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ファッションという言葉には、さまざまな意味が込められています。洋服や装飾といったイメージを思い浮かべますが、広い意味ではライフスタイルといった意味も含まれています。
今回募集する渡辺産業は、英国ブランドを取り扱う輸入代理店。

日本と英国をつなぐ働き方は決して飾ることなく、気品に満ち溢れていました。
東京メトロ表参道駅から歩くこと6分。本社オフィスが見えてきます。
隣には直営店のBRITISH MADE 青山本店も並んでいる。

店内に差し込む光の下で取材をおこなう。
「雨は嫌いじゃなくてね。まさに今みたいな雨上がりが好きなんですよ。靴が濡れるのだけは嫌ですけどね」
そう話すのは代表の渡辺鮮彦さん。
創業54年目の渡辺産業で二代目を務めている。
ゆっくりと、ひとつひとつの言葉を口にする姿からは、丁寧さと気品さを感じられる方でした。

大学を卒業後、アメリカのIT企業に勤めたものの、すぐに家の仕事を継いだ鮮彦さん。
アメリカの企業から家族経営という環境に変わったものの、大切にしていることは一貫していました。
「ひとつは夢を持ち続けるということです」
そう言って、大学時代に夢中になったヨットの話をしてくれました。
「エンジンがついていない『ディンギー』というヨットにはじめて乗せてもらったんです。5月の春のうららかな日だったかな。風も強すぎず弱すぎず。はじめて乗せてもらったときの光景は今でも覚えています」
船に乗った瞬間に、風の力で自分と船が一体になり動く。これまで味わったこのない新しい体感。
「波の音と帆がはためく音のなかで、自分が水を切って前に進んでいくことに心から揺さぶられましたね」
「それ以来ずっと続けていますが、いつか自分でも船を持って自由に海を進みたいと思っています」
夢中に話す内容は、鮮彦さんがこれまで歩んできた働き方にも似ている気がして、なんだか自分もわくわくしてくる。
「また、ある出会いを境目に生地を卸す仕事が製品になったんです。そのきっかけこそ人との出会いでした」
どんな人だったんですか?
「アラステア・マッキノン氏というスコットランドの方です。当時、セーターをつくっていると言って英国大使館の紹介でうちにも来てくれたんです」
ただ、そのとき扱っているのは生地だけ。製品を扱っていなければ、知識もなかった。
「でも、私はそのセーターにも彼自身にも興味がありました。なぜなら彼の境遇が私ととても似ていたのです。自分で会社を開拓していたり、ヨットが好きだったりして。セーターもすごくいいテイストだったので、是非とも商品を取り扱いと思ったんです」

そのスタートをきっかけに、様々なブランドとつながりをもつようになる。
「そのひとつに『GLENROYAL(グレンロイヤル)』というブランドがありました。とても素晴らしい革製品をつくっています。決して手が出しやすいような値段の商品ではなかったので、売れるかどうか分からないと話したのですが、日本のセレクトショップの方々、皆さまに気に入っていただけました」

目の前に広がる出会いやきっかけに身を任せてみる。ヨットのように進んだからこそ、今の景色が広がっているのかもしれない。
つづいて話を伺ったのは渡辺悠太さん。現在はマーケティング部の責任者を担当している。

「今回はウェブでの募集になりますが、オンラインショップ上でメーカーや商品の魅力を伝えるチームです」
渡辺悠太さんが入社したころは、卸を中心に商品を取り扱っていたとのこと。
しかし、時代とともに商品に対する考え方も変わってきた。
「ただ物を売るのではなく、物の背景にある作り手の想いやライフスタイルを提供していくことが、我々の仕事と感じるようになりました」
そう感じたのには大きな体験があったんです、と話してくれたのは研修時代のエピソードでした。
「入社後に、研修で英国の工場で働く機会をいただけて。そこでものづくりに対する想いにすごい感銘を受けたんです」
ものづくりに対する想い。
「ひとつひとつの商品を大切にしているんです。そしてお客さんもその商品を愛していることが伝わるんですよね。だからこそ、工場スタッフもプライドをもって働いているんです」
作り手の想いに共感する。だからこそ、多くの人に知ってもらいたい。

「ウェブに関してはオンラインショップの運営がメインになるので、ただ物を載せるだけではなく、コンテンツづくりなんかも仕事のひとつです」
「マーケティング部での働き方はいろんな物を好きになり、興味を持つということが重要になってきますね」
実際にウェブと販売促進で働いている方にも話を聞きます。
はじめにウェブで働いている林さん。
以前の会社ではウェブや紙媒体のディレクションを手がけていた。

「歴史も長く、ブランド力の高い商材を扱っていたので、保守的なイメージだったのですが、実際はウェブをはじめ自分のやりたいことができる自由な雰囲気に驚きました」
さまざまな企画に取り組んできたなかでも、印象に残っていることがあるという。
「グレンロイヤルの『パーソナルオーダー』といった、お客さまが配色などを自由に選べるサービスがあるんですが、以前は実店舗のみのサービスでした」
そんなサービスをウェブ上でも実現したいという思いから、企画という立場で関わり、今ではブランドの魅力のひとつになっている。

「基本はオンラインショップの運営になります。それぞれの特性を生かして仕事内容も変わると思うのですが、ウェブページのディレクションから、メールや電話ベースでオペレーションを担当するなどさまざまです」
ときにはお客様への対応をする可能性もある。
「そうですね。制作をしているだけではないので、辛いと感じる方もいらっしゃるのかなと思います。シーズンによってはお店に出ることもありますね」
続いて販売促進の坂本さん。

そんななか、当時の店長が持っていた財布に惹かれる。
「あまり見ないデザインのマネークリップ付きの革財布を使っていて、すごくかっこよかったんです。そのブランドは弊社で扱っているグレンロイヤルだったんです」
「入社する前からブリティッシュブランドを使っていて、自分にとってはとても身近な存在でした」
ただ、卒業後は一度他業種へ就職。興味のある仕事とは異なる環境で働いていく中で大きな疑問を抱くように。
「自分みたいな興味のない人が営業して、買う人もうれしいのかな?と思ったんです」
好きな人が好きな物の話をするからこそ、物の良さが伝わると実感する。
「大学時代から好きだったものに立ち返り、今ここで働いています。本心で良いと思ったものを紹介し、使ってもらった上で良かったと実感して頂くことが自分、作り手、そしてお客様にとっても幸せなことだと思いました」
本心で良いと思ったものを提供する。自分もお客さんもなんだかうれしくなる。

直営店のプロモーションと、輸入代理店ブランドのプロモーション。
「たとえば雑誌の広告にイメージビジュアルを入れたり、タイアップという形で商品を発信していったり、動き方はプレスルームでの対応だけとは限りません」
「広告代理店様やスタイリスト様と一緒に仕事をすることもよくあります。どのターゲット層に向けてどのように打ち出すのか。お客様は何を求めているのか。さまざまな視点をバランス良く見てかたちにすることは、慣れるまでに苦労しましたね」

そんななかで、どんな人が向いているんでしょうか。
「相手の話をしっかり聞ける人だと思います。自分の考えが強すぎたり、ただ聞くだけみたいな人だと厳しいのかな」
「様々な要素や優先順位が変わる中で、その都度考え、フラットな視点で良いものを発信しようとする人が良いと思います」
いろいろなお客様や代理店様と関わるなかで、考えることはいくつも同時進行で進みます。
「そういった状況になっても中途半端なものは世の中には出せません。責任感やこだわりを強く持つといった完璧さは大変ですが意識してほしいですね」
販売促進もウェブも、決まった働き方をこなすというよりも、お客様やブランドのために何をするべきかを最優先して、動く姿勢が重要だと感じました。

最後に鮮彦さんの言葉を紹介します。
「安売りをしたからといっても売れるとは限らない。そこで何ができるかと考えたときに、お客様になにを提案・提示できるのかということです」
「ひとつは作り手の想い。物は一定の品質と水準を備えている。その上に足すべきものは、販売スタッフの接客などです」
売りつけるのはなく、寄り添うかたちで商品の良さに惹かれてみる。
「お客様のことを考え、商品を売ったら終わりではなく、お客様が使う先までを考える。そういった考えができるスタッフと働きたいですね」
本当に売りたいのはなにか。物の先にある風景を魅せる働き方が、渡辺産業にはありました。
(2016/3/10 浦川彰太)