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公的仕事のススメ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「ここは協会だからノルマもないし、安定していると思います。でも、永遠に続くビジネスモデルではないんです。この協会に入ることによって何か得るものがある。そういうサービスを提供することがこの協会の役割だと思います」

JADMA - 1 (10) 日本通信販売協会は、通信販売を行う会社が会員となり、その会費で運営されている公益法人です。

対象は、消費者、通販会社、行政とさまざま。通信販売業界全体を俯瞰し、業界全体にとって「あったらいいだろうな」と思うサービスを提供しています。

今回は、そんな協会の事務局で働く人を募集します。

働くみなさんは口を揃えて「仕事の結果はわかりにくいかもしれないけれど、業界全体を俯瞰する楽しさがある」といいます。

公の仕事だから直接のフィードバックは少ないかもしれません。けれど、利益にとらわられず業界全体のことを考える、なくてはならない役割だと思います。

気になる人はぜひ、読みすすめてください。


東京・日本橋。

三越やCOREDO室町のある賑やかな通りから5分ほど歩いたところに日本通信販売協会のオフィスはありました。エレベーターで2階へ上がりオフィスへ入ると、国内外のいろんなカタログが並ぶ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA カタログの棚を抜けた奥の部屋。ここで、事業部部長の三浦さんと、女性の菅原さんにお会いしました。

ふたりとも相手の話をきちんと最後まで聞いてから答えてくれるような、ゆったりとした雰囲気のある方です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA はじめに、三浦さんにこの協会のことを聞いてみます。

「日本通信販売ができたのは1983年、いまから33年前ですね。ちょうど女性の社会進出や宅配サービスが拡充してきて、通信販売が盛んになったころです」

「通販の需要が増えるとともに、あちこちで問題もでてきました」

多かったのは誇大広告や商品が届かないといった通販トラブル。これに対して行政は消費者への対応まで手が回らず、一部の通販会社が行う誇大広告の規制もできていなかった。同じように通販会社のほうでも、同業他者の誇大広告や消費者の苦情の対応について悩んでいたという。

「そういった通販にまつわるさまざまなことを対処したり話し合う場をつくろうと、当時90社ほどの通販会社が集まって日本通信販売協会ができました」

今では賛助会員も含めて会員数は700ほど。

事務局では、会員さん同士がいろんな切り口で情報交換をする「委員会」の運営や、通販にまつわる研修会やセミナーの企画、協会にくる電話の対応、行政とのやりとりなど、業界全体を俯瞰していろんな立場の人に役立つようなサービスを提供しています。

対象も範囲も、とても広そうですね。

「そうですね。だから好奇心の塊のような人に来て欲しいです(笑)」

今回募集する人は、まずはいろんな委員会のお手伝いをしながら業界のことを知っていくことになるそうです。

「主な仕事は委員会の運営です。委員会は15ほどあり、ひとりで2つか3つ担当しているんですよ」

事務局職員は、経理の方と常勤理事の方をふくめて全部で11人。ひとつの委員会は2、3人で担当していきます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA それぞれの委員会には、会員である通販会社さんの中からその分野に長けた方が参加し、他社さんと情報交換を行っている。これは会員になってもらったメリットのひとつだそう。

「たとえば物流委員会だったら、物流の担当者さんが集まって共同配送をみんなで検討してみましょう、とか。表示審査特別委員会であれば、広告の担当者さんがお互いの通販カタログをチェックし合い、誇大広告になっていないか自浄作用していきましょうね、とか。通信販売に関してそれぞれの切り口で集まる場になっています」

事務局は、こういった場を企画し運営していく委員会の事務局機能も担っています。

「ほかにも、会員さん同士を繋ぐマッチングの役割もありますね」

マッチングの役割?

「委員会で会員さんとお話しをしますし、委員会以外でもいろんな会社さんに調査も含めて見学に行かせてもらったり、イベントをしたりするので、そこでもお話をするんです」

JADMA - 1 (9) 業界動向をお伝えしたり、最近どうですか、とお悩みを聞いたりするそう。

「こんな情報が欲しいのだけれど、と相談を受ければ『どこどこのあの方が詳しいですよ』とご紹介したり、おつなぎした先でコラボ商品が生まれたりしています」

もっと淡々とした事務作業ばかりになるのかと思っていたけれど、人と関わる機会も多いのですね。

「そうですね。会員さん以外にも、一般の通販会社さんや役所の方など、いろんな方との付き合いがあるので、コミュニケーションや人付き合いが好きな人に向いていると思います」

「もちろん、日々は会員情報の登録や変更、委員会のための資料づくりのような事務作業もありますよ」


ここで、働いて10年になるという菅原さんにも話を聞いてみます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「前職は小さな出版会社に10年ほど勤めていました。出版業界がだんだん斜陽になってくる中で利益をあげることをずっと考えてきたんです」

出版物は広告を多く入れると利益が出る。けれど、広告ばかりの出版物は世の中にほんとうに求められるものなんだろうか。つくっているうちにわからなくなってしまったそう。

「それで、確実に人の役に立っているような公的な仕事を探していたんです。活字が好きでよく通販カタログを見ていたこともあって、通信販売協会に入りました」

働いてみてどうでしたか?

「いろんな会社の話を聞けたり、調査として見学に行けたりすることはすごく楽しいです。わたし、知りたがり屋なので(笑)」

「あとは、『次はいつやるの?』と委員会を心待ちにしてくださったり、主催したセミナーで会員さん同士がつながったりしているのを見ると、お役に立てているかな、と思いますね」

とくに、菅原さんが担当している消費者委員会はもっともよく参加いただける委員会だそう。

コールセンターの長クラスの方が毎回60名ほど集まり、お客様の苦情の対応について話し合っている。

JADMA - 1 (5) 「コールセンターや消費者対応担当の方って、すごく悩まれているんですよね。お客様という人の対応になるので、悩んでも答えは出ないんだけれど、こういう会にでて『わかる、わかる』って悩みを共有することで心が少し軽くなるんだと思います」

「毎回のように出席される会員さんもいて、会員さん同士も仲良くなっているんですよね」

ほかにも、問題の一時解決率などのアンケートの発表や、社名を出さずに「こんなときどうしていますか?」という投げかけをする進行役も務めるそう。

「わたしも会員さんと仲良くなって、ふつうに雑談しています」という菅原さん。きっと菅原さんのように、人との会話が楽しめる人だとよいのかもしれません。

たいへんなことはありますか?と尋ねると、三浦さん。

「ここは非営利団体なので、予算やノルマはないんですね。それが一番の特徴だと思います。ただ、逆に言うとモチベーションをどう保つかというところは工夫が必要だと思います」

モチベーション。

「わかりやすくフィードバックが返ってくるわけではないので、こんなアンケートをフィードバックしたら会員さん助かるだろうな、とか、地方で特産品をつくって売っている会社さんの見学会があったら喜ぶかな、とか」

「業績やお給料に反映しなくても、そういったところに楽しみを見つけられる人だといいですね。わたしも、日々悩みながらやっています」

すると今度は菅原さん。

「でも、三浦さんは会員さんにすごく頼りにされているんですよ」

あちこちの会社さんを回ってきた三浦さんはたくさんの人脈と情報をもっているそう。会員さんからは、三浦さん宛に相談の電話がくるのだとか。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA きっと業界にとってなくてはならない仕事なのだと思う。

だからこそ、ここではたらく人たちは、悩みながらも業界に関わる人たちに心をくだいているのだろうな。


最後に、常勤理事を務める柿尾さんにお会いしました。

柿尾さんはとてもエネルギッシュな方。高校時代には仲間と塾を開いたり、大学卒業後はコンサル会社で企業の立て直しをしてきたり、社会人経験をしてからもう一度大学で学んだり。

そんな柿尾さんが協会の仕事に就いたのは、大学の教授に「これから日本の通信販売は、アメリカのように伸びていく」と言われたからだといいます。

「ぼくが入った当時、協会は設立3年目でした。実際、そこから通販はどんどん伸びるんですね。ぼくは実態調査をしたり、女性限定の研修会を企画したり、何もないところで自由にやってきました。当時、女性は研修会にも出られなかったんですよ」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「勤めて30年、通販の発展を見ることができました。協会は業界全体を見る面白さがありますよね」

けれど、前職のコンサルとは随分違う職種だと思います。ギャップはなかったですか?

「どちらが良い悪いじゃなくて、ステージが違うんですよね」

ステージ。

「ここは個々の企業のように利益を出すことがミッションなんじゃなくて、対行政とか対通販物流とか、全体でやることを議論する場なんです」

「ここは協会だし安定していると思います。でも永遠に続くビジネスモデルではないんですよ。この協会に入っていることによって、会員さんは何か得るものがある。いろんなところにアンテナを張って、そういうサービスを考えられる人が必要だと思います」

はじめからできるわけじゃないから、そんな方向性を見ようとする人であればいい、と柿尾さん。

「ぼくは荒々しいくらいのほうが好きだね。ゆくゆくはそういう視線であたらしいことをやるほうがいいのかな、と思うんですけどね」

通販のスタイルは、紙の雑誌からインターネットへ移行しつつある今。業界の動向もこれからゆるやかに変わり、求められるサービスも変わっていくのかもしれません。

業界すべてを見渡して、必要なところにサポートをする。

わかりやすく「ありがとう」と言われなくても。なくてはならない公的な仕事があるのだと思いました。

(2016/03/30 倉島友香)