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一本ずつ、一歩ずつ

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

真綿から手でつむぎだした糸で織り成す「結城紬」。

起源は2000年前ともいわれ、日本に数ある紬のなかでも最高峰の絹織物として古くから茨城県結城市の地で織られ続けてきました。

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そんな結城紬を伝承し、守り続けてきたのが奥順株式会社です。

明治40年の創業から100年以上にわたり、産地問屋として結城紬を扱ってきました。

今回は、奥順が新たに展開するブランドのお店「結城 澤屋」でディレクター・店長として企画運営する人を募集します。

 

新宿から電車に乗って約1時間半。乗り換えが少なく、思ったよりも早く結城駅に到着。

まちなかへ進んで行くにつれて、古い店蔵や土蔵があちこちに見えてきます。結城は紬のほかにも、酒蔵などの産業も栄えた商業の町です。

そんな町の一角に、奥順の「つむぎの館」があります。

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本場結城紬染織資料館「手緒里」、ギャラリー&カフェ「壱の蔵」、結城 澤屋の弐の蔵など、6棟もの歴史ある建物と広い敷地からなります。

「私たちは、先祖が結城紬をつくってくれた歴史の一点にいるだけ。儲かることだけじゃない。手織りの原点である結城紬を、次の世代に伝えていく使命があるわけです。その使命感から、つむぎの館ははじまったんですよ」

そう話すのは、代表の奥澤武治さん。

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1907年に創業した奥順はもともと、機屋さんにデザインを提供してつくった商品を卸す、産地問屋でした。

最近になってオリジナル商品を扱うお店「結城 澤屋」を開くことにした、その経緯をうかがいます。

「昔は東京・名古屋・京都・大阪の問屋さんに卸す仕事をしていたんです。けど、だんだんそれらの問屋さんから頼まれるようになり、全国の呉服屋さんやデパートへ行って結城紬の話をしたり、販売の仕方を教えたりしてきたんです」

「沖縄から北海道まで。ずっと25年くらい。そのなかで、これからは消費者の意向を的確に把握して、ものづくりに結びつけていくことが大切だと強く感じました」

一方、創業当初から結城紬を後世へ伝えることに強い思いがあったことから、結城紬の資料館を自社でつくり運営することに。

ほかにも古民家を移築したり、体験場やカフェ&ギャラリーを開設。つむぎの館ができあがっていきました。

「すると、やっぱりいろんな方がここへお見えになります。でも私たちは卸をやっていたから、来た人に『欲しい』と言われても売ることもできなかったんですよ」

「業界の先行きのこともあるし、ここへ来てくれた人たちの声もある。じゃあ自分たちで店を構えて、いまの奥順にはないその店だけのオリジナル商品をつくれば、売ることもできるんじゃないか。それを彼女に任せて、2年前にはじまったんです」

 

「彼女」とは、現在の結城 澤屋ディレクター兼店長の籔谷さんのこと。

こんどは澤屋の店内で、籔谷さんに話をうかがいます。

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奥順には新卒で入社して、6年間広報や展示企画を担当していたという籔谷さん。

聞いてみると、ブランドを立ち上げる経験などはまったくなかったそう。

本を読んで学びながら、海外の展示会でもお世話になったというアドバイザーの方からブランディングなどのノウハウを教えてもらい、社内にいるデザイナーさんと二人三脚で澤屋をつくりあげてきたそうです。

澤屋のコンセプトのひとつは「あらためてきものに出会う」。着物を新鮮に感じて自分も着てみようと思ってもらえるような。そんな、今の時代を楽しめるような着物を目指したそう。

そしてもうひとつが、結城紬の特徴である「素材が生きている」こと。

「絹だけれどきらびやかではなくて、木綿のような素朴さがあって。でも、木綿にはない上質感があるんです。カジュアルからセミフォーマルまで着るシーンが幅広くて、いろんな着こなしが楽しめる」

たしかに、奥澤さんや籔谷さんにお会いしたとき「あ、着物だ!」という感じがしなかった。ハレの日によく見る着物とは違って、日常の中でもしっくりくるというか。

「そうだと思います。着物を1回も着たことがない人でも、洋服の延長線上で入っていけるものなんです」

「もともと結城紬は、柄よりも素材自体に価値が見出だされてきたもの。この生地のよさを楽しむためには着物が合っている、という順番なんですよ。飽きがこないで、一度つくれば自分だけじゃなくて子どもや人に譲っていけるくらい長く付き合える。そういう価値のあるものだと」

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2つのコンセプトを軸に、次に籔谷さんたちが考えたのは「澤屋らしさ」。

グラフィック、空間、webなど。澤屋に関わるすべての事柄を「澤屋らしさ」のもとに形にしていくのが、ディレクターの仕事だといいます。

澤屋のイメージを共有するために、はじめにイメージコラージュをつくり、世界観を形づくっていったといいます。

「着物だけじゃなくて、帯とかバックとか小物類も、ぜんぶ澤屋のイメージに合うものを探して『お店で扱わせてください』と一軒一軒門を叩く感じで」

一つひとつを積み上げていくしかない、ほんとうに0からのスタート。アドバイザーがいたとはいえ、ほとんどが籔谷さんたちに任されたそうです。

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「ロゴとか空間デザインも力のある人にお願いしたいけど、そういうのも経験則が会社にないから相場すらわからなかったんですよね」

「不安でしたけど、つむぎの館でお客さまの見える環境で働いていたので。『こんなものがあったらよろこばれるのでは』という感覚があったし、『こういうお店があるといい』という明確なイメージもあった。だから、不安だけじゃなくて自信もあったんです」

澤屋のブランディングはロゴや空間デザインにおいて、世界三大広告賞の「ONE SHOW」や「D&AD」、グッドデザイン賞など、オープン1年目にして様々な賞を受賞したそうです。

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実際にどんな結城紬をつくっているのか聞いてみると、一番最初にデザインしたという生地を見せてくれました。

「フロストフラワーという雪の結晶が見せる現象があるんです。寒い日に車のフロントガラスに付いた水滴が氷の結晶になって、それが花のように見えるのが綺麗で」

「その雪の結晶を古典的な紋様である唐草模様に落とし込んで、半分無地にして。セミフォーマルな印象で、ドレッシーに着られるように意識してつくりました」

ほかにも「シャンパンの泡」と名付けた柄の着物もあるとか。シャンパン好きなお客さまの目に留まり、数日後にお母さまと一緒に購入されていったそうです。

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「お客さまには本当に恵まれています。温かくて、本来の意味で豊かな方が多いですね」

「そんなお客さまに自分が企画した商品をお見せすると、『もっとこういうものがあれば』というフィードバックもあって。それをまた形にしていくんです」

自分でつくったものを自分で売る。それも、よろこんでくれるお客さまの顔を思い浮かべて。ほかではなかなかできないことだと思う。

この仕事で一番の醍醐味だといいます。

「ムリに売ったりしないで、どうしたら欲しくなってもらえるかの手前の努力をする。どのお客さまからも『ありがとう』と言っていただけるんです。ムリもウソもない、ストレートな働き方ですね」

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澤屋らしさは商品だけでなく、見せ方にも。

「はじめDMは写真メインのポストカードだったのですが、もっと家に届いたときに楽しいものにしましょうと、読み物にもなるニュースレターをつくりはじめたんです」

自分たちで写真を撮り、文章も書く。『カフェでランチ』『クラシックのコンサートへ』など、様々なコーディネートを提案しているそうです。

「ニュースレターをつくったらとても反響がありました。こうやってお客さんってついて来てくださるんだなって。何回も来て買ってくださる方が目に見えて増えている実感があります」

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お香づくり教室や草花を摘んでの料理教室など、イベントも企画する澤屋には「和」や「着物」に興味がある人だけでなく、一生ものの服がほしい、丁寧な暮らしを送りたいと考えているような人もやって来るといいます。

商品知識はもちろん、着付けや和裁の専門知識など覚えることが多くて大変な面もあるそう。でもそれ以上に、澤屋の雰囲気や世界観に共感できて、自分の言葉で伝えられるかが重要なのだと思います。

「はじめから完璧は難しいと思うので。誠実によくありたいという基本的な思いがあることが経験値以上に大切かなと思います。それがあれば、あとは努力するしかないことが分かると思うので」

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籔谷さんは、どんな人に来てほしいですか?

「着物に限らず、奥深いものが好きな人がいいですね。知りたいと思ったことを、いろんな角度から探求していけるような。そういうところからいろんな人との人脈ができて、イベントとかでネットワークを活用できる人。あとは、お客さまとお話できる基本的な教養が必要です」

「オープンして1年経ったけれど、まだまだ間に合っていない部分もあるので、ブランディングしていく人とは別に、管理とかシステムをつくるのが得意な人は歓迎ですね」

籔谷さんは、いまある澤屋は完成形ではないといいます。自分たちのできることから、一つずつ積み重ねてやってきた。

新しい人の力が加わることでより磐石になり、パワーアップしていけることを期待しているそうです。

 

最後に、次期社長である専務の奥澤順之さんに、奥順のこれからについて話をうかがいました。

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「私たちは卸から直接の小売りまではじめたわけですけど、売ることだけじゃなくて、つくることも両輪として考えていかなきゃいけない。生産減に歯止めがかかっていないので、どういうふうにしたら生産を維持していけるか、産地のつくり手の方々とも一緒に考えていきたいです」

「それと、会社について。いろんな物事を判断する上で基準としているのは、自分たちのやっていることを第3者に説明したときに、支持してもらえるかということです。私が帰ってきてから、会社の風通しは以前に比べてよくなったと思います。いまは女性が働きやすい環境を整えようとしていて、それが今回の募集とも関係しています。人生の2分の1以上を仕事に捧げるということで、やりがいや生きがいを持って働ける会社にすることが大切だと思っています」

(2016/2/25 森田曜光)