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多摩で巻き込む

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「実際に本をつくっていく姿を見ていただけると、私たちの働き方がイメージしやすいと思います」

そんな連絡をいただいたので、「たまら・び」の打ち合わせを見学させていただくことに。

「たまら・び」は多摩信用金庫が発行、けやき出版が制作している多摩エリア唯一の季刊情報誌です。

「たまら・び」をはじめ、多摩に根ざした書籍の制作や出版、販売などをおこなっているのが株式会社けやき出版です。

ks1 多摩エリアで創業35年目を迎えるけやき出版。昨年は四代目社長として30代の小崎さんが就任、新たなけやき出版が動きはじめています。

今回は、そんなけやき出版で一緒に働く人を募集します。

けやき出版は立川駅南口の駅近くにある。けれども、この日訪ねたのは三鷹駅から徒歩5分のところにある三鷹商工会館。

「たまら・び」の春号が「三鷹」特集ということもあって、会議も三鷹でおこなわれていました。

ks002 印象的なのは、会議室にいた人々は世代も職業もばらばらということ。

学生もいれば、社会人や主婦の姿も。会議特有の緊張感を感じつつも、どことなく和やかなムードがただよう。

会議を進行していたのはクリエイティブディレクターの萩原修さんと「たまら・び」編集長の小崎奈央子さん。

地域の方々は輪になって自分たちの意見やアイデアを口にしていく。

たくさんの意見をうまくまとめる姿勢は、編集者というよりもファシリテーターのように見えます。

住んでいる方々が感じている「磁場」のようなものを、実際に自分の肌で体感してみる。

そんなつくり方が、新しい本を生みだす秘訣のように感じました。

関わる人々や内容が毎回変わっていく環境では、現場で臨機応変に動ける柔軟さや行動力が大事なのかもしれません。

この会議を元に、地域の方々が記事をつくり、一冊の雑誌ができあがるそうです。

会議終了後、「たまら・び」編集長の小崎さんに話を伺いました。

昨年の5月から社長としてけやき出版を引っ張っていく立場も担っています。

ks003 「これまでは紙媒体を中心としてきました。今後は、新しいかたちでも多摩に関わっていきたいと思っています」

新しいかたち。

「今までは『たまら・び』、自費出版、自社企画・書籍の三本柱でやってきました。しかし、最近はWebサイトでの仕事も頂いていて。紙だけにこだわらず、紙以外のかたちで情報提供ができるのではないかと考えました」

さらには、紙やWebといったメディアをこえて、地域イベントへの参加も増えているといいます。

さまざまな企画を模索するなかで、新たなチャネルをもつ人を募集し、けやき出版を盛り上げていく。

「弊社のWebサイトも5年前からデザインが変わっていないのですが、地域の人たちとより関われるようなサイトにしたいと考え、今春リニューアルをする予定です」

たとえば自社が手がけた本だけではなく、多摩エリアのイベント情報や、クリエイターを紹介するコンテンツもサイトに盛り込む。

発信する内容を広げることで、紙に収まらない出版社として、「編集」の幅をひろげていきたいそうです。

ks004 「とはいえ、基本的には編集者としての募集になります。ゆずれない点としては、多摩に思いがあるということです」

ほかにも大切なことは、その思いを伝えるコミュニケーション能力。コミュニケーションといっても「話す」ことより「聞く」ことが大切とのこと。

「どれだけ寄り添って相手の気持ちになりながら聞けるか。そういう意識を持つことが大切だと思っています」

編集とは文字通り『編んで集める』仕事。だから扱うものは情報だけに限らない。関わる人をまとめる能力も問われている。

写真はカメラマンが撮り、デザインはデザイナーが手がける。

「そんなスペシャリストの方々とやり取りする立場にいるので、それぞれの能力や良さをうまく引き出して、どういうかたちで誌面に落としこむかが重要になってきます」

「イエスとノーの間というか、一旦受け入れた上で自分の考え方をエッセンスとしてちょっと入れて、みんなに納得してもらえるような落としどころを見つけるのが、編集力なのかな。そこに気づくためにも、熱量は高くあってほしいなと思います」

熱量が高くあってほしい?

「熱って、下手でも伝わると思うんですよ。何をやりたいか、何をするべきなのか、しっかり見つめている人にこそ、大事な仕事を任せたいなって思いますね」

つまり、相手の立場になってとことん考えてみるということ。

向き合うのではなくて、寄り添うことで、一緒に見えてくるものがあるのかもしれません。

「だからこそ、わたしが求めているものを先回りして用意してくれるスタッフには日々感謝しています」

「求めていることに対して、さりげなく用意してくれる周到さが長けていますね」と、小崎さんから紹介を受けたのは入社1年目の佐藤琴音さん。

ks005 「『たまら・び』日野の特集号を読んで、自分が日野に住んでいたこともあり、これだ!って思いました。不安もありましたが、飛び込まなきゃという気持ちの方が大きかったです」

「人と出会う日々はとても刺激的で楽しいです。少人数で動いている環境でもあるので、いつも自分は何ができるかを頭に入れて動いています。マニュアルはありませんし、やりたいと思ったことをすぐに行動に移せる環境は衝撃的でした」

そのなかでも印象に残っているのは「たまら・び」の稲城市特集にて、リトルバードという店舗を取材したときのこと。

ks006 「小さな記事でしたが、取材という一時的な出会いのなかで、相手の芯とつながった瞬間を感じました」

相手の芯とつながった。

「はじめてその場で取材交渉をして。取材相手のご夫婦もどんどん話をしてくださって。そんな体験をしたとき、形にしたいものがはっきり見えたというか、邪魔せずに寄り添えた気がするんです」

「取材ってほとんどの方が初対面だと思うんです。でも、そのときは自分が『お客さん』の立場から会話がはじまって、気が付いたら自然と取材をしていました。思い返してみると、その流れが良かったのかな」

そんな瞬間がいくつもあるからこそ、やりがいは多いのかもしれないですね。

「そうですね。この一年は好奇心をくすぐられる体験ばかりだったので、自分の願い通りの場所にいるという実感があります」

興味が尽きないことだらけなんですね。

「はい。やっぱり人って面白いなと思います。毎回いい意味で想像を裏切られるというか」

ks007 自ら動く環境は、充実した環境である一方で大変さも感じると思うのですが。

「わからないなりにも行動に起こせる人だといいのかな。私は何かを表現することが苦手なんですが、自分のなかに熱い思いや秘めた何かがあれば、それが糧になる環境だと思います。思いをひとつの能力にして動ける会社だと思います」

 
あらためて、小崎さんから話を伺う。

「『たまら・び』は完成するたびに、毎号関わった人たちと完成披露会をやるんです。そこでいつも『これは終わりじゃなくて始まり』ということを実感します」

「実際に、『たまら・び』での関わりがきっかけで冊子やフリーペーパーなど、新たなお仕事をたくさんいただけています。そして関わった皆さんとは大体どの号の方ともお付き合いが続いているんです」

ks008 そんな目的は「たまら・び」だけではなく、けやき出版の存在価値にも当てはまるのかもしれません。

「35年もの歴史があって、1500点以上の出版物があって、多摩地域に根ざしている出版社って他にないんですよ。そんな会社だからこそ、できることはまだまだあると思っていて。やらない後悔よりもやった後悔の方がいいかなと思ったんです」

「今までと今のやり方は変わってきていますが、多摩に貢献したいっていう思いは変わっていません」

書籍や会社を通していろんな人を巻き込んでいく。そして、自分たちもその渦に巻き込まれていく。

「多摩には30市町村があって、400万人以上が暮らしています。そこでもいろんなつながりが生まれてほしくて。多摩に住んでいて、23区に働きに行って、寝るためだけに帰ってくるのが残念だと思うんです」

「だからこそ、自分の住んでいるところがこんなにも良い環境っていうことに気づいてほしいんですよね。それを発信したいなっていうのが私の強い思いです」

地域と親密になって動く環境だからこそ、手がけられるものが生まれる。その魅力が、地域をどんどん巻き込んでいる気がしました。

ks0009 もちろん、いろんな機会が生まれているからこそ、ぶつかることもあります。

「私も入社時は雑誌しか編集をしたことがなかったのですが、いきなり書籍を一人で一冊つくることになって。でも、自分が動かないと何も始まらなかったので、自分で製紙工場にいって用紙を調べたり、見積もりや原価計算を自分で勉強したり」

「お仕事をいただいているからこそ、無難にそつなくまとめたくないというか。ボクトツとしていて不器用でも、相手のために自発的に動きたくなるような方にきてほしいですね。また、けやき出版のことをもっとたくさんの方に知っていただきたいので、それを一緒に盛り上げていくためにも、同じ方向を見て歩いてくれる仲間がほしいなと思っています」
けやき出版では、個人でも会社でも巻き込む側に立つときもあれば、あえて巻き込まれる側に立つときもあります。

「たまら・び」の会議で感じた和やかな雰囲気も、みんなの提案でつくりあげるからこそ生まれたのかもしれません。

巻き込みつつも、自分たちが巻き込まれる立場になるからこそ生まれる面白さがあると思いました。

(2016/3/11 浦川彰太)