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兵庫県・神戸市北野。モダンな街並みと山あいの緑が織り混ざる、落ち着いた雰囲気のまちです。
かつては交易の要衝として、外国の宝石商が行き交ったことで栄えたそう。
明治20年代から大正初期にかけて建設された「異人館」と呼ばれる異国風の住宅が複数現存しており、その一部が一般向けに開放されていることから、観光名所にもなっています。

有限会社コパン・デザインソースは、これまで東京を拠点にファッション広告や通販カタログなどのグラフィックデザインを行ってきた会社。
カタログの企画にはじまり、編集や撮影、デザイン、納品まで一貫してディレクションするのがこの会社の仕事です。
今回は、昨年6月に設立された神戸の新オフィスで働くアートディレクターとグラフィックデザイナー、そして案件ごとに関わるWebデザイナーを募集します。
また、東京・代官山のオフィスでも同様の職種で募集中です。
お話を伺ったのは、代表の石鍋恒明さんと、アートディレクターの田中茜さん。

「最初は『石鍋さん、本当にここですか?』と言われたりもしましたけど(笑)、使っていくうちにだんだんと馴染んでいった感じがしますね」

東京のオフィスは、まるで家のような雰囲気を持った空間になっている。

しかし昨年の6月、事情があって明石の実家に帰ることに。
「彼女とは6年前から一緒にやってきて、手放したくないなという想いもありましたし、せっかく能力のある子だから、いい環境で働けなかったらもったいないとも思いました」
このことがきっかけで、関西の新オフィス設立を検討しはじめた石鍋さん。ちょうど、仲のよいカメラマンが神戸のシェアオフィスに入居したことを知る。
そこは神戸R不動産が管理しているシェアオフィスで、建築や映像、ライターなど、さまざまな分野のクリエイターが集う場所だった(下記写真)。

1階の打ち合わせスペースには、キッチンや共有の本棚などが設置されていて、自由に使うことができる。
オフィスだけれど、知り合いを招きたくなる自分の家のような空間。東京のオフィスともよく似た雰囲気がある。

「仕事をしていると、ピアノの練習をしている音が聞こえてきたり、生活空間と働く環境が重なっている感じがします。それに、子どもからお年寄り、外国の方まで、いろんな人がいます。自然も豊かなので、外に出ると気分転換になりますね」
たしかに、生活と仕事、都会と自然がほどよく調和した心地よさを感じる。
「デザイナーの仕事ばかりじゃなくて、ふっとひとりの人間に戻れる時間があるというか。リラックスして仕事ができるのは、ここの一番の魅力かなと思います」

実は最近、長く付き合いのあった媒体がなくなってしまったという。けれども、石鍋さんはいたって前向きだった。
「仕事がいっぱいの状態で待っていても、新しい人との出会いとか、新しい仕事ってなかなかできないですよね。だから、空いたスペースをただ埋めるだけじゃもったいない。神戸への進出は、今までとは違う領域に踏み出す最大のチャンスだと思ったんです」

「これまでは、通販・広告やファッションカタログなどのグラフィックデザインが基本でした。そのなかでお話をしていくと、紙媒体だけではなく、Web媒体と連動したコンテンツづくりや、ネット上でのお客さんへの販売アプローチに関する要望が出てくるんです」
「今までは基本的にお断りしていたのですが、次第に『そこをやらないのは時代の潮流からしてどうなのかな』というふうに思いはじめたんですね」
ちょうどいいタイミングで、新規開拓したクライアントからWeb媒体展開の話を切り出され、Webの領域にも踏み込むことを決めた。
「グラフィックデザイナーとは使っていくソフトも違いますし、仕事のスタンスもちょっと違う。ただ、根本の考え方や組み立て方に関しては、一貫したイメージでディレクションできたほうがいいんですよね」
「今は社内でスタッフを抱えるよりも、案件ごとにブレーンとしてのWebデザイナーとチームを組んで、アプローチの仕方を一緒に構築していければいいかな」
グラフィックデザイナーとして入る方については、どうですか。
「できれば、ディレクションのできる方・興味のある方にきてほしいです。与えられた材料でデザインを組むのも、もちろん仕事として立派なこと。けれども、自分の考えていることを最後までやりたいという気持ちを持った方のほうが、コパンでの仕事には向いていると思います」
クライアントとの打ち合わせを重ねてつくったラフを、カメラマンやスタイリスト、ヘアメイクやモデルと共有し、ライターや社内のグラフィックデザイナーとともに各ページを制作していく。
ときには「この商品を売りたい」というような漠然とした相談を受けて、はじめから企画を考えていくこともある。
そんな全体の工程に関わるなかで、田中さんはディレクターとして心がけていることがあるという。
「コパンでは、コンセプトづくりをとても大切にします。見た目の美しさも必要ですが、そのビジュアルに至るまでのプロセスが重要で。ゴールや落としどころが見えていれば、ビジュアルも自然と明確になってくるんですね」

コンセプトがしっかりしていればビジュアルもぶれないし、人物像やストーリーを共有することで、周りの方から提案してもらえることもある。
「ひとりだと、表現の幅に限界がありますよね。ほかのクリエイターの方々の力を借りることによって、より効果的なものづくりができるようになると思っています」
どういう目的で、誰になにを伝えたいのか。全員が同じベクトルに向かって動いていくためにも、クライアントだけでなくスタッフ全員に伝えていくことを大切にしている。
「写真とコピーがマッチして自分の与えたかった効果が出てきたときには、『そう、これこれ!』というように、イメージしていたモノが形になっていくうれしさがありますよね」

「ぼくは、手を動かしているときだけがデザインではなくて、コミュニケーションそのものもデザインだと思っています。つまり、コミュニケーションを通じて相手との関係性を組み立てていくことは、文字と写真をどう組み立てていくかと全て一緒。その力がないと、デザインでは食べていけないですね」
通常、デザイン会社は代理店の下請けとして仕事をすることが少なくないけれど、コパンはクライアントと直接コミュニケーションをとるようにしている。時間も手間もかかるので、まわりからは時代に逆行していると言われたそう。
それでも続けてこられたのは、きっと石鍋さんの人柄もあるのだと思う。
「コンセプトの段階からつくっていくには、肌感覚で感じるものがないとできないと思うんです。間にフィルターが入ると、本当にそうかな?と思ってしまうし、どうしても様子見の意見しか言えなくなる。結果として、クライアントの役に立つものはできない気がします」
「ぼくはいつも、嘘っぽい付き合いをやめようと言っています。社員もそうだし、チームのスタッフもそうだし、取引先ともそう。かっこつけず、気取らず、謙虚すぎることもなく。思ったことは、とにかくストレートに言っていきましょうということです」

友だちや仲間よりもうちょっと砕けた、かっこつけていない関係。
仕事でも、そんなふうに嘘っぽくない付き合いをしていける会社にしたい、という石鍋さんの思いが込められている。
「類は友を呼ぶ」というけれど、ここにはこれから面白い人が集まってきそうな感じがする。クリエイター同士の関わりが具体的な仕事として増えはじめたら、それを嗅ぎつけた面白い人がさらに集まって…。そんな循環が生まれそうな予感。
まちにも人にもまだまだ余白がある今はまさに、飛び込めるチャンスかもしれない。
「オフィスの目の前の坂を上がってくるときに、向こうから吹いてくる風がいいんですよね。毎日何回も言ってしまうのですが(笑)、本当にいい」
「ここも、新しい試みと新しい風を吹かせられる場所になればいいなと思っています」

神戸のスタッフが東京で撮影を行ったり、合同のチームを組んでひとつのプロジェクトに取り組んだり。各地にいるスタッフがノウハウを共有しつつ交流することで、新たな領域の仕事が生まれてきそうです。
「いい意味で、会社っぽくない会社なので。やりたいことを提案すれば、やらせてもらえる環境です。自分で仕事をつくっていくこともできますし、そういう方だと合うのかなと思います」と田中さん。
会社としても、新しく入る人にとっても、これから挑戦の機会はますます増えていく。
ひとつひとつを肌で感じながら形にしていけたら、それはとてもいい経験になると思います。
コパンの新たな挑戦を一緒に形づくっていく仲間を、お待ちしています。
(2016/4/28 中川晃輔)