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「農業って、つくった青果を市場に出せば商品価値が生まれるという土壌がしっかりしているんです。だからこそ、そこに頼るのは甘えのような空気も感じていて。そんななかで自分の売り方を追求することに面白さを感じ、つくった果物を営業から販売までおこなうことに決めたんです」「そこで大事になったのが、自分たちの『良いもの』は何かをしっかり見つめることでした」
桃やぶどうの生産をおこなうピーチ専科ヤマシタは、宅配事業やカフェ「ラ・ペスカ」の運営を始めるなど、農家という肩書きにしばられない働き方をしています。

「お客様の声も、桃をつくる技術も、素直じゃないと入ってこない。体力や経験も大事だけど、はじめは素直になって広い視野を持てることが大事なのかなと思います」
基本となる働き方を軸に自分たちの仕事と向き合うこと、お客様と向き合うことで、ここだけでしかつくることのできない『良いもの』が生まれていました。
最寄り駅の山梨市駅から歩くこと20分。ピーチ専科ヤマシタの看板が見えてきます。

事務所の入り口を探しているときに、奥から顔を出し、挨拶をしてくださったのは代表の山下一公さん。

「決められた品種だけしか育ててはいけないとか、30年前は自分で売ることがものすごく規制されていましたね」
それまでの売り方に疑問を感じ、農協に頼らない自分なりの売り方をつくろうと決意します。
「そんななかで気づいたことが、つくるっていう作業工程はどの農家も同じですが、どこもプロダクトアウト思考ばかりだったということです」
プロダクトアウト思考とは、ニーズよりも作り手の理論を優先させること。
良いものをつくれば高く売れるという考え方が多数を占める中、そもそも良いものとは何かを見つめ直した山下さん。
そこで見えてきたのは、『良いもの』は自分の手元ではなく、つくったものを届けるお客様の意識にあるということでした。
「カフェなどで『美味しかった』という声や『これってどうなの?』という正直な意見をお客さまからいただける環境は、まさに『良いもの』をつくりだす糧になっていますね」
そんな声は、ここで働くみんなのやりがいにもつながっている。

新しい農業のかたち?
「そうです。これまで積み上げてきた農家としての働き方を基盤とし、より会社としてのシステムを意識することで、働き方もいろんな可能性を模索できるかたちを作りたいという思いがあります」
「だからこそ自主性を意識してほしいです。そのなかで、その人の得意・不得意の部分を見極めて、できることを任せようと思っています」
与えられた働き方だけで務まる仕事ではないということでしょうか。
「たとえば、剪定作業でも何時間かかるのかをデータで蓄積し、自ら目標設定をして達成する。そんな環境こそ自分が成長できる仕事だと思い、楽しめる方であれば面白いと思います」
指示を受容し、その先にある自分たちのイメージを起こすことで、より高い意識で働き方に向き合えるのかもしれない。
「単純にそういう考え方ができない仕事の環境はつまらないと思いますし、会社としても発展性がないと思うんです。そこでの失敗はしょうがないと思っています。それ以上に、長いスパンで自分が成長できる機会を見つけてほしいですね」
自分で手がける楽しさを感じながらも、『良いもの』の価値を見いだせるような人が向いているのかもしれません。
良いものをつくる気持ちやお客さまの喜びを思い描いて働く感覚は、カフェスタッフも同じと言います。
そこで話を伺ったのは、お店を担当している山下一二三さん。
今年の夏でオープン7周年を迎えるカフェ「ラ・ペスカ」。今回はこのカフェ「ラ・ペスカ」、ジェラートショップ、催事での出店をまとめる働き方になるとのこと。
「農作業のスタッフと共通している視点は桃や果物に興味があるということです。また、カフェスタッフはお店全体のことから、ジェラート、催事のことまで任せられる方を探しているんです」
昨年までは農作業のスタッフが手伝ったり、桃の収穫時期にカフェスタッフが関わったりするような働き方をしていました。
けれども、今年はより自分の役割に向き合える環境を整えるために、カフェ・ジェラートショップ・催事出店の専属スタッフとして一年間を通して関わっていきます。
「たとえば、カフェは桃の収穫時期である土日祝日や夏休みはとても混みます。そういった環境で、対応しやすい準備の仕方や方法などを提案していただけるような方だと嬉しいですね」

食に関わる仕事をしたい。自分でお店を回したい。そんな考えを抱いている人なら、経験として得られるものが大きいのかもしれませんね。
「そうですね。あとは傷があったりして青果出荷できない果物も大切にしたいため、どうにかして使えないかと提案をすることもあります」
「たとえば、以前スタッフに『冬につくっているあんぽ柿をどうにかしてメニューに組み合わせることできないかな?』と提案したら、バニラアイスをつめてみましょうって提案してくれたんです」

「やっぱり桃で有名な産地ですので、休日は大勢の人で賑わいます。そういう忙しいときにこそ、どんな行動をすればお客様に『良いもの』が提供できるか、喜ばせることができるのかを考えられる方が向いていると思いますね」
食材をつくり、形にしていく環境が身近にあるカフェやジェラートショップの働き方は、食材の生産から販売まですべてに寄り添える貴重な環境だと思いました。
畑で働く三名のスタッフにも話をうかがいました。これから入社する人の先輩にあたる方々です。
現在、桃の畑とジェラートの工房を担当している中澤さん。

実際に働いてみたときの印象はどうでしたか?
「ここは良い意味で会社というイメージ強いですね。昼寝とかもできる良さがありますし(笑)。でもそれって、会社としてのシステムがしっかりしているからこそ時間の使い方もある程度自由があるのかなと思います」
「あとは農協の値段で売るのが普通ですが、ここでは自分たちで値段をつけるので勉強にもなりますね」
自分たちで考えられる自由度が高い。
「かなり高いと思います。催事に関わっていたときも、ディスプレイから決めたりしたので、今回募集するどちらの職種も些細なことから自分たちで考え動いていくと思います」
続いてぶどうを担当している坂本さん。

「果物をつくる農家さんの働き方を聞いていたのですが、一番合うと思ったのがヤマシタ農業でした」
さまざまな作業をおこなうなかで、やりがいを感じる場面がいくつもあった。
「『農業=儲からない』っていうイメージが染みついていると思いますが、ちゃんと頭を使って働けば儲かるっていうことを学んだというか、体感できたんです」
「だからこそ、遊びでやって欲しくなくて。いま若者の農業ブームとかで注目されていると思うんですが、息抜き的な感覚では来てほしくなくて。生活の一部としてやっていこうと考えている人に来て欲しいですね」
最後に細見さん。
以前は北海道で野菜を中心に農家に携わっていました。

収穫のシーズンと重なり、きついなと感じることもあるのではないでしょうか。
「夏は暑いと割り切っているので、驚いただけでしたよ。土の上で働くことが好きなので、きついとか嫌だと思ったことはなかったですね」
やりがいのほうが強かった。
「そうですね。さらに直接お客様へ届けるのでお礼のお電話を頂いたときなんかはつくって良かったなと感じますね」
売り方までも意識することで、つくる農産物に対しても捉え方が変わりますね。自分たちで良さを発信できる強みがあるのかなと。
「でも、これからはますますそういう売り方は主流になると思います。ここでは自分の色を出せるというか、基礎を固めた上でステップアップを望める感触をつかんでいます」

「僕らが教える立場になりますが、誰でも教えたことをすべてできるわけではないと思っています。ときには失敗もあると思うのですが、そういうときに挫けずに意欲的に挑戦するような気持ちある方がいいですね」
最後に、山下さんのことばを紹介します。
「大変だねって言われることが多いんですが、今日みたいな寒い日の農作業も収穫に結びついていて、最後の収穫で得られる喜びが大きくなっていくんです」

良いものを意識して手がけた良い桃を、様々なかたちでお客様へ届ける。そんな働き方がピーチ専科ヤマシタにはあります。
(2016/3/1 浦川彰太)