなりますよね。ぼくがデザインした器をつくってもらったり、よくお付き合いさせていただいています」
「輪島塗って、今までのイメージだと『和』ですけど、『洋』の空間に落とし込むことで印象がけっこう変わります。レストランの空気感は残しながら、料理もフレンチだけにこだわらなくてもいい。いろいろな方法で、能登を発信したいんです」

「ぼくらは調理場にずっといたので、世間知らずなわけですよ。そこに映像をつくれる人が加わってくれたら、事前にもらった資料をもとにムービーをつくって、お祝いの席で流せるかもしれない。PR動画をつくって発信することだってできると思います」
「最初から能登に興味がないとダメっていうことはありません。ここで働くうちに、少しずつ魅力に気づいていけるはずです」
過去の飲食業経験も特に問わない。自分で体験しながら学び、地域やそこで暮らす人にも興味を広げていける人だとよさそうだ。
お店には、農家さんが野菜を、漁師さんが魚をもってきてくれたりする。山の猟師さんがそのままの足でジビエを持ってきてくれることもあるという。

「自分が高校生のときは、大人がなにをしているのかなんて知らずに生きてきました。聞くと、今の高校生もよく知らないと言うんです。ぼくらが今やっていること、想いを高校生に伝えたいと思って企画しました」
職人さんから輪島塗について教わったり、器に茹でた野菜を盛りつけたり、漁師さんから魚のおろし方を学んだり。生産者さんを招いて、直に学べるようなワークショップを企画した。

「刺身を食べたことのない子もいて、漁師さんは衝撃を受けていましたね。輪島塗も使ったことがないし、正直に興味はないと言っていました。そこは正直に言うなよと思いましたけど…(笑)」
「でも、やってよかったと思うんです。知らないよりは少しでも知っていたほうがいいし、またいつか思い出すかもしれないですしね」
一気に浸透していくことはなくても、ここから能登を発信し続けることで、じわじわと伝わっていくものがあるはず。
地道に発信し続ける力が求められると思う。
「小さいまちでコミュニティが強いゆえ、出る杭は打たれると思います。なにやっとんや?って目をつけられたりもしますけど、それは気にしない。ある程度出てしまえば、打たれなくなります」
「都会のレストランには負けていないと思っていますし、まだまだ活かせる素材がたくさんあります。誘惑も少ないので、いろいろと勉強できる環境だと思いますよ」
そんな池端さんとともに調理を担当しているのが、松本さん。
大阪の「カランドリエ」時代から一緒に働き、すでに10年以上の付き合いになるという。

「ぼくの親戚で、はじめた方がいるんです。特別に勉強してきたわけではなくて、本を読んだり、自分で考えたりしながら野菜をつくっているんですね。しかもそれがおいしくて」
「自分たちでつくってレストランで出すっていうのが、お店にとってのひとつのプラスにもなると思いますし。輪島は生産者さんもすぐ近くにいるので、それに触発されて自分でつくってみたいという興味が湧いてきましたね」

わからないことがあればすぐに聞くこともできるし、身近につくり手がいることで、松本さんのように自然と背中を押される人もいるだろう。
「人がやさしいんですよ。とにかくコミュニケーションが密で。助けられることも多々ありますし、輪島は特にそれを感じます」
「ぜひ、自分の手でなにかやりたい人にきてほしいですね。農業もそうですが、別のことを一からはじめたいという人がきたら、ぼくもそれを一緒にやっていきたいです」
「めちゃくちゃ安全なまちだと思いますよ。都会の人からしたらびっくりするぐらい」と話すのは、ソムリエの中筋さん。彼もまた、カランドリエの出身だそう。
大阪生まれ大阪育ちの中筋さんにとって、輪島の日常は衝撃の連続だった。

すごい光景ですね…。
「あとはやっぱり、味に関してびっくりすることが多いです。いただいた新米がものすごくおいしくて。ぱっとおにぎりつくって食べただけでも、『全然違うわ、これなんですか?』って気づけるぐらいの食材の良さがあるんですよ」
日々いい素材を口にしているうちに、味覚も向上していくという。以前は苦手だった食材の良さに気づいて、克服したこともある。
「いい食材と触れ合えるのは素晴らしいですよね。提供する側も、おいしいものはおいしい、ダメなものはダメと言えるようになっていくので」

「お客さまの間で会話が弾んでいるときは、なにがあってもあまり気づかれないんですよ。そこで無理に入り込むことはしません」
「ですが、一瞬間があいたときなどに『この器なんだろう?』と反応される方も多いんですね。どれも北陸に関係するものなので、そのPRをしつつ、次の会話の糸口を提供することは意識しています」
輪島塗は分業でつくられており、全部で120ほどの工程に分かれていること。
まるで学芸員さんのように、わかりやすく解説してくれる。どこかから借りてきた言葉ではなくて、自分の言葉で語っているという感じがする。
最後に紹介したい方がもうひとり。輪島出身の屋名池さんだ。
市街地からは車で30分ほど離れた金蔵という地区に実家があるという。

とはいえ、その自然環境は日本の里100選にも選ばれている。不便を感じることのほうが多いかもしれないけれど、棚田のあるまちからこのレストランに通える生活は、ちょっとうらやましい気もする。
現在はお皿洗いやドリンクづくりをしている屋名池さん。7年間、ずっと家のなかで過ごしていた過去があるそうだ。
そこに声をかけたのが、シェフの池端さんだった。
「シェフのお母さんとうちの父親が同級生で、仲がよかったんです。それもあって、『やってみんか?』って誘われて。怖かったですけど、顔見知りだったのでやってみようと思えました」
実際にやってみて、どうですか。
「働いてよかったなと思ってますよ。お金ももらえるし、外に出るきっかけにもなったので」
「最初は怖かったですけど、みんなやさしいんですよ。両親にも、感謝しています」

最後に、池端さんから。
「全国各地、いろんなところからお客さんを呼べる場所にしたいですし、それが一番の地域貢献だと思っているので。まちづくりというより、にぎわいづくりですね。これからは地域のレストランですよ」
能登を発信する仲間、お待ちしています。
(2016/3/10 中川晃輔)